ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない

出版までされた話題の名作

 

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない

 

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1 :11 /24(土) 21:38:07.44 ID:Jw+br6zA0

 

職業はプログラマ。この職業、マジでやばすぎる。

 

 

入社日での出来事。
パソコンを渡される→指示された通り、色々なものをインストール→設計書を渡される。

 

「これでおっけーと。んじゃ作れ」
「え?」
「いや作れって」
「あ、え?は、はい」
「みんな忙しいから、出来る限り自分で解決しろよ」

 

そう言って去っていくチームリーダー。
このまま悩んでてもしょうがない。とりあえず設計書を見てみるか。
フレームワークがどうのこうの、うんたらかんたら・・・。テストはどうのこうの・・・。

 

 

ワケわからんぞ

 

4 :111 /24(土) 21:41:00.67 ID:Jw+br6zA0

 

5分ほど自力で調べたり、読み返してみる。
わからん。先輩に聞くか。

 

「すいません」
「えーと、これがこうで・・・」
「すいません」
「なんだよこれ・・・。しかしきついな」
「すいません」
「できねーよ・・・無理じゃね・・・」

 

 

ダメだこいつ。はやくなんとかしないと。

 

5 :111 /24(土) 21:45:18.14 ID:Jw+br6zA0

 

仕方が無いのでリーダーのところに向かう俺

 

 

「すいません、少しよろしいでしょうか」
「忙しいから後で」
「あ、はい」

 

 

1時間ほど待つも音沙汰が無い。もう一度行くか

 

 

「すいません」
「後でって言っただろ?」
「えと、どのくらい待てば」
「仕事が一段落ついたら呼ぶ。それまで来るな」
「はい」

 

 

なんだこの会社、何かおかしいぞ・・・。

 

6 :11 /24(土) 21:46:18.27 ID:hhJr3lPT0

 

中小企業 零細企業で未経験可のひどい場所選んじゃったんだね・・・・・・・・・・。

 

7 :111 /24(土) 21:48:01.31 ID:Jw+br6zA0

 

それから2時間ぐらい待つも何も無い。リーダーが席を立った。
こっちに来るようだ。やっとか。

 

 

「できたか?」
「え?」
「できたかって」
「い、いえ・・・設計書がわからなくて・・・」
「はぁ?最初にそれ言えよ。なんで言わないんだよ」
「いえ、それを言おうと思って先ほど」
「ちげーよ。用件をなんで言わなかったかって聞いてんだ」

 

 

ダメだこいつも。はやくなんとかしないと。

 

9 :111 /24(土) 21:51:17.94 ID:Jw+br6zA0

 

「すいません、以後気をつけます」
「当たり前だ。ほうれんそう知らんのか?報告・連絡・相談は基本だぞ」

 

 

あんたがそれを拒否ったんだろうが、ボケかこいつは。

 

 

「はい」
「んで、何がわからないんだ。どれだ」
「全体的に意味がよくわからないんですが・・・」
「お前やる気あるの?」

 

 

確かに俺が不出来なのは認めるが
新入社員にどんだけ期待してるんだこいつは。

 

12 :111 /24(土) 21:58:25.78 ID:Jw+br6zA0

 

「全体的とか言われても俺そんな時間ないから。自分でなんとかしてくれ」
「そう言われましても、少しぐらいは教えて頂かないと私もできません」
「お前の仕事だろ。自分でなんとかしろよ」

 

そう言って去っていくリーダー。
と思ったら後ろを振り返った。

 

「あとそれ二週間後に納品だから、それまでに製造終わらせておくように」

 

何言ってんだこいつ。
この時点で俺はデスマというものに組み込まれていた。
大体、製造開始が納品2週間前って有り得ないだろ・・・。
おそらく先輩とかも着手してたと思うが、新人に一手に任せるというのはどうなのか。

 

13 :11 /24(土) 22:00:34.03 ID:znmUygTW0

 

プログラマ目指さなくてよかった

 

14 :111 /24(土) 22:01:34.18 ID:Jw+br6zA0

 

とりあえず自分の力では到底及ばないことが分かった俺は、
他の先輩にもあたることにした。

 

「すいません」
「ん?」

 

 

おぉ、返事が

 

「ちょっと教えて欲しいんですけど」
「どれ?」
「この設計書の、ここがよくわからないんですが・・・」
「どれどれ。なるほど」
「どういう意味か教えて頂けませんか?」
「あぁいいよ」

 

おぉ、まともな人も居るじゃないか。
先輩は俺の席の方に移動していった。

 

15 :111 /24(土) 22:05:27.21 ID:Jw+br6zA0

 

席についてソースを追いかける先輩。唸っているようだ。

 

「君、プログラム暦何年ぐらい?」
「1年未満です」
「1年未満・・・。それじゃこれ無理じゃないかね・・・。納期いつ?」
「リーダーが二週間後って言ってました」

 

すると無言で席を立つ先輩。

 

「あの」
「俺も仕事忙しいから・・・」

 

俺は不安をあらわにした表情で辺りを見回す。
全員、明らかに無視している。
なんだ、一体何が起ころうとしているのだ

 

17 :11 /24(土) 22:07:12.75 ID:KskyD72SO

 

会社的におかしいだろそれ…
ブラックってレベルじゃねえぞ
普通聞けばある程度は教えるし
周りの対人スキルも問題ありまくりだ

 

20 :111 /24(土) 22:08:22.71 ID:Jw+br6zA0

 

とりあえず席に座り、設計書を読み直す。

 

意味の分からない単語はおいて、分かる部分だけ抜粋。
あとは元出のプログラムを見る。
当たり前だが意味がわからない。

 

しかしそんなことを考えても無意味なので、
一番最初に処理を行うであろう部分から追いかけていく。

 

何となくだが、光が見えてきた。ギリギリでどうにかなるレベルだ。

 

分からない部分が多すぎるが、設計書を見る限り、修正点に限ればどうにかなるレベル。
やってやるぜ。

 

 

そう思ってたら、リーダーがやってきた。

 

22 :111 /24(土) 22:11:06.60 ID:Jw+br6zA0

 

「どうだ、できたか?」
「はい、やっとソースが読めるようになりました」
「いや、できたかって」
「い、いえ、それはまだです・・・」
「おまえ遅いな。そんなんじゃウチでやってけないぞ」
「す、すいません」

 

どんだけハイスペックが要求されるんだ。

 

 

「あと今日のスケジュール、モジュール1本完成だからな。それこなさないと帰れないぞ」

 

 

何を言ってるんだこいつ。

 

23 :111 /24(土) 22:13:06.28 ID:Jw+br6zA0

 

「え・・・?それはちょっと無理な気がするんですが・・・」
「無理じゃない。夜11時までには終わるだろ」
「えぇ?定時って5時じゃないですか」

 

無論、定時で帰れるとは思ってないが、一応。

 

 

「ばかやろう。定時なんてものは都市伝説だ。フィクションっての知らんのか?」
「え、就業規則が」
「うちの定時は夜10時だ」

 

 

とんでもないブラック会社だ。
もちろん残業代なんて出ないぜ。

 

しかし考えていてもしょうがない。
とっとと完成させなければならない。

 

完成させれば帰れるんだ。

 

24 :11 /24(土) 22:13:18.31 ID:hhJr3lPT0

 

その会社は社長が馬鹿で、社員全体、実力主義の会社だな

 

きっと、人事が悪いと思うよ。
使い捨てだから、半年以内に辞めそうだな

 

25 :11 /24(土) 22:16:14.81 ID:ovtcn++O0

 

どんな分野のプログラムなんだ
事務処理
制御系
ゲーム
etc.

 

26 :111 /24(土) 22:18:11.73 ID:Jw+br6zA0

 

今、話で出ているプログラムは制御系だった。
言語はVB.netとC♯。
前者はかじってたから良いものの、C♯とか初見で意味わからなかったな・・・。

 

続き。
ちょこちょことソースをいじる。あらかた修正を完了させた。
ここらで軽くデバッグしておくか。おっと、その前に保存してと。
実行ボタン押下。
パソコンが激しく音を立てる。

 

 

数分経過。何も起こっていない。

 

 

(おかしいな?)

 

 

フリーズしていた。

 

31 :11 /24(土) 22:22:02.62 ID:hhJr3lPT0

 

俺の会社も、聞けば、怒鳴って言ってくるのが普通だったな。
社長は社員達に馬鹿にされていて、会社の空気も、新人を育てられるような環境じゃなかったw

 

人間としての質も悪かったし、人を小馬鹿にするのも日常茶飯事だった。

 

 

よくもまあ、ハローワークに未経験者大歓迎と書けたもんだ。
ハローワークは、糞ったれ企業しか扱わないな。

 

37 :111 /24(土) 22:23:50.31 ID:Jw+br6zA0

 

 

(マジか?)

 

 

強制終了にして、再度チャレンジする。
フリーズ。

 

 

(おいおい)

 

 

何度やってもフリーズする。どうなってんだ?
パソコンのスペックを調べる。
メモリ128MB
俺は目を疑った。さすがにこれは自力じゃ無理だ。

 

 

「リーダー、すいません」
「おまえ、人の話聞いてる?」
「え?」
「仕事が一段落ついたら呼ぶ。それまで来るなって言っただろ」
「いえ、仕事に支障をきたすことが起きたので報告しに来たんです」
「なんだほうれんそうか。どうした」

 

 

ほうれんそうなら良いらしい。

 

38 :11 /24(土) 22:24:32.45 ID:pFWVEUda0

 

>メモリ128MB

 

ミカン吹いた

 

41 :11 /24(土) 22:25:23.82 ID:SSvj9Lf0O

 

IT土方とは良く言われるけど

 

普通の土方の方がマシだな・・・

 

42 :11 /24(土) 22:25:30.33 ID:1cO/Mapg0

 

よくわからんが大変なのはわかった

 

47 :11 /24(土) 22:28:41.74 ID:iILG0dZM0

 

普通、新入社員の研修があるんじゃないの?

 

ブラックだと無いのか・・・

 

48 :111 /24(土) 22:28:43.53 ID:Jw+br6zA0

 

プログラムが分からない人にも理解してもらえるように噛み砕いて書いてるんだが
それでもわからなかったら質問してくれ。
心優しい人が解説してくれるに違いない。

 

 

「パソコンのスペックが低すぎて、デバッグができないんです」
「おまえ、色んなもの起動してるだろ」
「え、はい・・・。そりゃ設計書とか見ないと仕事できないですから・・」
「素人か。まず印刷して紙にしろ。そうすればデバッグもできる」
「は、はい」

 

 

何か目の付け所がおかしい。
今時128MBのパソコンなんて、ノートでもないぞ。

 

言われたとおり、設計書を印刷する。
色々と機能停止させて、デバッグ開始だ。

 

 

この時点ですでに5時半。

 

50 :11 /24(土) 22:29:58.01 ID:hhJr3lPT0

 

人間の質が悪い可能性があるところ

 

 

※手っ取り早く言えば、「ハローワークの求人群全部」
※地方紙で毎回募集をしている企業

 

職人関係全部
電気工事士
建築

 

サービス業
製造
清掃

 

53 :11 /24(土) 22:30:52.42 ID:hhJr3lPT0

 

中小企業や零細企業は研修なんてないよ。
初っぱなから、働きに出されるwwwwww

 

 

既卒はかわいそう

 

51 :11 /24(土) 22:30:35.51 ID:ovtcn++O0

 

>>37
128M なのに VB で組む(める)制御系の仕事?
良く分からんな

 

56 :111 /24(土) 22:34:26.69 ID:Jw+br6zA0

 

>>51
すまん、俺も正直わからん。
あのプロジェクト自体が謎すぎた。
今でもわからん。

 

 

デバッグ。ビルドエラー。
何かおかしいらしい。赤い波線の部分に目をやった。

 

 

(ここ俺いじってないぞ・・・)

 

 

とりあえず追いかける。
共通で使用している部分でエラーが起きていた。
つまるところ、先駆者のエラーだ。ド素人の俺にこれはどうにもできん。
・・・リーダーの所にいくか

 

 

「す、すいません」
「なんだ」

 

 

画面に目をやって、全然こっちを向いてくれない

 

61 :11 /24(土) 22:38:35.66 ID:+XGliojI0

 

プログラマなのに、低スペックのPCは自殺行為だろ・・・

 

60 :11 /24(土) 22:37:17.69 ID:OuQJcexf0

 

賃金はどのくらい貰えるの?

 

63 :111 /24(土) 22:39:29.18 ID:Jw+br6zA0

 

>>60
初任給で、手取り18万だったかな

 

「あの・・・ちょっとエラーが出まして」
「エラーはよくあるよ。追いかけて自分で直せ」
「いえ、それが」
「自分で直せないと、今後苦労するぞ」
「そうではなくて」
「仕事の邪魔だよ。俺だって暇じゃないんだぞ」
「・・・はい」

 

 

どうすればいいんだよ

 

70 :11 /24(土) 22:41:20.88 ID:1nZUP/MV0

 

これは鬱になりそうだ

 

75 :111 /24(土) 22:42:40.61 ID:Jw+br6zA0

 

(俺のせいじゃねーよ・・・)

 

 

席に座る。コメントを頼りにプログラムを追っていく。
しかし動作が遅い。

 

F8だっけ、F10だっけ。
Fボタンで、文章(クラスやメソッド)や単語(変数や定数)の定義元まで飛べるんだが
それすらも遅い。タイムロスが激しすぎる。

 

俺はこの時点でイライラしまくりだった。
定時で帰れるとは思わなかったが、残業代無しでこんな理不尽な働きをしないといけないことに怒りが頂点だった

 

新入社員だとこういう人は結構多いんじゃないか。

 

 

「おっせーな・・・」

 

 

とりあえずデバッグの原因は見えてきた。
要するに、Aの数字が1〜5までの範囲なら稼動するが
それが6以上になると動かないという単純すぎるミスだ。

 

77 :11 /24(土) 22:43:31.14 ID:OuQJcexf0

 

なんだかんだで理解できてる>>1は凄いとおもう

 

79 :11 /24(土) 22:45:09.01 ID:YcL6w7vV0

 

これは恐らく
リーダー「よく自分の力だけで全ての問題を解決した!これからは君がリーダーだ!」
と言う流れ

 

80 :11 /24(土) 22:45:49.25 ID:IkfLVHJx0

 

>>79の発言でリーダーは偉い人に見える

 

81 :11 /24(土) 22:45:49.05 ID:gThoIgfW0

 

>>79 ねーよwwwwwwww

 

83 :111 /24(土) 22:47:07.92 ID:Jw+br6zA0

 

こんなのでよく納品したな・・・。
誰だよ、製作者は。

 

 

大体、納品するプログラムモジュールの先頭には、コメントで製造者と製造日が書いてあるので、それを見てみる
リーダーだった。
おめーかよ・・・。

 

 

つーか、マジかよ。おまえが作ったのに、自分で直せとかほざいてたのかよ。
もう俺はさすがに我慢の限界だったので、リーダーの所まで行った。

 

 

「すいません」
「おまえな」
「あのプログラムを先に作った人のエラーで、先に進めないんですけど。
 修正をかけるだけなんじゃないですか?」
「おまえがいじったせいでおかしくなったんじゃないのか」
「いえ、追いかけた所、共通部分でのエラーでした」
「はぁ?誰だよ、あれ作ったやつは。ちゃんと仕事しろよ」

 

 

おめーだ

 

89 :111 /24(土) 22:51:12.71 ID:Jw+br6zA0

 

「コメントを見たところ、リー」
「上原!おまえだろ、ふざけるなよ!!」

 

いや、おめーだよ
上原さんは挙動不審で、いつも「あ、あ、ああ」とか言って会話にならない人だ。
失敗をみんなから押し付けられている・・・。
たぶん人間恐怖症かそういうのを患っていると思う。
ホントに見ててかわいそうになる。

 

ちなみにトイレ行く時、何故かいつもスーツの上着を脱いでいく。
大便だとメガネも外す。

 

上原さんを観察し続けた俺が言うから間違いない。

 

95 :111 /24(土) 22:53:37.17 ID:Jw+br6zA0

 

「え、は、は」
「上原!おまえだろ!!」

 

先輩たちは真顔でPCに向かっていた。いや、誰か反応してあげてよ

 

「は、はい」
「ほらな。あいつはあんま仕事信用できないから」

 

いや、だからお前だろ

 

「いえ、コメントを見る限り、リーダー」

 

 

ここでさっき話しかけてもオールスルーだった井出さんが声をあげた

 

「おーっとここでデバッグ成功!!」

 

 

空気を読む俺

 

「わかりました」

 

 

 

この会社は腐っている・・・。

 

103 :11 /24(土) 22:58:12.96 ID:+RLFXX3U0

 

来年からゲームプログラマーになる俺の胃が限界になってきた

 

99 :11 /24(土) 22:55:39.81 ID:6NWrD+qy0

 

それネタだろ?
井出の立場何なんだよwww

 

108 :111 /24(土) 22:59:00.98 ID:Jw+br6zA0

 

>>99
いやマジだ。井出さんはリーダーと仲が良い。
リーダーが喫煙室に行くと、井出さんも行く。
その逆も然りな関係。

 

 

「上原!真面目に仕事してるのか?新入社員の1に示しがつかんぞ」

 

あわわ・・・という顔で上原さんが頷いている。8回ぐらい

 

「よし、もうこの件はいい。1も気をつけろよ」

 

いやだから貴様だ

 

「えと、リーダーも気をつけてくださいねw」

 

和やかに言う俺。すると井出さんが

 

 

「おーっとさらに成功!!!」

 

 

わかったよ・・・。もうわかったから・・・。
席に戻り、このクソ単純なバグを取る。
修正作業の再開だ。

 

 

時間は19時にさしかかろうとしていた。

 

のある長編の話をまとめています♪
?
ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない その2

 

その1

 

116 :111 /24(土) 23:02:51.37 ID:Jw+br6zA0

 

あれから何度かデバッグ・フリーズを繰り返し、とりあえずは修正点については完成した。

 

次は新規作成部分だが・・・

 

時間はすでに21時になっていた。
このままじゃホントに23時どころか、朝になってしまうぞ。
言っておくが、この日は入社日だ。

 

入社日は万国共通で定時で帰れるものだと思っていたが・・・。

 

しかし異常なのが、誰一人として帰ろうとしない。
いや、帰れない。
中にはジュースのペットボトルを5本ぐらい横に並べて、耐久戦に臨む人も居た。

 

俺は昼飯も食わずに没頭してたので、さすがに腹が減ってきた。
飯ぐらい食ってもいいよな・・・

 

121 :11 /24(土) 23:04:50.96 ID:ZoREpI1p0

 

入社日なのに上原さんの行動見すぎだろw
それは愛なのか?

 

123 :111 /24(土) 23:06:40.42 ID:Jw+br6zA0

 

>>121
上原さんのデータは入社日から現在までの統計なんだぜ

 

あれから何度かデバッグ・フリーズを繰り返し、とりあえずは修正点については完成した。
次は新規作成部分だが・・・
時間はすでに21時になっていた。
このままじゃホントに23時どころか、朝になってしまうぞ。
言っておくが、この日は入社日だ。入社日は万国共通で定時で帰れるものだと思っていたが・・・。
しかし異常なのが、誰一人として帰ろうとしない。
いや、帰れない。中にはジュースのペットボトルを5本ぐらい横に並べて、耐久戦に臨む人も居た。
俺は昼飯も食わずに没頭してたので、さすがに腹が減ってきた。
飯ぐらい食ってもいいよな・・・。

 

137 :111 /24(土) 23:09:44.44 ID:Jw+br6zA0

 

自作してきた弁当を取り出すと
「おい、今昼休憩じゃないぞ」
「いえ、お腹がすいたので・・・」
「昼は?」
「食べてないです」
「それはお前が悪い」

 

はぁ?

 

「いえ、忙しすぎて食べれなかったんです」
「まぁ今日は入社日だから良いわ。明日からは束の間の昼休憩を大事にしろよ」

 

何とか許可を得た俺は弁当を食いながら新規作成・・・。
だが、修正部分ですら手こずっていた俺に、新規作成など出来るはずもない。
設計書を見ても全然わからん。
時間は22時を回っている。目の疲れも限界点突破。
だが誰も帰らない。

 

異常だ・・・異常すぎる・・・。

 

 

俺は帰宅を願い出ることにした。

 

140 :11 /24(土) 23:11:00.73 ID:auI0ntZ00

 

まぁ、22時で誰も帰らないってのは、他の職種でも良くあること

 

142 :11 /24(土) 23:11:13.61 ID:+XGliojI0

 

>>137
>>時間は22時を回っている。目の疲れも限界点突破。
>>だが誰も帰らない。
>>異常だ・・・異常すぎる・・・。

 

 

 

普通だと思うおれは感覚がマヒしてるのかな(´∀` ;)

 

147 :111 /24(土) 23:12:49.02 ID:Jw+br6zA0

 

>>140,>>142
だよな・・・。新人時代の俺は甘かったよ。
今じゃむしろ早いぐらいだ。

 

「すいません」
「またか。なんだ」
「帰らせて欲しいのですが・・・」
「仕事終わったのか?」
「修正分に関しては終わりました」
「あぁじゃあいいよ。明日、新規作成の部分を完成させれば良いから」
「はい。おつかれさまでした」

 

 

やっぱ俺が担当なのか。無理だぞ・・・。
設計書そのものが理解できないんだから・・・。

 

俺は半分、廃人状態で電車に揺られながら帰宅した。

 

 

すまん、ここまで書いて思ったが、俺の過去の部分について全く触れてなかった。
新卒だったら、誰が好き好んでこんな会社に入るかって話だからな。

 

 

キリが良いので、過去について触れたいんだが、それともこっち書いた方がいいかね・・・。

 

153 :11 /24(土) 23:14:13.03 ID:xvfQYyzX0

 

>>147
過去よろしく。後スペックも

 

156 :11 /24(土) 23:14:35.90 ID:+XGliojI0

 

>>147
プログラマを志望した理由のほうが気になります( ´・ω・`)

 

165 :111 /24(土) 23:17:25.95 ID:Jw+br6zA0

 

過去から書かせてくれ。すまない。
プログラマのブラックの事を伝えたかったのだが。

 

 

一気に話がさかのぼり、学生時代に戻る。
学生時代のことをダラダラ書いてたら、肝心のブラック部分がおろそかになるので
あまり詳しくは書かないこととしよう。

 

要するに、典型的ないじめられっ子で、中学まではちまちま登校拒否をしていた。
高校もクソバカな所しか入れず、同じようにいじめられていた。
そんな俺の唯一の友達がパソコンと、オタのケンジだった。

 

 

 

あーここから少し長いかもしれない。すまん・・・

 

174 :11 /24(土) 23:19:54.28 ID:FUO1Xgag0

 

こういうのって信じられない
俺もSEで忙しいときは確かに終電とか徹夜もある。
でも峠越えりゃ何ヶ月か定時〜20時帰りが続く。
残業代も出るしな。同じ職場のPGも似たようなもん。
周りでもこんなひどいのは聞いたことないよ。

 

187 :11 /24(土) 23:22:41.69 ID:6NWrD+qy0

 

>>174
勤める会社によってピンキリらしい
残業は標準装備としてもその後の待遇が会社によってガラッと違う
そういうとこに勤めれて自分は本当に幸せだったと考えとけばおkよ

 

178 :111 /24(土) 23:20:42.59 ID:Jw+br6zA0

 

ケンジはプログラミングのオタで、中学校の頃からマイコン部とかいうマニアックな部に入っていた。

 

そこでは上であがってるが、ベーシック言語でプログラムを作るというのが活動内容なんだ。
ベーシック言語については、誰か解説してくれねーかな・・・。

 

C言語の基礎だから、これをやっておけば割と基礎が身につく。
俺はそのケンジからパソコンという機械を教えてもらった。
当時はまだネットの知名度がそこまで高くなかった時代だ。
いや、高かったのかな。
中学生は少なくとも知らない奴が多かったな。

 

 

スペックとしては
27♂
童貞・彼女無し

 

こんなもんでいい?

 

190 :11 /24(土) 23:23:41.09 ID:+XGliojI0

 

>>178
なつかしーオレもベーシックでゲーム作ってたわ。
ベーシックは簡単なプログラムができる高級言語ね。
少ない行数で簡単に処理が楽しめる。
で、C言語は行数が多いけど、その分複雑な処理ができるのん。
オレは高2くらいでC言語にうつって3Dゲー作れた。ベーシックじゃできねぇからな。

 

194 :111 /24(土) 23:25:29.40 ID:Jw+br6zA0

 

んで、同じようにベーシック言語で色々といじくり回してた。
しかしだね。
ベーシック言語なんて10KBとか30KBとか、そんな世界だぜ。

 

んで、その限られたバイト数でやれることなんてたかが知れてる。
俺は全く面白くなくて、むしろペイントで絵とか描いてた。
もちろん家で。すると親が

 

「あんたそれじゃ引きこもりだよ。学校行って友達と遊びなさい」

 

元気な母ちゃんと

 

「まぁまぁ。やりたいようにやらせてあげなさい」

 

温厚な父ちゃんのやり取りを毎日のように聞いていた。
しかし俺はひきこもりまくりんぐの俺は、高校を中退。というか進学できなかった。

 

そしてN E E T

 

 

 

これがブラック会社に入ってしまった理由の一つだ

 

207 :111 /24(土) 23:29:14.06 ID:Jw+br6zA0

 

まさに暗黒時代であるNEET。
しかし働く気なんて全く起きない。
一方のケンジは大学に進学。
時間はどんどんと過ぎていく。

 

伸びるNEET期間。
無駄に上がる絵のスキル。
そして発見した2ちゃん。
そんな俺が26歳の時である。つまり去年。

 

 

「あんた早く働いてよ」
「彼女作って結婚して」
「早く親を安心させて」

 

 

が口癖だった母ちゃんが死んでしまった。
自転車が横転、車に引かれて即死だった

 

215 :11 /24(土) 23:30:12.52 ID:lXO/tSbA0

 

一気に鬱になった

 

221 :11 /24(土) 23:31:19.34 ID:tjJODihn0

 

聴いてるほうは重いかもしれんが、
よっぽど話している当人のほうがつらいはずだ

 

 

静かに聴こうじゃまいか

 

237 :111 /24(土) 23:34:08.43 ID:Jw+br6zA0

 

俺は大泣きに泣いた。
いつも口うるさかった母ちゃんが急にコロリと死んだ。
まさに絶望だったな。そして父ちゃんが俺にこう言った。

 

「なぁ1・・・。わしは母さんみたいに、強く言えないけどな・・・」

 

 

わかってるよ父ちゃん・・・。わかってる

 

 

「働いてくれないか・・・」

 

 

わかってる

 

「でないと、死んだ母さん報われないよ・・・。社会を経験して欲しいんだ・・・」

 

 

かなりはしょったが、これが働くことになった最大の動機だ。

 

んで、俺は働くというわけで、求人を探すことした。

 

 

今涙でぐしょぐしょだから、書くのが遅くなるかもしれん。

 

 

すまんな

 

253 :11 /24(土) 23:36:26.18 ID:audGnGnM0

 

人生をある程度マシに生きるために必要なこと

 

積み重ねの努力

 

259 :11 /24(土) 23:39:17.94 ID:u867PqJaO

 

>>253
確かに部活、勉強、何かしら努力してればマシな暮らしは出来るな

 

267 :111 /24(土) 23:40:44.93 ID:Jw+br6zA0

 

しかし最終学歴が中卒で、10年前後NEETやってた俺だ。

 

はっきり言って、全く話にならない。
しかも俺の性格だから、営業みたいな仕事は向いてないから、さらに範囲が狭い。

 

俺はこのままではどうにもならないという事で、
10月にある基本情報技術者試験の勉強を始めた。

 

 

去年の5月の話だ。
5ヶ月で取れるのか。取れるわけがないと誰もが言うだろうな。
けど、俺はケンジにお願いして基礎から全てを教わった。

 

それこそ今の就業時間に劣るとも勝らないほどの勉強時間だ。
その結果、俺は合格点ギリギリで一発合格を果たした。
国家資格だから、これでただの中卒というわけじゃなくなった。

 

しかし現実は甘くなかった。やっぱ落ちるわけだよ。
9割の会社はどこも書類選考で落とす。
当たり前だけどな。そんな俺に父ちゃんは

 

「おまえはよく頑張ったよ。これなら母さんも納得するよ」

 

と言ってくれてたが、俺はダメだった。
とにかく頑張り続けた。

 

275 :11 /24(土) 23:42:38.11 ID:iILG0dZM0

 

>>267
基本情報取ったならけっこう努力したんだね
簡単と言う人もいるだろうけど、難しいよね

 

278 :11 /24(土) 23:43:05.33 ID:D5Jz7/rA0

 

国家資格とるのはいいけど大検か高校卒業認定もらえよ

 

286 :11 /24(土) 23:44:52.16 ID:S22eQ51t0

 

気を悪くしたらすまんが、ニートの将来が暗いのは自分が積み重ねてきた負債のせいだろう?
自己責任もいいところじゃないのか?
同情の余地はないと思うんだが

 

297 :111 /24(土) 23:46:51.80 ID:Jw+br6zA0

 

>>278,>>286
正論すぎる・・・。
結局、自分が全て悪い。大検に関しては時間と金の問題があったから難しかったかな・・・。

 

 

そして、やっと今の会社の面接に行き着いた。
小さい会社で、社員も15人ぐらいしか居ない。

 

社長は良い人で、途中で泣いてしまった俺に
「絶対取ってやる。安心しろ。帰って天国のお母さんに報告しなさい」
と言ってくれた。

 

 

以上が、入社日の時点でやめなかった理由だ。

 

しかし地獄だった。

 

 

母ちゃんには悪いが、辛すぎるよ。ホントに・・・。
さて、本題に戻るか。

 

309 :11 /24(土) 23:49:38.10 ID:tjJODihn0

 

そこの社長さんはいい人なんだな。 それだけすごい救いかも。
ただ社長さんが制御できてないってとこが痛いな

 

 

今の>>1はNEETだった自分を悔いて、がんばってるんだから
NEETを肯定するわけじゃないけど、変われた自分に自信をもっていいと思うぞ!

 

 

313 :111 /24(土) 23:50:06.90 ID:Jw+br6zA0

 

帰宅した俺は、社会の荒波にもまれ憔悴しきっていた。

 

「どうだった、会社は」
「最高だったよ。上司たちも凄い優しい人ばっかだし。俺がんばれると思う」
「そうかそうか」

 

 

そして自室に戻る。
現在23時。とりあえず寝たいが、風呂に入らなければならない。

 

あと明日の新規作成部分について、少しでも予習しなければならない。
ちなみに、紙媒体は情報漏えいの関係で持って帰れないことになっている。
これは仕事も同様
プログラマの帰れない理由はここにある。

 

自社作成の場合もそうだし、他社に行く場合だとさらに厳しい。

 

318 :11 /24(土) 23:50:17.36 ID:poq9rL0s0

 

社長は良い人で、途中で泣いてしまった俺に

 

 

「絶対取ってやる。安心しろ。帰って天国のお母さんに報告しなさい
 (よっしゃwwww世間知らずのソルジャーゲットーwwwwwwwwwww)」

 

330 :111 /24(土) 23:54:09.94 ID:Jw+br6zA0

 

すでにいくつか出ているが、社長の発言の意はまさに
企業戦士ゲットだったのではないかと思う。

 

 

自分でメモった内容を40分ほど予習してみるも、やはり意味がわからない。
今日教えてくれそうになった先輩に聞いてみることにし、俺は眠りについた。

 

 

そして翌日。
出勤する。開発室に入った瞬間
パチパチ!!一斉に拍手が。
俺は今日誕生日じゃないぞ

 

 

「二日目来たね!!」
「やったよ!!」

 

 

 

 

く、腐っている・・・。

 

340 :11 /24(土) 23:56:43.62 ID:p1IsUTHI0

 

>>330

 

その瞬間回れ右して帰ればいいのに

 

351 :111 /24(土) 23:58:40.66 ID:Jw+br6zA0

 

「おはようございます・・・」

 

席につき、パソコン起動。しかし遅い。OSも98だというのも物悲しくなってくる。
ちなみにリーダーはまだ来ていない。

 

とりあえず設計書を持って、例の先輩のところに行ってみた。
そこでちまちま教えてもらう。
この人は本当に良い人だ。

 

うちの会社は出勤・退勤の管理を掲示板で行っているのだが、この人の昨日の退社時間は3時20分となっていた。
おぞましい時間だ。

 

俺はどうにか内容を理解し、自分の席へと戻った。
リーダーがやってきた。

 

 

「おはよう。おまえ来たのか」
コイツも言うか

 

374 :111 /25(日) 00:02:52.01 ID:xZORwDLZ0

 

「はい、それは当然・・・」
「根性あるな。で、新規作成できそうか」
「わからないです。とりあえずやってみます」

 

すると周囲から「おぉ・・・」という声が。

 

こいつらの次元が低すぎる。

 

 

「おい、上原」
「は、は、は、は」
「おまえ、このプロジェクト担当してただろ。1がわからなかったら教えてやれ」

 

 

いやお前が担当者だ。

 

 

「は、は、は」
「ということだから、上原に聞け」

 

 

何はともあれ、今日は助っ人がつくらしい。
この会社、初日を最強に厳しくして、次の日からは少し緩めになるのか・・・?

 

392 :111 /25(日) 00:07:23.77 ID:xZORwDLZ0

 

おし、さっき先輩に聞いたメモを見てと。
まだ分からないところがあるが、出来ないことはなさそうだ。
新しくクラスを作って、メソッドを組み込んで・・・。

 

ここはループさせればいいな。

 

この調子で俺はプログラムを組み込んでいく。
しかし問題発生。
SQL文の条件が当てはまらない。設計書のミスか?
上原さんに聞きに行く

 

 

「すいません、上原さん」
「は、は、はは、は」

 

まだか

 

「は、はい」

 

よし

 

 

「ここのところなんですけど・・・」

 

説明する

 

「え、えと、そ、そそそそ、そこ」

 

 

ダメだこいつ。はやくなんとかしないと

 

416 :111 /25(日) 00:13:21.97 ID:xZORwDLZ0

 

「で、でででで、ですから、えっと、え、え、え、えっと」

 

説明に10分ぐらいかかる。
はっきり言って全然わかんないが、ここで聞いても時間が勿体無い

 

「わかりました、ありがとうございます」

 

 

切り上げた。自分で考えないとダメだ。
ここで他者をアテにするということは、自滅するも同然だ。
何とも腐った会社。
ブラックすぎる。ていうか、マジで残業代払えよ!

 

しかしわからん。設計書の条件自体がすでにおかしい。記憶によると

 

 

時間A >= 時間Bが必須条件のはずなのに
その派生である次の条件が、時間A < 時間Bだったはず

 

つまり、どうやっても派生条件にいかんのだ。
リーダーのクソ野郎。

 

 

俺は席を立ち、リーダーのとこへ向かった。

 

434 :11 /25(日) 00:17:45.25 ID:KfVoyHyh0

 

>>416
Cをかじった事しかない俺にも分かる矛盾だなw

 

437 :111 /25(日) 00:18:44.05 ID:xZORwDLZ0

 

「あの、すいません」
「ん?上原に聞け」

 

 

いや、設計書の作者はあんただ。

 

 

「いや・・・」
「おまえ、俺がどんだけ忙しいか知らないだろ」
「ですが、教えてもらえないと」
「だから上原に聞けよ!!俺はお前のお守りじゃないんだぞ!」

 

怒るのかよ。すかさず井出さんが

 

 

「スペシウム光線!」

 

 

わかったよ。口答えしませんから。

 

 

「わかりました。すいません」
「上原に聞けよ」

 

 

わかったって。
設計書をいじくるのはマズイので、我慢して上原さんの所へ向かうことに。
この時、すでに12時前。

 

昼ごはんタイムまであと少ししかないのを俺は気付いていなかった。

 

444 :11 /25(日) 00:19:55.92 ID:LnRS6lxJ0

 

リーダーと井出は本当に腐敗してるな

 

なんなんだそのコンビはwww

 

458 :11 /25(日) 00:22:37.92 ID:GfuFzR4UO

 

>>444
井出はいいやつに思える。
リーダー基地外だからリーダーを抑えながら和まして被害を
大きくしないようにしてるように見える。

 

>>458
素晴らしい指摘だ。まさにその通りだよ。
井出さんが居なかったら、上原さんとリーダーのやり取りは殺伐し過ぎてて聞いちゃおれん
だが、井出さんは部下に仕事を教えないから、これが難ではある・・・。

 

無論、最悪はリーダーだ。

 

460 :11 /25(日) 00:23:15.34 ID:rwSq3OYX0

 

恐ろしくブラックだな・・・
おれの会社がおこちゃまに見えるぜ・・・・
おれもプログラマじゃないけど技術職だしな
最低でも22時には帰るもんな・・・
昼休みもあるし、定時過ぎたらあとはサービスだから自分の休憩したいときにタバコ吸えるし
のどかわいたりしたら近くのコンビニに勝手に行っておにぎりとかジュース買ったりしてるしな
それでも、うちらの課(技術職連中)は残業がどーのとか、こんなんじゃ万年人手不足はあたりまえだろ
とかぶーすか言ってるんだけどな
しかし、おれはプログラマに憧れてたんだけどな・・

 

459 :111 /25(日) 00:23:11.59 ID:xZORwDLZ0

 

上原さんに聞くとき、注意点がいくつかある。
その中で一番重要なのが、質問内容を漠然としすぎないこと。
俺はそれを踏まえて聞いた。

 

「このSQL文なんですけど、この条件だと次の条件にどうやっても行かないんですよ
 私の予想だと、上の条件か下の条件のどっちかが不等号逆だと思うんですが」
「そ、そそそそそそ、そう」

 

まだか

 

 

「そそそそ、そうですね。ちょ、ちょちょ、っと」

 

 

まだか

 

「お、お、お、おまちくだ、さささ、い」

 

 

そう言って設計書を眺める上原さん。

 

「あ、あ、あ、あ、あ」
「わ、わ、わわか」

 

 

わかったか。さぁどっちだ。

 

「わか、わかりま、ま、せん」

 

 

orz
そりゃねーよ!!!

 

482 :111 /25(日) 00:27:55.22 ID:xZORwDLZ0

 

「ありがとうございました・・・」

 

自分の席に戻る俺。時計を見る。12時55分。
やべぇ。昼飯食べないと。
急いで弁当を開ける。神速で食べる俺。
しかし

 

「休憩終わり。がんばるぞ」

 

 

く、食えなかった。ちくしょう上原・・・!
いや違う。悪いのはリーダーだ。
上原さんは被害者なんだ。

 

設計書について聞きに行かなければ。

 

483 :11 /25(日) 00:28:16.06 ID:OOYieyaC0

 

>>1が取れる最善の策は、リーダーの軍門に下って
会社が潰れるまでなるべく穏便に給料を貰い続けることだな
言っちゃ悪いけどあと3年持たないよその会社

 

ちなみに「リーダーの軍門に下る」っていうのは簡単に言うと
リーダー達と一緒に上原さんをいじめる側に回れってことだ

 

528 :111 /25(日) 00:37:31.31 ID:xZORwDLZ0

 

>>483
いや、それはダメだ。かわいそすぎる。
俺は中立の立場を守るぜ。

 

人間として大切な何かを失ったら母ちゃんも悲しむ。

 

495 :11 /25(日) 00:31:30.19 ID:7QsPVQKh0

 

なんかうちの会社が良く思えてきたわ
資格なんてLPIのLevel1しか無いのに
専卒3年目で450万近くもらえてるし

 

497 :111 /25(日) 00:31:43.16 ID:xZORwDLZ0

 

「あの、すいません」
「だから上原に聞けって言ってるだろ!おまえある?」
「聞きましたが、上原さんもご存知ないみたいです」
「おい上原ぁ!!」

 

始まったよ。
もう慣れたが、この頃は結構怖い

 

 

「は、は、は、は」
「おまえが作ったんだろうが!なんで知らないんだ!仕事なめてるだろ!」

 

それはおまえだ

 

 

「す、す、すすい、ま」
「今回は俺が見てやるけど、次やったらおまえ給料差し引くぞ」
「す、す」

 

その瞬間

 

「すっしくいねぇ〜!」

 

井出さんわかったから。
設計書をリーダーに見てもらう。するとバツが悪そうに

 

「あー・・・派生条件がおかしい。修正しといて」

 

 

いや謝れよ

 

528 :111 /25(日) 00:37:31.31 ID:xZORwDLZ0

 

「どうもありがとうございました」
「おう。お前もよく気付いたな。使えるぞ」

 

おまえに言われても嬉しくない
ん?熱い視線を感じる。上原さんが俺を凝視していた。

 

 

「あ、気にしないでください。もう大丈夫になったので」
「ど、どどどう」
「上原ぁ!!仕事に戻れ!!!」
「ははは、は」

 

 

井出さんも今回ばかりはダメなのか。
真顔でPCに向かっている。

 

俺は席に戻り、SQL文を修正。例外処理も組み込む。
6割がた完成した。この時点で5時過ぎ。
あと4割だ。

 

554 :111 /25(日) 00:43:20.71 ID:xZORwDLZ0

 

しかしここで大問題が発生した。
なんと、設計書がここで途切れているのだ。
こんな事有り得るのか。
普通の業務は、設計書作成→製造・デバッグ→テストという工程で進むのだが
なんと一番最初の設計書作成が欠落していた。

 

リーダーの仕事のテキトーさに俺は絶望した。

 

上原さんに聞くのがお門違いなので、リーダーの元へと行く

 

 

「すいません」
「なんだよ」

 

機嫌が悪いようだ

 

 

「設計書のことなんですが」
「上原に聞け」
「いえ、設計書が途中で無くなってます」

 

 

紙面で見せる。するとリーダーの顔が鬼の形相に。

 

 

「おい上原ぁ!!!!!!!!!!!!」

 

 

なんでもかんでも上原さんだな、こいつは・・・

 

579 :11 /25(日) 00:49:19.69 ID:Kvr3lKenO

 

日本全国知らない人がいないような超大企業でも、
>>1と同じような職場はある。
どこかは怖くて言えないが…。
結局、どんな仕事をやるかっていうより、
どんな仲間と仕事をやるかってことなんだよな。
仕事なんて結局メシ食う手段だから。

 

578 :111 /25(日) 00:49:08.30 ID:xZORwDLZ0

 

「はははははは、はい」
「おまえ設計書作ってねーだろ!?」
「え、え、え、ええええ、えと」

 

 

リーダーの声がデカすぎて、みんな何事かとこちらを見ている。
俺はこんなことより、設計書がどうなるか不安でしょうがない。
早く仕上げてくれないと、死亡フラグが成立する。

 

「設計書作ってねーだろって聞いてんだよ、答えろよ!」

 

 

紙面を投げつける。上原さんの顔に直撃し、メガネがズレた。

 

 

「す、すすすすす、すい、すい、すいま」
「おまえいい加減にしろよ!プロジェクトどうすんだよ!」
「すいま、すいま」
「睡魔じゃねぇ!!20分で仕上げろ!!できなかったらお前が1の仕事を肩代わりしろよ!」

 

 

リーダーガン切れ。
あらかじめいうと、設計書の担当はリーダーだ。
スケジュール表で確認した。

 

上原さんも上原さんで、すいませんなんて言うからややこしくなるんだ。
で、俺の予定はどうなるんだ・・・

 

589 :11 /25(日) 00:51:03.33 ID:rwSq3OYX0

 

だいたい、労働時間の取締りとかゆるすぎるだろ・・・と
税金に関したら鬼のようにあれこれ税金使って調べまくるくせによ・・・

 

そして、労働基準法に違反がばれてもたいした罪じゃないし
脱税だと逮捕とかあるのにな
なめてんのかこの国の政治家は・・・税金とかだと血眼になってあれこれ探るくせによ・・・・

 

604 :111 /25(日) 00:54:00.11 ID:xZORwDLZ0

 

「おい、1」
「はい」
「おまえもう帰っていいよ。上原に全部やらせるから」
「え、でもそれは」

 

ここであの優しい先輩、藤田さんが登場

 

「リーダー、上原さんはすでに4つもプロジェクトを抱えていますし
 ここでさらに仕事を上乗せすると、回りきらないんじゃないでしょうか」

 

 

実質、この人がリーダーみたいなもんだ。
ブラック会社が何とか回っている理由は、こういう所にある。

 

井出さんのようなタイプ、藤田さん、上原さん、リーダー・・・。
全ての人たちが上手く噛み合っているのだ。

 

「それもそうだな。
 まぁとりあえず設計書だけは上原にやらすから、お前はもう帰れ。
 居ても意味ないから」
「はい」

 

こうして2日目は残業一時間ちょいで帰れた。

 

628 :111 /25(日) 00:58:59.40 ID:xZORwDLZ0

 

帰宅。父ちゃんが

 

「今日は早かったな! 褒められて帰ってきたんだろw」

 

父ちゃんは定年退職しており、俺が帰ってくると嬉しそうに話しかけてくる。

 

「褒められまくったよ。凄い楽しい」

 

おまえらだってこう答えるだろ?

 

 

「そうかそうかw 母さんも喜ぶだろうなぁw」

 

とりあえずはこんなもんか・・・。
さて、俺はこれからどうなるか・・・。

 

自室に戻る。
VBは設計書待ちだから、その間にC♯の方をやれって来るだろうと予想ができた。

 

会社から参考書をかっぱらって来たので、構文や変数定義などの基本事項を抑える。

 

明日はどうなる・・・。
俺は眠りについた。

 

 

そして翌日。

 

 

639 :11 /25(日) 01:00:24.28 ID:27GPWaOY0

 

やっぱり職場のリーダーって大切だよな
今キッチンでバイトしてるんだがそこの料理長が凄く良い人なんだ
もう60近い職人さんなんだけど
今就活もしてるんだが将来こういう人のもとで働きたいと思う

 

653 :11 /25(日) 01:02:30.82 ID:4kCl4837O

 

>>639
リーダーというか、職場の雰囲気ってホンットーに大事だと思う。
雰囲気よけりゃちょっとぐらいきつくても余裕でやってける。

 

662 :111 /25(日) 01:03:39.59 ID:xZORwDLZ0

 

「おはようございま・・・」

 

う!俺は一瞬、体が止まった。
目線の先では、上原さんが死にそうになりながらキーボードを叩いていた。
何かヨダレ垂らしながらメガネもズレている。一睡もしてないのか。

 

「ちょ・・・上原さん大丈」

 

 

藤田さんが目で合図してきた。声をかけるなということか。
了解。と軽く頷いて席につく。

 

「井出さん、すいません。聞きたいことが」
「今日は朝から絶好調だぜ」
「すいません、井出さん」
「っしゃ、バグ一個潰した」

 

 

ダメだこいつ。リーダー以外とコミュニケーションを取ろうとしない。
とりあえず、設計書が出来たか確認しないと・・・。
俺は上原さんの方へ向かった。

 

674 :11 /25(日) 01:05:29.67 ID:de/zSbyt0

 

上原さん・・・かわいそすぎるよ・・・本当に・・・本当に・・・

 

675 :11 /25(日) 01:05:52.65 ID:vYD1kNwW0

 

それこそ「上原さんのライフはもう0よ」状態じゃん

 

663 :11 /25(日) 01:03:41.08 ID:DD64/EBd0

 

ゲームを制作するためのプログラムと
業務用のソフトウェアとかのプログラムって何が違うの?

 

と、追いついた専門学校生が聞いてみる。

 

695 :111 /25(日) 01:10:51.08 ID:xZORwDLZ0

 

>>663
ゲーム系はやったことないから知らないけど、業務系はHTMLとかも含む場合があるというか、その方が多い。
ちょうどこの2ちゃんだって、リンク先をクリックすると指定の位置に飛ぶよな。
これにさらにプログラムを内部で組んでる感じだ。
ゲーム系は概念がもう少し複雑なんじゃないかな。知らんけど。

 

 

上原さんに声をかけようとしたが、俺の気配に気付いてないのか、一心不乱にキーボードを叩いていた。
というか、何故か半角カタカナで打っていた。
それ読みにくいですよ、上原さん・・・

 

すると藤田さんが

 

「上原ぁ!!」
「は、はははは、は」
「1くんが呼んでますよ」
「あ、あ、あ、あ、お、おはよ、おはよう、ちわ」

 

 

ダメだこいつ。はやく寝かせないと

 

709 :11 /25(日) 01:13:31.87 ID:oL5eqRyW0

 

俺が昔働いてた所は9時から23時までの14時間中、10分程度しか座る事が許されなかった。
足が腫れてしばらく立てなくなっちまったから辞めたけど、同じ立仕事の美容師やってる友人に聞いたら慣れればなんとかなるって言われた。
どんな環境であれ我慢して続けた奴が偉くなれるのかな。

 

729 :111 /25(日) 01:16:37.01 ID:xZORwDLZ0

 

「設計書、できましたか?」
「い、い、い、いえ、は、はい、い」

 

会話になっていない。
それはそうだ。難問の数学を1日中解いて書き上げてたようなもんだからな。
頭もそりゃ死ぬ。

 

「わかりました。ありがとうございます」
「1くん、ちょっと」

 

藤田さんに呼ばれた。

 

「設計書できてないみたいだから、今日は別の作業しなさい。
 リーダーには私からも言っておくから」

 

 

ありがとう、藤田さん。
やはりC♯の予習をしていてよかった。
概念は他の言語とほとんど一緒だから、どうにかなるだろう。

 

742 :11 /25(日) 01:20:00.44 ID:ujkrihq10

 

このスレ見てたらなんか自分の職場が天国に思えてくる・・・

 

710 :11 /25(日) 01:13:35.17 ID:6WVRYHkR0

 

>>1素朴な質問なんだけど、井出さんとか上原さん藤田さんとか仮名だよね?
取引先の会社の人の名前とシンクロなんだが。

 

>>710
仮名です。安心してくれ

 

751 :111 /25(日) 01:22:14.96 ID:xZORwDLZ0

 

設計書を見てみる。
どうやらこれは最後までやっているらしい。

 

リーダーの基準がよくわからんな・・・。

 

しかし画面系の処理なので、画面の作成から入らないといけない。
これは思ったよりも時間がかかりそうだ。
俺はHTMLの経験がない。
リーダーがほうれんそうとか言ってたな。
と思ってたらリーダーが来た。

 

「おはようございます」
「リーダーおはヨーグルト!!」

 

 

上原さん挨拶無し

 

「おい上原ぁ!!」

 

 

またかよ

 

737 :11 /25(日) 01:19:08.34 ID:nU42e+Fy0

 

工学系学生だけど1の吸収力はすげーとおもうわ
卒研に習った言語しか用いない俺にプログラムはむいてねーわ

 

>>737
言語が一つ使えれば、後は一気に吸収が良くなる。
JAVAは人を選ぶらしいが、そんなに悩むことじゃない。

 

740 :11 /25(日) 01:19:32.34 ID:+hpcl69d0

 

>>1は月何回休みだ?週1くらいか?

 

>>740 休みは2回とかそんなもん。けどもう少し増えそうだ。

 

754 :11 /25(日) 01:23:08.84 ID:eQjyy5KS0

 

>>751 おはヨーグルトって発言したやつ誰だよ、らっきょか?www

 

779 :111 /25(日) 01:27:09.72 ID:xZORwDLZ0

 

ヨーグルトは井出さんです。

 

「おまえ上司が出社したのに挨拶もできんのか!!」

 

上原さんはきょどっているが、声が出てない

 

「聞いてんのか!」

 

声が出てない

 

「おい、聞いてんのか!?」
「は、は、は、は」
「朝からお前怒鳴るの疲れるんだよ。次から挨拶しろよ」
「は、は、は」

 

 

この状況で聞きに行くのかよ・・・。

 

786 :11 /25(日) 01:28:25.67 ID:dxEmFqAv0

 

上原「いいえ ケフィアです」

 

811 :111 /25(日) 01:33:07.05 ID:xZORwDLZ0

 

あ、ちなみに明日は仕事も無しで予定もない。

 

 

しかし聞かないと話にならない。

 

「すいません」
「なんだよ」

 

声をかけて思ったが、設計書が出来てないと言ったらまたややこしくなるな

 

「今日は気分を変えようと思って」
「そんなの知らんよ。VBだろ、今は」
「いえ、C♯の方を」
「おまえ、あんま仕事を転回させんほうが良いぞ。頭が回らなくなるから」
「いえ、えっと」
「なんだよ!!!文句あんのか!!」

 

出た

 

「リーダー、VBの方は設計書がまだちょっと・・・なので、C♯の方が」

 

藤田さん、それは

 

「上原ぁ!!!」
「は巨人のエース」

 

 

井出さんありがとう

 

815 :11 /25(日) 01:34:11.81 ID:cB6duzEH0

 

井出さんがジワジワくるwwwww

 

838 :111 /25(日) 01:38:11.42 ID:xZORwDLZ0

 

「井出、お前さっき面白かったぞw」
「どうもw」
「で、なんだっけ?」

 

人の話聞けよ

 

 

「C♯に挑戦しようかなって思うんですけど」
「あぁいいよ。設計書できても、C♯完成させろよ。でないと頭回らんから」
「はい、わかりました。ですが、C♯の方はHTMLの組み込みがありまして」
「で?」
「HTMLの経験が無いので、少し辛いなと・・・」
「知らんよ。辛くてもみんなやってんだから、お前もやれ」
「・・・はい」

 

 

これで残業地獄のフラグが立った。

 

837 :11 /25(日) 01:37:52.69 ID:GfuFzR4UO

 

上原…

 

偽名じゃない?

 

843 :11 /25(日) 01:39:13.04 ID:lxchVA+W0

 

>>837
篠原とか笹原とか田原とか原とか
原があとで付くほかの名前かもしれないだろ!!

 

リーダー「原ァ!!」
らっきょ「は巨人の監督」だったのかもしれん!

 

856 :111 /25(日) 01:42:20.93 ID:xZORwDLZ0

 

>>843
ほぼ正解だ。凄いな。

 

 

席につく。
HTMLは簡単なやつなら作れるが、複雑なものになるとはっきり言って太刀打ちできん。
質問するにしても、リーダーはどうせ

 

「上原に聞け」

 

だからな。参考書でもないとやっとれんぞ。
本棚に向かう。

 

「おい、なにやってんだ」
「いえ、HTMLの参考書がないかなと」
「ないよ。てか、今俺が使ってるから諦めろ」

 

なんなんだこいつは。リーダーのくせに参考書が無いと仕事できんのか(普通?)
つか一冊しかないのな・・・。
席につこうとしたが藤田さんが

 

「社長に相談してみるといいよ。参考書なら会社の経費で買えると思うから」

 

 

おぉ・・・さすが藤田さん

 

870 :111 /25(日) 01:47:48.90 ID:xZORwDLZ0

 

「藤田ぁ、おまえ新人を甘やかしたらダメだろ?
 自力でなんとかする癖つけさせないと、いつまでも甘ったれだぞ」

 

参考書買うだけだろ・・・

 

「ハハハ、すいません。でも、納期間近ですし、効率上げた方がいいじゃないですかw」
「まーそれも」

 

リーダーが井出さんを見る。井出さんがニヤっと笑い

 

「ソーダ割り」

 

リーダー手を叩いて大爆笑。井出さんすごいね、はいはい・・・
俺は社長室に向かった。
ノックする。

 

 

「すいません、社長」
「おー1くんか! どうだ、仕事は。やっぱ辛いか?」

 

 

辛いが

 

「いえ、大丈夫です、それより」

 

社長は良い人なんだが・・・たぶん。

 

877 :11 /25(日) 01:49:32.76 ID:RFKf0q6V0

 

リーダーのスペックが気になる木になる

 

890 :11 /25(日) 01:52:40.85 ID:0O534JP60

 

というか就職してわかったことは

 

自分の好きなことを仕事にしてはいけないって事だ

 

自分の技量の低さ(専門職の先輩と比較して)にショック。
趣味じゃなく仕事としてやるとなると全く楽しくない。
それどころかプライベートでもあまりやらなくなる。

 

896 :111 /25(日) 01:53:35.86 ID:xZORwDLZ0

 

スペック書いた方がいいかね?
要求あるなら俺の開発室の人間だけでいいなら、スペック書いちゃうが。
バレるとまずいから、多少はフィクション混ぜてしまうが・・・それでもいいのなら。

 

「HTMLの勉強が必要なので参考書を買いたいんです。
 藤田さんが、参考書なら会社の経費で買えると」
「おーそうか。勉強熱心だなw ほれ、持ってけ」

 

と財布から諭吉を1枚手渡してきた。多すぎるだろ・・・

 

「おつりは要らないから。おいしいものでも食べなさい」
「あ・・・ありがとうございます・・・」

 

ポケットマネーで万札か・・・。
というわけで、俺は近くに本屋に向かい、HTMLの参考書を買うことにした。
しかし、そこには何故か上原さんが居た。

 

ホントに大丈夫かこの人・・・

 

914 :111 /25(日) 01:58:32.66 ID:xZORwDLZ0

 

「あ、あの・・・上原さん・・・なんでここに?」
「ML・・・ML・・・」

 

聞こえてない。しかしなんだこの呟きは。

 

「上原さん」
「あ、あ、あ、あ、あ、あここここ、こんに」
「こんにちは。なんで本屋に居るんですか?寝た方がいいですよ」
「い、え、え、あ、あ、あの、H、H、H」

 

発言がやばい

 

「H、H」
「HTMLですか?」
「そそそそ、そうです」

 

何で?
まぁいいや。とりあえず俺は本を買い、会社に戻った。すると

 

「おい、1。上原は?」
「本屋に居ましたが」
「あぁ?」

 

 

また何かさせたのかコイツ

 

925 :11 /25(日) 02:00:48.58 ID:rwSq3OYX0

 

上原さんも上原さんなりに後輩を思って
HTMLに関してアドバイスしたかったんだと思った

 

そんな上原さんに萌えた

 

926 :11 /25(日) 02:01:15.60 ID:RFKf0q6V0

 

俺はできれば周りの人のスペックも聞きたい。
面倒だろうし、無理しないで>>1の好きなようにでいいよ

 

 

でも、年齢ぐらいは聞きたいかも

 

945 :111 /25(日) 02:04:51.25 ID:xZORwDLZ0

 

「おまえその本は?」

 

社長のポケットマネーです

 

「会社の経費で買いました」
「はぁ?上原に買ってくるように俺は命じたぞ。しかもこの俺のポケットマネーで」

 

な、なんだって・・・。こいつどこまで腐ってるんだ・・・。

 

「いえ、あの・・・上原さんはパシリじゃ」

 

リーダーの顔が歪んでいくその瞬間

 

 

「パシフィックリーグ!!略してパシリ!!」

 

ごめんね、井出さん
すると上原さんが帰ってきた。

 

「あ、あ、あ、あり、ままま、しし」
「おい上原ぁ!!!お前が遅いから1が買ってきただろうが!金返せよ!!!」

 

もうダメだこいつは。
俺はここで時間をロスするわけにはいかん。

 

早く画面を作らないと今日帰れないぞ

 

936 :11 /25(日) 02:02:34.38 ID:rwSq3OYX0

 

とりあえず、次スレたててくれ
重複したくないからおれはたてない

 

963 :111 /25(日) 02:09:41.33 ID:xZORwDLZ0

 

あー次スレ立ったか。
俺は元気だから次スレに行ってしまうか。
というか、割と長くなるな・・・。文章書くの苦手でホントすまん

 

とりあえずこのスレはスペックだけ書いて落とすか

 

リーダー
年齢:30半ばぐらい
髪型:角刈り・眉毛が濃い
体型:ちょいピザ

 

井出さん
年齢:30前後
髪型:坊主・顔が濃い
体型:普通。少し痩せ気味かも

 

藤田さん
年齢:29
髪型:パーマ。福山雅治みたいな感じ。フツメンではない
体型:痩せ型。

 

上原さん
年齢:30前後
髪型:ワケわからん。ミディアムで寝癖が凄い
体型:痩せ型

 

 

22 :11 /25(日) 02:18:33.73 ID:xZORwDLZ0

 

早速、参考書を見ながらHTMLの作成に取り掛かる俺。
しかしリーダーの声がうるさくて集中できん。
「上原ぁ!!おまえ500円返せよ!」
む?
「すすす、すいま、まま、せ」
500円で参考書は買えないぞ。俺のですら2200円したのに。
まぁいい!とにかくやらないと帰れないんだ!
俺は設計書を見ながら、ちゃくちゃくと画面を作っていく。
C♯だと、VBみたいにボタンやチェックボックスなど、ツールボックスから選べれるのが良い。
素のHTMLよりずっと簡単だ。
よし・・・画面完成まであと少し・・・。時刻は午後4時半だ

 

36 :11 /25(日) 02:20:46.99 ID:pASk8zHrO

 

ところで>>1は話の終着点を何処に持ってく感じなんだい?

 

>>36
みんなも気になっていると思うが、このスレの終点としては、今現在にしようと思っている。
ただ、今みたいに1日、1日書いてくとキリがないから、どこかではしょる。
できるだけコンパクトにするよう努力はするよ。ごめんな・・・。

 

57 :11 /25(日) 02:25:32.05 ID:xZORwDLZ0

 

画面完成まであと少しという所だったが、設計書の画面レイアウトが何かおかしい。

 

俺はもう設計書を信じないことにした。
なんでもかんでも疑ってかからないとダメだ。

 

文章では
チェックボックスを配置 項目IDchkhoge

 

しかし画面レイアウトでは、ラジオボタンになっている。
何がしたいんだリーダー・・・。
俺は席を立った。

 

 

上原さんに行くべきか。リーダーにするべきか。

 

74 :111 /25(日) 02:30:47.28 ID:xZORwDLZ0

 

ちなみにhogeは、この業界だとサンプルネームみたいなもの。
ドラクエでいうエニクスのようなもの。

 

上原さんはもう死ぬ寸前だ。
鼻で息をしてない。口でスーハーやってる。

 

リーダーに聞く。

 

 

「すいません」
「なんだよ」
「設計書がまた違うのですが」
「おい、上原ぁ!!!!!!!!!」

 

またか。もうやめてあげてくれ。
死ぬぞ、上原さん

 

 

「はは、は」
「お前また設計書サボっただろ!?」
「い、い、いえ、い、いまみ、みなお、し」
「それじゃねぇ、これだよ!!」

 

 

もうこのやり取りにも慣れてきていた。
とりあえず、現状を説明する。

 

87 :11 /25(日) 02:34:23.53 ID:AYo0StYc0

 

>>1の母ちゃんが生きていたら
「頑張りすぎないで限界だと思ったら会社辞めなさい」
というと思うぞ。親なら

 

88 :111 /25(日) 02:34:31.19 ID:xZORwDLZ0

 

「あ?これラジオボタンだよ」
「ラジオボタンですか」
「そうだよ。上原、な?」
「はははは、は、いいい」

 

 

目が合ってない。大丈夫か。
とりあえずラジオボタンだということらしい。
ここらで俺は新人という意識が消えつつあった。
まさにソルジャーとして目覚めようとしていた。
この会社の恐ろしいところである。

 

自分よりも明らかに格下の人間を作ることによって、あいつよりマシだ、と思わせるのだ・・・。
なんという洗脳・・・。
しかし俺はコレで画面は完成した。

 

後はプログラムを組み込むだけだ。時刻は18時

 

118 :111 /25(日) 02:41:55.77 ID:xZORwDLZ0

 

しかしまたこのプログラムが難解だった。
既存の関数や、メソッド、クラスをコピペして応用するも、やはりどこか甘い。
この新規画面というのは、いわゆるユーザー作成用の画面なのだが
バッチ系とリンクされており、このプログラム単独で動くタイプのものではなかった。

 

上記の説明で分からない人が居ると思うので、簡単に説明すると
島はあるが、その島に行くのに手段が無いというわけだ。

 

バッチという名の船が要る。まだ出来てないのか?

 

作成者は誰だ。
井出さんだった。部下無視の。

 

71 :11 /25(日) 02:30:16.13 ID:YSprZAIb0

 

上流SE下流SEシステム系ユーザー系色々ありすぎて
どれがどれだかわからない><

 

133 :11 /25(日) 02:44:55.02 ID:Qvtf3o5b0

 

ちょっとだけ流れを言うと。
調査・分析 要件定義 概要設計 単体テスト 連結テスト 導入 保守運用

 

前半が上流工程、後半が下流工程になる。

 

上級SEは主に調査・分析、要件定義の部分。
あとこの業界は3つに分けられる。
メーカ系(富士通、NECなど)
ユーザ系(銀行、製造業などの子会社)
独立系(どこにも属さない)

 

>>133
さすがSEがいう事は違う。
俺みたいな下っ端プログラマーじゃ見えない所も明るみに出てる。

 

135 :111 /25(日) 02:45:06.25 ID:xZORwDLZ0

 

無視するからな・・・。

 

 

「すいません井出さん」
「前髪うぜー」
「井出さん」
「前髪邪魔いんだよな」
「井出さん、聞いてますか?」
「前髪がな・・・」

 

 

こいつ、何がしたいんだ。おまえ坊主だろうが。

 

 

「おい、井出」
「はいなんでしょう」
「おまえ前髪ねーだろw」
「そうでしたwwww」

 

 

もういいから。

 

「井出さん」
「前髪のない井出です。なに?」

 

 

おぉ、返事をしたぞ。

 

155 :111 /25(日) 02:50:14.19 ID:xZORwDLZ0

 

「えっとですね、バッチの完成を待っているんですが」
「ん?」
「バッチの完成を待ってるんです。C♯の」
「あぁ、OKOK」

 

 

なんだ出来てるのか

 

 

「今から取り掛かるよ」

 

 

おいおいおいおい。それじゃ遅いよ。ってか、今まで何やってたんだ

 

 

「い、今からですか?」
「そうだよ。当たり前だろ。まぁ3〜5時間で出来ると思うから待ってて」
「え、待つんですか?」
「うん」

 

 

もう18時回ってるぞ。俺何もすることがない。
リーダーを見る。
眉間にしわを寄せて画面を見ている。

 

機嫌が悪そうだ。待つしかない。

 

183 :111 /25(日) 02:55:53.83 ID:xZORwDLZ0

 

20時・・・。

 

「これ時間かかるな」

 

何か聞こえたぞ

 

 

22時・・・。
一向に終わる気配が無い。俺はこの間、暇だったので参考書を読んでた。
ちなみに上原さんは21時で帰宅。
もう耐え切れなかったんだろう。
労働時間は24時間を超えている。

 

 

23時・・・。
参考書も読み終えた。俺はさすがに我慢の限界だった。

 

「井出さん」
「俺の脳内すげぇな。性ばっか」

 

 

何言ってんだよ・・・。画面を見る
なんか占いの画面が出てる。
脳みそ占い?みたいなのが出てて、井出さんは見事に性で埋まっていた。
ていうか何やってんだこの人。

 

 

俺はキレてもいい

 

210 :111 /25(日) 03:00:32.07 ID:xZORwDLZ0

 

「ちょっと、井出さん、何やってるんですか。仕事してくださいよ。俺は」
「時に落ち着け。俺の頭の中は性で埋まっている。これがどういう意味かわかるか?」

 

 

知るか。てめぇ仕事しろよ。俺は待ってんだぞ。4時間経つんだぞ。

 

 

「つまるところ、俺はただのエロガッパということだ」

 

そうですか。

 

 

「仕事なんてできません。あい、とぅいまて〜ん」

 

 

俺は帰った。

 

215 :11 /25(日) 03:01:14.01 ID:ciZDQJ2g0

 

これはひどい。

 

246 :111 /25(日) 03:06:43.02 ID:xZORwDLZ0

 

ついていけん。
俺は怒りで発狂しそうだった。
俺の4時間を返せ。

 

いや、参考書読んでたから無駄じゃないが、家でも読めたんだぞ。

 

なにが
「あい、とぅいまて〜ん」
だ。人をナメきっている。

 

電車に揺られ、ipodで愛をとりもどせ!!を聴きながら地味にストレス発散。

 

すると携帯がブルブルと震えている。
会社(リーダー)からだ。俺は悪くないぞ。井出に怒れ。

 

 

「おい、1。勝手に帰るな」
「井出さんが悪いと思うんですが」
「そう言うな。井出だって必死だったんだ」
「性についてですか?」
「違う」
「今電車の中なので、電話切りますよ」
「明日、詳しく話すぞ」

 

 

俺は悪くねぇ。

 

250 :11 /25(日) 03:07:39.97 ID:LnRS6lxJ0

 

んー。 確かに>>1は過失ないが 一言帰りますはいっといたほうがw

 

280 :111 /25(日) 03:13:19.89 ID:xZORwDLZ0

 

そして帰宅。
もう精神的にも参ってたので、シャワーだけ浴びてとっとと布団に入って寝た。

 

翌日、俺はいつも通り会社に到着。
井出さんは来ていない。
藤田さんは来ている。この人はいつも早い。いつ寝てるんだろうな。
昨日帰ったことについて相談した方がいいかな。

 

「おはようございます」
「おはよう。1くん、勝手に帰ったらダメだよw」
「すいません。でも、私も許せなかったんです。以後気をつけます」
「うん。あーあと上原さん、今日は病院だって。
 設計書はサーバにあげといたみたいだから、確認するといいよ」

 

 

病院・・・?何だ・・・?

 

 

「はい。ありがとうございます」

 

 

そう言って、席に向かう。
まぁ確かに帰ったのはまずかったな。リーダーの口調もマジだったし。
席につく。画面を見る。紙がはってある。何か書いてあるな。

 

 

 

「これで仲なおり☆ 脳内占い URL」

 

井出氏ね

 

290 :既にある名前は勘弁な ◆Q1BiTcH..Q 11 /25(日) 03:15:01.58 ID:WzupGuBdO

 

>>280
井手さんのこのセンス好きだ

 

312 :111 /25(日) 03:19:43.26 ID:xZORwDLZ0

 

人をなめ腐ってるな、あの人間は。

 

俺とは一生、仲良くなれないタイプの人間だ。ていうか、謝れよな・・・。
紙をぐしゃぐしゃに破いてゴミ箱に捨て、設計書の確認に入る。
客先の要望書と照らし合わせながらの作業なので、非常に目が疲れる作業だ。

 

その最中、リーダーがやってきた。
藤田さんがまず、上原さんの病欠を伝える。

 

「軟弱だな。この仕事は体力が勝負だぞ。藤田、お前も日ごろから鍛えろよ」
「はいw どうもw」

 

次は俺か。

 

「おい、1」

 

来た。とこの瞬間

 

「エロガッパ惨状!!」

 

 

井出さんが来た。

 

 

「お、1。昨日は悪かったw 脳内占いやった?w」

 

 

やってねぇ。話しかけるな。

 

331 :111 /25(日) 03:24:10.68 ID:xZORwDLZ0

 

「やってないですよ。それより、バッチはどうなったんですか?」

 

今日も出来てないとなると、俺はVBの作業に戻らないといけない。
リーダーが言ってたように、頭が回らなくなるぞ。

 

「仕事ばっかだな。そんなんじゃ早死にしちゃうぞっ」

 

もういいから

 

「バッチはどうなったんですか?」
「おいおい、それ聞くの?リーダー」
「ぽりんきー・・・ぽりんきー・・・」

 

リーダーが口ずさみ始めた。
何がしたいんだ。良いから早く答えろ

 

 

「仕事の秘密はね」
「「教えてあげないよっじゃん!!」」
「いい加減にしてくださいよ!!!!」

 

 

キレた

 

332 :11 /25(日) 03:24:37.78 ID:fSmAkqSA0

 

>>331

 

おおおwwwすげぇwww

 

352 :11 /25(日) 03:27:25.42 ID:cevZzY+/0

 

>>1は本当に強いな
おかしな上司や先輩に対して平然と敵対関係を築けているもんな
俺だったらあれよあれよという間に上原ポジションに落ち込むところだ

 

364 :111 /25(日) 03:30:00.91 ID:xZORwDLZ0

 

こんなくだらないネタを昨日考えてたのか。
アホだろう、こいつらは。

 

 

「リーダーも井出さんも、そんなのでよく仕事が勤まりますね」
「怒っちゃった」
「毎日、毎日、上原さんいじめてるし、精神的な何かで病院行ったんじゃないんですか?」

 

リーダーを睨む俺。
俺は親が死んで働く決心がついて、やっと仕事を見つけて
初日にとんでもない苦労を味わっても、それにくじけずやってるというのに
こいつらをそれをからかっているようにしか見えない。
仕事をやる気が完全に失せてしまった。

 

「社長に言ってきますから」
「あーまてまて」
「待ちませんよ。俺に非はない」

 

 

社長に報告しに行く俺

 

393 :111 /25(日) 03:35:44.79 ID:xZORwDLZ0

 

社長は俺の話を真剣に聞き、二名を呼んで座らせた。
要するに説教の開始だ。

 

「社長、まぁ落ち着いてください。ここで僕のハゲビームで」
「うるさい!おまえはそれでも社会人か!」

 

 

正論だ。NEETやってた俺のがまとも(だと思う)ってのはどうなんだ。
というか、この会社は社長が口出さないから、結局役員がやりたい放題になってる
これがブラックの一番の原因でないかと俺は思う。
社長が説教を二人にじっくりと聞かせて、頭を下げてもらった。
ついでに上原さんのことも言っておいた。

 

 

しかし上原さん、胃を悪くしてしまったらしい。
病名はわからないけど、いつも薬を服用するようになってしまった。

 

 

あっち系の薬じゃなければいいが。

 

407 :11 /25(日) 03:38:47.95 ID:lh3IFWku0

 

井出さんのカスッぷりは異常だな
良くこれで仕事あるなこの会社

 

424 :111 /25(日) 03:42:38.54 ID:xZORwDLZ0

 

あれ・・・俺キレたの間違い・・・?
確かにコミュ力はないと思うが、さすがに我慢できなかったな・・・。

 

 

それからと言うものの、この二人は勤務態度はかなりマシになった。

 

しかし、例の掛け合いは今も続いている。
一番最新のでは

 

「ただいま、もどりました」←リーダー
「おかえリーダーたけし!!」

 

 

だった。俺はもうスルーしている。
そして上原さんが復帰。
上原さんは頬が痩せこげ、目だけが異様に飛び出していた。

 

食物とってるのか・・・?

 

 

しかし納期まであと1週間しかない。
他人はどうでもいい。
俺が生存しなければならないんだ。

 

 

完璧なソルジャーとなっていた俺

 

447 :111 /25(日) 03:48:27.21 ID:xZORwDLZ0

 

VBを無事に完成させた。
あとは井出さんのバッチ完成を待って(まだ完成してない)、残りのC♯を組み込めば納期ギリギリだ。

 

テスト作業は藤田さん担当だから、俺はここで一段落つくことになる。

 

 

「井出さん」
「はい」
「バッチできました?」
「まだです」
「わかりました」

 

 

井出さんは俺に敬語使うようになってしまった。少々気まずい。
おっと、上原さんにVBの設計書のお礼を言わないとな。

 

「上原さん」
「・・・・」

 

 

この人やばくないか?

 

「上原さん、設計書のことなんですが」

 

顔だけこっち向ける上原さん

 

「大丈夫ですか?」
「は・・・は・・・は・・・」

 

 

入院しろよ・・・

 

446 :11 /25(日) 03:48:14.93 ID:w/cIoCNZ0

 

ただでさえ限られた空間である職場で、自分の立場狭くしてどーすんのw

 

苛められてないのか?それで>>1は。

 

451 :11 /25(日) 03:49:28.45 ID:pASk8zHrO

 

いや俺が言いたいのは、良いか悪いかじゃなくて
実際キレるかキレないか。

 

「解決のためにどうするか」前提に冷静でないのなら
今回は良かろうが別のケースではアウトな心理状態だぞ、と。

 

 

まあ俺なら怖くてキレられんってのもあるが

 

471 :111 /25(日) 03:53:27.74 ID:xZORwDLZ0

 

いや、でも俺としてはキレて良かったと思ってるかな・・・。

 

あい、とぅいまて〜ん→教えてあげないよっじゃん はさすがに耐えれんかった。
しかもこっちはデスマ状態だというのに。
どっちが大人だったんだろうか。やっぱ耐えてた方が大人なんかね。

 

 

「あの、質問とかじゃないので聴いてくれさえすれば」
「は・・・は・・・は・・・」

 

ダメだこいつ。

 

 

「設計書、どうもありがとうございました。おかげでVBの方が完成しました」
「い・・・」
「ありがとうございます」
「は・・・」

 

 

本気でやばい。介護施設での療養が必要だ。
俺は静かに立ち去る。
つかバッチまだかよ。

 

 

「1さん」←井出
「はい」
「できました」

 

 

井出の口調が変わったせいで描写がしにくい。
読みにくかったらごめん

 

 

478 :11 /25(日) 03:55:17.97 ID:Q/Qi+HYV0

 

なんというか正直者がバカを見るような社会はうんざりだな。
仕事の環境を整える意味では>>1のキレというか、
社長に直接話に行ったのが良かったかと思う。

 

その場で2人にキレてるだけだったら、
解決どころか状況が悪化してただけに過ぎないからな。
上司が駄目なら、その上に掛け合うってのは一つの手段。

 

481 :11 /25(日) 03:55:54.02 ID:B8G8N6HH0

 

>>471
切れて正解、フォローも完璧

 

482 :11 /25(日) 03:56:00.71 ID:4kMbPl8D0

 

キレるべき場面とキレちゃいけない場面があるってこった
ちゃんと働いてりゃそれくらいわかんだろ

 

504 :111 /25(日) 04:00:37.24 ID:xZORwDLZ0

 

「ありがとうございます。もうリンクしちゃっても大丈夫ですか?」
「大丈夫です」

 

よし。あとはこの組み込みさえ終えれば。
ってなんじゃこれ。
中のプログラムを見てみると、プログラム仕様書にある変数定義の決まりとかが全然守られてない。
コイツ相当なバカなんじゃないか・・・。

 

「あの、井出さん」
「はい」
「定義がデタラメすぎるので、これ使えないです」
「マジで?」
「ホントです。この仕様書見てください」
「おぉぉぉい、マジかよっ」

 

大声で叫ぶ井出さん

 

 

「前のシステムと全然変わってんじゃん!!」

 

 

当たり前だろ・・・。

 

522 :11 /25(日) 04:03:13.85 ID:ciZDQJ2g0

 

井出に段々萌えてきた

 

535 :111 /25(日) 04:05:52.00 ID:xZORwDLZ0

 

「直してください。私が作ったわけじゃないので、私じゃ直せません」
「有り得ん・・・有り得ん・・・有り得ん・・・」

 

うるさい。とっとと直せ。お前のせいで作業が遅滞しているんだ
俺はこの間、やはり暇なので、参考書を読み漁ることにする。
SQLでも勉強しておくか。
そして井出がバッチを完成させたのは、その日の22時だった。
俺はもう仕事する気がない。
しかしみんな帰らない。

 

上原さんなんて見てみろ。
マウスとペットボトルを間違えて持ってるぞ。

 

 

「ち、ち・・・が」

 

 

すーはーーすーはー

 

帰りにくい・・・・・・・・・・・・・・

 

530 :11 /25(日) 04:05:08.73 ID:swkMcdgrO

 

会社で一番使える奴が新入社員とかw

 

534 :11 /25(日) 04:05:38.81 ID:qYCnL1mH0

 

てか上原さんは仕事ちゃんとやってるから

 

上原さん>>>1>>>>(心の壁)>>>>リーダー、らっきょか?

 

566 :111 /25(日) 04:11:35.85 ID:xZORwDLZ0

 

藤田さんが一番仕事できるんだぜ。

 

俺と藤田さんを比べるならば、謙遜でも何でもなくて

 

少年時代のクリリン=俺
神コロ様=藤田さん

 

ぐらいの差がある。SE兼PGとか言ってた気がする。

 

「おい、1」
「はい」
「今日はもう帰っていいぞ」
「いや、でもみんな頑張ってますし」
「お前、今まで苦労してたんだろ。いいよ。帰れ」

 

 

社長から何か聞いたんだろうな。
俺は帰ることにした。

 

しかし、あのリーダー何かがおかしい・・・。

 

普段のリーダーからは似ても似つかない発言だぞ・・・。
何かにおうな

 

615 :111 /25(日) 04:19:28.44 ID:xZORwDLZ0

 

俺は忘れ物があるフリをして、戻ることにした。

 

 

コンビニで漫画を時間を潰す。
30分ほど経ったか。
会社に戻る俺。
いじめられっ子の俺はこういう予感がキュピーンだからな。

 

 

開発室の前まで戻り、聞き耳を立てる。
笑い声がしているようだ。

 

 

「マジどうしますか、リーダーw」
「今のままじゃやばいな」

 

 

ほれ見ろ。何かの作戦会議立ててるぞ

 

 

「とりあえず机移動しましょうよ。隣イヤですからw」

 

 

井出だな。俺もイヤだ。しかし何を企んでいる。

 

 

「ゴホッゴホッウフッ」

 

 

上原さんか。死ぬんじゃないだろうな。

 

660 :111 /25(日) 04:24:35.91 ID:xZORwDLZ0

 

「よし、机移動させるか」
「了解しましたw」
「おい藤田、おまえ手伝え」
「いえ、私は手が離せないので」

 

 

藤田さん良い人だな。

 

 

「おい!上原ぁ!!!」
「は・・・は・・・」
「なんでもねぇ。座ってろ」

 

 

ずずずーっと鈍い音が聞こえてくる。
何をしでかすつもりだ。

 

 

机移動させた所で俺は何にも感じないぞ。

 

684 :111 /25(日) 04:29:53.61 ID:xZORwDLZ0

 

「よし、これで良い」

 

 

ここまで聞いといてなんだが、俺は部屋に入る勇気がなかった。
ひとまず今日はこれで帰宅だ。
そして翌日、俺は出勤してみると、机が上原さんの隣になっていた。
やりたいことが見えてこない。

 

俺は何も無かったかのように
「おはようございます。机移動してませんか?」
「あぁ。ちょっと模様替えだ。井出が隣だとうるさいだろ?独り言多いから」

 

 

まぁ確かに。しかし何の意味があって。席に座る。
瞬間、すっぱい匂いが・・・。

 

 

わきがだ。

 

691 :11 /25(日) 04:30:56.56 ID:/DBJ4lOQ0

 

これは新展開ww

 

709 :11 /25(日) 04:33:13.82 ID:GMPhh5gS0

 

鼻につく嫌がらせだな

 

713 :11 /25(日) 04:34:16.84 ID:PNNXzQNr0

 

>>709
誰が旨いことwwwwwwwwwwwwwwwwwww

 

715 :111 /25(日) 04:34:32.52 ID:xZORwDLZ0

 

凄くすっぱい。尋常じゃない。
なんでこんな臭うんだ。
目を見回す。う・・・!!
なんと冷暖房の風向きがこっち側になっている。

 

風上には上原さん。
こ、こういうことか・・・!!

 

 

しかし上原さん、こんな強度なワキガだったのか・・・。
だからみんなと席を離れてたんだな・・・・

 

仕事に集中できん!!

 

 

「す、すいませんリーダー」
「なんだ」
「席を元に戻したいんですが・・・」
「バカ言うな。上原が隣だと良いだろ。聞きたいことも聞けるし」

 

 

はめやがったこの角刈り

 

738 :111 /25(日) 04:40:34.45 ID:xZORwDLZ0

 

これはひどい。

 

まさかこんな形で報復してくるとは。
しかも俺は上原さんに対して厳しいことがいえない。
あまりにもむごいからな・・・。しかしどうする。

 

これから先、ずっとこれと付き合ってくというのか。

 

いや待て。風上が上原さんなわけだから、俺が上原さんの席に行けば。
上原さんを見る。
リポビタンDのビンが20本ぐらい転がっている。

 

や、やめておこう・・・。何か壮絶だ。
あっこに行ったら何かにとりつかれそうだ。
俺は仕事もせずに2時間ほど、この悪臭との戦闘方法を考えていた。
どう考えても席を戻すしかない。
何か妙案がないものか。

 

 

「リーダー、1くんの席ですが」

 

 

おっと来たぞ、藤田さん。
頼みますよ、マジで

 

753 :11 /25(日) 04:43:28.23 ID:ciZDQJ2g0

 

さすが藤田!おれたちにできない事を平然とやってのけるッ
そこにシビれる!あこがれるゥ!

 

768 :111 /25(日) 04:45:45.63 ID:xZORwDLZ0

 

「おう、なんだ藤田」
「1くん、ハウスダストのアレルギーみたいなので、席を元に戻した方が良いと思いますよ」
「む・・・」

 

 

GJ

 

 

「1くんはすでにうちの戦力となってますし、健康を損なわれるとうちが持たないと思いますし」
「そ〜だな。じゃーそーしよっかー」

 

 

なんだその言い方は。
そして俺は何とか事なきを得た。
2時間半ほど無駄になってしまったが。
俺はもうリーダーや井出さんのような人間とは、極力関わらないようにすることにした。
あまりにも発想が幼稚すぎる。

 

 

しかし嫌がらせはこれだけで留まらない。

 

773 :11 /25(日) 04:46:37.83 ID:qYCnL1mH0

 

藤田さんになら尻を捧げてもいい

 

775 :11 /25(日) 04:46:38.73 ID:eQjyy5KS0

 

>>768
ハウスダスト、なんて機転の利かせ方
藤田さんは間違いなく俺の理想像

 

789 :11 /25(日) 04:48:18.89 ID:19nZYtFE0

 

藤田っていうひとはどっから出てきたんだっけな。

 

>>789
藤田さんは最初の俺に設計書を教えてくれた人。名前出すの忘れてたんだ。

 

800 :111 /25(日) 04:52:31.83 ID:xZORwDLZ0

 

俺がトイレ行ってる間、井出は俺のコーヒーに砂糖を4つぐらい入れたりしやがる。

 

 

おかげで甘ったるくて飲めん。
こんぐらいなら別に気にしないというか、小学・中学時代に比べたら屁のツッパリにもならん。

 

しかしだな、意図的に上原さんの近くに座らせるのやめてくれよ。
うちの会社は毎週火曜の10時から、開発室内で会議をするんだが
その時の席順が何故かいつも俺は上原さんの隣。

 

 

やはり臭いがキツイ。あとメガネが指紋だらけ。
この人、本気でまずいんじゃないか・・・。どうして会社に来るのだろう・・・。

 

819 :11 /25(日) 04:57:03.04 ID:ciZDQJ2g0

 

やっぱり井出に萌える。
実際身近にいたらぶん殴るけど。

 

823 :111 /25(日) 04:58:47.38 ID:xZORwDLZ0

 

とりあえず納期まであと三日。
リーダー曰く、毎日0時には会社出れる、とのこと。
幸いなことに、仕事に関しては邪魔が入らないので幾分かマシだ。
ひどい所だと、作成中のデータを消したりするらしい。そんなことされたら死んでしまうぞ。
C♯の組み込みも今のところ順調だ。

 

設計書も上原さんが書き直してくれたおかげで、かなり見やすい。
あの人は命を削って仕事をするタイプの人だ。それだけに確実なんだ。

 

ほら見てみろ、あの上原さんを。

 

鬼太郎みたいな髪型になっちゃってるだろ。
もう背中から死のオーラが漂っている。

 

835 :111 /25(日) 05:03:09.38 ID:xZORwDLZ0

 

ありがとう、上原さん。
俺はC♯のプログラムを書き上げる。
井出が横であ〜あとか言って、背伸びするフリして髪の毛触ってくるけど気にしない。
設計書で分からない所があったので上原さんに聞きに行った。

 

 

「すいません、ここなんですが」
「へい」

 

 

誰だ

 

 

「この変数名、こことかぶってるんですけど、同じで大丈夫ですか?」
「だ、だ、だ、だい」

 

 

大丈夫か。OK

 

 

「ありがとうございました」

 

 

間に合いそうだ。納期まであと2日。
帰る時間は0時前後。終電ギリギリだぜ。

 

837 :11 /25(日) 05:03:59.46 ID:ciZDQJ2g0

 

へいwwwwwwwwwwwwwwwwww

 

850 :111 /25(日) 05:08:58.40 ID:xZORwDLZ0

 

しかしここで大問題が発生。
かねてからの低スペックマシンがここで仇となった。

 

なんとC♯のプログラムがデバッグで起動せんのだ。

 

いや、正確には起動するけど、動作がトロすぎて確認作業ができるレベルじゃない。
極力リーダーと接触したくなかった俺だが、背に腹は変えられん。

 

 

「すいません」
「なんだ。久しぶりだな、お前と会話するの」

 

 

うるさい

 

 

「C♯の確認作業なんですが、デバッグ実行が重すぎて行えないですけども」
「メモリ増やせば?」
「時間がありません」
「知らんよ。自分で何とかしろ。俺は何でも屋じゃない」

 

 

ホント最悪なリーダーだな。
俺は席に戻った。困った時に頼れる人。

 

 

藤田さんしか居ない。

 

867 :111 /25(日) 05:13:22.36 ID:xZORwDLZ0

 

「すいません、藤田さん」
「うん?」
「デバッグ実行ができないんですけど、どうしたらいいでしょうか」
「うーん・・・。目視でとりあえず追ってみた?」
「はい」
「うーん・・・。昼休憩でよかったら、私のパソコン貸してあげるから、それでデバッグしてみなさい。動作環境はあるから」

 

 

さすが藤田さんだ。
俺はお言葉に甘えて、昼休憩パソコンを使わせていただいた。
こっそりスペックを調べる
メモリ1G
な、なんだってー!!!!
しかもOSがXP。なんだこの差は。

 

快適な操作でちゃちゃっとデバッグを行う。
いくつかバグがあったが、操作が快適すぎて一時間で取り終えた。

 

 

よし!

 

 

あと2〜3回でデスマ編終了

 

878 :11 /25(日) 05:15:45.14 ID:6vwxBJl60

 

ようやく追いついた。
しかし壮絶だな・・・。
就活頑張らんと大変なことになるな・・・。
今大学2年だが、全く就活のことなど考えずに生きてきた。
今から頑張るわ。そんで絶対まともな企業の内定を取る。

 

896 :11 /25(日) 05:19:48.36 ID:U6zYZomI0

 

>>878
---就活であると有利なもの---
・コミュ力(自分の言いたい事を相手に伝える能力)
・要領の良さ
・縦横のつながり(情報が入ってくるため)
・充実した学生生活(面接のときのネタになる)
・高学歴(Aラン以上)
・コネ
---出来ればあった方がいいもの---
・インターンの経験
・学歴(C上かBぐらいないと、フィルターで切られる事がある)
---無くても困らないもの---
・優秀な成績
・資格
---むしろ不利になるもの---
・暗いオーラ

・要領の悪さ
・教員免許(教師になるのではないかと疑われるため)
・留年が強く疑われる成績

 

これを参考に。
サークルやバイトをやっていないなら最悪嘘をつけ
あと、早く(遅くとも3年の夏休みから)始めろよ
でないと俺みたいに、四年のこの時期になっても無い内定になるぞ……

 

912 :11 /25(日) 05:22:16.96 ID:x8Nf78ug0

 

>>896
有利なもの全滅で俺涙目orz

 

894 :111 /25(日) 05:18:59.28 ID:xZORwDLZ0

 

書くの遅くてマジですまん。
書き溜めが苦手なんだ。だけど、みんなのおかげでデスマ編も終わる。
ホントごめん。付き合ってくれてる人、マジでありがとう。

 

 

あとは最後の組み込みを終えて・・・
最強に長い二週間だった・・・。

 

 

まさに怒涛だと言って良い。
俺は母ちゃんに胸を張って自慢できる仕事が出来ただろうか。
その日は気合入れて2時過ぎまで残って仕事をやってた。
上原さんと藤田さんは俺が帰ってもまだ仕事をしているようだ。

 

よくやるよ、ほんとに・・・。

 

そしてついに納期を迎える。
火曜の会議で、リーダーに提出。

 

 

「よくやったな、おまえ」
「自分でもそう思います」
「普通だったらやめるぞw」

 

 

だろうな

 

 

「おまえ根性あるわw まぁ次からもがんばれやw」

 

 

そして仕事を終えた俺は一息ついた。
すると社長から呼び出しを食らった。

 

 

次ラスト

 

901 :11 /25(日) 05:20:57.16 ID:GP6Yx1VQ0

 

あのな、母ちゃんだったらこう言うよ。

 

 

「何もそんな大変な仕事、あんたじゃなくても・・・」
「もうちょっとマシな所はないの?」

 

923 :111 /25(日) 05:24:38.65 ID:xZORwDLZ0

 

一体なんだろうか。特別賞与か何かくれんのかな。

 

 

ノックする。

 

 

「どうぞ」
「失礼します」
「よくがんばったな、1くん」
「おかげさまで。けど、ちょっと休みたいですね。弱音を吐くんじゃないですけどw」
「いやいや、いいよw 1週間ぐらい休みを取りなさい」
「ありがとうございます。それで話ってなんでしょうか」
「いやーリーダー居るだろ」
「えぇ」
「変わってみないかね、次のプロジェクトで」

 

 

は?

 

 

「藤田くんが一番適任なんだが、彼はその気がないみたいでね。
 それで二番目の実力者の君に頼みたいんだよ」

 

 

おいおいおいおい、ちょっと待て!!!!どーする俺!?どーなる俺!?続くぅ!!(たぶん

 

デスマ編 完

 

 

 

残ったレスで何か質問受け付けようか。残らないと思うけど!

 

953 :11 /25(日) 05:26:59.96 ID:EEyyBLwa0

 

 ( ゚д゚)      ・・・
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
   \/    /
     ̄ ̄ ̄

 

 ( ゚д゚ )
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
   \/    /

 

 

  ( ゚д゚ ) ガタッ 
        .r   ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
   \/    /

 

 

 ⊂( ゚д゚ )
   ヽ ⊂ )
   (⌒)| ダッ
   三 `J

 

 

 

∧_∧
(´∀`)  出世
(つ旦と)
と_)_)

 

940 :11 /25(日) 05:26:20.01 ID:6DDav1+n0

 

>>923
今でもそこに勤めてんだよね
ここまでで書いた話って現在からどれくらい前なんだ

 

>>940
三年以上前だな。

 

ここで前編終了

 

 

7 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 15:53:26.87 ID:xZORwDLZ0

 

前編見てくれてた人、どのくらい居るかな・・・。
朝6時ぐらいまでやってたから、まだそんな居ないかな。
とりあえず復活したので、前編であるデスマ編の続きを書こうと思います。
今北人用に、前編の内容を簡潔に。

 

(※『今北』は2ちゃんねる用語で『今来た』という意味です。)

 

 

10年前後NEETで最終学歴が中卒の俺が、母ちゃん死亡で働く決心がつく。
職業はプログラマ。世にも恐ろしい残業地獄職だ。
一応言っておくと、上流SEや、会社によって違うらしい。
前スレの意見を統合すると、俺の会社が異常すぎるとの事。
プログラマを目指そうと思う人は、こいつの会社やばいって程度で見てくれるとありがたい
俺の入った会社は超絶ブラック。主に人間関係がヤバイ。そして入社日の時点でデスマが始動。
そんな中、俺はここで諦めたら母ちゃんに申し訳が立たんと必死に頑張る。
それが報われたのか、入社して2週間でプロジェクトリーダーにならないかと持ちかけられた俺。

 

 

 

どーする俺!?どーなる俺!?

 

8 :1 ◆kmd7lCK4/M 11/25(日) 15:54:19.35 ID:xZORwDLZ0

 

リーダー
現プロジェクトリーダー。
年齢:30半ばぐらい
髪型:角刈り・眉毛が濃い
体型:ちょいピザ
性格:体育会系。自己中心的で、救いようがない。俺視点では最悪な人間

 

井出さん
先輩社員。リーダーと仲がいい
年齢:30前後
髪型:坊主・顔が濃い
体型:普通。少し痩せ気味かも
性格:おちゃらけている。仕事を仕事と思ってない。やはり最悪な人間。スレでは人気があるように思える。

 

藤田さん
先輩社員。この人のおかげで会社は回っている
年齢:29
髪型:パーマ。福山雅治みたいな感じ。フツメンではない(ブサメンかイケメンかは想像に任せる)
体型:痩せ型。
性格:真面目・人間関係の築き方が秀逸。憧れの人と言っても過言ではない。何故この人がこんな会社に居るのだろうか。

 

上原さん
先輩社員。廃人候補。
年齢:30前後
髪型:ワケわからん。ミディアムで寝癖が凄い
体型:痩せ型
性格:色々とやばい。吃音がひどいのが特徴。リーダーと井出さんにいじめられている。主にリーダー。精神病を患っている可能性高

 

14 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 15:58:24.95 ID:xZORwDLZ0

 

「藤田くんが一番適任なんだが、彼はその気がないみたいでね。
 それで二番目の実力者の君に頼みたいんだよ」

 

 

と言われた俺だが、やはりここは悩む。即答はできん。

 

 

「すいません、考えさせて頂いて構わないでしょうか」
「ん?おぉ、断らないんだなw いいよ。じっくり考えなさい。答えはいつ貰えるかね?」
「そうですね・・・今週中には」
「わかった」

 

 

ということとなり、俺は開発室に戻った。

 

 

「おい、1」

 

 

リーダーだ。

 

 

「はい」
「なんて話だった?」

 

 

お前降格だぞ

 

 

「いえ、次のプロジェクトの話です。後でご相談に伺うかもしれません」
「そうか、そうかw おーまぁ気楽に相談しろw」

 

 

のん気な奴だ。とりあえず藤田さんに相談しよう。

 

12 :11 /25(日) 15:57:02.92 ID:T/Z0p1mn0

 

今北んだけどデスマって何?

 

>>12
デスマーチの略で、通常の勤務時間では到底終わらないような仕事のこと。
つまり、残業が大量発生することになり、社員は地獄を見ることになる。うちは残業代が出ない。

 

17 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 16:02:31.65 ID:xZORwDLZ0

 

「藤田さん」
「うん?」
「ちょっと相談があるのでよろしいですか」
「あぁいいよ。キリも良いから。それで何?」

 

ここでは話せない。井出とリーダーが居る。

 

 

「ここでは話しにくいので、応接室でよろしいでしょうか」
「OK」

 

 

応接室に向かう。そして事の詳細を話した。

 

 

「1くんも来たか。私もその話を持ち掛けれた事があってね」
「断ったんですよね?」
「いや・・・あー・・・うん。そうだね」

 

 

何かあったっぽいな。

 

確かに藤田さんは能力もあり、リーダーになってもおかしくないのだが。

 

20 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 16:07:33.87 ID:xZORwDLZ0

 

「1くんはどうしようと思ってるの?」
「自信がありません。さすがに2週間でリーダーというのは」
「いや、私は良い経験になると思うよ。
 1くんは出世頭だと思うし。ただまぁ、楽ではないよね」

 

 

リーダーになれと言っているようだ。

 

 

「そうですか。前向きに考えてみることにします」
「うん」
「ありがとうございました」

 

 

開発室に戻ることにする。
あとはリーダーと井出さんと上原さんだが、上原さんは会話にならないので放置にしておこう
とりあえず井出さんを呼び、事の詳細を話した。

 

 

「そりゃびっくりボンバーだ」

 

 

意味わからん

 

 

「どうしようかなと思ってるんですが」
「受ければ?1くんがリーダーだと俺も安心」

 

 

こいつ、リーダーを擁護しないのか?

 

21 :11 /25(日) 16:09:22.93 ID:PNNXzQNr0

 

井出がなんか普通だwww

 

25 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 16:12:46.03 ID:xZORwDLZ0

 

「いや、やっぱりリーダーの事もありますし」
「何言ってんだよw あの人のこと気にしてたら何もならないってww」

 

 

なんという変わり身の速さか

 

 

「まぁ確かに横暴なところがあるとは思いますが」
「1くんがリーダーになったら・・・そこんとこよろしルクロード!!」

 

 

もうわかったから。

 

 

井出さんもなれと言うことか。
リーダーに相談しようかとも思ったが、面倒なことになりそうなのでやめた。
しかし荷が重いので、条件を提示しようと思う。社長室に向かう。

 

 

「すいません、例のリーダーの件なんですが」
「おぉ、答えが出たか」
「はい。引き受けようと思います。
 ですが、ひとまずは今回のプロジェクトだけということでお願いできないですか?」
「あぁ、それはいいよw そうかそうか、引き受けてくれるかw」

 

 

この後、経験者であるリーダーと共に客先に出向くようにと伝えられる。
フォローはしてくれるようだ。

 

 

期待が全くできない。

 

26 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 16:16:14.69 ID:xZORwDLZ0

 

開発室に戻る。
リーダーはあくびしながらイスをグルグルしていた。仕事しろよ。

 

 

「おー新リーダーの登場だ!」

 

 

井出が言った。まだ俺は何も言ってない。静かにしろ。

 

 

「え!?」

 

 

リーダーのイスが止まった。

 

 

「おい、井出」
「みつめあ〜うと〜」
「おい、井出!」
「すな〜お〜に」
「井出」
「おしゃ〜べり〜」

 

 

井出はすでにリーダーを見捨てている。
俺はリーダーの元へと向かった。

 

 

「リーダー、お伝えしないといけないことがあります」

 

 

リーダーは顔があわわわとなっていた。

 

30 :11 /25(日) 16:18:39.32 ID:eM48FIMvO

 

リーダーから外されるってそんなにヤバイことなのか?

 

>>30
給料が下がるのと、リーダーから一般に下がると周囲の目が厳しい。
辞退だとそうでもないんだけどな

 

31 :11 /25(日) 16:19:28.14 ID:QfK97kXy0

 

今北産業

 

 

(※『今北産業』は2ちゃんねる用語で『今来たのでこれまでの内容を三行で教えてくれ』という意味です。)

 

32 :11 /25(日) 16:19:48.99 ID:PNNXzQNr0

 

>>31
ほう
れん
そう

 

34 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 16:21:05.41 ID:xZORwDLZ0

 

「リーダー降格?」
「はい。ですが、次回のプロジェクトの件だけとの事です」

 

 

井出がこっちを見た。

 

 

「なんだよ、ずっとじゃないのかよ」

 

 

すると井出が

 

 

「よかったですね、リーダー!!」

 

 

お前の頭のがよっぽどよかったよ

 

 

「で、結局どうなるんだ。すぐにでも仕事受けにいくのか」

 

 

事情を説明する。

 

 

「そうかそうか。よし、俺がついていってやる。手本見せてやるからな」

 

 

期待できないが、とりあえず一緒に行くことになった。

 

客先はでっかいビルの中にあるという。
応接間に通された。やはり上流は違う。

 

 

「どうも」

 

 

松崎しげるのような人が出てきた

 

39 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 16:27:16.49 ID:xZORwDLZ0

 

「おー柴田さん」
「どうも、ご無沙汰ですね。リーダー、隣の人は?」
「あーこいつは」

 

 

自己紹介を終える。

 

 

「すでに社長から聞いてると思いますが、お頼みしたい仕事はですね」

 

 

プロジェクトの仕様を聞く。
どうやらJAVAを扱うらしい。TomCatのインストールが必要だ。
しかも意外と複雑そうだ。サーブレットやJAVAスクリプトなども組み込まないといけない。
これは納期長めに取らないと無理だぞ

 

 

「これをですね、2ヶ月ぐらいでやって欲しいんですよ」

 

 

バカかこいつ

 

45 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 16:32:27.56 ID:xZORwDLZ0

 

「に、二ヶ月ですか?それはちょっと」

 

 

俺が言うと、リーダーは

 

 

「余裕ですよ。任せてください」

 

 

これがデスマを生み出していたのか。

 

 

「いやいや、リーダー、無理ですよ」
「なんでだ。根拠は」
「設計書から作成しないといけないんですよね?」

 

 

松崎に聞く。

 

 

「そうですね。ですが、既存のプログラムなので、修正がほとんどですよ」

 

 

俺は設計書の作成の経験はないが、前回のプロジェクトでリーダーは設計書を完成させていなかった。
つまり、前回のようなスケジュールじゃ回らんということだ。
ちなみに前回の猶予は1ヶ月。

 

 

「修正がほとんどなら余裕だろう」
「いえ、私は自信がありません」
「そこをどうにかなりませんかねぇ・・・。ねぇ・・・」

 

 

ならんぞ・・・

 

 

「でないと、他を当たっちゃうことになるんですがね・・・」

 

48 :11 /25(日) 16:36:53.56 ID:bAg1l6DJ0

 

自信が無いとか言ったら駄目だろう
とりあえず引き受けて納期が迫ってきたら先方に状況を報告して間にあわなそうだったら
納期延ばしてもらえばいいんじゃねーの

 

51 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 16:39:41.10 ID:xZORwDLZ0

 

「ハッハッハw 柴田さん、大丈夫ですよw」
「おーさすがリーダーさん。頼りになられますなw どうですか、今夜一杯w」

 

 

手をくいっとやる。

 

 

「いいですねww あとで連絡くださいw 伺いますのでw」

 

 

下流がこうなら上流もこうか。さすがブラック・・・。
俺は改めて仕様書に目を追いやった。どう考えても2ヶ月でこなせる内容じゃない。
サーブレット新規作成もあるし、JSPファイルも作らないといけない。
担当分とかどう割り振るつもりなんだ、この人は。

 

 

「とりあえず現段階では、お返事が出せないので、また後ほど伺うということでよろしいですか」
「そうですな。契約まであと1週間ほど余裕があるし。何とか上手く調整してください」
「・・・わかりました」

 

 

帰路につく

 

 

「おい、1」
「なんでしょうか」
「お前、自信が無いはまずいぞ」

 

 

かといって快諾もどうかと思うのだが

 

 

「あぁいう時は笑顔で任せてくださいの一択なんだよ。わかったか」
「はい・・・」

 

 

先が思いやられるな・・・

 

62 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 16:43:24.64 ID:xZORwDLZ0

 

「おまえだって、これから任せようっていう人間が自信無いとか言い出したら信用できないだろ」
「まぁそうですね」

 

 

その前に無理な要望をどうにかするべきだ。
会社の人間、全員が藤田さんでもないとこなせないぞ。

 

 

「リーダー、快諾してましたけど、スケジュールのアテはあるんですか?」
「当たり前だ。社長が今月から派遣社員を雇ったみたいだから、人数が一人増えるんだよ」

 

 

おぉ、そういうことか!それを早く言ってくれよ!

 

 

「しかもそいつ、プログラム暦5年だ。おまえより長いんだぞ」

 

 

なるほど、これならなんとかなるかもしれん!
早速帰って、スケジュールを引くことにする。

 

68 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 16:48:55.09 ID:xZORwDLZ0

 

リーダー曰く、その派遣社員との面接はすでに済んでおり、確実に戦力となるという事らしい。

 

正直、俺はメンバー全員の力量を把握してないので、リーダーを中心にスケジュールを引いてもらう。
リーダーはこのプロジェクトの完遂に相当の自信があるらしい。

 

 

「スケジュール完成したぞ」

 

 

俺が目を通してみる。

 

 

上原さんの仕事量が半端ないことになっている。

 

 

「ちょっとリーダー、これ上原さんきつくないですか?」
「バカ野郎、上原はこんぐらいがちょうど良いんだよ」
「そ、そうですか」

 

 

俺はよく知らんので了承することにした。
上原さん、このプロジェクトで死ぬかもしれんな。
客先にメールで転送し、返事を待つ。

 

74 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 16:55:56.94 ID:xZORwDLZ0

 

返事を待つ間、全員を集めて今回のプロジェクトについて話をすることにした。
技術的な面では知識が足りないので、そこはリーダーにフォローしてもらう。
仮作成したスケジュールを全員に配る。

 

 

「上原さんやべぇw」

 

 

井出だ。ちなみに井出も能力を考えるとやばい。

 

 

「うーん、1くん、このスケジュールはキツいんじゃないかな」
「やっぱりそうですかね」

 

 

上原さんに目をやる。

 

 

「No1のせ・・・が1・・・2が・・・」

 

 

何を言ってるんだ。大丈夫か

 

 

「上原さん、どうでしょうか」
「2で・・・1・・・」

 

 

聞こえていない

 

 

「おい上原ぁ!!」

 

85 :1 ◆kmd7lCK4/M 11 /25(日) 17:00:33.92 ID:xZORwDLZ0

 

「は、は、は、はは」
「1がお前にどうかって聞いてんだ。答えろ」
「せ、せ、せ、い、せい、ぞ、ぞぞう」

 

 

製造がどうした

 

 

「ふ、ぺ、ぺ」

 

 

まだか

 

 

「1くん、上原さんの製造のペースはやっぱりおかしいと思うよ。
 いくらなんでも1日で3本仕上げるのは辛い」

 

そういうことか。

 

 

「やはりそうですよね」
「わ、わ」
「上原!お前はもう良いから黙ってろ!!」

 

 

リーダー落ち着け

 

72 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 17:21:31.38 ID:0JZX2Rc0

 

「おい藤田。上原の担当は修正分だけだぞ。3本ぐらい余裕だろ」
「いえ、私だったら無理ですね。2日で3本なら可能ですが」

 

 

俺もそう思う。
上原さんを見てみろ・・・スケジュールを凝視しまくってるぞ・・・。

 

 

「上原、お前どうなんだ」
「え、は、は」
「どうなんだって聞いてんだ」
「わ、わ、た、わたし」
「上原さん、出来ますか?」
「出来るよな、上原!」
「は、は」

 

 

いや、そこは断るんだ。俺はあなたの体調管理まではできない

 

 

「は、は、は」

 

 

「イノセントクイーン!!」

 

 

黙れ井出

 

76 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 17:26:39.90 ID:0JZX2Rc0

 

「よし、出来るらしいぞ!」

 

 

いや出来ないだろ。上原さんの助けを懇願している目を見てみろ。

 

 

「上原さん、ホントに大丈夫ですか?」
「おい1。しつこいぞ。出来ると言ったんだから、それでいいんだよ」

 

 

コイツ、これまでそうやって計画を押し通して来たな。

 

 

「あの、リーダー」

 

 

藤田さんだ

 

 

「なんだ」
「リーダーと井出さんのスケジュール、偉く甘くないですか?」
「甘くねーよ。俺と井出の担当分は新規作成だからな。こんぐらいないと回らん」
「そうですか」

 

 

いや待て。確かにスケジュールの間取りがおかしい。何故1本5日も取ってるんだ。
しかも井出とリーダーの担当は修正分だぞ・・・。
そうか、だんだんと見えてきた。

 

こいつと井出がブラックの根源なのか。

 

78 :11 /25(日) 17:27:49.14 ID:6..DrTgo

 

その表情を見て、できないと判断した上で
再度割り振りを考えるのがリーダーの役目なんだけどな・・・

 

79 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 17:31:03.51 ID:0JZX2Rc0

 

「ちょっとリーダー」
「なんだよ」
「今は私がリーダーなので、あえて言いますけど、このスケジュールはやはりおかしいですよ」
「何がおかしいんだ。言ってみろ」

 

 

目に殺意がある

 

 

「上原さんの担当分を、リーダーと井出さんに割り振ります。
 リーダーの権限を持って行います」
「ちょまwwwwww」

 

 

井出が立ち上がる。

 

 

「おい、1。おまえ自分が何言ってるのかわかってんのか?」
「もちろんですよ。自分の発言に責任は持っています」
「おまえ、上原の担当分を俺と井出に回す。つまり、俺と井出の仕事が増えるってことだぞ」
「当たり前じゃないですか」
「それはつまり、プロジェクトが完成しないってことだぞ。良いのか?」

 

 

何言ってんだ、こいつは・・・。

 

85 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 17:34:17.21 ID:0JZX2Rc0

 

「言ってる意味がよく分からないんですが・・・」

 

 

こいつらどんだけ思考がやばいんだ。これが社会人なのか

 

 

「いやいや、だからな。俺と井出じゃこれが限界なんだよ。これ以上は無理だ」
「その通りでやんす」
「でも上原さんが回らないと思うんですが」
「さっき出来るって言ってただろうが」

 

 

脅迫まがいだけどな。すると嗚咽が

 

 

「う・・・う・・・」

 

 

上原さんだった・・・

 

88 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 17:37:26.97 ID:0JZX2Rc0

 

「ちょまwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

井出がリアルに吹いた。いや、笑うとこじゃねぇ

 

 

「う・・ぐ・・・う」

 

 

上原さんのメガネが涙の雫でベチョベチョになっていく

 

 

「上原、どうしたんだ。何か辛いことでもあったのか」

 

 

お前が原因だ

 

 

「う・・・」
「上原さん落ち着いてwwwwww ほら空を見ろwwwwww今日も輝いているwwww」

 

 

井出、空気を読め

 

 

「上原さん、やっぱり厳しいですよね?」

 

 

俺が声をかける。

 

 

94 :11 /25(日) 17:41:21.58 ID:5QbCybgo

 

だめだ上原さんかわいそすぎる;;

 

 

一度嫌われたらほぼ修正は不可能だよね…学校でも職場でも

 

95 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 17:41:40.98 ID:0JZX2Rc0

 

「は・・・・・・」
「上原ぁ!!弱音吐くのか!?新人の1がリーダーやってくれてんだぞ!!」

 

 

お前は自分の仕事を増やされたくないだけだろう。
そろそろ俺も怒るぞ

 

 

「は、は・・・」
「上原さん、ちゃんと言わないと分からないと思うよ。
 怖いと思うけど、勇気を出して意見言ってごらん
 1くんも考えてくれると思うから」

 

 

藤田さんの言うとおりだ。
上原さんが意志を明確にすれば、この話は前に進む。

 

さぁがんばれ。

 

 

「バカ野郎!!上原が居ないとこのプロジェクト完成しねぇぞ!
 がんばれるよな、上原!」

 

 

肩をバンと叩くリーダー。

 

 

「は、は・・・は・・・」

 

ダメだ。押し切られる

 

 

 

 

 

「・・・い」

 

 

上原死亡フラグその1成立

 

98 :11 /25(日) 17:44:20.82 ID:c7lC1hAo

 

その1って・・・・

 

もうやめて!上原さんのライフはもう0よ!!

 

102 :11 /25(日) 17:46:32.44 ID:5QbCybgo

 

ところですでにリーダーはリーダーじゃないいんじゃ…?

 

>>102
今までずっと名前をリーダーで通してるから、便宜上リーダーにしているんだww

 

103 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 17:47:37.47 ID:0JZX2Rc0

 

「よっし!OK!!」

 

 

OKなのは貴様と井出だけだ・・・。
コイツはもう人間じゃない。

 

 

「リーダーの説得力凄すぎですよwwwwww」

 

井出も同種だ。虫唾が走る。

 

 

「1くん、後で話良いかな」

 

 

藤田さんだ。怒られるのであろうか。
この後、軽く説明をして会議を解散した。

 

続いて藤田さんとの話だ。

 

 

「1くん、なんであの時、上原さんを助けてあげなかったの?」

 

 

やはり来た。

 

 

「すいません。ですが、やはりリーダーの経験が初めてですし・・・」
「まぁ済んだことは仕方が無い。
 けど、やっぱりあのスケジュールは無理だよ」

 

 

わかってる。
けど、俺と藤田さんだって限界ギリギリまで引いてるんだ。

 

 

引くのならリーダーと井出さん、あとは派遣社員だが・・・。

 

108 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 17:53:15.39 ID:0JZX2Rc0

 

「そういえば藤田さん、派遣社員さんはいつから来られるんですか?」
「明後日の朝10時に来るらしい。契約日はその後だったよね。間に合う?」
「えぇ。間に合うと思いますが。リーダーと井出さんは頼りにならないので
 その派遣社員さんに少し負担を持ってもらおうかと思ってるんですけど」
「うーん・・・。どうかな。私はリーダーか井出さんが良いと思うけど」

 

 

いや・・・あの二人は信用できん・・・。
というか仕事そのものを投げるかもしれん。

 

 

「ひとまず派遣社員さんに仕事を割り振っておきます。
 過剰な期待はしないようにしておきますので」
「うんわかった。また何かあったら相談しにおいで」
「ありがとうございます」

 

 

藤田さんの存在はとてつもなく大きい。
この人が居なくなった瞬間、会社は潰れるであろうな。

 

 

そして派遣社員のやってくる日になった。

 

109 :11 /25(日) 17:53:36.28 ID:w6yrClMo

 

その派遣が女で美人で>>1が骨抜きにされるフラグだな
111 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 17:56:41.57 ID:0JZX2Rc0

 

朝10時。
派遣社員はまだ来ない。

 

 

「あの、リーダー」
「なんだよ」
「派遣社員さんのことなんですが」
「知らんよ。お前が電話しろ」

 

 

役に立たない人だな。電話番号を調べる。
すると派遣社員がやってきた。

 

 

「こんにちは」

 

 

女性だった。

 

 

それを見た瞬間

 

 

「俺、井出です!!!!!!よろしく!!!!!」

 

 

必死すぎだ。

 

112 :11 /25(日) 17:57:22.71 ID:XaYDLHgo

 

>>109

 

すげえなお前

 

121 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 18:02:58.25 ID:0JZX2Rc0

 

まさか展開を先読みされるとは。

 

しかし、骨抜きかどうかはまだ分からないんだぜ
女性のスペック必要なら書きます。

 

必要な方はおっぱいおっぱいと書き込んでください。

 

 

「中西と申します。今日は遅刻して申し訳ありませんでした」

 

 

おぉ、第二の常識人だ。
すでにこの感覚がおかしいと思うのは俺だけでないはず。

 

 

「こんにちは。プロジェクトリーダーの1です。席をご案内します」
「はい」

 

 

井出がはしゃぎまくっている。
タイプなのか。リーダーに耳打ちしてるぞ。

 

 

「ここです。パソコンや動作環境はこちらで用意しますので、お待ちください」
「はい」

 

 

「ここで俺参上」

 

 

井出だ。呼んでない。帰れ。

 

128 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 18:07:53.49 ID:0JZX2Rc0

 

「1くん」

 

 

なんだよ

 

 

「ここは私がやるよ。君は忙しいから、別の作業をしておきなさい」

 

 

口調が藤田さんになっているぞ。

 

 

「ホントに大丈夫ですか? まぁTomCatをインストールすれば製造環境だけは整いますけど」
「任せなさい。ほら、君は別の作業をするする」
「わかりました。ではお任せいたします」
「あの、1さん」

 

 

中西さんだ

 

 

「1さんお若いのに、もうリーダーやってらっしゃるんですか?」
「や・・・」

 

 

まぁいいか・・・。ブラックというのを言うこともない

 

 

「えぇ、そうです」
「凄いですね。ちょっと尊敬しました」

 

 

それはどうも。
井出が、口半開きでこっちを見ていた。

 

 

俺はスルーした。

 

131 :11 /25(日) 18:08:49.43 ID:w6yrClMo

 

>>128
のちの>>1嫁である

 

123 :11 /25(日) 18:04:02.89 ID:2Ue.aKoo

 

>>121
おっぱいおっぱい

 

127 :11 /25(日) 18:06:01.58 ID:oJg2Jm.o

 

  、  ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい! おっぱい!
  ⊂彡

 

135 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 18:10:16.78 ID:0JZX2Rc0

 

すまん、まさかこんなに書かれるとは思ってなかった。
すぐに書くよ、すまんww

 

 

名前:中西
体型:スリム。身長は165ぐらい
乳:小さい
尻:パツンパツン
脚:たまらん
性格:これから描写

 

現在の関係
井出→中西
中西→?

 

 

こんなもんか!

 

137 :11 /25(日) 18:11:27.60 ID:PyfJhM.o

 

スペック誰に似てるとか書いてくれよ

 

147 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 18:16:57.62 ID:0JZX2Rc0

 

顔は川村ゆきえに似てる。

 

人を選ぶかもな。

 

 

ちなみに俺は巨乳派だ。

 

 

動作環境の設定は井出さんにお願いすることにしたから、俺は自分の作業に戻る。
俺は恋人を作るとかは全く興味がなかったため、中西さんはスルー状態だった。

 

女が苦手だって人居るけど、俺には男・女という概念があまりない。
だから、割と普通に喋れる。まぁ、業務関係に限るけど・・・。
メールをチェックする。
一つは客先からだ。
あと二件入ってるな。誰だ。

 

 

 

リーダーと井出さんだった。

 

154 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 18:19:50.33 ID:0JZX2Rc0

 

>>149
それを言わないでくれよww
ホントに辛くて辛くてしょうがなかったんだ。誰かに吐き出したかったし。
友達もケンジしか居ないんだww
だけど、スレ立ててからみんなが辞めてもいいとか、頑張れとか言ってくれて、少しは楽になったんだぜ
やっぱヌクモリティだな

 

157 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 18:23:54.78 ID:0JZX2Rc0

 

メールを閲覧してみる。
まずはリーダーから

 

 

リーダー:協力しろ。添付Zipファイル。housyuu.mpgファイル

 

 

何だ一体。
協力ってのは、中西さんのことだろうな。
mpgを開く。

 

 

「あぁん」←音は出てないぞ

 

 

古都ひかるのAVだった。

 

 

バカかよ!!!
会社になんてものを持ち込むんだ!

 

 

心底腐っている・・・。この調子じゃ井出のメールも・・・。

 

163 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 18:30:46.40 ID:0JZX2Rc0

 

俺はネクタイを緩めて、ため息をついた。
寿命が縮まる・・・。
井出のメールを開く。

 

 

井出:一目惚れした。俺に仕事回せ。アピールする良いチャンスだ。

 

 

これは予想外だ。中西さん投入は良い方向に回ってきた。
しかしどのぐらい回すべきか。
まぁいい。とりあえず客先のメールをチェックするか。

 

 

どうやらあのスケジュールで良いらしい。

 

 

上原さんの担当見たのか?

 

 

どうも不安だが、OKならOKで良いや。
井出さんと話をするか。

 

179 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 18:59:46.31 ID:0JZX2Rc0

 

すまん、ちょっと会社に行ってこないといけなくなってしまった。

 

一時間かそんぐらいで帰って来れると思うが・・・。
ちょっくら行ってくる。

 

190 :11 /25(日) 19:27:14.94 ID:1u.S/BUo

 

今気がついたけど
>>1って3年前からこの仕事してて
3年前に脳内メーカーなんてあったっけ?

 

KYでごめん

 

196 :11 /25(日) 19:54:52.48 ID:ARXr2YI0
>>190
3年も続けてたって書いてたか?

 

 

207 :1 11/24(土) 23:29:14.06 ID:Jw+br6zA0
まさに暗黒時代であるNEET。しかし働く気なんて全く起きない。
一方のケンジは大学に進学。
時間はどんどんと過ぎていく。伸びるNEET期間。無駄に上がる絵のスキル。そして発見した2ちゃん。
そんな俺が26歳の時である。つまり去年。

 

 

 

3年勤めてるってんならこれと噛み合わなくね?

 

200 :11 /25(日) 19:58:56.26 ID:1u.S/BUo

 

940 : 投稿日: 2007/11/25(日) 05:26:20.01 ID:6DDav1+n0
>>923
今でもそこに勤めてんだよね
ここまでで書いた話って現在からどれくらい前なんだ

 

965 : 1 投稿日: 2007/11/25(日) 05:29:08.52 ID:xZORwDLZ0
>>940
三年以上前だな。

 

 

 

噛み合わなくね?

 

211 :11 /25(日) 20:05:29.65 ID:2cK4KWEo

 

おまえら・・・

 

 

26歳   回想でのNEET状態(デスマ編からみて去年)

 

    ↑

 

27歳   話の中の>>1の視点(現在から3年前)

 

 

だろ? 普通にわかると思うが

 

206 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 20:03:34.52 ID:0JZX2Rc0

 

戻ってきた。
ややこしいから、もう明日に回すことにした。

 

207 :11 /25(日) 20:04:06.05 ID:6o.0sY6o

 

おかえり

 

213 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 20:05:57.30 ID:0JZX2Rc0

 

ただいま。
矛盾点に関してなんだけど
入社したのが27歳で、現在はそれに勤務年数を加えるという形になる。

 

話をややこしくしてしまってすまん

 

214 :11 /25(日) 20:07:22.72 ID:ARXr2YI0

 

なるほど
安心すた

 

216 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 20:10:44.31 ID:0JZX2Rc0

 

>>211
これが正解だな。
フォローありがとう

 

 

しかし上原さん今日で20日連続勤務なんだけど、よくやれてるな・・・。

 

218 :11 /25(日) 20:11:30.78 ID:juPyBloo

 

上原さん健在なのか・・・

 

221 :11 /25(日) 20:13:39.27 ID:XIEbFQoo

 

上原さん。・゚・(ノД`)・゚・。

 

なんか上原さん死亡疑惑立ってるなwwwwww半死半生でやれてるぜ。

 

223 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 20:18:36.89 ID:0JZX2Rc0

 

「井出さん」
「うん?」
「環境設定が終わったらで良いので、話させてもらってもいいですか」
「あぁいいよ」

 

 

口調が藤田さんのせいで違和感がある。
俺はその間、客先の要望をレビューしていた。
といっても、はっきり言って意味がわからないので、目を通すだけだ。
それをリーダーに渡して、再レビューするという形を取らなければならないが。

 

 

「上原に聞け」

 

 

いや上原さんに聞いてもわかるわけないだろ。

 

 

「上原さんはリーダー経験があるんですか?」
「知らん」

 

 

ダメだこいつ

 

233 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 20:36:46.92 ID:0JZX2Rc0

 

上原さんは会社を休んでおり、来週から出勤という形になっていた。
プロジェクト毎に満身創痍なのか・・・。

 

 

「1さん」

 

 

中西さんだ

 

 

「はい、どうしましたか」
「えっと・・・井出さんにインストールして頂くTomCatなんですが」

 

 

俺は説明できないぞ・・・。JAVAは詳しくない・・・。

 

 

「CDが、えっと」
「すまん、1くん」

 

 

井出、おまえなにをした

 

 

「コーヒーこぼしてしまったんだ」

 

 

井出氏ね

 

245 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 20:44:02.19 ID:0JZX2Rc0

 

「あ、いえ!違います!わたしが!」

 

 

中西さんがやらかしたのか?でもコーヒー無かっただろ

 

 

「中西さんは悪くない。わたしだ」

 

 

言わんでもわかっとるわ。
おまえさっきカッコつけてマグカップからずずーっとすすってただろ。

 

 

「とりあえずCD見せてくれませんか」

 

 

見せてもらう。こりゃダメだ。
コーヒー漬けも良いところだ。

 

 

「リーダー」
「なんだよ」
「TomCatのバックアップないです?」
「上原に聞け」
「上原さんは今日休みです」

 

「おい上原ぁ!!!」

 

 

キチガイか、こいつは

 

258 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 20:50:52.58 ID:0JZX2Rc0

 

「上原さんは休みですよ」
「サボりか?」
「違います。最近、激務が続いてたので、療養してます」

 

 

すると

 

 

「どうかした?」

 

 

おぉ藤田さん。あなたはいつもタイミングが良い。

 

 

「実はですね」

 

 

事情を説明する。

 

 

「あぁ、サーバにexeファイルか何かあげてたと思うけど。
 それに、エクリプスの参考書にもあったと思うから、それも見てみると良いよ」

 

 

サラサラと無問題だよ。
を前面に出して言う藤田さん。あなたが神か。

 

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

と言う俺に

 

「すいません、ホントにありがとうございます」

 

中西さんが重ねて言う。性格良いな。

 

「気にしなくて大丈夫。失敗は誰にでもあることだから」

 

 

ニコリと笑う藤田さん。
井出が小さく見える・・・!

 

281 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 20:59:16.17 ID:0JZX2Rc0

 

「そうそう、失敗は誰にでもあるよ」

 

 

フォローを入れたつもりの井出だろうが、お前が真っ先に謝らないといけないだろ

 

「ありがとうございます。みなさん優しくて助かります」
「はははww 任せてちょんまげ!」

 

・・・

 

 

「とりあえずサーバを確認してみてください。
 無かったら無かったで、エクリプスの参考書持ってきますので」
「わかりました」

 

 

こうして環境設定は無事に終えた。
そしてプロジェクト開始日を迎える。
続々とやってくるソルジャー達。戦力外が約二名。

 

 

「おはようございます。1くん、今日から頑張ろう」

 

 

藤田さんだ

 

 

「客先から電話が来たら、要望をしっかりとメモするようにしたら良いよ。
 それが可能かどうかは、リーダーが判断してくれるから」

 

 

リーダーは頼りにならん。
俺はあなたに判断してもらいたい

 

 

「リーダーが不在だったら、私か上原さんに聞いて。答えれることなら答えるよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
「じゃ、がんばろう」

 

軽く会釈する。

 

 

「お、お、お、お」

 

上原さんがやってきた

 

 

290 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 21:10:24.17 ID:0JZX2Rc0

 

「お、おは、お」
「おはようございます。上原さん、先週はゆっくり休めましたか?」
「は、は、はは」

 

 

はい、か。休めたな、よし。

 

 

「今日からプロジェクトスタートです。よろしくお願いします」
「よ、よ、は、よ、は」

 

 

はい、よろしくお願いします、だな。

 

 

「では」

 

 

席につく俺。設計書作成から開始だ。
割り振りとしては、俺2割、藤田さん3割、井出さん1割、リーダー1割、上原さん3割といった具合。

 

 

この段階ではまぁ、デスマにはならんだろう。
ちなみに中西さんは仕様確認で、スケジュールは取っていない。
製造から参加だ。

 

 

 

「おはヨーグルト!」
井出がやってきた

 

291 :11 /25(日) 21:12:03.79 ID:yubbOuco

 

>>290
おまえ、通訳までも出来んのか
さすがリーダーだなwwwwwwwwwwwwwwwwww

 

293 :11 /25(日) 21:14:15.55 ID:U/rlT/Q0

 

>>290
なんかお前日増しに進化してね?

 

>>293
わからん・・・。ただ、こういう環境の中に居ると自然と能力が高まると思う。
でないといつまで経っても、沼地にはまったままで這い上がれないからな・・・。

 

298 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 21:21:22.50 ID:0JZX2Rc0

 

「おはようございます」
「おはよう。設計書の担当は割り振らなくて良かったの?」

 

 

設計書はそこまで大変ではない。
その代わり、上原さんの製造分を少し担当してもらう。

 

 

「えぇ。その代わり、製造を担当してもらいたいので、明日の会議の時に」
「おっけーおっけーおっけー牧場」

 

 

中西さんが居ないとこのノリだ。
あとは仕事をこなせば文句は無い。

 

 

「おはよう」

 

 

リーダーが来た。

 

 

「おはようございます」
「あ〜あ。今日からプロジェクト開始か。どっち〜な〜」

 

 

朝からこれでは社内の空気が悪い。

 

 

「リーダーにも期待していますので」
「せんでいいよ」

 

 

元よりしてねぇ

 

311 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 21:37:22.67 ID:0JZX2Rc0

 

後に中西さんを加え、プロジェクトが始まった。
順調に仕上げていく。
藤田さん・上原さんを中心に設計書を固めていき、その内容を中西さんが目を通すと言った感じだ。

 

しかし井出がうざい。

 

 

「1くん」
「はい」
「Whereの綴りなんだっけ?」

 

 

バカか貴様

 

 

「1くん」
「なんでしょうか」
「ORDER BYって昇順?降順?」

 

 

ダメだこいつ

 

 

「1くん」
「はい」
「このSQL文、なんかおかしいらしいんだけど、何でかわかんない?」

 

 

見る。

 

 

SELECT 値1 IS 値2 FROM テーブル名
うんたらかんたら

 

 

ISっておまえ・・・英語じゃねーぞ・・・。
SQL文なんか知るかって人のために、正しくはASです

 

314 :11 /25(日) 21:40:32.05 ID:4w4xLLEo

 

>>311
SQL文でAS…基礎中の基礎だろ…

 

318 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 21:47:55.94 ID:0JZX2Rc0

 

俺はここで思った。
製造担当してもらうことになってるが、こんな調子では逆に完成から遠のくのではないか。

 

 

以前言っていた
『それはつまり、プロジェクトが完成しないってことだぞ。良いのか?』
これはハッタリなどはでなかったのだ。

 

 

上原さんには悪いが、負担をかぶってもらうしかない・・・。
とりあえず藤田さんに相談しよう。

 

 

「すいません、藤田さん」
「うん?」

 

 

事情を説明する。

 

 

「うーん・・・」

 

 

さすがの藤田さんも唸った。あなたは神だ。頼む

 

 

「上原さんに回すのは無理じゃないかな・・・」
「ですが、他に適役が居ません。私もこれ以上の負担は・・・」
「しょうがない。私が引き受けるよ」

 

 

なぬ

 

 

「えぇ!?藤田さんもすでにいっぱいいっぱいじゃないですか」
「誰かがやらないといけない仕事だから。
 といっても2、3本しか引き取れないよ」

 

 

それで十分です。助かります。

 

322 :11 /25(日) 21:52:37.67 ID:5QbCybgo

 

藤田さんかっこよすぎだろう…

 

324 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 21:56:01.34 ID:0JZX2Rc0

 

よし、これで何とか目処はついた。
一番の元凶は、全く役にも立たないリーダーと井出さんだったが
もうこれは仕方がない。嘆いても何も始まらんのだ。
やれる戦力でやるしかない。
そして設計書を完成させ、次は製造だ。
設計諸段階では、22〜23時には帰れていたので、まだマシだといった所。
本当の地獄はこれからにある。
所が、中西さんが悩みがあると言ってきた。

 

 

脱落するのか

 

 

「すいません、1さん」
「相談ってなんでしょうか?」
「あの・・・上原さんでしたっけ・・・」

 

 

む?

 

 

「えぇ。上原さんがどうかしましたか?」
「ワキガ凄くないですか?」

 

 

ワキガかよorz

 

329 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 22:02:14.50 ID:0JZX2Rc0

 

「あぁ・・・そうですね・・・」

 

 

俺にはどうしようもできん

 

 

「部屋中に臭いが充満してないですか?」

 

 

き、気付かなかった。いや、慣れてしまっていたのだ。

 

 

「そ、そんなにひどいです?」
「はい・・・わたし香水つけてるので、特に・・・」
「それがちょっと辛いと・・・」
「はい・・・。」
「他に誰か相談されました?」

 

 

藤田さんに相談すれば何か良い答えが貰えるぞ

 

 

「井出さんに・・・」

 

 

よりによって井出か!?

 

 

「いや・・・井出さんより藤田さんの方が」
「わたしもそう思うんですが、えっと・・・藤田さんって話しかけにくいんです」
「うーん。そうですか・・・。ちょっとそれは言っておきます」
「え!?い、いえ、良いです!カッコ良いから、ちょっと話しかけにくいっていうか!」

 

 

あぁこの会社はどうなってしまうのだろう

 

330 :11 /25(日) 22:03:59.66 ID:rlEDr9Mo

 

中西→藤田キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!

 

339 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 22:10:52.89 ID:0JZX2Rc0

 

「そ、そうですか、わかりました」
「あ、すいません!なんでもないです」
「上原さんの件については、ちょっと考えておきます・・・。今は案が浮かばないですが」
「わかりました。どうもありがとうございます」

 

 

ややこしい事になってきた。リーダーって大変だな・・・。
雑用がとても多いし、メンバーの一人一人に気を配らないといけない。
特に上原さんが要注意だ。
しかし、時間は待ってくれん。俺はリーダーだ。
責任者という立場なため、何としてもプロジェクトを完成させないといかん。
だが障害がまたもや発生する。
井出とリーダーの行動が不審なのだ。

 

(一体、何やってんだよ・・・。頼むから問題を増やさないでくれ・・・)

 

 

ちまちま監視するが、何をやっているのかはわからない。
上原さんに何かやっている事までは分かった。

 

一応、声をかけておくか・・・。

 

 

しかし、俺の行動はすでに遅かった。

 

 

上原さんが席を立ち、俺の方に向かってきた。

 

346 :11 /25(日) 22:15:25.08 ID:fTQNjY.o

 

何処も大変何だな・・・・・

 

販売→やってらんね
給食→クソクラエ
製造→死ぬわ
衛生管理,品質管理と言う名の土方→幸せなのは上だけやね
消毒屋→あひゃひゃひゃひゃひゃはy.....
って思ってた俺は甘えてた
>>1に比べれば汚水槽の中に入るくらいなんともないNE☆

 

347 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 22:17:15.01 ID:0JZX2Rc0

 

「す、すす、すい、すいま」

 

 

すいませんか。なんだ

 

「はい、なんでしょうか」
「す、す、すこ、すこ、よ、よろ、し、すこ」

 

 

少しよろしいでしょうか、だな。

 

「はい。どうぞ」
「し、し、しご、しご」

 

 

仕事・・・?なんだ

 

 

「し、し」
「おい上原ぁ!!しっかり喋ろや!!」

 

 

お前は黙ってろ

 

 

「すすす、すい、す」

 

 

ほら見ろ・・・ややこしくなったじゃないか。
黙ってれば良いんだよ。俺が解読する。

 

 

「1くん、上原さん、仕事をやめたいんじゃないんかな」

 

 

神よ、あなたは何を言うか

 

 

「は、は、は」

 

 

マジかよ。

 

360 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 22:27:50.79 ID:0JZX2Rc0

 

何故このタイミングに。

 

「えっと・・・そうですか」

 

 

俺にまず話を通してきたと言うことか・・・

 

 

「おい上原」

 

 

リーダーが言う。

 

 

「おまえ、この仕事やめてどうすんだ。他に雇ってくれるとこなんか無いぞ」
「え、え、え、えと、た、たべ、たべれ、れば」
「だからお前みたいな奴を雇ってくれるとこなんて、これっぽちも無いんだよ」

 

 

悲しいが正論だ。働けていること自体が奇跡に近い・・・。
しかし言葉を選んであげてくれ

 

 

「わ、わき、わき」

 

 

ワキガがなんだ。
俺はどうすりゃいいんだ、と思いつつ考えていると、井出が笑いをこらえていた。

 

 

「井出さん、何か知らないですか?」
「ぶふっし、知らんww 知らん知らんww」

 

 

何か知っているな、こいつ。

 

 

「1くん、中西さんを除く全員で話をした方が良いんじゃないかな」

 

 

中西さんは無関係だと藤田さんは言っている。
しかしまた業務外に時間をとられるのか・・・。

 

 

「わかりました。応接室に行きましょう。
 中西さんは申し訳ありませんが、仕事の続きを」
「あ、はい」

 

 

応接室に入る俺たち。
藤田さんが全情報を握っているのか。

 

364 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 22:37:29.12 ID:0JZX2Rc0

 

藤田さんが口を開く。

 

 

「私は見ていただけなので何とも言えませんが」

 

 

上原さんは怯えているのか、目がキョロキョロしていた。

 

 

「上原さんの机に毎朝、消臭力が置かれていました」

 

 

な、なんだってー!!
藤田さんは朝来るのが一番早い。それで俺は気づかなかった。

 

 

「私が毎日、元に戻していましたが、これが毎日毎日続いていましてね」

 

 

井出とリーダーだな・・・。

 

 

「犯人は誰とは言いませんが、他にも嫌がらせをしてたんじゃないかと思ってます。
 それで、その積み重ねで上原さんはやめたいんじゃないかな、と思ってるんですが」
「・・・」

 

 

上原さんは無言である。

 

 

「井出さん、リーダー、何か知りませんか?」

 

 

もういいや。藤田さんに全部任せよう。
俺は最終的な判断を下せば良い。

 

377 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 22:45:45.01 ID:0JZX2Rc0

 

「俺は知らんぞ。消臭力なんかおかん」
「俺も俺も」
「1くんは?」
「え?私も当然違いますよ」
「うーん、そうなると、中西さんが犯人って事になるかな。
 そう思って、1くんに中西さんは除くようにしたんだけど」

 

 

これはまさか

 

 

「あ、思い出した。俺でした、さーせんww」

 

 

井出だ。
藤田さん、あなたがコナンか。

 

 

「井出さんでしたか。何でそんな事をしたんですか?」
「いや、まぁちょっとしたイタズラ心?ww」

 

 

とりあえず、この件は井出さんが頭を下げて事なきを得た。
リーダーも100%関わっているが、最後までしてないの一点張り。
しょうがないので、解散という事で業務へ戻る・・・。
肝心の上原さんは、やめるのは取り消した。

 

 

しかし、心に負った傷は深いだろう。

 

しかし藤田さん、あなたは本当に凄い。

 

 

そしてひたすら製造、製造。

 

383 :11 /25(日) 22:49:26.74 ID:ziJVG6AO

 

藤田さんすげぇ…

 

385 :11 /25(日) 22:49:33.66 ID:AWcNdPoo

 

何故藤田さん程の人が、そんなに黒い会社に?

 

>>385
社長に恩が有るとかそんなじゃねぇかな。

 

397 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 22:57:03.74 ID:0JZX2Rc0

 

ホントはもっと間が空いてて、藤田さんも色々とトークを混ぜてたんだけど
内容を忘れてはしょってしまった。でも凄さが伝わっただけで良かったんだぜ

 

 

製造中、当然質問が多く来る。
派遣社員である中西さんからもだ。
しかし、俺は経験不足でシステム的な事を聞かれても分からないので
藤田さんに丸投げをしていた。

 

 

「あの、すいません・・・藤田さん」

 

 

中西さんだ

 

 

「うん?」
「ここの所なんですけど・・・」
「あぁ、うん。良いよ。席に行こうか」
「はい、すいません」

 

 

井出が口を開けて、おいおいおいおいという顔で二人を目で追っている。

 

 

「そうだね、ここは・・・」

 

 

中西さんがマウスを握っているその手に、さらに手を置く藤田さん
さりげなくそんなことするのか。
凄いな。俺はさりげなく感心・製造・製造。

 

 

一方の井出

 

「手、手」

 

 

見りゃわかるよ・・・つか仕事してくれ

 

401 :11 /25(日) 22:58:44.81 ID:Vzrd3v6o

 

1と藤田さんが同時に辞めたらこの会社どうなるんだ・・・

 

>>401
俺が抜けたら、は分からないが、藤田さんが抜けたら間違いなく潰れる。
現時点でも藤田さんが主柱の主柱だぜ

 

402 :11 /25(日) 22:58:53.49 ID:ziJVG6AO

 

恋にも強い藤田さん
もう最強じゃん

 

405 :11 /25(日) 23:02:32.28 ID:yubbOuco

 

それを井出がやったら
中西「キャッ!セクハラ!変態!痴漢!」
ポン
>>1「警察行きましょうか・・・・・・」
井出「ちょwwwwwwwwwwおまwwwwwwwwww」

 

408 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 23:06:21.21 ID:0JZX2Rc0

 

「あ、あの」
「うん?」
「手が・・・」
「あぁ、ごめん!」
「い、いえ。良いんです。ごめんなさい」

 

 

微笑ましいのう。
そんな恋の始まりを予感させつつ、仕事は進んでいく。
例の消臭力事件以来、井出とリーダーも大人しくなった。

 

 

この会社の人間関係は、奇妙なほどガッチリと固まっていた。
リーダーには上原さんが必要で
俺と中西さんには藤田さんが必要。
そして井出さんには中西さんが。
さぁ、製造も半分を切った。

 

残りの半分、このデコボコチームワークで乗り切れるのか。

 

 

すまん、ちょっと休憩+風呂いってきていい?

 

416 :11 /25(日) 23:10:39.00 ID:Vzrd3v6o

 

>>408
ゆっくり疲れを癒して来い

 

451 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /25(日) 23:54:58.77 ID:0JZX2Rc0

 

あ、あと明日は仕事だから、普通に1時までには寝るよ。

 

平日は書き込めるかどうかわかんないから
万が一、落ちそうだったら保守してくれるとありがたい・・・。

 

 

さぁ、製造も半分を切った。
残りの半分、このデコボコチームワークで乗り切れるのか。

 

 

プロジェクトリーダー編・後編
俺はいつも通り出社した。
さて、今のところは順調だ。
帰宅時間は相変わらず遅いが、0時には帰れている。

 

 

「おはようございます」

 

 

中西さんだ。
最近、この人は来るのが早い。何かあったのかな。

 

 

「藤田さん、ちょっといいですか?」

 

 

藤田さんか。なるほどな。井出が居ると落ち着かないからな。

 

 

「おはヨーグルト!!」

 

 

ま、こいつも来るのが早くなったんですけどね。
しかし良い傾向だ。

 

よし、今日も頑張るぞ。

 

452 :11 /25(日) 23:55:47.00 ID:Vzrd3v6o

 

しかし1はこれで中卒なのか
もう今後中卒や高卒を馬鹿にするのはやめよう

 

454 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /26(月) 00:02:21.57 ID:t1XuQ1I0

 

すると電話が鳴った。

 

 

「はい、○○(会社名です)」
「すいません、○○の柴田と申しますが、1さんおられます?」
「あぁ、1は私ですが」
「えっとですね・・・」

 

 

どうやら修正が入るらしい。
まぁ、この業界じゃこんなの日常茶飯事だからな。
どの程度の修正かが問題だ。

 

 

「内部処理のうんたらかんたらを、大幅に変更して欲しいんですがね」
「え?」
「いえ、今はどうのこうのって処理になってるでしょ?」

 

 

こ、こいつ何を言ってるんだ。
納期まであと1ヶ月しかないんだぞ・・・。

 

 

「それは分かりますが、納期的な面で見ると厳しいのでは・・・」

 

 

みんなが俺に視線を集めてくる。

 

 

「あーリーダーさんに代わってもらえます?」

 

 

ダメだ。渡すと全てが終わるぞ。

 

 

「いえ、リーダーは今席を外しておりまして」

 

 

 

「居るぞ。1、渡せ」

 

 

終わった。

 

460 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /26(月) 00:10:39.61 ID:t1XuQ1I0

 

「あーもしもし、私ですが」

 

 

頼むからどうにかしてくれ。
相手先に少し仕事を渡すとかしないと、マジで回りきらんぞ。

 

 

「えぇ。あーそうですか。はははww」

 

 

笑ってられる余裕はない

 

 

「あーあー。余裕ですよww」

 

 

まて。

 

 

「了解しましたww いえいえww どうもすいませんww」

 

 

お、おま・・・

 

 

「おい、1。修正作業はいったぞ。スケジュールを引きなおせ」

 

 

このバカをどうにかしてくれ・・・。

 

 

「いや・・・リーダー、作業分担の件ですが」
「知るかよー。俺に聞くな。お前がリーダーだろ?
 それでも聞く場合は上原に聞け」

 

 

こいつの思考回路はどうなっているのか。
しかし嘆いても始まらん。
スケジュールを引きなおさねば・・・。

 

 

前半は順調だったのに、何故ここで転ぶのか・・・。

 

 

頼む、どうにかなってくれ

 

464 :11 /26(月) 00:21:24.33 ID:Zzx/BUAO

 

今更だがリーダーはこの会社にいらんだろ…
こんなやつが採用されたのが不思議

 

465 :11 /26(月) 00:22:09.60 ID:RuyFBbwo

 

>>464
業者とのホットラインを構築してんじゃん

 

459 :11 /26(月) 00:07:15.65 ID:Feq8QX.o

 

あと、残りは何編があるの?
現在 1は凄い出世してて、島耕作みたいに取締役編とか

 

>>459
それはネタバレになってしまうから一応秘密にしておく。
スレタイである程度は察する事ができるはず

 

466 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /26(月) 00:22:11.63 ID:t1XuQ1I0

 

しかし経験不足で俺は何もわからん。
コナン神の藤田さんに聞きにいくことにする

 

 

「すいません、藤田さん・・・スケジュールの件なんですが・・・」
「あぁ。引き受けたものはしょうがないからね。どの程度の作業なの?」
「日数にして7日ぐらいかと思います」
「・・・大きいな」
「ですよね・・・」
「ちなみに修正プログラムの担当者は誰?」
「上原さんです」
「うーん・・・上原さんなら出来ると思うから、直接本人と話してごらん」
「はい。ありがとうございます」

 

 

上原さんの元へ。

 

 

「すいません、上原さん」
「は、は、は、は」
「プログラムの修正が入ったので、少し相談してよろしいですか?」
「は、は」
「今現在、どのくらい作業進まれてます?」
「え、え、えと、い、い」

 

 

スケジュール表を確認した方が早い。
・・・2日遅れになっている。

 

 

「遅れてますか?」

 

「あ、い、い、は、はは」

 

 

上原死亡フラグその2が成立した。

 

 

 

よし、キリが良いから今日は寝ようと思うよ。
付き合ってくれた人、どうもありがとう
明日は何時に帰れるか・・・。

 

475 :11 /26(月) 00:26:17.07 ID:VkVQ7F6o

 

>>466
おつー

 

しかし何気に開いたあのスレがここまで長期戦になろうとはwwww

 

516 :11 /26(月) 21:17:00.34 ID:t5rY66k0

 

しかし藤田さんはなんでブラック企業なんかに勤めてるんだろう・・・

 

519 :11 /26(月) 21:46:20.09 ID:TfXKKnYo

 

>>516
この業界でデスマの無いところなんて正直言ってめったに無いから、
どこかで自分のなかで折り合いを付けているんだと思うよ。

 

もしかすると藤田さんは今の会社だからその地位を保っているのであって、
他の会社に行くと本来の実力を発揮できずに終わってしまう可能性もあるし。

 

中小メーカーでデスマ続きでも水が合っていて活き活き&大活躍の人もいるし、
逆にそこから抜け出て大きいメーカーに移って潰された人だっているし。

 

その人の実力=対応可能な企業規模ってならない場合も多いよ。
大手の大規模案件に入ると隣席の人と口頭で済む様な連絡確認事項でも、
責任の所在をはっきりさせるためにあえてメール連絡って場合もあるし。
藤田さんのような人脈を作る人にとっては、ブラックでも人対人として
仕事を進められる会社の方が合っているんじゃないのかな。

 

531 :11 /26(月) 23:12:07.83 ID:ScKuq6AO

 

上原さんどうやって面接通ったの?

 

541 : 11 /26(月) 23:36:50.77 ID:okJPwaA0

 

>>531
ブラックの面接なんて、2文字話せればイケる!

 

542 :11 /26(月) 23:43:21.52 ID:ScKuq6AO

 

ブ面接官「じゃあ我が社を選んだ理由をお願いします」
上原さん「は・・は・・」
ブ面接官「分かりました、では明日からお願いしますね」

 

ってことか

 

544 :11 /26(月) 23:47:17.77 ID:jAAEquc0

 

お前等に本物のブラックの面接を教えてやる

 

面接スタート
俺「よろしくおねがいします」
面接官「採用」

 

 

これマジな

 

545 : 11 /26(月) 23:49:32.00 ID:okJPwaA0

 

面接官「じゃあわが社の志望動機は何ですか?」
上原さん「は・・は・・」
ブ面接官「あなたみたいな人が欲しかった」

 

 

という流れだ

 

 

557 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /27(火) 01:11:55.73 ID:gaUAzgQ0

 

現在会社。
今仕事終わった。いや、終わってないがキリないから帰宅する。
みんなすまん。今日は続き書けそうにないや。
でもレスは読ませてもらってるよ。素直にうれしいぜ。
んじゃ帰宅する。おやすみ・・・。

 

559 :11 /27(火) 01:13:13.88 ID:fceIjKIo

 

まぁ、まったり行こうぜ。
おやすみノシ

 

575 :11 /27(火) 04:00:02.60 ID:91UiWMAO

 

俺の父さん毎日6時起きで帰って来るのが大体12時
飯やら風呂やらで寝るの1時半ぐらいだな
同情するが俺は絶対父さんみたいにはなりたくない
家族のことも自分のこともままならないんなら
稼げなくてもいいや

 

576 :11 /27(火) 04:24:03.57 ID:bvbqSe6o

 

>>575
んじゃいまからとっとと家をでて親の援助を一切断って、
自分の力だけで稼いで食っていけよ。ニートが。

 

親父に食わせて貰っている身分ででかい口叩くな。
同情?てめーに飯食わせるために親父は働いているんだよ。

 

この世の中、どんな家庭機器にも何らかのCPUが組み込まれている現在、
脳内土方なIT技術者の汗と涙の上に成り立っているんだ。

 

 

特に携帯電話業界なんてどれだけの精神崩壊者と死体の上に成り立っているのか・・・。
あとは銀行等の金融系システムも同様な。

 

 

ま。実際、当事者としては後身育成のためにも新入りがきて欲しい反面、
こんな道に入って、無駄に廃人になって欲しくない業界でもあるがな・・・。

 

重度のメンヘラになって20代後半の数年間を棒に振ったのに関わらず、
また業界に舞い戻ってきた俺みたいなアフォもいるけどな〜。

 

587 :11 /27(火) 09:45:22.25 ID:LjrX3fY0

 

最初から読んでるが、勉強するやる気が出たよ
このままじゃダメだって思った
こんな気持ちにさせてくれた>>1に感謝してる

 

 

なぜか、人が苦労してる文を読むと焦りが出るんだよね
自分やらなくちゃならないって

 

自分も>>1を応援してます

 

638 :11 /27(火) 23:08:29.41 ID:ShFz4Bko

 

うちの会社、コンプライアンスに取り組んでいるんだけど、サービス残業多いよ。
残業上限が30hと決まっていて、それ以上残業付ける場合は稟議が必要。
いつの間にか「一日八時間とは、八時間分の成果を残したこと!」というルールが広まって、
社員は皆自主的にホワイトカラーイグゼンプション。
この間労働基準監督官が来たんだけど、どういう訳か社員皆会社側に着くんだよね。
何処か麻痺してる

 

643 :11 /27(火) 23:32:40.32 ID:17u2wgwo

 

>>638
数年前まで、オレも雑誌の棚でちょっとした注目株になっている出版社に勤めていたんだけど、
そこも不夜城だった。文字通り1年365日、元旦でさえ誰かしら出勤しているような。

 

貫かれていた体質はまさに「一日8時間とは、8時間分の成果を残したこと」。
会社としては残業も休日出勤も命じたつもりはなく、
社員が勝手に出てきて、(しかも会社のPCと電気を使って)勝手に仕事してる
ということにしておきたいようだった。

 

SEだけがひどいわけじゃないと思うよ。
出版とか編プロもヒドイところは山ほどある。

 

644 :11 /27(火) 23:34:32.19 ID:9fGDDbw0

 

>>638
麻痺つーかルール遵守した結果、仕事が回らなくなったら会社自体がヤバイ。
身の丈にあった仕事量にして規模縮小したら、職を失う奴がゴロゴロ出てくる。
自分の生活を守るために自分の生活を壊さないといけない矛盾した状況だが、
そうでもしないと生きていけない世界が多いだけだ。

 

648 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /27(火) 23:51:15.78 ID:gaUAzgQ0

 

頭クールさせるために覗いてみたら、なんかとんでもないことになってるな
読み待ちの人、マジですまん。
仕事忙しくてそれ所じゃないんだ・・・。

 

 

土日のどっちかは更新したいと思ってるから、それまで待ってくれるとありがたい。
仕事と一緒でなりふり構わず続き書いて、肝心の質がグダグダじゃダメだからな。
今日は0時には退社しようと思うよ。

 

それまでレス読んでおくおっおっお

 

652 :11 /27(火) 23:55:45.70 ID:2zwJMAAO

 

0時退社とかすごいな…
お疲れ様です。

 

653 :11 /27(火) 23:55:54.54 ID:TMzCSxMo

 

>>648
仕事優先・・というか体優先でおk

 

あ、あと質なんて気にしてないから気楽に書いて欲しい
息抜きのつもり?に書いてるのにこっちが負担になったら元も子もない
楽しみに待ってるが、こっちは暇人なんでキニスンナ

 

776 :1 ◆kmd7lCK4/M11 /29(木) 12:16:10.04 ID:PvlzCqY0

 

現在昼休み中。
昨日は4時帰宅で死にそうだったおかげでレス見れんかった。
今ではレスを見るのがささやかな楽しみ。
特に同業者の勤務状況とか参考になるね。
いろんな意味で。

 

 

デスマ真っ最中の人も居るみたいだけど、一緒に頑張りましょう。
それと今週の平日は続き書けそうにないので、土日になりそうです。
続き楽しみにしてる人ごめん。
それまで見捨てないでおいてくれるとうれしいんだぜ

 

777 :11 /29(木) 12:16:50.82 ID:bF2u/HQo

 

見捨てるわけないだろjk

 

795 :11 /30(金) 00:19:21.44 ID:ZUovghEo

 

どこの業界も末端は酷いもんだね…
兄貴が家業(電工)を継ぐ為に他所に修行に行ってたんだが
その修行先で肉体労働のデスマーチやってた。

 

7時出社 7時半就業 昼休みは10分 17時から残業代無しで夜中の3時まで建設中のショッピングセンターで施工。
そのまま建物の隅っこでダンボールを布団に仮眠することもしばしば…一ヶ月くらいだったらしいけど28日連続出勤とか言ってた

 

社長は毎晩のように入れ込んでる支那女のいるキャバクラ通い。工期末には支那女と中国旅行してる始末
専務(息子)は陣頭指揮で現場に泊り込み。小学前の息子娘に1週間も顔見せれず
現場部長以下作業員12名はいわずもがな。同時進行の工事が6箇所でどれも工期が押し迫る。
後方支援の工務(物資手配・スケジュール管理・土下座担当)は社長の安請け合い+案件超過で2人潰れる(入院1・逃亡1)
会社常駐の事務のおばちゃんだけは変わらずいつも通り。
結局兄貴が修行中にも関わらず息子さんがおばちゃん以外の全社員と一緒に離反独立しちゃったよ

 

796 :プログラマ11 /30(金) 00:52:14.34 ID:kHUI34o0

 

別に不幸自慢するつもりじゃないんだけど、大卒正社員でITドカタ1年目。
9月から10月に掛けて丸々1ヶ月休みが無かった。
家に帰るのは週に3〜4回。基本的に帰るのは終電、出社は9時。
それでも先輩が>>1の藤田さんみたいな人で上流SE様方から怒鳴られながらも
なんとか仕事やっていけてた。

 

でも、会社の上司全員がリーダーと井出を足したような性格の奴らで、
そんな俺の状況差し置いて、遥かに楽してる女子社員の仕事のフォローばかりする始末。

 

>>1のレス読んで、この業界だとどこにでもそういう奴がいるんだなと思ったよ。

 

809 :11 /30(金) 12:06:51.73 ID:XVZBWoMo

 

新ジャンル「上原」

 

810 :11 /30(金) 12:10:12.98 ID:UU/hU4.o

 

「おい、上原ぁ!」

 

「は、は、は、は」

 

「計画書どうしたぁ!」

 

「は、は、は、は」

 

「それじゃぁわかんねぇーだろーがぁ」

 

「は、は、す、す」

 

「俺のことどー思ってるんだぁ?」

 

「大好き」

 

811 :11 /30(金) 12:15:38.98 ID:PCuWIlco

 

>>810
上原デレ?

 

854 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 02:16:12.80 ID:vCVB7Ck0

 

よし、仕事終わった。
そのおかげか今日休みだぜひゃっほー!!
今すぐにでも続き書きたいけれど、とっとと帰宅して飯食って風呂入って寝るよ。
明日に備えることとする。

 

 

あと、レス読んで気付いたんだけど、ブログで取り上げられてるみたいだな。
そこまでの価値があるかは別として、読んでくれる人が増えるのは嬉しいことだ。

 

ありがとう。

 

 

で、前スレで2部か3部構成にするって宣言したんだけど、
重要な要素を分割するのと、現在進行形だという理由で、5部ぐらいに増えるかもしれん。

 

 

なので、割と長くなる可能性が高い。

 

まずこれを先に伝えておくぜ

 

856 :12 /01(土) 02:17:44.61 ID:fIc0YtUo

 

どうせ暇だ、ドンとこいや。
それよりも>>1の体力が持つかどうかが心配だぜ、俺は。

 

864 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 09:34:34.60 ID:vCVB7Ck0

 

おはよう。
あと少ししたら書き始めるよ。とりあえず朝飯と歯磨きだけしてくる。
前回のカキコから日にちが経っているため、ひとまずあらすじだけ置いておく。

 

前回までのあらすじ

 

プロジェクトリーダーになり、俺は多忙の日々を過ごしていた。
プロジェクト前半はトラブルもあったが、スケジュールは順調であった。
しかしいきなり客先から電話が。大幅な修正が入るという話だ。
戦慄する俺をよそに、リーダーは何か考えがあるのか(何もない)簡単に引き受けてしまった。
修正分の担当者は上原さん・・・彼は今現在、二日遅れのスケジュールとなっている。
ただでさえ無理のあったスケジュール。
それに修正分が加わり、上原さんは果たして生き残れるのか。

 

 

そして、リーダーである俺はどう対処するのか・・・。

 

872 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 10:16:48.36 ID:vCVB7Ck0

 

お待たせ。

 

「上原さん、スケジュールを見る限り二日遅れとなっているのですが、
 これはこれでよろしいですか?」

 

 

頼む。違うと言ってくれ。
ただスケジュール部分を埋めるの忘れていただけだと言ってくれ。

 

 

「はははは、は、は」

 

 

マジかよ・・・。
修正分を渡してしまったら死んでしまうぞ、この人・・・。
修正分の話をするのは後にする。
まずはこの人の状況の詳細を知るのが先決だ。

 

 

「取り戻せる予定というか、見込みあります?」
「え、えと、え、え、とえ、と」

 

 

まだか

 

 

「ど、どど、どど、に、どど、にち」

 

 

土日か。土日で取り戻せるのか?

 

 

「休日出勤ということですか?」
「は、はは、は、は」

 

 

修正分をそこで修正してもらいたかった俺。いや、いかん。
上原さんだって人間なんだ。休みを潰させてまで仕事をさせるなんて外道だ。
俺は自分の良心と、必死に闘っていた。

 

 

「わかりました。それで現在の遅れを取り戻すということですね」
「は、は、ははは、は」

 

 

修正分をどこで対処するかだ・・・。使える人間は限られている。
藤田さんか、ギリギリで中西さんか、知識・経験は無いが、根性はある(と思っている)俺か。

 

874 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 10:24:14.23 ID:vCVB7Ck0

 

取り戻せる状況は聞いた。
とりあえず、修正分について話をしておくか。
上原さんは会話できないが、仕事はできる部類の人間だ。

 

 

「修正分についてお話したいのですが、よろしいですか?」
「は、は、はは、は」

 

 

修正分について話していく。
画面レイアウトの変更から内部的なロジックに至るまで、俺の少ない語彙で説明していく。
俺は設計書を片手に、ふと上原さんの顔を見た。

 

 

真顔だった。

 

 

いや、魂が抜けていっている、が正しいかもしれん。大丈夫なのか・・・。

 

しかし俺は説明の義務がある。
一言声をかけるよりも、まずは話を進めるべきだ。

 

 

「以上です」

 

 

「は・・・は・・・・は」

 

 

上原さんは放心状態となっていた。

 

877 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 10:28:48.32 ID:vCVB7Ck0

 

ダメだな。上原さんは使えん。
しかしこの膨大な修正分をどうすればいいのか。

 

元はと言えば、リーダーが簡単に引き受けてしまったからこうなってしまったんだ。
俺はリーダーの元へと向かった。

 

 

「すいません」
「なんだよ」
「修正分のことなんですが」
「知るかって言っただろ。上原に聞けよ」
「上原さんに回すのは無理があると思うので、ご相談に来ました」

 

 

むしろこいつに少し受け持ってもらう。

 

 

「上原は無理じゃねぇよ。あいつは何だって出来る」

 

 

 

何を言ってるんだ、こいつは

 

 

 

「リーダーに受け持ってもらえませんかね」
「はぁ!? なんでこの俺が上原の仕事をやらんといけんのだ。
 お前がやれよ。リーダーだろうが」

 

 

だ、ダメだ、話にならない。いや、わかっていたんだ。
分かっていたが、これっぽちの光が見えると思った。だから賭けたのだ。
しかし、いとも簡単にそれは崩れ去った。

 

仕方がない・・。そう思い、俺は藤田さんの元へと向かった。

 

あの人なら、あの人なら何か妙案を出してくれるはずだ。

 

881 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 10:39:54.94 ID:vCVB7Ck0

 

「すいません、藤田さん」
「うん?」
「修正分のことなのですが」

 

 

頼む。どうにかしてくれ。

 

 

「いや・・・これはちょっとな・・・」

 

 

だ、ダメなのか。

 

 

「リーダーに頼んではみたの?」
「は、はい。ですが、やらないと言われまして・・・」
「わかった」

 

 

そう言って、席を立った藤田さん。リーダーの元へと向かっていく。

 

 

「リーダー、今よろしいですかね」
「おう、藤田か。なんだ」

 

 

まさか

 

886 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 10:48:43.02 ID:vCVB7Ck0

 

「1くんの言っていた修正分に関してなんですが」

 

 

来た。藤田さんがリーダーを説得する。
動かざること山の如しのリーダーを動かせるのか。

 

 

「おう、お前がやってやれよ」
「それがですね、そうしてあげたいのは山々なんですが、私も仕事を多く抱え込んでるんですよ」
「お前ならどうにでもなるだろ」

 

 

藤田さんでもダメなのか。

 

 

「うーん、さすがに時間的な余裕がないので、厳しいですね」
「そんなの知るかよ。俺だって時間がないんだぞ」
「そうなると、このプロジェクトは潰れますね」
「そうだな。まぁ俺がリーダーじゃないから良いけどなwwww」

 

 

おい、ちょっと待て

 

 

 

「いえ、そうとも言えませんよ。
 今回のプロジェクトは、リーダーが補助・指導に回っているわけですから
 責任の半分はリーダーにあるという訳です。しかも1くんは未経験で、今回が初体験」
「はぁ?知るかよ、大体」
「さらに」

 

 

藤田さんが強引にさえぎる

 

 

「これは社長の判断です。ということは、逃げ場がありませんよね。
 1くんは私の目から見てもかなり頑張っていますし、前半部分は少なくとも彼に過失はありませんでした」

 

 

流暢な口調で話を進めていく藤田さん。

 

凄いぞ、あなたが孔明か。

 

894 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 10:55:10.08 ID:vCVB7Ck0

 

「しかし、ここで過失が出た。私は実際、現場に行ってないので知りませんが、
 おそらくリーダーが契約の話を進めたんじゃないかと思っています」

 

 

その通りだ。俺はこの納期じゃ無理だと思ったんだ。
中西さんのおかげで、無理→凄く厳しいになってはいるが。

 

 

「となれば、先述の半分の責任が8割程度にまで増加してしまうんじゃないですか?
 そうなると、リーダーが社長から責めをくらい、最悪クビになってしまうとは考えられないですか?
 1くんから聞きましたが、最近社長に怒られたんですよね?
 今こそそれを取り戻す時期だと思いませんか?」
「うーん・・・」

 

 

おぉ、あの「やらん」で一辺倒だったリーダーが悩んでいる。
しかし、後一歩が足りない。後一歩で落とせるんだ。

 

 

がんばってくれ、藤田さん・・・!

 

 

「それに、これでもしプロジェクトを完遂できたとしたら、
 私は1くんだけでなく、リーダーの補助が良かった、と社長に報告しますけどね」

 

 

フィニッシュブロー。

 

 

「・・・うーん・・・。うーん・・・・。まぁ・・そうだな・・・・。
 しょうがない、俺が引き受けてやるよ」

 

 

 

諸葛亮孔明は、平成の日本に居た。

 

898 :12 /01(土) 10:58:13.88 ID:r6cRC6AO

 

なんという策士・・・ なぜこの人がブラック企業どまりでいるのだ

 

905 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 11:02:16.47 ID:vCVB7Ck0

 

俺は心の中で、藤田さんありがとうございます、と15回ぐらい言った。
これでどうにか修正分は回る。おっと、藤田さんに直接お礼を言わなければ。

 

 

「藤田さん、ありがとうございます」

 

 

小声で会話する。

 

 

「いやいいよ。1くん、リーダーみたいな人は使うのにコツがいるんだよ。
 誰でもそうだけど、まずは人の性格をキッチリと掴んで、それを元に説得方法を頭の中で展開させるんだ。
 そうすれば、お客さんの所に出たときでも上手く行くから」

 

 

それが出来れば苦労はしない・・・。
藤田さん、あなたは何者なんだ。

 

 

「はい、すいません。ホントありがとうございます」

 

 

こうして俺は、何とか事なきを得た。
早速、作業に戻る。
自分のスケジュールだけで手一杯な状況だったが、俺は藤田さんのおかげで何とかなっていた。

 

みんなが協力し合い(井出はあまり役に立っていない)着々とプロジェクトを進めていく。
しかし、問題はこれだけでは収まらない・・・。

 

 

プロジェクトリーダーである俺の苦悩はさらに続くこととなるのだ。

 

 

907 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 11:09:23.03 ID:vCVB7Ck0

 

「1さん」

 

 

中西さんだ。

 

 

「はい、どうされましたか?」
「少し、相談があります・・・」

 

 

上原さんのワキガか?確かにあれから対策は取ってないが・・・。
しかし、今の状況を見ればそれ所ではないと察してくれるはずだ。
中西さんは常識人だからな。

 

 

「はい、なんでしょうか」

 

 

仕事のことだろうか。
確かに派遣社員である中西さんにとっては、激しく辛いかもしれん。

 

 

「ここでは話しにくいので、応接室で・・・いいです?」
「えぇ」

 

 

俺はこれから始まる彼女との会話で、リーダーの大変さを思い知ることになる。

 

912 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 11:17:49.10 ID:vCVB7Ck0

 

「相談というのは」

 

 

中西さんが口を開く。

 

 

「藤田さんのことなんです」

 

 

藤田さん何かしたっけか・・・。全く思い当たらない。

 

 

「何かされました?」
「いえ、そうじゃなくて、気になって仕事に集中できないんです」

 

 

し、知らんがな

 

 

「そ、そうですか・・・。どうしましょうか、部屋を別々にしますか?」
「それはイヤです! 先週、藤田さんがリーダー説得してたじゃないですか。それが凄くカッコよくて」

 

 

業務に関係なくないか?早く切り上げて仕事をするべきだ。

 

 

「私どうすればいいか分からないんです。
 今まで付き合った人とか、こんなの全然無くて」

 

 

そうなんですか。
でも俺は童貞でいない暦=年齢で、恋愛の経験なんてないから、そんな話をされても

 

 

「1さん、藤田さんに彼女いるか聞いてくれませんか?
 もしかしたら既婚者かもしれないですし」

 

 

な、なんだ。なんで俺はこんな事を頼まれているんだ。

 

919 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 11:25:47.00 ID:vCVB7Ck0

 

「えぇ? 私がですか? 中西さんが」

 

 

聞けば良いでしょ、なんて空気の読めない発言はできん。

 

 

「お願いします! それだけ分かれば、どっちに転んでも私の中でケジメがつくんです」

 

 

し、知らん・・・。そんなの知らん・・・。大体、どうやって切り出せば良いんだ。
あの藤田さんだぞ・・・。業務外の事では、ほとんど何も会話したことがないんだ。

 

 

「井出さんに頼めば・・・」
「ダメです。井出さん、何か気持ち悪いです・・・。
 1さんから何か言っておいてくれませんか?」

 

 

な、何なんだ。俺はこの女からとんでもない事を頼まれていないか?
リーダーとは言え、まだ新入社員なんだぞ・・・。

 

 

「は、はい・・・。井出さんの方は、了解しました・・・が・・・」

 

 

藤田さんのことは知らんがな。自分で何とかしてくれ。俺の管轄外だ。

 

 

「このままじゃ・・・業務に影響出るかもしれません・・・」

 

 

中西さんは、常識人という名のヴェールを被った非常識人だったようです。

 

924 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 11:33:24.67 ID:vCVB7Ck0

 

「・・・わかりました。お伝えするのが遅くなると思いますが、それで良いのであれば」
「あ、はい! それで結構です! お願いします、ありがとうございます!w」

 

 

そう言って部屋を出て行く中西さん。
俺はとんでもないことを引き受けてしまったぞ。
井出さんへの忠告は言葉を選べばどうにでもなるが、藤田さんの件はどうにもならん。
いや、今はとにかく仕事だ。藤田さんの方は大した問題じゃない。後回しにするべきだ。
まずは会社に来たくなくなる要素を潰すことだ。つまり井出さんに忠告する。
中西さんから具体的な被害を聞き、俺は井出さんを呼び出した。

 

 

「井出さん、仕事中に呼び出してしまってすいません」
「おう、いいよw で、なにw」
「中西さんがですね」
「おうおうww 中西さんが俺のこと好きだって?w」

 

 

ホントめでたい奴だな

 

926 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 11:39:28.44 ID:vCVB7Ck0

 

「いえ、そうじゃなくて」

 

 

お前の会社のポジションで、どう中西さんが惚れるんだ。

 

 

「なんだよ、違うか。でなに」

 

 

態度変わりすぎだ。

 

 

「えっとですね、最近仕事に来るのがイヤだと言ってまして」
「なんだと。1くん、中西さんに変なことしてないだろうな!?」

 

 

してねぇ。おまえだ。

 

 

「いえ、私はしてませんよ」
「誰だよ」

 

 

おまえだよ!

 

 

「えっとですね・・・」

 

 

直接言うべきか。遠まわしに言うべきか。
藤田さんの、人の性格を掴め、というアドバイスを思い出す。
井出は遠まわしに言っても気付かない可能性が高い。直接言うべきだ。

 

 

「井出さん、中西さんの匂い嗅いでませんか?」
「へ!?」

 

932 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 11:47:35.45 ID:vCVB7Ck0

 

「か、か、か、嗅いでねぇよ?」

 

 

嗅いでるな。
井出さんの席は部屋の出入り口の近くに居るのだが、中西さんが部屋を出入りしたら、鼻をクンカクンカしているようだ。
俺もコイツ変なことやってるな、とは思っていたが、匂い嗅いでるとは思わなかった。

 

 

「井出さん、中西さんが嫌がってるので、やめてあげてくれませんか」

 

 

ホント何をやってんだ、コイツは・・・。

 

 

「いや、だから嗅いでないよ」
「そう言われましても困ります。もしそうであるなら、そういう素振りをやめて欲しいんですが」
「いやいや、知らん、知らん」

 

 

人の話を聞けよ。そういう素振りだけでもやめればいいんだ。

 

 

「このままでは中西さんが会社に来なくなりますので、よろしくお願いします」

 

 

藤田さんなら、中西さんを説得の材料に使うはずだ。

 

 

「ドンマイww」

 

 

ダメだった。

 

940 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 11:53:35.45 ID:vCVB7Ck0

 

「ドンマイ、と言われましても」
「事実無根、毛根無根なんだよ」

 

 

おまえはただの坊主だろうが

 

 

「うーん・・・。まぁ、普通にしてくれるだけで良いんで・・・お願いできないですかね・・・」
「しょうがないな。1くんの頼みならしょうがない。気をつけるようにするよ」

 

 

納得行く形ではないが、結果オーライだ。
しかしリーダーって人間関係にまで気を使わないといけないのか・・・。
精神的に参るな、これは。

 

そんな心配をよそに、再び問題が浮上する。
納期まであと2週間に迫った時だった。
この頃では、みんな会社を出る時間が日付が変わってからになっていた。
特にスケジュールが厳しい上原さん、その上原さんの仕事を受け持った藤田さんに至っては
会社泊まりこみが週に1〜2回はあった。

 

そんな絶体絶命のピンチの時、事件は起きた。

 

947 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 12:02:53.64 ID:vCVB7Ck0

 

「やってられるか、ヴォケがッ!!」

 

 

リーダーだ。上原さんの修正分を担当していたが、ついにその限界が来たのか。

 

 

「おい、1!おまえちょっと来い!!」

 

 

またどやされるのか。何なんだ、一体。

 

 

「はい」
「おまえ、マジいい加減にしろよ」
「すいません」
「なんでこの俺が上原の仕事を受け持たんといけんのだ。おかげで帰れねーぞ」
「ですが」
「ですがじゃねぇ、お前がやれよ」

 

 

ダメだ。この人は完全にキテいる。
だが、俺だってもう限界なんだ・・・。睡眠時間が絶対的に足りていない。
それにみんな同じ状況なんだぞ。
お前だけが辛いんじゃないんだ。なのに駄々こねやがって。
俺の中で憎悪が渦巻いていく。

 

 

「私も正直、辛い状況ですので」
「知るかよ。あと少しだから、残りはお前がやれ」

 

 

ダメだ。寝てないせいで、頭が働かない。
説得の材料が出てこない。このままでは押し切られる。

 

 

 

「リーダー」

 

 

藤田さんだ。頼む、孔明の再来を願う。

 

957 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 12:22:38.31 ID:vCVB7Ck0

 

「藤田、お前も1に何か言ってやれ。コイツ、自分がリーダーだと思って、調子乗ってるぞ」

 

 

何を言ってるんだ。言いがかりだ。ふざけるなよ。

 

 

「1くん」

 

 

藤田さんだ。そんなバカな。常識人の最後の牙城、藤田さんまでもが。

 

 

「君が悩むことはない。今の正直な気持ちを言ってごらん。
 リーダーの仕事を、誰かに回すアテはあるの?」

 

 

違う、藤田さんは俺の味方だ。藤田さんの言う通りに動くべきだ。

 

 

「ありません。みんな手一杯です」

 

 

例外をあげるとするならば井出さんだが、彼の能力を考えると、それこそプロジェクトが潰れてしまう。

 

 

「お前がやればいいだろうが。休みに出てやれば、どうにでもなんだろうが」
「それでリーダー、この修正分が終わったら、リーダーは何時ごろに帰れる見込みなんですか?」
「20時ぐらいだよ。今は修正分のおかげで、日付変わっても仕事やってるがな」

 

 

20時っておまえ・・

 

 

「派遣社員で、女性である中西さんでさえ、それをこなしていますがね」

 

 

そうだ。リーダーは元々、中西さんを気に入ってたんだ。
今はそういう感じではないが、唯一の女性だ。
とんでもない事を頼まれたが、やはり中西さんの存在は大きい。

 

 

「うるせぇよ。男女差別すんじゃねぇ。俺はもうやらねーぞ」
「男女差別ではありません。派遣社員の中西さんが不平不満を漏らすならともかく、
 正社員で、しかも元リーダーのあなたがそれを言うのはどうですか。おかしくないですか」

 

 

藤田さんが俺を見る。一人では手強しと言っている。加勢するべきだ。

 

 

「藤田さんの言う通りだと思います。私は新人で」
「うるせぇ!」

 

 

「うるさいのはあなただ。リーダーである1の話を聞け」

 

 

藤田さんがキレた。

 

960 :12 /01(土) 12:24:58.66 ID:LqD4jtU0

 

>>957

 

藤田さんという人は本当にできる人だな。

 

切れるべきところもわかっている。

 

969 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 12:34:44.08 ID:vCVB7Ck0

 

「あぁ!? 藤田、おまえ自分が何言ったかわかってるのか!」

 

 

これを機に、上原さん以外がこっちを向く。戦慄が走る。
上原さんは口ですーはーしながら、仕事を進めていた。

 

 

「それは私のセリフだ。あなたみたいな責任感の無い人は始めてだ。
 自分がリーダーから降りた途端、手の平を返すなんて、社会人のすることじゃない」

 

 

つまり、リーダーは自分がリーダーであるならば、きっちりと義務をこなす人間らしい。
いや、それでも自分に割り振る仕事は最低限にしているが。

 

 

「藤田、おまえ自分の立場わかってるんだろうな!?」

 

 

この会社の主柱だ。藤田さんが抜けた瞬間、全てが終わる。

 

 

「立場など関係ない。人間としてどうなのか、道徳としてどうなのかと言ってる。
 リーダー、仮にあなたが1くんの立場ならどうしますか。
 新人で、初めて体験するリーダーやって頼りになる人があなたしか居ない状況で
 もうやらん、なんて言われたらどうしますか」

 

 

最後は違う。頼りにしてるのは藤田さん、あなただ。

 

 

「うるせぇな!」
「今日はもう仕事にも話にもならないでしょう。家に帰って、ゆっくり考えてください」
「ヴォケがッ!」

 

 

そう言い、席を立つリーダー。ゴミ箱を蹴飛ばし、ドアを乱暴に締めて帰っていった。

 

979 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 12:44:02.70 ID:vCVB7Ck0

 

一体どうなるんだ・・・。やはり失敗してしまった。

 

新人で、経験も知識も無い人間がリーダーなんてやれるわけがないのだ。

 

 

ストレス爆発。それを見て愕然とする俺に、藤田さんが声をかけてきた。

 

 

「1くんは気にしないでいいよ。リーダー、相当ストレス溜まってただけみたいだから」
「ですが・・・」
「私も溜まってて、自分を抑えることができなかったな。
 見苦しい所を見せてしまってすまないね」

 

 

違う。藤田さんは俺の代わりにキレてくれたのだ。
俺は一度、ぽりんきー事件でキレている。
あの事件を見て、キレると理詰めで話をすることができない、社長など他人に頼る、などの特徴を捉えられていたのかもしれない。

 

 

「ホントにすいません。リーダー、明日来てくれるでしょうか」
「来ると思うよ。来なかったら、君の指導を断ったって事だから、その時に社長に言ってごらん」
「はい・・・。どうもすいませんでした」
「あぁ、いいよ」

 

 

そう言って席に戻る藤田さん。俺も戻る。ふと井出さんと目が合った。

 

 

「パプアニューギニア」
・・・俺は無反応で席についた。

 

988 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 12:54:48.27 ID:vCVB7Ck0

 

そして翌日。リーダーはすでに来ていた。

 

 

「おはようございます」

 

 

席につく俺。俺に全く過失はないが、今後を考えるならば謝っておくべきだろう。

 

 

「すいません、リーダー」
「・・・」

 

 

無視のようだ。

 

 

「昨日はホントにすいませんでした。
 私のスケジュールミスで、リーダーだけじゃなく、メンバー全員に苦労をかけてしまってます」
「うるせぇ。仕事中だ。とっととお前も席にもどれ」

 

 

藤田さんの言う通りのようだ。
ストレスが溜まっていただけだったらしい。
つまり、それを見抜けなかった俺の過失でもあったわけだ。ここは反省すべき点である。
これで何とかなりそうだ。
みんな死にそうになりながらも、確実かつ着々とプロジェクトを進めていく。

 

 

しかし藤田さんは凄い。
キレると我を忘れて、自分のエゴを他人に押し付け勝ちだが
それを制御して、リーダーの考えを改めさせてしまった。

 

 

ちなみに、井出のパプアニューギニア発言で、場の空気は和んだ。
あぁいう存在も悪くはないのかもしれん。

 

35 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 13:51:09.69 ID:vCVB7Ck0

 

プロジェクトリーダー編も、もうすぐ終わるよ。
付き合ってくれたみんな、長いことすまんな。

 

 

さぁ、納期まであと一週間だ。
約一名、廃人が居るが(あえて名前は伏せさせてもらう)プロジェクト自体に問題はない。
社内の空気も良好だ。

 

 

「1くん」

 

 

井出さんだ。

 

 

「このプロジェクト終わったら、飲み会で二次会にカラオケとかいかね?」

 

 

 

唐突な話だ。しかし、それも悪くはない。
俺は友達がおらず、飲み会やカラオケの経験は皆無だった。

 

 

「うーん、どうでしょうか。みんなに意見を聞いてみます」
「おっけww」

 

 

そして一斉にメールを送信する。
みんな忙しすぎて、口頭で説明する時間が勿体無いのだ。
次々と返って来るメール

 

 

藤田さん
私は構いません。飲みが決定したら、私に連絡をください。
社長に経費の方を出してもらうよう、要請しておきます。

 

 

中西さん
藤田さんが出席されるなら、私も出ます。

 

うーん、これはどうなんだ。まぁいい。出席しますよと返信。

 

絶対行きます。
と来た。ですよね。

 

37 :12 /01(土) 13:52:04.21 ID:mqmiMe.o

 

中西ウザ過ぎるwwwwwwwwww

 

40 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 13:57:37.36 ID:vCVB7Ck0

 

リーダー
出てやる。お前飲ませるから覚悟しとけよ

 

 

何を言ってるんだ、こいつは・・・。しかも冗談に聞こえない。

 

 

上原さん
出ます。誘ってくださってありがとうございます。初めてです。本当に感謝してます。

 

メールだと偉く流暢だな。
てか、この人のメールの内容、割とやばくないか・・・。

 

 

い、いや、気のせいだ。上原さんは出席する。それだけしか書いてなかった。
これ以上、同情の余地を広げないでくれ。

 

 

 

全員出席ということで、飲み会の開催が決定した。
よし、あとはプロジェクトを完成させるだけだ。がんばるぞ

 

次でプロジェクトリーダー編終了

 

51 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 14:11:21.61 ID:vCVB7Ck0

 

さぁ、ついに俺の担当したプロジェクトも終わりを迎えるぞ。

 

正確にはリーダーと藤田さんが担当した、だが・・・。
みんなで必死に単体テストをこなしていく。
テスト件数が足りない、ハードコピーを撮って編集するのに時間がない・・・・・・・
細かな問題は次々と発生するも、気合と根性という精神論で仕上げていく。

 

 

しかしこのプロジェクトは怒涛であった。
システムの内容はもちろん、スケジュールが厳しかった。

 

ケンジ(俺の唯一の友達)の忠告を聞き、JAVAを少しでもかじっておいて良かった。

 

 

 

そして

 

「みなさん、おつかれさまでした!!」

 

『おつかれーっ!』

 

 

プロジェクト完遂。(正確に言えばまだだけど。あくまで社内では)

 

 

 

「よっしゃー! これから飲み会だ!!」

 

 

井出さんだ。溜まってたのだろう、声のトーンが微妙に高い。

 

 

「久々の飲みだなww 井出、おまえ脱ぐなよww」
「わかってますよww そのかわりスネ毛盛りはwwwwww」

 

 

訳のわからん会話をしている。

 

 

「1くん、本当におつかれさま」

 

 

 

藤田さん、俺はあなたに何度助けられたことか。これからもよろしくお願いします。
さぁ、人生初の飲み会だ!

 

 

こうして俺は無事にプロジェクトを完遂し、飲み会へと繰り出していく。
果たして人生初の飲み会はどんなものなのか!?
そんな期待を胸に抱いていた当時の俺は、この飲み会が次の不幸への布石になるとは夢にも思っていなかった。

 

 

どうする俺!?どうなる俺!? 続くぅ!!

 

 

 

次回、第3部『そして廃人へ・・・』

 

 

86 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 15:49:01.41 ID:vCVB7Ck0

 

戻ったぜちくしょう。
今日は休みだと思ったのに狩り出されるとは。しかし後顧の憂いは断ってきた。

 

さて、これから第3部『そして廃人へ・・・』編に突入するわけだが
プロジェクトリーダー編までで、何か質問ある?答えられる範囲なら答えるんだぜ
それともとっとと続き書いた方が良いかね。

 

50 :12/01(土) 14:05:45.56 ID:3rogDKQ0

 

>>1
確か15人ぐらいの会社って言ってた気がするけど他の社員は何やってんの?

 

>>50
他の開発やってる。
ほぼ全く面識が無いので詳しいことはわからないな。

 

89 :12 /01(土) 15:51:32.01 ID:FqW6Apo0

 

 

1は飲み会には行ったことなくても酒にはなれてたの?

 

>>89
いや、飲んだことなかった。

 

90 :12 /01(土) 15:51:39.77 ID:xDU9TDw0

 

>>86
おかえりー

 

初任給を何に使ったか気になる

 

>>90 父ちゃんにマグカップと、ニンテンドーDSを買ってあげた。

 

残りは貯金と生活費。

 

94 :12 /01(土) 15:56:13.10 ID:VmtBPJQo

 

会社名教えて

 

>>94
命に関わるから無理なんだぜ

 

96 :12 /01(土) 15:56:57.70 ID:hkrUYyAo

 

>>86
作業量多くてリーダーぶちぎれてたけど、仕事量の割り当てってどんなもん?
上原さんの半分くらいのイメージだが
それまでは自分の割り当て少なめにしてたんだよな?
それでも定時に帰れないくらいの量はこなしてたんだろうが・・・

 

>>96
設計書は前スレに書いてたと思う。
製造に関して言えば
俺1.5割 中西さん1.5割 リーダー1.5割 上原さん2.5割 井出さん0.5割 藤田さん2.5割
かな・・・。

 

誤差はあるけど、俺は実力的な意味でも、そこまで多くなかった。
つまり、リーダーは俺と同じ程度の作業量。

 

104 :12 /01(土) 16:09:03.07 ID:hkrUYyAo

 

井出wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

 

99 :12 /01(土) 15:58:41.79 ID:xDU9TDw0

 

いまだにメモリ128MBの素敵PC使ってるの?

 

>>99 さすがに今は変わってるww
それでも512MBだけどな。

 

100 :12 /01(土) 15:58:58.42 ID:VmtBPJQo

 

冬のボーナスいくら?

 

>>100
2.5か2か月分だったかな。金額は多くはない。

 

103 :12 /01(土) 16:08:19.37 ID:mBNrDpE0

 

落ちの「もう俺は限界かもしれない」までに辿りつくまでどれくらいかかりそう?
やっぱり五部構成の最後ですか?

 

109 :12 /01(土) 16:18:39.47 ID:vx.BkN.o

 

>>103
落ちっつーか、最初から最後まで一貫して
そういう気分だったって意味じゃないのか?

 

>>103
>>109の言っている意味も一理あるが、オチはやはりある。
そんで、やっぱそれは最後になるな・・・。長くなる。すまん。

 

108 :12 /01(土) 16:17:56.53 ID:G9WzcfQ0

 

そのPL編ってのはいつのはなしだったんだ?

 

>>108
入社して2ヶ月後ぐらいの話

 

105 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 16:10:08.47 ID:vCVB7Ck0

 

よし、続き書くぜ

 

111 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 16:22:17.62 ID:vCVB7Ck0

 

第三部『そして廃人へ・・・』

 

 

プロジェクトを完遂し、若干テンション高めで居酒屋に移動する俺たち。
それぞれがそれぞれとくっ付き、仲良さげに歩いている。一方の俺は一人。
この光景、どこかで見たことがあるな。そう、学校の帰り道だ。
友達の居ない俺は、一人でトボトボと帰っていたものだ。
もちろん今日だって

 

 

「1くん、リーダーはどうだった?」

 

 

と思いきや、おぉ、藤田さん。ありがとう。

 

 

「疲れました、ホントに・・・。リーダーも楽じゃないですね」
「まぁね。けど、良い経験になったんじゃないかな。
 若いうちの苦労は買ってでもしろって言うし」

 

 

 

まぁ確かに。リーダーになると、色んなものが見えてくる。
人間関係であったり、人の特徴であったり・・・。
全てが良い経験になった、とは言えないが、間違いなくこの経験は今後に生きることだろう。

 

 

「藤田さん、おつかれさまですっww」

 

 

 

中西さんだ。俺は邪魔者のようなので、静かにフェードアウトすることとする。
あれ?上原さんどこだ。

 

辺りを見回す。

 

 

 

そこには、学生時代の俺が居た・・・。

 

115 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 16:32:23.66 ID:vCVB7Ck0

 

う、上原さん・・・。その哀愁漂わせる姿、どうにかなりませんか・・・。
メガネはズレ、服もブカブカ、そして寝癖ヘアー。まるで浮浪者のようだぞ・・・。
上原さんに声を掛け、一緒に行こうかとも考えたが、会話にならないのでやめておいた。
俺はipodを取り出し、君が好きだと叫びたいを聞くことにする。

 

 

そして、俺たちは居酒屋にたどり着いた。
予約しておいた部屋に通される。

 

 

「俺この席とったー!」
「バカ野郎、そこは俺だwwww」

 

 

井出とリーダーはすでにテンションが高い。

 

 

「藤田さんはどこに座られますか?」
「うーん、私は1くんの隣にしようかな。こういう場でないと、話せない事も多いしね」

 

 

何を話すつもりだ。おっと思い出した。
既婚かどうか、彼女いるかどうかを聞かないとな。

 

 

「上原さんはどこに座ります?」

 

 

と聞くも見当たらない。テーブルを見る。

 

 

 

すでに一番端っこに座っていた。

 

 

なんという素早さか・・・。

 

124 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 16:42:12.81 ID:vCVB7Ck0

 

こうして俺たちは席についた。
図で表すとこうだ。

 

 

 

上原  俺.藤田.中西
---------------------

 

---------------------
    リーダー.井出

 

 

 

リーダー、俺の前か・・・。うるさそうだな。
まぁいい。とりあえず飲み会がどんなものかが分かれば問題ない。

 

 

「生飲む人ー!」

 

井出だ。
みんなが一斉に手をあげる。俺も飲んだことないが、空気を読んで手をあげる。
上原さんだけが手をあげていない。

 

 

「おい上原ぁ!!」

 

 

ここでも怒鳴るか。好きにさせてやれよ・・・。

 

 

「は、はは、は」
「おまえ、何飲むつもりだ」
「ま、ま、ま、まっ、ち」

 

 

マッチ?ホント何を飲むつもりだ。

 

 

「みみみ、みる、るる、う」

 

 

マッチミルウってなんだ。俺は未だにこれが翻訳できん。

 

 

「うるせぇ、上原。おまえ生な。ジョッキで」
「え、いえ、え、いい、い」
「すいませーん」

 

 

客を呼ぶ井出さん。
上原さんにとって、最悪の飲み会になりそうだ。

 

128 :12 /01(土) 16:43:42.80 ID:FqW6Apo0

 

抹茶ミルクじゃない?

 

>>128
そんな飲み物があるのか。ノンアルコールなの?

 

137 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 16:49:30.00 ID:vCVB7Ck0

 

飲み物が運ばれてくる。
これが生ビールか。これまた量が多いな。
とりあえず、周囲の飲みっぷりを見て、どのぐらいのペースで飲むか判断しよう。

 

そんな中

 

ジョッキが真ん中に置かれた。

 

 

「なぁねーちゃん、そのジョッキをあの寝癖の凄いメガネんとこに置いてくれ」

 

 

マジでやるのか。

 

 

「はい。かしこまりました〜」

 

 

置かれるジョッキ。顔面蒼白の上原さん。

 

 

「こ、ここ、こ」

 

 

喋っちゃダメだ上原さん。店員さんが困る。

 

 

「え?」
「あ、あ、こ、あ、ここ」
「・・・?」

 

 

な、何なんだこの飲み会・・・。
ネットで見た飲み会と偉い違うぞ・・・。

 

 

何が起ころうとしているんだ・・・。

 

151 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 16:57:44.71 ID:vCVB7Ck0

 

「あーもういい!もういいから!おい、みんな、料理頼め!」
「ち、あ、こ、あ」

 

 

か、解読できん。言いたいことがありすぎて、口が動かないんだろう。

 

 

「とりあえず、から揚げとーこの刺身の盛り合わせとー」

 

 

井出さんが次々と頼んでいく。

 

 

「藤田さん、飲み会っていつもこうなんですか?」

 

 

何かが異常だ・・・。俺はそう思い、藤田さんに聞いてみた。

 

 

「うん。これからお酒入るから、もっとひどくなると思うよ」

 

な、なんだと・・・。
今の状態ですでにカオスだと言うのに、これがただの序章に過ぎないと言うのか。

 

 

「以上で!」
「はい、かしこまりました。えと、ジョッキなんですけど」
「あーいいよ。そいつめちゃ飲むから」

 

 

いや、そこはやめてあげた方が良いだろ。

 

 

「よし、では! リーダーである1くんの挨拶をして、みんなで乾杯といきますか!」

 

 

何を言ってるんだ。俺は何も言う事を用意してないぞ。

 

 

「1くん、頑張って」

 

 

藤田さんが後押しする。仕方がない。

 

 

「えーと、みなさん、ホントにおつかれさまでした」

 

 

俺は気の利いたことが言えなかった。

 

 

しーん

 

 

な、なんだ!? 

 

俺なにかマズいことしたか!?

 

156 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 17:04:28.54 ID:vCVB7Ck0

 

しーん・・・。
周囲のざわめきだけが聞こえてくる。ひと時の静寂。
俺は一人で「え?え?」とやっていた。
すると井出さんが

 

 

「乾杯は?」

 

 

な、なんだ、そういうことか。
てか、それ俺がやるのか。

 

 

「か、かんぱーい!」

 

『かんぱーい!』

 

 

何とかなった。そうか、これが飲み会のルールか。覚えておかなくては。
接待とかじゃなくて良かったな。危ない。

 

辺りを見てみる。人それぞれで飲むペースが違うようだ。
こういう時は、藤田さんを真似れば良いんだ。
見る。
空だった。

 

 

「え、藤田さん、早くないですか?」
「あぁ、私はお酒が強いんだよ。あとリーダーも。
 けどあの人は悪酔いするから、近づかない方がいい」

 

 

なるほど。了解しました。

 

上原さんを見てみる。

 

 

ジョッキを少しずつ真ん中に移動させているようだ。
リーダーの顔の向きが井出さんから変わると、手をすっと離す。

 

 

何をやってるんだ、あの人は・・・。

 

159 :12 /01(土) 17:05:06.37 ID:KFJqWDco

 

つか>>1ってこの会社が社会人デビューなんだっけ?
あまりの世間知らずっぷりに上原以上に反応が面白い。

 

169 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 17:11:20.50 ID:vCVB7Ck0

 

シュールな光景に胸を痛めた俺は

 

 

「すいません、店員さん」
「はい?」
「マッチミルー良いですかね」
「はい?」

 

 

う、しまった。俺の解読は間違っていた!

 

 

「い、いえ、えっと、巨峰サワーで・・・」
「はい、かしこまりました」

 

 

ダメだ、上原さんに関わるとロクな事がないぞ。
今は状況を楽しむんだ。

 

 

「おい、1」
「はい」
「お前、俺からリーダーの座を奪い取って、調子に乗ってんだろ」

 

 

何を言ってるんだコイツは・・・

 

 

「そんな訳ないじゃないですか」
「嘘つけ、このクソ野郎!」

 

 

何なんだ、なんで俺はこんなことを今言われてるんだ

 

 

「1くん、井出さんに振りなさい」

 

 

藤田さんだ。了解しました。

 

 

「井出さん、坊主なのに毛が伸びてますよ」
「え!?!?!?」

 

 

よし。

 

 

「ハゲ、ハゲ!」

 

 

リーダーの標的が変わった。

 

 

「ハゲとハゲがケンカして〜 どっちも怪我無くよかったね、とくらぁ!!!」

 

 

カオス過ぎる

 

172 :12 /01(土) 17:14:22.02 ID:y.AuNESO

 

マッチミルーwwww

 

181 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 17:19:09.57 ID:vCVB7Ck0

 

「巨峰サワーお待ちの方ー」

 

 

来た。これを上原さんに渡すんだ。
未だに彼はジョッキを真ん中に移動させている。

 

 

「はい」
「あ、どうぞー」
「どうも」
「おい、1! お前そんなジュースみたいなもん飲むつもりか」

 

 

何なんだよ・・・何飲んでも人の自由だろ・・・。

 

 

「1くん、今日この場だから色々と話したいことが」

 

 

いや、待ってください。今はリーダーに絡まれてて・・・っておま
藤田さん、あなたペース速すぎるだろう。それ3杯目だぞ。

 

 

「藤田さん、私お酒そんな飲めないんです。藤田さんのお酒、少し分けてもらいませんか?」
「うん?あぁいいよ。はい」
「あ、ありがとうございますww」

 

 

ここでは間接キスが

 

 

「おい、井出ぇ! チョークスリーパーするぞ、てめぇ!」
「ちょ、リーダーww 苦しいww 待ってww」

 

 

い、異常だ。何なんだ、これが飲み会なのか。みんな壊れてるぞ。

 

 

 

ずず・・・ずずず・・・

 

 

上原さん、もういいから巨峰サワーを飲んでくれ。

 

ジョッキのことはみんな忘れてるから。

 

198 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 17:27:27.51 ID:vCVB7Ck0

 

た、耐え切れん。ここは一旦、退くべきだ。
とりあえずトイレにでも行って、気持ちを整理するべきだ。
そう思った俺は

 

 

「すいません、トイレです」

 

 

席を立つが

 

 

「バカ野郎、ここでしろ!!」

 

 

何を言ってるんだ。俺は聞こえないフリをしてトイレに駆け込んだ。

 

 

これが社会人の飲み会なのか。
おかしいぞ。ネットで調べた大人のマナーでは、酔っても礼儀を忘れるな、とか
新人にお酒を強要するな、上司に気を使え、と書いていたぞ。

 

何一つ守られて無いぞ。お、落ち着け。
まずは気を落ち着かせるんだ。

 

 

「俺はハゲちゃびーん。ハゲでハゲでハゲなのよー。うふっ」

 

 

井出か。何を歌ってるんだ、こいつは。ていうか、お前まだ2杯目だったろうが。

 

 

「おぉ、ここに1が登場! 俺は正義の味方だ!」

 

 

もういい。ここに安息はない。席に戻ることにする。

 

なんとリーダーがイスを並べて寝そべっていた。

 

 

 

か、帰りたい

 

218 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 17:36:05.52 ID:vCVB7Ck0

 

「ちょ、リーダー何やってるんですか、お店の人に迷惑ですよ」
「知るかよ、ヴォケが。良いからお前はとっとと飲め!」

 

 

こいつはもう放置で良い。
いつもと同じように接すると、こっちが持たないぞ。
自分の席に戻り、フゥーとため息をつく。

 

 

上原さんが挙動不審になっている。
何が起きたんだ。

 

 

「上原さん、大丈夫ですか。気分が悪いんですか?」
「ら、ら」

 

 

なんだ

 

 

「ら、らめ」

 

 

ダメ?一体何がだ。

 

 

「おい上原ぁ!!」

 

 

リーダーが起きた。

 

 

「てめぇ、ジョッキ飲んだんだろうな?」
「え、あ、え、は」
「ざけんじゃねぇぞ、てめぇっ!!」

 

 

うるさい。叫ぶ意味がないだろ

 

 

「飲まんと帰さん、ほら飲め」

 

 

上原さんの顔色が悪い。
何か異常が起きてるはずなんだ。

 

 

「1くん、ちょっと話良いかな」

 

 

藤田さん、タイミングを読んでください。
俺、今上原さん凝視してるでしょ!?

 

 

「良いかな?」

 

「あ、はい」

 

 

仕方ない。
このタイミングを使って、既婚かどうか、彼女居るかどうかを聞こう。

 

 

241 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 17:45:59.69 ID:vCVB7Ck0

 

「なんでしょうか」
「1くん、リーダーやってみてどうだった? まだこの会社続けたいと思う?」
「え? リーダーは分かりませんが、会社は続けようと思ってますよ」
「おぉ、そうか。それなら良いんだ」
「え? 何かあるんですか?」
「いや、特にはないよ。ただね、リーダーを経験した人ってのは、すぐにやめてしまうんだよ」

 

 

何となくわかるが。

 

 

「そ、そうなんですか? でも確かにリーダーは辛いですね」
「まぁね。責任は増えるし、仕事も増える。
 能力があればあるほど、損になっていく所があるからね」

 

 

要するに、もう少し手を抜けということか。
全力でやっていると、君の身が持たないよ、と言われている。

 

 

「1くん、君は能力もあって、判断力も優れているし、何より逆境に強い」

 

 

俺は褒められているようだ。言われたことについて、自覚は全く無い。

 

 

「そういう人が、この業種では強いんだよ。君は素質がある。
 磨けば、私なんて足元にも及ばなくなるよ」

 

 

何を言ってるんだ。そんな訳がないでしょう。

 

 

「きょ、恐縮です」
「所で1くん、彼女は居るの?」

 

 

よし、聞くチャンスだ。

 

 

辞めるって言ってる人すまんww これ書いてる時、つまらん内容でやばいな、と思ったよ

 

254 :12 /01(土) 17:50:28.56 ID:xDU9TDw0

 

そういやさっきから中西さんが空気だな

 

256 :12 /01(土) 17:51:35.51 ID:N3SpmV6o

 

>>254
藤田さんのビールを、無心で嘗め回してるんだよ

 

261 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 17:54:44.66 ID:vCVB7Ck0

 

「彼女ですか? いやー私は居ませんよ。藤田さんは?」
「ハハハww 私も居ないよ。そもそもで募集もしてないし、作る気も無いからね」
「え、そうなんですかww 藤田さん、既婚者かと思ってましたよww」
「よく言われるよ。過去にちょっと色々とあってね。
 あれが無ければ、今頃結婚して子供もうけてるんだろうけどww」
「へぇーそうなんですか・・・。大変だったんですね」

 

 

この過去については、後ほど語られる事となる。
今現在の俺を構築している要素の一つだ。
よし、これで中西さんに報告するだけだ。
彼女募集してないようだが、中西さんの容姿なら付き合えるだろ。

 

 

 

「ねー中西ちゃん、ぼぉくと付き合って〜」

 

 

井出だ。

 

 

「ちょ・・・やめてください」

 

 

何をやってるんだ。訴えられるぞおまえ

 

 

「俺と付き合ったら、このハゲ頭が!触り放題だにょーん!!ハゲチャビン!!」

 

 

そういってポーズを繰り出す井出。

 

 

「中西さん、席変わりましょう。私もトイレが近い方が良いので」
「あ、はい、ありがとうございます」

 

 

「おい、上原ぁ!! どうした!!」

 

 

リーダーの叫びだ。次は何だ。

 

 

上原さんを見る。ケイレンしまくっている。

 

 

き、禁断症状だ・・・。

 

284 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 18:05:08.14 ID:vCVB7Ck0

 

「上原さん、大丈夫ですか」
「う、う、うげ・・・う」

 

 

口の端からビールが流れ出ている。こいつはマズイぞ。

 

 

「ちょ、リーダーどいてください」
「うるせぇ!! この軟弱モノは徹底的に鍛えなおすべきだ!!」

 

 

黙れ。

 

 

「上原さん、とりあえずトイレいきましょう」
「う、べ・・・う・・・げぇ」

 

 

吐きそうなんだろ、この人。ワキガが臭うが、我慢してトイレに連れ込む。

 

 

「大丈夫ですか、上原さん」
「フーハー・・・・フーハー・・・」

 

 

た、耐えろ。ここでは吐くな。
何とかトイレに連れ込み、俺は席に戻る

 

これが飲み会なのか・・・なんだ、全然楽しくないぞ・・・。
むしろ仕事より疲れるじゃないか。

 

 

「おい、1」
「はい」
「おまえ頭良いだろう」
「いや、全く」
「嘘つけ、ヴォケが」

 

 

何なんだよ。さすがにウザくなってきた。

 

 

「どこの大学出だ、言ってみろ」

 

 

な、なんだと

 

 

「おぉ、それは私も気になるなww」

 

 

藤田さんまで。俺は中卒で元ニートなんだぞ・・・。

 

302 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 18:15:38.43 ID:vCVB7Ck0

 

「いや、それは秘密ですよ」

 

 

さすがに言えん。ここは誤魔化しきることだ。

 

 

「なんで言えねぇんだ! おまえ、良い大学過ぎて引かれると思ってんだろ」

 

 

違う。早く話題をそらなければ。

 

 

「1さん、私も気になるなww」

 

 

中西さん、火に油を注がないでくれ。

 

 

 

「よし、1くんの学歴に興味ある人、手ーあげて!」

 

 

井出の発言後、全員あげる。
ダメだ、逃げれないのか。中卒だと言わんといけないのか。

 

 

「ハァー・・・ハァー」

 

 

上原さんが帰ってきた。頬が痩せこげ、顔面蒼白だ。

 

 

「ちょまwwwwww」

 

「おい、上原、お前なんでそんな死にそうなんだ」

 

 

「ハァー・・・ハァー・・・」

 

 

上原さんの登場で、みんなの興味は上原さんに移った。

 

315 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 18:25:16.86 ID:vCVB7Ck0

 

この後、上原さんの介護で場が一時騒然となる。
そんなこんなしている内に、予約の時間がやってきた。

 

 

「すいません、そろそろ次のお客様が来られるので、お会計の方をよろしくお願いしますー」
「なんだ、もうそんな時間か。あっという間だったな」

 

 

俺は偉く長い時間だった。もう飲み会には出んぞ。

 

 

「おい藤田、お前今日何杯いった」
「うーん、11か12でしたかね。今日は控えめにしておきました」
「ヴォケだな、お前は。俺は15は行ったぞ」

 

 

何恐ろしい会話してんだ。
特に藤田さん、あなたはそれだけ飲んでも平気なのか。

 

 

「よーし、これからカラオケに洒落込みます! 二次会に行く人っ!」

 

 

上原さん以外が全員が手をあげている。
・・・気が進まないが、しょうがない、俺も行こう。

 

 

「おい上原、お前帰るのか?」

 

 

上原さんの肩に手を回すリーダー。

 

 

「は、え、はは、は」
「帰るのかって聞いてんだよ」
「い、い、い」
「来るよな?」
「は、はは」

 

 

ダメだ・・・。

 

 

「来るよな、上原?」
「は、は、は、い」

 

 

こ、これが社会の飲み会なのか・・・。
途中脱落が許されないとは・・・。

 

323 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 18:38:00.00 ID:vCVB7Ck0

 

この流れから行くと、カラオケでは歌を歌わされることだろう。
俺の十八番の(カラオケ経験ないが)愛をとりもどせで乗り切ることにする。

 

 

「おい、井出」
「はい、なんでしょう」
「お前、またアレ歌えよww いつものやつww」
「あぁ、時を取り戻せですかwwww」

 

 

 

なんだその歌。愛をとりもどせと題名が似てるぞ。

 

 

「そうそうww あれを1に聴かせてやれww こいつ腹ぶっ壊れるかもなww」

 

 

何か訳がわからんが、とりあえずスルーしておく。

 

 

「藤田さんは何歌われるんですか?」
「うーん、私は何にしようかな。ミスチルが好きなんだけど、B'zでも良いかな」

 

 

何か凄そうだぞ、この人。

 

 

「藤田さん、私、福山雅治歌って欲しいなww」

 

 

中西さんだ。俺もそれは同意だ。

 

 

「福山は桜坂か、スコール、ミルクティーぐらいしか歌えないなぁww」

 

 

桜坂しか知らん。
そんなこんなで、俺たちはカラオケボックスに入った。

 

333 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 18:52:36.60 ID:vCVB7Ck0

 

「よーし、とっとと曲入れようぜ」
「リーダー、先歌ってくださいよwwwwww」
「バカ野郎、当たり前だwwww俺の美声に酔いしれろww」

 

 

曲をいれる。
ラルクのSnowDropだ。ラルクって確か鬼門だろ・・・。こいつ歌えるのか。
リーダーの地声は物凄く低い。

 

 

「とーめーいーなー」

 

 

ひ、ひどい。ひどいぞこれは

 

 

「しずーくーは」

 

 

なんて低音だ。音痴ってレベルじゃねぇ。まるでジャイアンだ。
井出が爆笑している。笑えるレベルじゃないぞ、この音痴は。

 

 

「ちょ、藤田さん、ラルクってこんなんでしたっけ・・・」
「いや全然違うよ。まぁ、ここは楽しむ場だから、ノってあげて」

 

 

確かに正論だ。だが、これは聞くに耐えん。

 

 

「あなーたはまーるでしろーいヴェールをかぶったよーだーねぇん」

 

 

最後が気持ち悪い。
だがやっと終わった。

 

 

「よーし。おい、井出、次お前が歌え。時を取り戻せだぞ」
「はいwwwwww」

 

 

そう言い、曲を入れる井出。
流れてきたのは愛をとりもどせだった。

 

 

な、なんだ、まさか替え歌なのか。

 

345 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 19:03:50.58 ID:vCVB7Ck0

 

「YOUはSHOCK!愛で空が落ちてくるぅ!」

 

 

愛をとりもどせ!!だ。この野郎、俺の十八番を。

 

 

「YOUはSHOCK!俺の胸に落ちてくるぅ!」

 

 

違う、そこは1音下がってる。ちくしょう。

 

 

「おい、井出ぇ!とっとと入れろよ!」

 

 

何を入れるつもりだ。

 

 

「熱い心 鎖でつないでも 今は無駄だよ」
「おい井出!」
「我らがリーダー お客の要望で ダウンさ」

 

 

な、なんだ!?何を言ったこいつ!?

 

 

「YOUはSHOCK 仕事で死ぬの早くなるぅ!」

 

 

お、おい・・・

 

 

「YOUはSHOCK 再び死ぬの早くなる」
「ぶわはははwwwwwwww」

 

 

リーダー爆笑。
や、やりやがった。

 

350 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 19:13:47.46 ID:vCVB7Ck0

 

よし、さすがに疲れてきたから、ここで一旦切るよ。
飯食ってくることにする。

 

354 :12 /01(土) 19:17:51.67 ID:fA.92aco

 

>>350
昼からずっと書いてたんだなwwwwwwwwww
乙wwwwwwwwww

 

357 :12 /01(土) 19:22:01.65 ID:MS3OyHo0

 

しかし1の報告持続時間はさすがといわざるを得ない

 

363 :12 /01(土) 19:41:43.02 ID:vwpyfQDO

 

数学やってるとくそ眠たくて仕方ないんだが
プログラム考えてると眠くならない?
仕事中にくそ眠たくなったときはどうやって目を覚ましてる?

 

364 :12 /01(土) 19:44:24.96 ID:e4VhD4Io

 

デスマやってると眠いとか眠くないとかそういう感覚なくなってくるぜ!

 

365 :12 /01(土) 19:54:05.29 ID:KFJqWDco

 

>>363
これこれ何時まで終わらせないとあなた殺されますよ
っていう状態の時に、飽きた眠いなんて言う人間は見たことない

 

373 :12 /01(土) 20:19:14.44 ID:yd9n7s20

 

プロの徹夜経験者はな、眠くなってもむりやり起きてたりしないもんだ
何度となく医者に行き、採血して驚かれ、薬とドリンク付けになった身体の
限界がどこにあるのかを少なからず自分で察知しているからな・・・

 

 

1.まず背もたれのないいすを用意する
2.手は尻の下(後ろ側)のいすのヘリをつかむ
3.目を閉じて寝る

 

 

これが究極の仮眠方法だ、目覚ましが無くても15〜20分後にはお目覚めだぜ!
睡眠の進度は4段階あるんだが、深い睡眠(3〜4段階)にはいる2段階目の終わりに
身体の筋肉が一斉に弛緩する瞬間が来る、ぶっちゃければがくっと来るわけだ
この衝撃で目が覚めて脳みそすっきりの仮眠終了、俺は一日2回やれば徹夜は乗り切れる
いすに背もたれがあったり、前のめりになった時に伏せられる位置に机があったりすると
力の抜けた身体を支えてしまって90分後まで目覚めなくなるから注意が必要だ!
高校時代に先輩から教えてもらって、慣れるまでにどれだけ流血したことかww

 

375 :12 /01(土) 20:23:51.68 ID:ZpwKqwY0

 

来年から海上自衛隊行くんだがなんかこのスレ見てると俺普通にがんばれそうな気がしてきたww

 

海自の二士もここほどはないだろうと思いたい

 

388 :12 /01(土) 20:47:41.36 ID:hkrUYyAo

 

一年後・・・そこには元気に「海上自衛隊に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」とスレ立てする>>375の姿が!

 

412 :12 /01(土) 21:40:17.20 ID:8/mhlqA0

 

1遅い、い、い

 

422 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 22:27:39.54 ID:vCVB7Ck0

 

戻った。ちょっとドラクエやってたり、ブログのコメントとかを見てきた。
俺が思う以上に、読んでる人いるんかね。
続き楽しみにしてるってのが多くて、嬉しかったんだぜ。

 

 

上手く雰囲気や人間関係を描写できてるか不安だが、これからもよろしく頼み申す!

 

423 :12 /01(土) 22:28:23.27 ID:EzCK/lUo

 

キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!

 

443 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 22:58:04.30 ID:vCVB7Ck0

 

よし、続きを書くぜ。
あと、所々に遭遇とかリアルタイムとか書かれてるけど
なんか俺珍生物みたいな扱いになってないか?

 

 

井出が愛をとりもどせの替え歌を熱唱し、それに爆笑するリーダー。
俺は今回のプロジェクトで、井出の歌っている通りの状態になってしまったため、全然笑えない。
狂ってるぞ、こいつらは・・・。

 

 

「藤田さん、いつもこんな感じなんです?」
「あぁ、あれは井出さんの持ち歌だから。聞き流せば良いと思うよ」

 

 

この人、場慣れしているな・・・。
まぁ確かに、ここで雰囲気をぶち壊すまでもないが。

 

 

「ねぇ藤田さん、歌わないんですか?」

 

 

中西さんだ。この人、ホントに藤田さんのこと好きなんだな。
この飲み会で、ほとんど藤田さんとしか会話してないぞ。

 

 

「あぁ、じゃあ次入れさせてもらおうかな」
「とぉきをとりもどせぇぇぇぇぇぇん」

 

 

この井出のせいで、愛をとりもどせはもう歌えん。
君が好きだと叫びたいにするか。

 

藤田さんが曲を入れる。B'zのいつかのメリークリスマスだ。
まぁ、この人の歌は言うまでもないので省くとしよう。

 

 

「おい、上原ぁ!!」

 

446 :12 /01(土) 23:03:53.52 ID:UgP2lhU0

 

ここで
「おい、上原ぁ!!」
で区切るところがうまいんだよなぁ。

 

 

>>1は何か文章書く練習とかしたことある?
けっこう読書家だったりする?

 

>>446
いや全く・・・。俺のバイブルはスラムダンクだから。
小説は三国志だけ読んだことがある。

 

448 :12 /01(土) 23:06:51.06 ID:1rkcVUQ0

 

1年ぐらいまえに読んだ企業小説みたいで面白い。
レベル高杉

 

450 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 23:15:51.61 ID:vCVB7Ck0

 

なんか話が大きくなってるな。
俺の文にはそんな価値ないから、書籍化は無いぜ。
それに電車男みたいに展開が面白いわけでもないしな。

 

 

「は、ははは、は」
「なんか歌え」
「い、い、い」
「歌え、ほら」

 

 

リモコンを渡すリーダー。やめてあげろよ。

 

 

「ま、ま、ま、っま」
「しょうがない、俺が選曲してやる」

 

 

なんという強行。

 

 

「あ、ち、あ」

 

 

曲が入った。GLAY、HOWEVER
おま、それは上原さんじゃ無理だろ!

 

 

「ほれ、歌え」

 

 

マイクを渡される上原さん。ピアノ音?で前奏が入る。

 

 

「ややややややわわわ」

 

 

 

・・・上原死亡フラグその3が成立した。

 

460 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 23:24:06.95 ID:vCVB7Ck0

 

「かかかかか」

 

 

違う、テロップはもうそこを通り過ぎてる。

 

 

「ぶわははははははwwwwwwww」
「ヒィーヒィーwwwwwwwwww!!」

 

 

こ、こいつら悪魔だ。人間じゃない。
俺は原曲は数回しか聞いたことがなかった。
だが、ここは助けるべきだ。こんな空気、誰が許せるものか。
上原さんのマイクに手を伸ばす。

 

 

「幾千の出会い、別れ全て」

 

 

おぉ、この声は・・・藤田さんだ。

 

 

「わはははーは・・・・」
「ちぇー藤田さんかよ。はいはい、うまいうまい」
「おい、藤田。余計なことすんなよ」
「はい、もうすぐサビだから、1くんがんばって」

 

 

え?

 

 

「おぉ、なんだ1が歌うのかよwwwwだったらいいよwwwwww」

 

 

う・・・ぐ・・・藤田さん、あなたはやはり孔明だな・・・。

 

 

違う意味でだけどな

 

467 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 23:36:59.12 ID:vCVB7Ck0

 

「絶え間なく注ぐ愛の名を〜」

 

 

原曲を聞いてない俺は必死だった。
カラオケ特有の音程を拾い、それに合わせていく。

 

 

「なんだ、うめーじゃん」

 

 

どうやら音程は取れてるようだぞ。

 

 

「ちぇーつまんね。ド下手クソだったら笑えんのによ」

 

 

黙れ。お前のような人間が俺は一番許せん。

 

 

「1くん、声がGacktに似てるな」

 

 

そんなバカな。俺はガンダムは全然知らないぞ。

 

 

「上原ぁ!!おまえ、何か歌えよ!!」
「ち、あ、む、む、む」

 

 

HOWEVERが終わる。

 

 

「歌えって言ってんだろうが。なぁ、おまえ話聞いてんのか?」

 

 

雰囲気が悪い。人を馬鹿にして楽しむなんて、ロクなもんじゃない。

 

 

「おっと、もうこんな時間か。そろそろ私はあがろうかな」

 

 

藤田さんがこの雰囲気をぶち破った。

 

 

「あぁ?まだはえーよ」
「明日、ちょっと用事がありましてね」
「しょうがねーな。とりあえず店出るぞ」

 

 

何とも言えない空気で部屋を出る俺たち。
なんだ・・・全然楽しくないじゃないか・・・。

 

 

俺は飲み会ってものは、もっと楽しいものだと思っていたのだが・・・。

 

477 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /01(土) 23:48:02.90 ID:vCVB7Ck0

 

店を出る俺たち。

 

 

「では、私はあがることにします」
「おう、気をつけて帰れよ」
「ハハハハww 大丈夫ですよ。上原さん、帰り道一緒でしたよね?
   夜道、一人だと寂しいのでどうですか」

 

 

そうか、このためだったのか。
藤田さん、あなたは本当に尊敬できる。

 

 

「あ、じゃあ私も帰りますw」

 

 

中西さん、空気読んで。

 

 

「えぇー!中西ちゃん帰るのぉ?ぼくちんと赤ちゃんごっこしてぇん」

 

 

井出きめぇ。

 

 

「おい藤田、中西さんが一緒に帰ってくれるらしいから、上原はいらねーだろ」
「いえ、上原さん、さきほど居酒屋で吐いてたみたいですから、やはり連れて帰ります」

 

 

言い訳を二つ用意していたか。

 

 

「つまんねー野郎だな」

 

 

よし、あとは俺が離脱する

 

 

「おい、1。お前は付き合えよ」

 

 

だけなんだけど、脱出できるのか・・・?

 

483 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 00:02:05.67 ID:HD2QBAQ0

 

「いえ、私も飲みすぎて気分が悪いので・・・」
「ふざけんな、お前全然飲んでなかっただろうが」

 

 

何故知ってる。

 

 

「1くん、逃がさない、つーかまえたっ」

 

 

井出きもいって。藤田さん助けて。後ろを振り返る。
あれ・・・居ない・・・。遠くに目をやる。居た。3人で仲良く歩いている。
ふぇ、フェードアウトしてやがった。俺を見捨てたというのか・・・
いや、待て・・・。長居してると、再びリーダーの毒牙が上原さんに向かってしまう。
正しい判断だ。しかし、俺は生贄とされたのか・・・。し、仕方あるまい・・・。

 

 

「よし、男3人でバーにでも洒落込むぞ」

 

 

覚悟を決めろ。この場だけだ。

 

 

俺のこの判断が間違っていたことに気付くのは、飲み会が終わった後の事だった。

 

503 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 00:15:01.04 ID:HD2QBAQ0

 

バーに向かう。ちょいピザのバーテンが出迎えてきた。

 

 

「あ、リーダーさん、お久しぶりですww」
「おう。マスターはいねぇの?」
「今日は休みみたいっすね〜」
「今日こそマスターと接吻しようと思ってたのにwwww」

 

 

井出、あんたは何を言ってるんだ。

 

 

「あれ? その人は?」
「あぁ、うちの新入りだよ。能力はあるぞ。根性もある。だが、俺の嫌いなタイプの人間だ」

 

 

それはこっちのセリフだ。

 

 

「へぇ〜お名前は?」
「1です。よろしくお願いします」

 

 

この挨拶は適当なのか。

 

 

「よろしくっすww 何飲みます?」
「ウーロン茶で・・・」
「芋焼酎にしてやってくれ」

 

 

おい

 

 

「芋っすねww リョーカイっすww」

 

 

おいおい・・・。
なんで俺がこんな目に・・・。そう思っていたら、飲み物が回ってきた。

 

 

「おい、1。で、大学はどこ出なんだ」

 

 

ここでその話題を出すか

 

522 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 00:26:54.70 ID:HD2QBAQ0

 

「秘密ですよ」
「なんでだよ。お前よっぽど良い大学出てるんだろ」

 

 

中卒なんだよ。嫌がってるんだから、これ以上追求してくるな。

 

 

「良いか、1。この世は学歴社会だからな。
 高卒や専卒じゃ、よっぽど良い資格持って無い限り闘えねぇんだよ」

 

 

俺はさらにそれらの下の中卒だ。

 

 

「それに、良い大学出が会社に居たら見映えも良くなるだろ。
 俺は知っておく義務があるんだよ」

 

 

知るかよ

 

 

「秘密ですよ。少なくとも今は。何言われても絶対話しませんから」
「かーつまんねー野郎だな」

 

 

俺に出来ることは、何があっても口を割らないことだ。

 

 

「おい、井出、何とかして1の学歴を聞きだせ」
「リョーカイっすww」

 

 

非常にまずい展開だ。俺は果たしてどうなるんだ。

 

536 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 00:41:10.91 ID:HD2QBAQ0

 

「うふん、ねぇ1くぅん、あたしに学歴お・し・え・て」

 

 

最後にムチュゥとやる井出。臭いから寄るな。

 

 

「しつこいですね、誰にだって秘密にしたいことぐらいありますよ」
「井出にはないぞ」「俺ないよ」

 

 

お前らを基準に考えないでくれ・・・。

 

 

「もうとにかく学歴については絶対話しませんから。いい加減諦めてください」

 

 

井出とリーダーが顔を見合わせる。ニヤリと笑った。
もう帰りたい・・・。

 

 

「わかった、わかった。とりあえず今日は飲め。リーダーで疲れただろ、な」

 

 

やっと諦めたか。ホントにしつこい奴らだ。

 

 

こうして俺はなんとか事なきを得た。
帰宅する俺。

 

 

あー・・・飲み会って・・・疲れるだけで全然面白くなかったな・・・。
俺は風呂も入らず、すぐに眠りに入った。

 

 

そして、週明け、俺は会社に出勤する。

 

 

 

第三部『そして廃人へ・・・』廃人の正体が

 

ここから明かされて行くこととなる。

 

 

564 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 00:57:30.70 ID:HD2QBAQ0

 

「おはようございます」

 

 

開発室に入る俺。

 

 

「おはよう、1くん」
「おはようございます、藤田さん。社長、もう来てらっしゃいます?」
「あぁ、来てると思うよ。何か話すことがある?」
「えぇ。今回のプロジェクトだけリーダーをやる、という約束でしたので、
 正式に降ろさせてもらおうかと思ってまして」
「あぁ、なるほどね。しかし1くん、リーダー続けても良いんじゃないかな」

 

 

勘弁してください。俺には荷が重いです。

 

 

「うーん・・・続けるとしても、私自身、力の無さを痛感しましたので」
「ハハハww そうかぁ。まぁ分からなくもないよ。
 私がリーダーやったら、同じように感じると思うし」
「藤田さんはリーダーやらないんですか?」
「うーん・・・。まぁ・・・ね」

 

 

前回も似たようなことがあったな。過去に何かあったのか?

 

 

「とりあえず、社長室に行って来ますね」
「あぁ」

 

588 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 01:20:25.61 ID:HD2QBAQ0

 

ノックする。

 

 

「どうぞ」
「おはようございます、社長」
「あぁ、1くんかww おはようww どうだった、先週の飲み会は」

 

 

散々でした。

 

 

「えぇ、楽しませて頂きました。会社の経費ですいませんでした」
「そうか、そうかww それは良かったよ。たまには息抜きもせんとなww」
「えぇ」

 

 

さて本題に入るか。

 

 

「社長、例のプロジェクトリーダーの件なのですが」
「やはり・・・降りるかね」
「はい。今の私では荷が重いです」
「そうか・・・。1くんなら出来ると信じていたのだが・・・」

 

 

社長、あなたは俺の能力を過信しすぎだぞ。

 

 

「まぁそういうことなら仕方が無い。君の希望で、誰か後任は居るかね」
「藤田さんですかね・・・。というか、あの人でないと務まらないと思いますよ」
「藤田くんか・・・。彼はちょっと・・・だな・・・。他に適役は?」

 

 

居ない。

 

 

「うーん・・・藤田さんがダメなら、前リーダーですかね・・・」
「そうか、わかった」

 

 

こうして俺はリーダーを降り、リーダーが再びリーダーとなった(分かりにくくてすまん)

 

 

しかし、藤田さんの過去はどうなっているのだ。
社長は藤田さんの能力を認めている。

 

 

だが、リーダーに就任はさせたくない。何か理由があるに違いない。

 

621 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 01:37:40.25 ID:HD2QBAQ0

 

俺はこうして開発室に戻った。
む?上原さんが居ないぞ。

 

 

「おぉ、1くんかww」

 

 

井出だ。なんでこいつこんな嬉しそうなんだ。

 

 

「メールチェックしてみるといいよwwww」

 

 

何なんだ一体。何をしでかした。
メールをチェックしてみる。
添付ファイルがついていた。音声ファイルか?
イヤホンをつけ、開いてみる。

 

 

「ややややややわわわ」

 

 

雑音がひどいが、これは

 

 

「かかかかか」

 

 

この外道、やりやがった。

 

625 :12 /02(日) 01:39:13.39 ID:IHcdp9M0

 

>>621
まさに外道wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
つか暇人のキワミwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwアッー!!!!!!!

 

665 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 01:56:41.43 ID:HD2QBAQ0

 

この音声ファイル、上原さんのHOWEVERだ。

 

 

何をやってるんだ、マジで。

 

 

「これやったの井出さんですか?」
「さぁwwwwwwwwけどこれさwwwwかかかかって連射し過ぎでwwwwwwおまえは連射機かwwwwww」

 

 

ふ、ふざけるのもいい加減にしろよ、この外道。
俺は無言で席を立ち、藤田さんのもとへと向かった。

 

 

「藤田さん」
「1くん、上原さんは病院だよ」
「え?」
「精神科だ」

 

 

上 原 さ ん フ ラ グ 全 て 消 化  死 亡(精神的に)

 

 

 

「マジで言ってるんですか?」
「あぁ。さすがにこれは私も頭に来ている」
「社長に言いましょう」
「私も同席しよう。自惚れじゃないけど、社長から絶対的な信頼を貰ってるから、さらに説得力が増すと思う」

 

 

 

許さんぞ、井出、リーダー。お前らだけは。

 

670 :12 /02(日) 01:58:18.76 ID:alxiVjko

 

おいおいおいおいおいおいおいこれはさすがにまずいだろ

 

728 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 02:21:03.30 ID:HD2QBAQ0

 

俺と藤田さんは、早速社長にこの事を話した。
社長は血相変えて、二人を呼び出した。頼む、これを機にクビにしてくれ。

 

 

「おまえたち、上原も大事な仲間の一人なんだぞ! わかってるのか!?」

 

 

ダメなんだよ、社長。その二人はクビにしないと、また同じことをしでかすんだ。

 

 

「どうもすいません」

 

 

そう言いつつ、リーダーが俺の顔を睨みつけている。そんな事で怯むと思ってるのか。
クビにしてくれ、社長。

 

 

「以後気をつけます」
「ホントに頼むぞ。おまえらのうち、誰か一人でも抜けたら会社に影響が出るんだ」

 

 

な、なんだって・・・。クビにしないのか・・・。

 

 

 

ダラダラ書くと長くなるので、結果だけ書くこととする。
なんと、この二人は減給だけで処分が済んでしまった。

 

すでに指摘されていたが、社長が諸悪の根源なのだ。

 

 

絶対的に人が足りない今の状況(正確には能力のある人が足りない)では仕方ないかもしれん。

 

しかし、人間的にどうなのか・・・。

 

 

 

そして、第三部『そして廃人へ・・・』編は

 

ここから佳境を迎えることとなっていく。

 

726 :12 /02(日) 02:20:02.55 ID:sL.5NbM0

 

やっと追いついた。1さん頑張ってくれ、頼むから死なないで・・・
でもなんていうか、ブラック企業の事はまったくわからんが、病院に行かなきゃいけないほどになるんなら
なんで上原さんをもっと助けてやれないのかとは思ったなあ。

 

 

アクション起こせるタイミングならいくらでもあっただろう
自分の食いぶちがとかそういう問題はとうに超えてる気がするんだが・・・

 

746 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 02:25:25.68 ID:HD2QBAQ0

 

レス見ながら更新してるせいで、カキコが遅くなってすまん。
まぁこの件については、否定意見が多いことは覚悟していた。
もっと早く助けてあげるべきってのは、正論だと思う。不出来な人間ですまん。

 

 

このスレだと、俺の影が薄すぎて全然スポットライト当たらないからなww
さて、今日は寝るとしよう。また明日、朝〜昼辺りから更新再開するよ。
それじゃおやすみ!

 

749 :12 /02(日) 02:26:00.09 ID:sL.5NbM0

 

しかしここにきてまた上原さんの戦線離脱か・・・
かなり痛いよなあ

 

791 :12 /02(日) 03:02:30.69 ID:Nwm1t76o

 

大学とか有名大学行けちゃう有能な人って
それまでの人生でいろいろな無能見てきてるから、
はっきり無能を切り捨てたり使い方を知ってるんだよな。
藤田さんはその手のタイプだよな

 

>>1は中卒って言うけど、そのせいか無能との付き合い方あんましらなそうだな
だが俺は>>1の謙虚な姿勢にスゲー好感持てる
上司だったら普通に嬉しいよ
出来れば中卒ってことがリーダー・井出にばれないでほしい・・・

 

810 :12 /02(日) 04:43:56.09 ID:kKCjLGEo

 

この会社に藤田さんのような人がいるのも、元ニートの1がしっかりしだすのも
働き蜂の法則を考えればしっくりくるきがする

 

蜂の巣の2割はしっかり働いて6割は普通で2割はさぼってるんだけど
色んな巣から2割の優秀な蜂を集めて巣を作っても、その中の6割は普通になって2割はさぼりだす

 

その逆もしかりみたいな

 

815 :12 /02(日) 05:21:36.75 ID:6L/E5fwo

 

>>810
2割8割の法則、というのもある

 

 

>>1の環境は今も昔も変わらないようだけど、入社即時から貴重な経験を積めた点はうらやましい
逃げ出さずに耐えるだけの覚悟と根性があってこそだけど

 

・・・などと思う現役PG/SEです

 

835 :12 /02(日) 11:03:38.72 ID:t8UQNBgo

 

上原さんは自分で病院に行ったんだろうか?
それとも家族かな?両親と一緒に暮らしてたんだろうか?

 

すごく心配だ

 

836 :12 /02(日) 11:11:23.33 ID:g9y66aYo

 

というより、上原さんは、間違いなく、刑事告訴できるな。
リーダーと井田相手に、刑事および民事の損賠すればいいのに。

 

838 :12 /02(日) 11:34:23.95 ID:5g2e7jko

 

>>836
告訴で人員がしょっぴかれる
   ↓
プロジェクトチーム崩壊・離散
   ↓
社長「1くん、本当にすまんが他の当たってくれないか?」
   ↓
1は退職金もほどほどに失業
上原さんだけ民事の損害賠償金で当面の生活費を確保
   ↓
めでたしめでたし(・∀・)ニヤニヤ

 

811 :12 /02(日) 05:04:14.72 ID:Adv8C5k0

 

なんか>>1にニックネーム欲しいな

 

841 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 11:58:53.60 ID:HD2QBAQ0

 

おはよう。
いや、9時には起きてたけどね。今どのくらい人居るかな。

 

上でニックネームの話があがってたから、考えてみようかなって思う。
何か、おおこれ良いな、ってのがあったら、それ使わせて貰いたいな。
もちろん1のままでもいいんだがww
とりあえず飯食ってくる。

 

859 :1 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 12:12:46.93 ID:HD2QBAQ0

 

電子レンジで温め中。
なんか会社みたいなノリになってるな。何かおまえら怖いぞww

 

 

しかしアレだなー。こうも仕事、仕事だと、こういうのでストレス発散しないとダメだな。
ケンジは彼女が一番、とか言ってたけど、俺に彼女が出来たら天地崩壊しちまうわ。
多忙すぎてそれ所じゃねぇ。
同業者だと、俺と同じ意見の人って多いんじゃないかな。

 

まだ学生でPG志望の人は、今のうちに作っておかないと苦労するんだぜ。

 

869 :12 /02(日) 12:22:13.57 ID:uXSEiJ.o

 

もうプログラム男でよくね?

 

871 :12 /02(日) 12:26:04.02 ID:EGcMpVY0

 

プログラマーならぬプログラマンでおk

 

883 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 12:34:30.42 ID:HD2QBAQ0

 

>>869
それ良いな。けど長いから、マ男にしよう。

 

というわけで、今日から俺は「1」から「マ男」になりました。
これからもよろしく頼むぜ。

 

886 :12 /02(日) 12:35:48.61 ID:/DwbeBo0

 

今日からマ男wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

 

914 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 12:55:05.27 ID:HD2QBAQ0

 

数々の死亡フラグを打ち立てた上原さんは

 

ついに戦線離脱・・・

 

 

もとい精神的に死亡した。

 

 

会話スキル、コミュ力はともかく、仕事では藤田さんに次ぐ実力者である彼を失った。
当然、業務に影響が出てくる。
そして何より、リーダーの鬱憤のはけ口が居なくなったのだ。
どうなるかは言わなくても想像ができるだろう。

 

 

中西さんは前プロジェクトで降りる予定だったみたいだが、急遽予定を変更し続投が決定した。
それでも俺たちは横暴でどうしようもないリーダーのもと、仕事をこなしていたのだ。

 

 

上原さんが居なくなり、4ヶ月が経過した。

 

上原さんはまだ帰ってこない。
リーダーの怒りもはけ口を失い、常にイライラとしている。

 

 

一方の俺は仕事が一気に増えてしまい、それをこなすのに必死だった。
堤防決壊するのも時間の問題だ。
井出さんは性格で、藤田さんは元より、中西さんは藤田さんの存在で、何とか持っている。
俺には・・・何も無い。

 

強いてあげるならば藤田さんだけだった。

 

 

そして、ついに事件は起きる。

 

 

思い出したくもない。

 

 

まさに佳境なのだ(読んでる人にとって)

 

928 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 13:04:32.14 ID:HD2QBAQ0

 

上原さんが死に、5ヶ月が経過した頃か。
俺はいつも通り出社した。

 

 

「おはようございます」
「おはよう、マ男くん」

 

 

挨拶したのは藤田さんだけだ。
あれ?おかしいな。

 

 

いつもなら、無愛想ながらも返してくるんだが。
俺は不審に思いながらも席につく。

 

 

「おい、マ男」

 

 

リーダーだ。声のトーンが低いぞ。

 

 

「はい」
「おまえ中卒だろ」

 

 

え?

 

 

「ちょ、リーダーww」
「うるせぇ。どうなんだマ男。おまえ中卒なんだろ、おい」

 

 

な、なんだ?え?

 

 

「中卒の分際で、この俺をアゴでこき使ってたのかって聞いてんだよ!!」

 

 

怒声が部屋中に響き渡る。

 

 

な、なに?え?俺?え?何だ、何なんだ!?

 

929 :12 /02(日) 13:06:00.34 ID:EQYcgUMo

 

ええええええええええええええ

 

931 :12 /02(日) 13:06:39.90 ID:sMS9UHIo

 

学歴もう関係ないだろ・・・・糞リーダー

 

935 :12 /02(日) 13:07:21.98 ID:TtwfuQAo

 

攻撃の材料出来たと思ったんだろうな
ちいせえ、チンコと同じくらい人間もちいせえwwwwwwww

 

951 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 13:12:16.04 ID:HD2QBAQ0

 

「何の話をしてるのか分かりません」

 

 

こう返すのが精一杯だった。
学歴は俺のコンプレックスの一つだ。
親以外に語ったことなど無い。
それに何でリーダーが知ってるんだ。
5ヶ月前の飲み会では、絶対に口を割らなかったし、その間も口を割っていない。

 

 

「学歴の話をしてんだよ、中卒」

 

 

中卒と言うな。誰にだって事情があるんだぞ。

 

 

「おまえ、中卒の分際で俺に意見してたんだろ」

 

 

部屋中、戦慄が走りまくり、あの井出さんでさえ突っ込めない雰囲気だ。

 

 

「何とか言えよ、なぁ中卒」

 

 

俺の中で何かが崩れ去っていく。
働く決心、基本情報資格取得、就職、リーダー就任、俺が築き上げた自信たちが、音を立てて崩れていく。

 

 

「おい、井出、藤田、中西。中卒に俺たちは使われてたんだぞ」

 

 

 

自信が全て崩れ去った時、俺は

 

小学・中学時代にいじめられて登校拒否をした時の、当時の自分に戻っていた。

 

 

 

第三部『そして廃人へ・・・』

 

 

 

廃人の正体は、上原さんでも井出さんでも中西さんでもない

 

 

俺だったのだ

 

966 :12 /02(日) 13:17:12.53 ID:INB5oYDO

 

1番のコンプレックスをこんな形で罵倒されるとほんときついよな。
今までのそれにまつわる記憶も思い出されて。

 

16 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 13:27:07.67 ID:HD2QBAQ0

 

後で聞いたが、求人票を作る際、俺と藤田さんの経歴を載せるために
履歴書を社長から貰い、それで知ったらしい。
どこまで嘘でどこまで本当かは知らんが・・・。

 

 

それからの日々は地獄だった。
周りの目が常に侮蔑の色に見えた。
あの藤田さんも、俺の事を「中卒が」という目で見ていると思っていた。

 

 

俺だって好きで中卒になったわけじゃない。高校行きたかったさ。
行かなかったお前が悪い、と言われれば、それはまさに正論だし、俺は否定する気はない。

 

だけどな、中卒だからと言って、人に意見しちゃいけないとか
人の上に立っちゃいけないってのは何か違うんじゃないのか。

 

 

中卒だからって理由で、なんで俺はこんなに馬鹿にされないといけないんだ。
俺の歩んできた人生は確かに褒められたものじゃない。
だけど、それを食い物にされるっておかしくないか?

 

 

まぁどんな話にも賛否両論だ。
俺はこう考えている、と受け取って貰えれば問題ない。

 

 

どう考えても自己擁護ですまんww

 

 

俺は不意に涙が出たりと、色々とやばいことになっていた。

 

会社に行きたくない。
平日の朝が来るたび、強烈な吐き気と眩暈に襲われる。

 

 

そしてついに俺は

 

(会社・・・辞めよう・・・)

 

俺は社長室に向かった。

 

19 :12 /02(日) 13:29:43.35 ID:Uk0ykDAo

 

学歴に拘る奴程仕事出来ないってのが良くあるよな。
中卒だからって恥じる事はない。
仕事を遂行する上では能力が全てだ。
俺はそう思う。

 

43 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 13:38:30.39 ID:HD2QBAQ0

 

俺はよく頑張ったさ。誰だって褒めてくれる。
もう社会に出て行くのは俺には無理だ。この会社をやめて、NEETに戻ろう。
そう思いつつ、社長室をノックする。

 

 

 

「どうぞ」
「失礼します」
「む、マ男くんか。どうしたんだね」
「会社、やめようと思います」
「え? 何かあったのか」

 

 

事情を説明したって、何の意味もない。俺は早くここから出たい。

 

 

「家の都合で、仕事を続けることができなくなりました」
「そ、そうか・・・。残念だな・・・」

 

 

沈黙。

 

 

「本当に、本当にやめるのか?」

 

 

やめる。俺は頷いた。

 

 

「マ男くん、君は本当に優れた人間だ。
 君をここで失うのは、原石をどぶ川に捨てることと一緒なんだよ」

 

 

俺は中卒なんです、社長さん。
大卒がダイヤの原石ならば、中卒は河原の石なんです。
いくら磨いても無意味なんですよ。やめさせてください。
言葉には出なかったが、俺は終始、下を向いていた。

 

 

「・・・わかった。だが、少し待ってくれないか」

 

 

何なんだ・・・。

 

74 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 13:58:11.00 ID:HD2QBAQ0

 

第三部『そして廃人へ・・・』ついにこのレスで終わる。

 

 

社長はすぐ傍にある子機を取り、電話し始めた。

 

 

「あぁ、藤田くんか」

 

 

藤田さんと俺に何があるんだ。

 

 

「すぐ来てくれ。そうだ。君から聞いた件だよ」

 

 

電話が終わる。

 

 

「マ男くん、藤田くんが今から来る」
「それがどうかしたんですか」
「・・・今の君を私はここで失いたくないんだよ。藤田くんと、二人で話をしてみてくれ」

 

 

そう言い、部屋を出て行く社長。
時計の針が動く音だけが聞こえる室内。

 

不意にノックの音がした。

 

 

「社長、よろしいですか」

 

 

藤田さんの声だ。
もう一度ノックの音。

 

 

「・・・失礼しますよ」

 

 

藤田さんが部屋に入ってきた。

 

 

「マ男くん、大丈夫か?」

 

 

・・・

 

 

「少し、話をしようか」

 

 

今更何を話すのか。

 

 

「マ男くん、私の過去の話だ」

 

 

・・・なんだって?

 

 

 

数々の修羅場を潜り抜けてきたが、ここで人生最大の壁にぶち当たってしまった俺。
中卒という名の大きすぎるコンプレックス、今まで生きてきた経験の少なさ。
そして、崩れ去った自信。

 

果たしてここから俺は這い上がれるのか!?
そして、藤田さんがこれから話す過去の話とは!?

 

 

 

どうする俺!? どうなる俺!? 続くぅ!!

 

 

 

次回、『平成の孔明、マ男に過去を語る』

 

 

532 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 17:13:55.35

 

第四部『平成の孔明、マ男に過去を語る』

 

 

 

「マ男くん、私の過去の話だ」

 

 

・・・なんだって?
俺は今まで、藤田さんの過去に多くの謎を感じていた。
仕事ができる。性格だって良い。
何より、どれだけ追い詰められても、それを切り開いていく力がある。
そんな人が、こんなデタラメな所で働く意味があるのか?
俺はいつもそう感じていたが、聞けずに居た。

 

それ所ではないというのもあったが、俺は自分の過去を聞かれるのはイヤだ。
自分がされてイヤな事はしない。これが俺の哲学。

 

 

「藤田さんの過去ですか・・・」
「興味ないかな?」

 

 

興味がないわけじゃない。むしろ、興味があると言っていい。
だけど・・・だけどな
今はそんなことはどうでもいいんだ・・・。俺は早く、この会社をやめて・・・

 

 

「そのままで良いから、私の話を聞いてくれ」

 

 

藤田さんが、ゆっくりと口を開いた。

 

542 :12 /02(日) 17:15:12.06 ID:kO8mg5Q0

 

>>532
キタ━━━━┳━━┳━┳━━━(゚∀゚)━━━┳┳━━┳━━━┳━ !!!!
キタ━┳━┳┻┳━┻┳┻━━┳(゚∀゚)━┳━┻┻━┳┻━┳━┻┳ !!!!!!
キタ━┻━┻┳┻━┳┻┳━━┻(゚∀゚)━┻━┳━┳┻━┳┻━━┻ !!
キタ━━┳━┻━┳┻━┻━┳━(゚∀゚)━━┳┻━┻┳━┻━━┳━ !!!!!
キタ━━┻━━┳┻━━┳━┻━(゚∀゚)━━┻━┳┳┻━━┳━┻━ !!!
キタ━┳━━━┻━┳━┻━┳━(゚∀゚)━┳━━┻┻━┳━┻━┳━ !!!!!
キタ━┻━━━━━┻━━━┻━(゚∀゚)━┻━━━━━┻━━━┻━ !

 

592 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 17:23:18.80 ID:HD2QBAQo

 

「どこから話そうか・・・。私も色々と波乱万丈の人生を歩んでいてね」

 

 

・・・。俺よりもなのか?

 

 

「そうだな・・・。学生時代から、話そうか。
 私が大学生の頃の話だよ。7年か8年前ぐらいかな」

 

 

藤田さんは大卒だった。俺は中卒だ。
大卒が説教を垂れるのか。もうやめてくれ。俺はもう疲れたんだ。
俺は必死に自分を抑えていた。利己的な考えしか出来ない事に気付いてはいたが
俺の中では、もうとにかく「逃げたい」「逃げたい」だったのだ。

 

 

「当時、私は夢があってね。
 法学部に在籍してたんだが、そっち関係の仕事につきたかったんだ」
「・・・」
「だから、私は一生懸命だったよ。ただひたすら、勉強して、バイトして・・・」

 

 

 

この話に一体、何の意味があるというんだ・・・

 

600 :12 /02(日) 17:24:44.22 ID:9Zi9qqUo

 

法学部でSEって時点で既に波乱だな

 

650 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 17:35:55.82 ID:HD2QBAQo

 

「だけど、人生は上手く行かないんだよ。努力・チャンス・そしてそれを見逃さない判断力。
 これらが無いと、中々成功は出来ないんだ」

 

 

良く分からないが、真剣に耳を傾けている俺が居た。激しく同意できた。
これは今の俺を説教してるんじゃない、何か重要な意味を持っている。

 

俺はそう感じた。

 

 

 

「当時、私には付き合ってた彼女が居てね。私はその彼女の事が本当に好きで、
 その人を幸せにするためだけに勉強してたようなもんだった」

 

 

大切な人。俺の印象では、そう聞こえた。

 

 

「彼女は年上で、3つか4つ上だったのかな。すでに社会人だったんだ。私は学生で、お金も無くてね。
 そんな彼女に、私は甘えていたのかもしれない。金銭的な面で、私はかなり援助してもらってたんだよ。
 法学部で、しかもそっち系の仕事に進むとなると、膨大な額のお金が掛かる。当然、バイトだけじゃ回りきらないんだ。
 私は家族と、そこまで仲良くなかったから、正直な話、かなり彼女に期待していたんだよ」

 

 

 

藤田さんは独力で何でもこなす人だ。
この話を聞く限り、まだ学生時代ではそういうわけではなかったと伺える。
いや、むしろ、独力だけではどうしようもできない状況だったのか?

 

 

 

「まぁ、そんなこんなで、私は学年を重ねていったんだ。当時の私は、本当に充実していてね。
 毎日が楽しかったなぁ。本当に、真っ直ぐしか見えてなかった。
 何もかもが、自分のために動いていると思っていた」

 

 

 

藤田さん、あなたの言いたい事が、俺はだんだんと見えてきました。
あなたは・・・

 

664 :12 /02(日) 17:40:37.66 ID:2i3xqy.0

 

引き込まれるわ
おもしろい

 

688 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 17:45:55.92 ID:HD2QBAQo

 

「大学3年生の冬の話だ。周りは就職活動で慌しくてね。当然、それは私もだった。
 だけど、それでも勉強し続けたよ。夢を掴むためにね。私はひたすらがむしゃらだった。
 そしてその先に、彼女と結婚し、幸せを築いている自分を描いていたんだ」

 

 

少しの沈黙。

 

 

「だけどね、私は結果を追い求める余りに、彼女に・・・彼女の異変かな・・・。
 気付いてあげれなかった。私は今でも後悔しているよ。なんで、気付かなかったのかと。
 いや、気付いていたんだ。だけど、私は自分の事で精一杯だった」

 

 

藤田さんの沈黙が多くなってきた。

 

 

「彼女の職業は・・・」

 

 

沈黙。俺は藤田さんの話に引き込まれていた。
似ている。
いや・・・何か俺と、同じ道を歩んでいる気がする・・・。

 

 

「・・・プログラマーでね。それはもう忙しそうだった。
 私が勉強に熱中しているせいで、会えないだけかと思ってた。
 けど、そうじゃなかったんだ。彼女自身も忙しくて、会えなかったんだ。
 そして、私の夢をかなえるために、彼女は凄く頑張った。自分の事じゃないんだよ?
 まだ未来も確定してない、ただの若造のために、彼女は頑張ったんだ。・・・けど」

 

 

 

言うな、言うな。言うな、藤田さん。

 

 

 

「頑張りすぎたのかな・・・。自殺して・・・しまってね」

 

 

 

俺は緊張の糸が切れたかの如く、泣いていた。

 

693 :12 /02(日) 17:46:55.15 ID:N00ioOMo

 

>>688

 

。・゚・(ノД`)・゚・。

 

706 :12 /02(日) 17:47:51.35 ID:uchw7gDO

 

うわあああぁあぁぁぁぁ

 

713 :12 /02(日) 17:48:32.77 ID:uflN5YAO

 

飲みの時の藤田さんの話思いだしてまた泣いた…
彼女つくる気ないってそういうことか…

 

730 :12 /02(日) 17:51:34.44 ID:Iilu9kg0

 

有能な藤田さんがこのブラック会社にいるのは、
彼女を死なせてしまった自分への戒めだという事か、、、!

 

753 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 17:57:00.10 ID:HD2QBAQo

 

「私は驚いたというより、呆れたよ。本当に急な話だったんだよ? 笑ってしまうよね。
 呆れながら泣いたよ。全てが終わったと思った。そりゃそうだろう。私は彼女のためだけに頑張っていたんだ。
 それが急に居なくなった。一緒に買った指輪や、彼女から貰った物・・・それらが全て憎たらしかった」

 

 

 

もう・・・やめてくれ・・・。母ちゃんのことを思い出す・・・。

 

 

 

「私に残ったものは、計り知れない後悔と、積もりに積もった勉強道具・・・。そして、死の決意だった。
 もう生きていても何の意味もないと思ったよ。私の大学生活は、彼女のために存在していた。
 それが無くなったんだ。この先の人生なんて、何の意味も持たない。そう思っていたんだ」

 

 

部屋に、俺の嗚咽だけが響き渡る。

 

こらえろ、こらえろ、と念じるも、感情は高ぶっていく。

 

 

 

「彼女の葬式に出た時、私もすぐそっちに行くよ。という意味を込めて、指輪を花束の中に忍ばせた。
 そして葬式が終わり、私は死ぬために帰ろうとしたんだ。けど、そこでご両親に呼び止められてね」

 

 

 

俺は、俺の体験なんて、藤田さんの絶望に比べれば、全然大したことないじゃないか。
俺は何やってるんだ。自分を叱咤する。

 

796 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 18:11:30.50 ID:HD2QBAQo

 

「彼女の分まで、生きてやってくれ。そう言われたよ。こんな事言えるか?
 私のせいで彼女が死んだも同然なんだよ? 怒られて、殴られて、罵倒されて・・・それを覚悟してたのに
 生きてやってくれ、だよ?
 今思い出すと笑えて来るよね。どんだけお人好しなんだよ。家族ぐるみかよって。
 今思えば、これがチャンスだったのかな・・・。
 夢じゃなくなった夢を実現する・・・最後のチャンス・・・」

 

 

・・・。

 

 

 

「だけど、私はそんなに強くない。
 ドラマや漫画なら、ここで躍起になって、がむしゃらになって何が何でも夢を実現しようとするだろう。
 でも、私には無理だった。そんなに私は強くなかったんだ。
 だけど、ご両親の言葉が引っかかって、死ぬのも憚られた。
 そんな私が取った行動は、ただ何の目的も無く生きるだけ。
 つまり、今で言われているNEETだね。当時の私は何を考えていたんだろうね。
 こんな事したって、彼女が報われるわけがないのに」

 

 

似ている。藤田さんの人生は、俺と似ている。

 

 

 

「そうやって、私は時を無駄に過ごしていった。
 季節の移り変わり、出会いや別れ・・・。
 全てが、私の外で起きているものだと思っていた。
 私の中で、彼女が死んだ日から、時間が止まっていたんだろうね。
 だけど、そんな私にも転機が訪れたんだ。
 絶望のどん底に居た私を、奮い立たせる転機が」

 

812 :12 /02(日) 18:14:42.88 ID:9qIORYI0

 

やっと追いついた俺が流れをよまずうp

 

 

 

 

藤田さんかっこよすぎだぜ・・・

 

835 :12 /02(日) 18:18:03.54 ID:a8Yro0E0

 

>>812
おお・・・俺の脳内のリーダーのイメージまさにこんな感じ・・・

 

859 :12 /02(日) 18:27:38.83 ID:aTcw9Tc0

 

法曹→彼女の死→NEET→出会い→プログラマー か?

 

 

人生わからんな
今幸せだが、俺にも・・・

 

865 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 18:30:28.67 ID:HD2QBAQo

 

「夏のある日、私は何となしに郵便受けを見たんだ。小さな封筒が入っていた。
 宛名は彼女のご両親だったよ。開けてみてみると、手紙が入っていた。
 細かな内容は覚えてないけど、要するに、人づてに今の私の状況を聞いたが
 今のあなたの状況では、娘は喜べない。社会に貢献して欲しい。そう書かれていたんだ」

 

 

藤田さんが話を続ける。

 

 

 

「それで私は就職する気になった。だけど、4年か、5年かな。
 そのぐらいNEETやってた私に、就職先が中々見つからなくてね。
 学歴だって大学中退で、やはり厳しいんだよ。
 けど何を思ったのかなぁw
 彼女と同じ業種、プログラマの求人に応募した私が居たんだ。
 それでもやっぱり落ち続けて、行き着いた先がこの会社だった」

 

 

 

そ、そうだったのか・・・。よりによって・・・。

 

 

 

「まぁ、マ男くんも予想している通り、ホントにひどい有様でねw
 これは社長には内緒だよ?
 当時は上原さん、井出さん、リーダーしか居なくて、上原さん一人でこの会社が回ってるように見えた。
 それで私は思ったんだよ。
 彼女の立場は、上原さんのような位置だったのではないかと。
 私は決意したよ。これ以上、自殺者を出してたまるかって。
 だから必死に勉強して、吸収できるところは吸収してただひたすら仕事に打ち込んだんだ」

 

 

 

藤田さんの過去が、明らかになっていく。
今の藤田さんを形成している中身が、次々と見えていく。

 

905 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 18:40:53.31 ID:HD2QBAQo

 

「まぁ、変な話になっちゃうけど、動機は上原さんを助けることだね。
 ここだけの話、上原さんのイジメ、前と比べるとかなりマシになったんだよw
 本当は、もっと早い時点でこうしたかったんだけど、リーダーと井出さんは私の先輩だからね。
 やっぱり中々強く言えないんだよ。
 だから、仕事できるようになって、文句を言わせない立場になれば
 少しは発言力も高まるだろ? まぁそれでも、あまり目立った事はできないけどね」

 

 

 

俺はここまで聞いて、自分の人生と藤田さんの人生を照らし合わせた。
NEETになるまでは、俺とは対極の人生を歩んできた藤田さん・・・。
全てが上手く行き、全てが希望に満ちていた。俺はその逆だ。
だけど、NEETになってからは、共通点がとても多い。

 

いや、正確には彼女が死んでからだ。

 

 

 

今まで俺は、何のために仕事を頑張ってきたのか?
母ちゃんのためか、父ちゃんのためか、自分のためか。

 

そんな事はわからん。

 

 

ただ言えることは、生き抜くためには仕事が出来ないといけない。
中卒でまともな人生を歩んでない俺が挽回するにはこの方法しかないと思ったのだ。

 

少なくとも、俺はそう思って仕事に打ち込んだ。

 

 

 

理由は違えど、どこか共通点のある藤田さんが話を続ける。

 

926 :12 /02(日) 18:48:36.02 ID:KMppKTM0

 

彼女の幻影とはいえ他人を救うために仕事をする藤田さんまじいい人だな

 

232 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 21:06:25.43 ID:HD2QBAQo

 

ただいま。
全然関係ないけど、前スレの812が妙に嬉しかったなぁ。
書いた人ありがとうな。

 

じゃあ続き書くよ。

 

 

283 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 21:26:36.35 ID:HD2QBAQo

 

「私は、マ男くんの過去にどんな事があったかは知らないよ。
 なんで学歴が中卒なのか。なんで今まで職務経験が無かったのか。
 ここについては、人によって意見が変わるだろう。
 でもね、私は思うんだよ。大事なのはそういう所じゃないんだ。
 何を理由に働くのか。何故自分は働くことにしたのか。
 ここが重要だと私は思う。一番最初に話したけど、努力、チャンス、そしてそれを見逃さない判断力・・・。
 マ男くん、私が見る限り、君はこの内の二つをすでに持ってるんだよ」

 

 

 

この人は、まだ俺にやめるべきではない、と言っている。
まだやれる。頑張れると言っている。

 

 

 

「君は未経験でこの会社に入ってきた。私と一緒でね。
 そして、リーダーから何も教えて貰わずに仕事を任されただろう。
 その時、君はどうした? 井出さんに聞いたり、私に聞きに来たりした。
 みんな忙しくて、マ男くんに構ってあげられなかった。
 それでも、君は諦めなかった。一人で努力して、一人で判断して、一人で完成させただろう。
 私は違ったよ。
 リーダーに何度も聞きに行って、怒鳴られながらも、教えてもらわないと仕事が出来ませんって反撃して
 そうやって、人の力を使って完成させた。
 どっちが凄いと思う? 私は、マ男くんの方が凄いと思うよ」

 

 

藤田さんと俺は、共通点も多いが、真逆だと言える部分も多いことが分かった。
俺は今まで、人を信用できた試しがなかった。友達だと思ってたやつにいじめられたり、手の平返されたり
常に裏切りと背中合わせで暮らしてきた。だから俺は、一人で頑張らないと生きていけないと思ったのだ。

 

所が藤田さんはどうだ。今まで上手く行ってきた分、人の温もりや優しさを知っている。
だからこそ、あの真底最悪のリーダーや井出にも諦めず、教えを請う事が出来た。
そしてそれが結果となっている。

 

 

俺と藤田さん・・・全く違う人生を歩み、ある一点で交錯する場所・・・。
藤田さんがこの部分を話し始める。

 

337 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 21:55:55.08 ID:HD2QBAQo

 

「マ男くん、今君は、この会社をやめたいって思ってるだろう。その気持ちが分からない事もない。
 だけど、やめた先に何があるだろう? よく考えてごらん。私は、今はやめるべきではないと思うよ。
 君がどういう理由で、長い長い無職歴を捨て、働く気になったのかは知らない。
 私を例にあげるならば、私は彼女が死に、ご両親からの手紙で働く気が起きた。
 つまり、人の出会いと別れが、私の原動力となったんだ。
 こうなったら人は強い。どんな困難にだって立ち向かえる。
 私は少なくとも、こう思っている。
 君は私よりも無職歴が長いようだったから、私なんか足元にも及ばない衝撃を受けたんだろう」

 

 

藤田さんの言う通り、俺と藤田さんは人の死で大きく人生が変わった。
そして俺は、どんな事があってもくじけないと決めたんだ。
何度、書類選考で落とされようが、面接までこぎ着けて落とされようが、父ちゃんに良く頑張った、と言われようが
俺は決して諦めなかった。
入社日に考えられないような現実を突きつけられても、初めてのプロジェクトリーダーで死にそうになっても

 

俺は諦めなかったんだ。

 

 

藤田さんは、人の出会いと別れが原動力となった、と言った。

 

俺が頑張ってこれたのは何故だ? 確かに先述の人の死もあるだろう。
だけど、何よりも、藤田さんのようになりたいから。藤田さんが憧れの人だったから。

 

なんだ、俺だって、出会いが原動力になってるじゃないか。
中卒がなんだ? 中卒だから仕事ができないのか? それは違う。

 

仕事ができないなら、できるようになればいい。
中卒なら、大卒に負けないぐらい仕事ができるようになればいい。

 

この考え方こそが、大事なんじゃないのか?

 

 

 

「君は、確かに今の時点では私や上原さん、中西さんには仕事ではかなわないだろうし
 コミュニケーションや度胸では、井出さんやリーダーにはかなわないだろう。
 だけどね、君はこれら全員を上回る底力を秘めてるんだよ。少なくとも私はそう思うよ」

 

396 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 22:14:08.84 ID:HD2QBAQo

 

「努力も出来て、一人で的確・・・かどうかは分からないけど、間違いではない判断も出来て。
 マ男くんは、真の意味で強い人間なんじゃないかな。それに、誰にだって挫折はある。
 重要なのは、そこでくじけるのか、それを力とするのか、この違いなんじゃないかな。
 君はチャンスに恵まれていない。酷かもしれないけど、私はそう思う。
 だけど、入社日に渡された仕事をこなした君を見て、私は君を育てたいと思った。
 私はそれを社長に言ったし、社長も私と同じことを思っていた。
 だからじゃないけど、君の事は気に掛けていたし、どうしようもない時は手を差し伸べた」

 

 

 

まさか、この件は・・・。俺はここで薄々感づいていた。
平成の孔明、藤田さんは、俺を

 

 

 

「学歴の件に関しても、バレた時に助けようと思ったよ。君は明らかに様子がおかしかったからね。
 だけど、私は思ったんだ。
 ここで助けたら、マ男くんは、いつまで経っても一人立ち出来ないのではないか。
 いつまで経っても、私を頼るんじゃないかとね。だから、限界まで私は我慢した。
 一種の賭けでもあった。最悪、連絡無しで会社を去る可能性だってあるんだから。
 私はこの事を社長に話し、辞職を願い出た時、私を呼んでもらうように言っておいたんだ」

 

 

 

間違いない。この人は、この学歴事件を上手く利用し、俺の精神的レベルアップを図っていたのだ。

 

 

なんという孔明の罠なのか・・・

 

414 :12 /02(日) 22:17:20.73 ID:FPAQjs.o

 

藤田さんすげえええええええ
このぐらい先読みなんて孔明には造作も無いことなんだな
俺も頑張ろう……

 

417 :12 /02(日) 22:17:28.30 ID:ICFpu/Ao

 

もう今度から頭のきれる人を孔明と言わずに藤田さんと呼ぼうぜ

 

412 :12 /02(日) 22:17:03.16 ID:Ipewbyw0

 

俺の会社にも井手みたいなのがいたよ
企画押してるのに一人だけ「おやすみマンモス」と言って定時に帰ってタクシーに轢かれた

 

420 :12 /02(日) 22:17:52.87 ID:12vaTDgo

 

>>412
最後ふいたwwwwwwwwww

 

431 :12 /02(日) 22:22:08.49 ID:7yszasc0

 

私、男だけど藤田さんになら抱かれてもいい

 

481 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /02(日) 22:30:03.67 ID:HD2QBAQo

 

「社長は、私のこの提案を猛反対したよ。原石をドブに捨てるのと一緒だと。
 けど、私はそうは思わなかった。現場で君を見ていて、そんな事をするとは思えなかった。
 そして、君はやっぱり私の思った通り、きちんとケリをつけにきた。その君に、今私は話をしている」

 

 

俺の中で、何かが再び築き上げられていく。
働く決心、基本情報資格取得、就職、リーダー就任

 

そして

 

 

憧れの人からの認定資格。

 

自信が、より大きく、より強く、より完璧になって復活した瞬間だった。

 

 

「マ男くん、もう一度、頑張ってみないかな。

 

 私は、これからも君を助けていくし見捨てることもしない。

 

 いずれ、君は私と肩を並べ、私を追い越すだろう。

 

 もう一度、頑張ってみないかな」

 

 

 

俺はここで始めて口を開いた。

 

491 :12 /02(日) 22:31:05.91 ID:3dz709co

 

>>481
下の口も開いたんだな・・・

 

527 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 09:06:16.02 ID:y/gtPGko

 

「すいません、ありがとうございます・・・」

 

 

言葉が詰まった。色んな想いが、俺の中で渦巻いていた。
俺は自分をほんのちっぽけな存在としか思っていなかった。
例え俺が死んだ所で、世界には、日本には、この会社には何の影響も無いだろう。

 

そう思っていたが、それは違ったのかもしれない。
中には、引き止めは常識だから、と言う人も居るだろう。

 

だけど、藤田さんという一人の人間が、俺のために過去を語ってくれた。

 

確かに話の内容が本当かどうかは分からん。
だが俺に、やめるな、頑張れと励ましてくれた。これは紛れも無い事実だ。
俺はそれに応えないといけない。

 

 

「藤田さんのようになれるかどうか分からないですけど」

 

まだ俺は頑張れるだろう。

 

「頑張ろうと思います」

 

 

「おぉ、そうかw やっぱりマ男くんは、私の見込んだ通りの男だったなぁw」
いや、俺じゃなくて、あなたが凄いと思うが。

 

 

こうして俺は、退職を思いとどまった。

 

ケンジにこの件を話したら「お前を繋ぎとめておく罠だよ」と言われたが、お前ひどすぎるぞ。

 

先週書いた前述では、一気に復活したかのように書いてあるが、実際はそうでもない。

 

 

やはり、最初のうちは戸惑いや不安もあった。
だけど、背水の陣から、藤田さんという強力な後ろ盾が出来たという事が俺の中での最も大きな変化だった。
あの人が居るから大丈夫、安心できる。
他人にそう思わせる事の出来る人が、この日本に何人居るだろうか。

 

藤田さんは、本当に尊敬できる人だ。

 

532 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 09:16:11.60 ID:y/gtPGko

 

「じゃあ、マ男くん、顔を洗ってw 先に開発室で待っているよ」

 

 

鼻水と涙で、俺の顔はグショグショとなっていた。

 

 

「あ、待ってください」
「ん?」

 

 

中卒とみんなにバレた。みんなはどう思ってるんだ?
  意志が確認できたのは、藤田さんだけだ。

 

 

「えっと・・・ちょっと・・・あのー・・・戻りにくいっていうか・・・」
「ん? なんで?」
「いや、やっぱ・・・リーダーがあれだけ・・・でしたから・・・」
「あぁ、リーダー以外は気にしてないから大丈夫だよ。
 大体、うちのチームで大卒はリーダーだけだから」

 

 

そ、そうだったのか。確かに藤田さんも大学中退だもんな。

 

 

「みんな何か言ってましたか?」

 

 

細かく聞く俺。やはり受けた傷は未だに深い。

 

 

「いや、特には何も。リーダーが怖くて、みんないつも通りに接することが出来ないだけだよ。
 そのリーダーにも、私から話をしておいたから、君は何も気にせずに来れば大丈夫」

 

 

そう言って部屋を出て行く藤田さん。そんな事を言われてもな・・・。
しかし、あのリーダーに真っ向から話をしたと言うのか。凄い度肝だ。

 

俺はしばらく、部屋で考え事をしていた。
藤田さんの話した内容、俺が歩んできた人生、そしてこれからの事。

 

やはりどう考えても、今は辞める時じゃない。
俺はまだ、人生をやり直し始めたばかりなんだ。

 

俺がここで辞めたとしよう。誰が喜ぶだろう? 
親はもとより、俺自身も喜べるはずがない。まだ頑張れる。

 

 

よし、開発室に戻って

 

・・・ん? 

 

待てよ。・・・何か忘れている気がするな。なんだ?

 

うーむ、思い出せん。

 

 

特に重要じゃなかった事までは記憶しているが。

 

534 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 09:26:54.81 ID:y/gtPGko

 

そんなこんなで、俺は開発室に戻った。

 

「ただいま戻りました」
「おかえり、マ男くん」

 

 

藤田さんだ。

 

 

「おい、マ男」

 

 

む・・・。リーダーか。

 

 

「はい」
「社長と話してきたのか?」

 

 

本当に藤田さんから話を聞いたらしい。

 

 

 

「えぇ」
「そうか。すまんかったな。まぁ気にするな。仕事が出来れば俺は文句無い」

 

 

社長と話したのを確認して謝罪なのかよorz
しかも、この人の謝罪は信用できん。
しかし、とりあえずは一件落着という所か。

 

 

「なーマ男くん」

 

 

井出だ。なんだ?

 

 

「上原さん、生きてんのかなぁ?」

 

 

し、知らんがな・・・。何故それを俺に聞く・・・。

 

 

「さぁ・・・。確かに復帰遅いですよね」
「だよなぁ・・・」

 

 

間を置く井出。顔がニヤけている。何を考えている。

 

 

「ぶふっww ちょっとカワウソだったよねww」

 

 

 

・・・。

 

 

よし、仕事をしないと。

 

 

 

とりあえずは、元の雰囲気に戻りつつあった。
次第に俺も楽になり始めた頃、中西さんから呼び出しがかかった。

 

今更なんだ?

 

俺はもうリーダーじゃないんだけどな。何かあったっけ・・・って、思い出した。
藤田さんが既婚でないこと、彼女居ないことを言うのを忘れていた。

 

539 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 09:35:39.08 ID:y/gtPGko

 

これはまずい。だが、飲み会からずっとゴタゴタしていたのだ。
それどころではなかった。てか、もう半年以上も前の話だぞ・・・。

 

 

「マ男さん、藤田さんの件なんですけど」

 

 

ほら来た。すいません、中西さん、言うの忘れてました。

 

 

「結局、自分で聞きました。で、彼女も居ないみたいで、結婚もしてないみたいなんです」

 

 

なんだ、知ってるのか。じゃあ俺はもうこれで

 

 

「けど、何ででしょう・・・。私、何か女性として見られてないみたいで・・・」

 

 

め、面倒なことになりそうだぞ、これは・・・。

 

 

「そ、そうですか。何でなんでしょうね」

 

 

藤田さんは過去の件から、もう恋人作らないと思うぞ・・・。

 

 

「女性として見られてないっていうか、恋愛対象? として見られてないんです」

 

 

それを俺に言われても困るんです、中西さん。
俺に恋愛相談なんて愚の骨頂なんです。

 

 

「どうしたらいいでしょうか・・・」

 

 

ほら来た。どうしたらいいでしょうかって、どうしようもないですよ。
そもそもで、この人は何故俺に聞くのか・・・。

 

543 :12 /08(土) 09:42:11.56 ID:BQTcmgwo

 

半年以上忘れてたってwwwwヒドスwwww

 

545 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 09:46:28.00 ID:y/gtPGko

 

「うーん・・・諦めるとか・・・」

 

と言うと、睨まれてしまうぞ。
この人は、恋愛事になると執拗になる。上手くかわすんだ。

 

 

「中西さんの気持ちが伝わってないんじゃないですか?」
「マ男さんもそう思います?」

 

 

く、食いついてきた。
しまった。話の路線を変えるべきだ。

 

 

「それはどうかは分からないですけど、藤田さんって先天的にモテる人だなーっていうか」
「やっぱりそう思いますよね!? 実は私もうんたらかんたら」

 

 

 

な、なんなんだ。何かさっきからドツボにハマってないか?
この人からは逃れられんのか!?

 

 

「もう好き過ぎて、自分でもどうにかなりそうで」

 

 

何故か俺に藤田さんの想いを語る中西さん。
それを藤田さんに言えば良いんじゃないのか・・・。
いや、言っても藤田さんは困るだけだろうし、結果も見えてるけど・・。

 

 

「と、とりあえず、私から言えることは、私に相談されてもどうしようも出来ないって事ですよ」

 

 

これだ。これで解放される。

 

 

「もう決めました」

 

 

何をだ。

 

 

「告白します・・・」

 

 

な、なんだってー!?

 

何がどうやったら、この流れになるんだ!?
これは面倒なことになってしまったぞ・・・一体これからどうなるのだ。

 

 

というか、俺を呼び出した意味あんのか、これ・・・。

 

547 :12 /08(土) 09:51:08.57 ID:xeZjD0go

 

こういう相談してくる時って、もう自分で答え出してるからな。。。
自己肯定のためだけに相談してきて自己完結するパターン

 

550 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 09:57:10.57 ID:y/gtPGko

 

それからは、さすがに俺も何か対策は無いものかと頭をひねっていた。
しかし、藤田さんの過去をバラすわけにもいかないし、バラした所で中西さんの事だ。

 

自分が代わりになると言い出すだろう。

 

良い方法が思い浮かばん。誰も何のリスクも無しで済ます方法が思いつかん。
しかし中西さんの行動力は異常だ。いや、そうさせてしまう藤田さんが凄いのか?
どちらにせよ、中西さんが行動を起こしてしまえば、職場での人間関係がさらにカオスになること請け合いだ。

 

 

そんな時だった。

 

 

「藤田さん」

 

 

中西さんが、ついに動いた。

 

 

「うん?」
「今週末、晩御飯ご一緒できませんか?」

 

 

や、やりやがった。これで牽制を掛ける気だな。
てか職場で言うのか、この人は・・・。何という・・・。
これじゃ周りの空気を気にして、大概の人は断れんぞ・・・。
中西さん、何という戦略か。
すると俺の隣から

 

 

「えっ!?」

 

 

井出だった。おまえ、まだ諦めてなかったのか・・・。

 

 

「うーん・・・。それは何か理由があってのことかな」

 

 

藤田さんが切り返す。
開発室内の全員が、二人を凝視している。
ガン見である。

 

 

「断れ、断れっ」

 

 

小声で連呼する井出。
お前、たぶんそれ聞こえてるから。

 

 

「はい、プライベートでお会いしたいなって」

 

 

恥ずかしそうに言う中西さん。
端麗な容姿がさらに雰囲気を引き立てる。
コイツ、狙ってやがる。
藤田さんを落とそうとしている。

 

 

少し沈黙した後、藤田さんが答えた。

 

553 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 10:08:40.47 ID:y/gtPGko

 

「ごめん、それは出来ない」

 

 

な、なんだってー!? こ、断ったぞ。

 

 

「っしゃ!!」

 

 

井出だけが猛烈に喜んでいた。
お前絶対ワザとだろ。

 

 

「え?」

 

 

中西さんが、なんで?という顔をしている。

 

相当な自信・・・かどうかは分からないが、この時点で切られるとは思ってなかったのだろう。
藤田さんはPCに顔を向け、口を開いた。

 

 

「気持ちは嬉しいよ。だけど、ごめん」
「えと・・・」
「プライベートは、ちょっと無理なんだ」

 

 

しばしの沈黙。
もう全員がドラマのワンシーンを見ているかの如く、二人を凝視していた。

 

 

「・・・わかりました」

 

 

いまいち納得が行ってない様子だが、トボトボと自分の席へと戻っていく中西さん。
リーダーが口を半開きにしている。井出が中西さんに声をかけた。

 

 

「中西さん、代わりに僕とどうかな? おいしいディナーを」
「ごめんなさい」

 

 

あ、哀れすぎる・・・。
なんだこの差は・・・。

 

露骨過ぎて、井出がかわいそうに見えてきた。

 

 

「はぁ・・・」

 

 

ため息をつき、席についた中西さん。
これじゃ、もう今日は仕事にならないだろうな。

 

 

そして翌日。

 

558 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 10:17:49.58 ID:y/gtPGko

 

中西さんは、今日も元気がないようだ。昼休憩がやってきた。
井出が真っ先に会社を出る。続いて中西さんも出て行った。

 

 

「おい、藤田」
「はい」
「なんでお前、昨日断ったんだ?」
「断った・・・?」
「中西さんの誘いだ」

 

 

リーダーが珍しく、他人の問題に関与している。
傍若無人を絵に描いたような人が、昨日の件について気にしていた。v 確かに藤田さんの過去を知らない人間からしてみれば、あんな美人から誘われて断る男はそうは居ないだろう。

 

俺だって断らない。たとえ好意が無くてもだ。

 

それを藤田さんは断った。気になるのも頷ける。

 

 

「私では、彼女に応えられないからですよ」
「なんだおまえ、好意に気付いてんのか」
「何となくは。まぁ私では、彼女とは不釣合いでしょう」

 

本音なのだろうか。
どちらにしろ、中西さんの恋が叶う可能性は、これでもう万に一つも無い。
藤田さんは何事も無かったかのように、再び仕事に打ち込み始めた。

 

その背中は、どこか寂しいものに俺は見えた。

 

 

・・・中西さんの恋は、静かに終わろうとしていた。

 

563 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 10:29:16.83 ID:y/gtPGko

 

そして、時は過ぎ去っていく。
中西さんの契約終了の日が迫ってきた。美人が去る・・・。
恋愛対象として見ていなかったとは言え、俺も男だ。

 

やはりそれはどこか寂しかった。

 

 

「なぁ、中西さん。ウチで正社員にならんか? 俺が社長に直談してやるぞ」

 

 

リーダーが声を掛けた。
中西さんは仕事が出来る。
戦力として残ってもらいたい気持ちは、俺にも当然あった。

 

 

「いえ、お気持ちだけ受け取っておきます。今の私じゃ、ここに居るのはちょっとw」

 

 

だろうな。
藤田さんは、無表情で中西さんを見つめていた。何を思っているのだろうか。
藤田さんのことだ。このような経験、一度や二度では無かったはずだ。
その度に、この人はあぁやって断って来たのだろうか。
だとしたら、昔の彼女の死は、それ程に重かったのだろう。

 

 

 

 

「中西さん、実は俺ずっと」

 

 

 

井出落ち着け。空気を読め。

 

 

 

「では、みなさんありがとうございましたw また機会があったら、その時はw」

 

 

井出の恋は、派手に終わった。

 

もとい、元から散っていたものが、完全に消滅してしまった。

 

570 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 10:40:40.12 ID:y/gtPGko

 

第四部「平成の孔明、マ男に過去を語る」このレスで終了だぜ。

 

 

そして年月は過ぎ去り、新卒がやってくる季節・・・つまり、春がやってくる。
出会いあれば別れあり。
その逆も然りだ。中西さんは去っていった。

 

それと同時に、二人の人物が姿を現す事となるのだ。

 

 

その人物は、果たしてどんな人間なのか?
俺を支えてくれる存在なのか、はたまた邪魔してくれる存在なのか?

 

 

藤田さんの罠で、精神的なレベルアップを果たすことが出来た俺。
しかし、その代償である藤田さんの過去話・・・それは、想像を絶する内容であった。

 

あの藤田さんが元NEETだったとは。

 

意外な共通点を発見し、さらに距離を縮めた俺と藤田さんは、この先も絆を深めていくことになる。
だが当時の俺は、これからぶち当たるさらなる壁の存在を、この時は知る由もなかった・・・。

 

 

そして残された、いくつかの『謎』・・・。

 

 

上原さんはいつ復帰するのか?

 

藤田さんがリーダーをやらない理由とは?

 

新たにやって来た二人の新入り、俺としては始めての後輩となる人物とは?

 

そして、スレタイの意味する限界・・・。

 

 

全ての『謎』が、次回でついに明らかとなる!

 

どうする俺!? どうなる俺!? 続くぅ!!

 

 

 

 

 

次回、第五部・最終章『もう俺は限界かもしれない』

 

571 :12 /08(土) 10:42:54.84 ID:wDMg6SQ0

 

ついにスレタイの核心にせまるわけだ

 

572 :12 /08(土) 10:43:01.15 ID:t3dMG6ko

 

ついに最終章か!

 

 

673 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 23:00:33.91 ID:y/gtPGko

 

第五部・最終章『もう俺は限界かもしれない』

 

 

 

「おはようございます」

 

 

この会社に勤めて1年を過ぎ、俺はこの日もいつも通りに出社した。

 

「マ男くん、おはよう」

 

 

藤田さんだ。例の過去話以来、俺と藤田さんはお互いに信頼できる関係を築いていた。
まぁそれでも、俺が藤田さんに依存寄りなのは否めないがな。

 

「すっかり春ですね。通勤途中、公園で桜が咲いてましたよ」
「そうだね。まぁ、私たちは花見できそうにないけどww」

 

 

ごもっともだ。

 

 

「そういえばマ男くん、今日は新卒の子が一人、入るみたいだよ」
「え、そうなんです?」

 

 

なんでまたこんな会社を新卒で受けちまったんだか・・・。
会社選びは慎重にしないとダメだろう。
10年前後もNEETやってた俺が言えるセリフじゃないがな。

 

 

「なんでも専門出で、シスアド持ってるみたいだから、完璧ド素人って訳でもないようだよ」
「珍しいですね。即戦力になりえますかね」
「いや、新卒だからね。正直な話、今の時点では分からないな」

 

 

確かにその通りだ。この会社は、知識どうこうの話ではない。
どれだけ早くソルジャーになれるか、どれだけ自力で駆け回れるかが最重要項目なのだ。
それが果たせなければ、新卒という一生に一度だけ手にする事が出来るブランドを失い、世をさまよう事となる。

 

他人の事ながらも、俺は正直、気の毒にと思えた。

 

 

「朝の十時から、応接室で紹介するみたいだから」

 

 

十時か。ていうか、紹介あるのね。俺の時は無かったのだが。
しかしどんな子なのだろうか。
どうせ俺の時みたいに、放置されるんだろうな。

 

 

そして、十時がやってきた。

 

679 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 23:07:43.27 ID:y/gtPGko

 

珍しく社員全員が出揃い、新卒の子は応接室の入り口に立たされていた。男の子だ。
うーむ、イケメンだ。妻夫木 聡に似ているか。何より若い。色んな可能性を内に秘めているのが伺える。

 

「じゃ、木村くん、挨拶して」
「はい!」

 

木村くんか。中々、好感が持てそうだぞ。

 

「えーと、今日からこの会社に勤める事になりました、木村と申します!
 至らない事が多々あると思いますが、よろしくお願いします!」

 

 

と言い、軽くお辞儀する木村くん。
ささやかな拍手が贈られた。

 

 

「木村くんは、リーダーのチームに配属だから、みんなよろしく頼むぞ」
「おう、木村よろしくな」
「あ、はい!」

 

何という爽やかボーイか。こういう子を待っていたんだよ。やはり若いのは良い。

 

「それと、あと一人。派遣社員の竹中くんだ」

 

 

む、派遣社員も来るのか。
今回はどんな人だ? 
中西さんみたいな美人だったら嬉しいのだが。

 

「うーっす」

 

・・・。

 

「ども、派遣の竹中っす。よろしくお願いしまぁす」

 

 

こりゃーとんでもないのが来たな。

 

685 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 23:14:49.78 ID:y/gtPGko

 

「竹中くんもリーダーのチームに配属だ。短い付き合いかもしれんが、みんな仲良くやってくれ」
「おう、竹中よろしくな」
「ども」

 

 

こ、コイツのこの異様な自信はなんだ・・・。
実はとんでもなく仕事が出来る奴かもしれん。

 

こうして、二人の新入りが俺たちに加わった。
自己紹介の時点で、すでに相反している二人。
この二人が、第五部に旋風を巻き起こすのだ。

 

 

「俺がこのチームのリーダーだ。二人ともプログラミングの経験はあるのか?」
「僕は学校の授業でしかありません」
「俺はバリバリです」

 

 

竹中くんはバリバリらしい。

 

 

「そうか。わかった。とりあえず今は仕事が無い。そこらへんの参考書でも読んどけ。
 俺は忙しいから、何か分からない事があったら上原に聞け」

 

 

上原さんは居ないぞ。

 

 

「リーダー、上原さんはまだ来てません」
「あぁ? あいつまだサボってんのか」

 

 

いや違う。何言ってんだ、こいつは。記憶障害かよ。

 

「違いますよ。精神的に病んでるみたいで」
「じゃあマ男、お前が二人の教育係な」

 

 

なんだと。

 

686 :12 /08(土) 23:16:01.08 ID:O4Akoi6o

 

上原さん・・・

 

また登場する日はくるのだろうか

 

689 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 23:21:48.21 ID:y/gtPGko

 

「マ男さん、よろしくお願いします!」

 

え!?

 

「しゃーす」

 

 

えぇ!?

 

 

「マ男くん、頑張れ」

 

 

そ、そりゃ無いですよ藤田さん・・・。俺だって忙しいんですよ・・・。

 

 

「所で二人とも、俺が次期リーダーの井出だ。よろしくな」

 

変な自己主張をするんじゃない。

 

 

「よし、それじゃ仕事に戻るぞ」

 

 

雰囲気に呑まれ、俺は教育係になってしまった。しかも二人。
いや、竹中くんはバリバリらしいから、こっちは放置で良かろう。
しかし何をすれば良いのか全然わからん。
そりゃそうだ。俺は教育されずに来たわけだから教育方法が分からんのだ。
オマケに初めての後輩と来た。

 

 

「マ男さん、まずは何を勉強したら良いですか?」

 

 

え、えーと

 

「マ男さん、俺暇なんでテキトーに読んでていいっすかね?」

 

待て、勝手に動かないでくれ! あ、おい!

 

 

「VBかJAVAで良いですか?」

 

 

助けてくれ。

 

694 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 23:28:59.34 ID:y/gtPGko

 

まるで雛鳥を抱えた親鳥だ。
自分の仕事が出来ない。とにかく早く指示を出して、退散するべきだ。

 

 

「ひとまず木村くんは、何の言語が得意なの?」
「僕はJAVAですかね。卒業研究でも使いましたので」
「そうか、わかった。じゃあVBの勉強しといて。あ、あとHTMLも。
 WEB系の開発で何かといじると思うから」
「わかりました。ありがとうございます!」

 

 

この子は好感が持てるな。

 

 

「マ男さん、本ないんすけどぉ」

 

 

問題はこの竹中だ。

 

 

「何の本?」
「大概の言語はあらかたマスターしてるんで、まぁテキトーに?」

 

 

し、知らんがな。何を言いたいのか、イマイチ理解できん。

 

 

「得意な言語はあるの?」
「あらかたっすね」

 

答えになってねぇ・・・。

 

 

「とりあえず、JAVAでも勉強しといて」
「メジャーなの行きますね、まぁいいけど?」

 

 

な、なんか腹立つな。井出やリーダーと同じ匂いがする・・・。
まさかとは思うが・・・。

 

698 :12 /08(土) 23:33:05.75 ID:t6ky5SMo

 

>>694
鼻をはやくへし折っておかないとまずい典型だなwwww

 

704 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 23:36:47.70 ID:y/gtPGko

 

指示を出し終え、俺は自分の席に戻り、仕事を再開する。
30分置きぐらいに二人を確認する。
うーむ、木村くんは真剣にやっているようだ。真面目タイプだな、彼は。
一方の竹中は・・・。

 

 

「マジかっけぇ」

 

 

何かブツブツ独り言を呟いていた。何をやってるのか。
ディスプレイを覗き込む。

 

壁紙がザクに変更されていた。

 

何やってんだよ・・・。

 

「あの、竹中くん」
「マ男さんじゃないっすか。このフォルム、マジイカしますよね?」

 

 

それはどうでもいい。

 

「今は休憩時間じゃないから、真面目にやってくれないかな」
「いや、俺ガチでバリバリなんで。参考書のプログラムとか余裕ですから」

 

 

そういう問題じゃない。
大体、参考書のプログラムなんて遊びじゃないか。

 

 

「木村くんも真面目にやってるし、竹中くんもやってくれないかな」

 

 

「チッ」

 

 

こ、こいつ・・・!?

 

717 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 23:44:37.00 ID:y/gtPGko

 

さすがにこれはいかん。報告だけでもしておかないと。

 

 

「すいません、リーダー」
「あ?」
「二人の新人なんですけど」
「上原に聞け」

 

コイツ絶対、これが口癖になってる。

 

 

「上原さんは居ませんって」
「知ってるよ」

 

 

じゃあ何がしたいんだよ・・・。

 

 

「木村くんの方は問題ありませんが、竹中くんがちょっと」
「自分で何とかしろよ」
「元よりそのつもりですが、報告だけしに来ました」
「む・・・そうか。はいはい、わかったよ」

 

 

こっちがはいはいだよ。

 

「マ男くん」

 

 

井出だ。

 

 

「竹中くん、俺に任せてみないか?」

 

 

 

猛烈にイヤな予感がする件。

 

725 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /08(土) 23:49:37.13 ID:y/gtPGko

 

「いえ・・・一応、私が教育係となってますし」
「おい、マ男」

 

なんだ。

 

 

「井出に竹中を任せても良いぞ。それに一人で二人だと大変だ。井出に回せ」

 

 

いや待て。まだ竹中は修正可能範囲だ(たぶん
ここで井出に任せてみろ、それこそ終わるぞ。
派遣社員だからと言って、ここで諦めるわけには

 

 

「オッケー牧場!!」

 

 

はいはい、わかったよ・・・。
俺は木村くんに全力を注ぐよ・・・。

 

 

「マ男さん」

 

おっと木村くんだ。

 

「ん?」
「参考書のここの所なんですけど・・・」

 

 

この子は勉強熱心だな。
ただ単に参考書を読んで、そのままプログラミングをするだけじゃなく
自分でオリジナリティを加えて、独自のプログラムを組み込んでいた。

 

原型は参考書だが、こういう行為を行えるという事実が重要なのだ。
この子は伸びるぞ。

 

 

「ありがとうございましたっ!」

 

 

若い! 良いなぁ。

 

 

 

「これたまんねぇ!!」

 

井出の声だ。

 

741 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 00:00:58.86 ID:FSS4MXso

 

何をやってるんだ。竹中のディスプレイを覗き込む。
またザクだ。角がついてる。

 

 

 

「この角付きはリーダー機なんすよ。ザクは小隊を組んでうんたらかんたら」
「ふんふん、それでそれでww」

 

おい。

 

 

「こいつらカラーリングは緑で統一してるんすけど」
「シャアザク!」
「そう、赤い彗星のうんたらこうたら」

 

 

おい、井出。

 

「やっべぇな、懐かしいww 俺もガンダム見てたなぁ。セーラさんが好きで好きで」

 

おい!!

 

 

「ちょ、井出さん」
「おぉ、ここでマ男登場! 主砲ってー!」

 

アホか、貴様。

 

 

「何やってるんですか」
「え? ガンダムの話」

 

 

んなこたーわかってるよ・・・orz

 

745 :12 /09(日) 00:03:52.23 ID:A7qfl0M0

 

井出と竹中 混ぜるな危険

 

747 :12 /09(日) 00:05:30.61 ID:FXYvjAMo

 

>>744
これはあくまでもブラック会社の話だから、全部が全部こんな会社じゃないらしい。
一度就職してみればいいんじゃない?

 

757 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 00:10:26.98 ID:FSS4MXso

 

「いやそうじゃなくて、今は仕事中ですよ」
「息抜きも必要だよ」
「最初からそんなこと教えてたらダメじゃないですか。最初が肝心なのは井出さんも」
「そう、だから息抜きを教えてるんだよ」

 

 

だ、ダメだ。思考回路がぶっ壊れている。これはもう挽回不可能だ。
リーダーは一体、何を考えてるんだ・・・。
井出さんを教育係に選ぶなんて、常軌を飛び越えて銀河系まで脱してるぞ。
もう俺は知らん。ここでこいつらに関われば、俺にまで支障が出そうだ。
竹中は井出に任せた。俺はもうここから無関係だ。

 

仕事に戻る。

 

 

「あの人、真面目すぎるから、気にしない方がいいよ」
「そうっすよね。言語バリバリだっつってんのに、しつこいんすよ」

 

 

き、聞こえてるぞ、おまえら・・・。

 

775 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 00:20:23.08 ID:FSS4MXso

 

しかし、竹中のあの自信は何なのか。
ホントにバリバリならば、俺としては言うことはない。
勤務態度がアレだが、仕事が関わればそんな事など言ってられる暇など無いのだ。
い、いや、落ち着け。俺が気にするのは木村くんだけだ。
まず彼をソルジャーに育て上げないといかん。
今のうちにぬるま湯につけておくと、後が大変になるぞ。

 

 

「マ男さん、すいません」
「ん?」
「ここの所なんですけど、文字を切り出して表示したいんですよ」

 

substringだ。まだそこまで行ってないのか?

 

「確かJAVAでも出来たんですけど、コマンド忘れちゃってww」

 

この笑顔で教えてあげたくなるが、ここは抑える。

 

 

「VBでも使えるから、自分で調べてごらん。きっと見つかるよ」

 

これでどう答えるかだ。

 

 

「あ、はいww わかりました!」

 

 

素直で良い子だ。
後輩を持つって、こんな感じなんだな。

 

792 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 00:30:15.59 ID:FSS4MXso

 

昼休憩。

 

 

「マ男くん、お昼今日一緒にどうかな?」

 

 

藤田さんだ。

 

「えぇ、良いですよ」

 

 

いつもは会社でコンビニ弁当だが、藤田さんの誘いで近くのうどん屋に入る。
時間が惜しいので、極力外食はしないのだが、今回は仕方あるまい。

 

 

「どう、後輩とは?」
「うーん、まだ初日なので分からないですね。けど、木村くんは感じが良いですよ」
「そうか、実は私もそう思ってね。彼は私と君を二分割したような性格なんじゃないかな」

 

 

それはまだ早計ではないですか、藤田さん。

 

 

「そ、そうですかね・・・。私が半分入ってるのはマズイかとも思うんですが」
「ハハハww 良い意味でだよww ただ、木村くんは育て方次第で大きくなると思うよ」

 

 

つまり、俺次第でダメにも使えるようになるとも言っている。
まさに原石だと言うことか。

 

 

「彼は性格が良い。目上の人間に対して素直に言う事を聞くしね。
 まぁ、それが一概に良いとは言えないが」

 

 

確かにそうだ。
井出やリーダーの言う事を素直に聞いてしまうとなると、これまた話が変わってくる。

 

 

「そうですね・・・ちょっと様子見という意味でも、放置してみようと思います」
「時期を見誤らないようにね。彼は君とは違って、普通の人生を歩んできた学生だ。
 間違えた時に放置してしまうと、あっという間に潰れてしまうよ」

 

 

なんか話が難しくなってきたな。俺にできるのか?

 

814 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 00:40:31.28 ID:FSS4MXso

 

会社に戻る。
木村くんはキーボードをいじっていた。昼飯食ったのか?

 

 

「木村くん、今は昼休憩だよ」
「あ、はい。さっきの切り出しが分かったんで、今調子が良い所なんです」

 

 

休める時に休んでおかないと、後がマズイ。
昼休憩はあと僅かしかない。

 

 

「ウチの会社は休憩時間が厳しいから、休める時に休んだ方が良いよ」
「でもあと時間も少しですし」

 

 

自分の信念を曲げないのか?

 

 

「ご飯食べないの?」
「たぶん平気です」

 

 

これはダメだ。割と頑固な面もありそうだな。
ここは一旦退いて、様子見にしておくか。
時計の針が16時を回った頃・・・

 

 

「すいません、マ男さん」
「ん?」
「お腹減ったんですけど・・・」

 

ほらな。
身体を動かさないから腹は減らない、って考えだったのかもしれん。
身体は使わずとも、頭を使ってるのだから、当然空腹は来るのだ。

 

 

「うーん・・・でももう休憩時間終わってるしな・・・」

 

 

助けるべきか、助けないべきか。藤田さんの、時期を見誤るな、が頭をよぎる。

 

 

「参考書を買いに行くついでに、ご飯食べて来ると良いよ」

 

 

新人を育てるのは大変だ・・・。

 

815 :12 /09(日) 00:41:42.16 ID:1RBc8KIo

 

ありがちwwwwwwプログラミング関係って上手く行ってる時はやたらと突っ走っちゃうんだよな

 

836 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 00:48:56.67 ID:FSS4MXso

 

木村くんが部屋を出て行く。
ちょま、リーダーに一言ぐらい言わないとダメだろう。
まだまだ、どこか抜けている所があるな。やはり過度の期待は禁物だ。

 

 

「すいません、リーダー」
「あ?」
「木村くんなのですが、参考書を買いに行かせましたので」
「いちいち言わんでもいいよ、そんな事。それより仕事しろよ」

 

 

まぁ確かに。
席に戻り、仕事を再開する俺。
あれから成長したとは言え、まだまだ分からない所が多すぎる。

 

 

人は生涯勉強だな、これは。

 

 

「んで、ここがこうなるんだよ」

 

 

ん?

 

 

「おーなるほどww」

 

 

井出と竹中だ。なんだ、仕事もちゃんと教えてるじゃないか。

 

 

「所で井出さん」
「ん?」
「『==』と『Equals』の違いってなんすか?」
「一緒だよ」

 

 

ち、ちげーよ、バカ!

 

 

「なんで分けてるんすかね?」

 

「英語人のためでしょ」

 

 

 

 

本当のバカだ。

 

848 :12 /09(日) 00:51:25.70 ID:pcZEVJ6o

 

== と Equals の違いって何っすか?

 

853 :12 /09(日) 00:53:06.34 ID:XSkGvR6o

 

>>848
javaだと == が値 の比較で、equalsがオブジェクトの比較

 

857 :12 /09(日) 00:53:41.73 ID:VNw0m5Ao

 

>>848
参照の比較と等価性の比較

 

 

867 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 00:58:24.80 ID:FSS4MXso

 

「ただいま、戻りました」

 

 

木村くんが帰ってきた。あれ? 参考書持ってないぞ。

 

 

「おい、木村」
「はい」

 

 

マズイぞ。

 

 

「お前、参考書買いに行ったんだろ?」
「あ、はい」
「買ってねーじゃねーか」
「あ・・・はい」
「何しに行ってたんだ?」
「すいません、ご飯食べに行ってました」

 

 

おいおい、ちょっと待て。それはまずいよ。
素直すぎる。言い訳ぐらい用意しておくものだ。
もっとも、即席で作れる言い訳なんて、たかが知れてるがな。

 

 

「おい、マ男!」

 

 

き、来た。こりゃー面倒なことになりそうだぞ・・・。

 

 

「はい」
「お前、うちの休憩時間が厳しいの知ってるだろうが」
「そうですが」
「ですがじゃねぇ! お前、何を新人甘やかしてんだ」

 

 

コイツ、会社を刑務所か何かと勘違いしてないか?

 

908 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 01:07:36.79 ID:FSS4MXso

 

「すいません、以後」
「リーダー、すいません。僕が、昼休憩にご飯食べなかったのがいけなくて」

 

 

木村くん、ホントに良い子だな。俺は少し

 

 

「てめぇは良いんだよ。マ男、お前が全部悪い」

 

 

何なんだ、この人は・・・。

 

 

「はい、すいません」

 

 

口答えすると面倒なことになる。
頭を下げるのが一番の得策なのだ。

 

 

「でも、本当に僕が」

 

 

木村くん、あのね。気持ちは嬉しいんだ。凄く。だけどね

 

 

「マ男さん、本当にすいません」

 

いいよ、許してあげる。

 

 

「木村、おまえ良い奴だな」
「すいません、ありがとうございます」

 

 

あのリーダーが良い奴!? 

 

井出タイプの人間じゃないのにか!?

 

 

べ、別の意味で凄い新人が入ったぞ。

 

939 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 01:16:13.00 ID:FSS4MXso

 

こうして大した責めも無く解放された俺。
しかし、確かに休憩時間を越えてるのに飯はまずかった。
藤田さんがフォローに回らなかった事からも、それが伺える。次から気をつけねば。

 

定時が過ぎた。

 

入社日の俺は、ここで不満を募らせていた。
残業代も出ないのに、何でやらないといけないのかと。
木村くんを見る。
ディスプレイを凝視しているようだ。時計などには目もくれていない。

 

独走タイプの子なのか? 

 

確かに自分の世界に入ること、すなわち優れた集中力は、この業種では重要ではあるが
知らず知らずのウチに疲れがたまってたり、瞬きを怠ってドライアイになってしまったりと、弊害も少なからずあるのだ。
この子はあまり目を離さない方が良いな。

 

 

「木村くん」
「・・・」
「木村くん」
「あ、はい」

 

 

う、うーむ。

 

 

「別に仕事じゃないから、今日はもう帰って良いよ」
「はい、キリの良いところで帰ります」

 

 

そしてまたディスプレイ。
藤田さん、この子どうなんでしょう?
すると

 

「あー帰りてぇ」

 

 

竹中、お前は帰っていいよ。

 

964 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 01:25:12.67 ID:FSS4MXso

 

「竹中くん、まだ頑張れるでしょ!」

 

井出だ。無駄だと思うよ。

 

「いやーもー無理っすよー。目もシパシパしてるし、なんか肩も痛いんすよー」

 

ほらな。

 

「じゃあ、ちょっとガンダムの話でもして、それからまた仕事再開しようぜ」
「あ、それいいっすね」

 

なんだと。

 

 

「ギレンってさーあれってハゲなの?」
「知らないっすよww てか髪あるでしょww」
「いや、あれ色的にキテない?」

 

 

井出と竹中。相性がかなり良いのか、上手く噛み合っている。
特に井出の竹中の使い方が非常に上手い。
こいつ絶対、店長とかやってたタイプだ(知らんけど

 

 

「よし、勉強再開しようか」
「えーもうっすか?」
「でないと、僕ちんも帰れないのー」
「しょうがねーなー。井出さん、俺に感謝してくださいよ」

 

 

井出さん、これでよくキレないな。

 

969 :12 /09(日) 01:26:13.18 ID:z.aLVYoo

 

井出人使いうまいwwww

 

34 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 01:34:05.48 ID:FSS4MXso

 

残業2時間経過。
俺はもちろん、他の人も当然帰れない。二人の新人は除く。

 

「よし!」

 

 

木村くんだ。キリが良い所まで行ったか。

 

 

「マ男さん、ちょうど良い所まで行ったので、今日はこれで失礼しようかなって思うんですけど」
「あぁ、うん。けど、ちょっと待って」

 

 

一応、リーダーに聞いておくべきだ。
初日の俺は残業2時間で済まなかったからな。

 

 

「すいません、リーダー」
「忙しい」
「木村くんを帰らそうと思ってるんですけど」
「忙しいって言ってるだろうが。勝手に帰らせろよ」

 

 

すいません。

 

 

「木村くん、OKみたいだから帰って良いよ」
「あ、はい」

 

 

荷物をまとめて、席を立つ木村くん。

 

 

「では、おつかれさまでした!」
『おつかれさまでした』

 

 

木村くんの初日はこれにて終了。

 

一方の竹中くん、もとい、井出・竹中ペアはどうだ?

 

62 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 01:43:56.31 ID:FSS4MXso

 

「あーだりぃ」

 

ですよね。

 

 

「よし、これが出来たら帰っていいよ!」
「できないっすよー」

 

 

これでどう切り返す、井出さん。

 

 

「わかった。じゃあ、30分まで頑張ってみようよ」

 

 

コイツ結構上手いな。
今の業種より、こっち関係の仕事に就いたほうが良いのではないか。

 

 

「しょうがねーなー。解けたら何かしてくれます?」
「ハゲチャビンしてあげるよ」
「じゃあやります」

 

 

意味が分からないが、何だかんだで上手くやっている。
これは学ぶべき所だ。木村くんに使ってみよう・・・って、木村くんは使う必要が無さそうだな・・・。

 

井出さんも井出さんで、ちゃんとした知識を持ってくれれば良いのだが・・・。
あと空気読んで欲しい・・・。

 

 

「うーん」

 

 

30分は過ぎている。
しかし、音をあげない竹中。井出さん、あなた結構凄いな。
そして

 

「できたぁ!」
「げぇ、マジで出来たの?」
「ほら、これ」
「うわ、マジだ。しょうがねぇなぁ」

 

 

ハゲチャビンって何だよ。

 

77 :12 /09(日) 01:48:07.47 ID:fCb.uTk0

 

井出がリーダーやれば結構うまく回るんじゃね って気がしてきたwwww

 

84 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 01:52:00.26 ID:FSS4MXso

 

「ハゲチャビンしてくださいよ」
「わかったよ、しょうがねぇ。男に二言は無い!」

 

そう言ってデコをマッハでかき上げる井出。

 

 

「ハゲチャビン!!」

 

 

両手でパァンッ!と手を叩きつける井出。

 

 

「ぶわはははwwwwwwww」

 

 

爆笑する竹中。

 

・・・。

 

 

ついていけん。何やってんだ、あの二人は。

 

 

 

俺はここで一つの事柄に気付いた。全く相反するタイプの二人の人間。
すなわち、木村くんと竹中だ。
そして教育係の俺と井出。そう、俺と井出も相反するタイプだ。
井出は知らないが、俺は正直な話、井出とは親しくなりたくない(ごめんね

 

リーダーは計算してやったのかどうかは知らないが、この人選はGJと言わざるを得ない。
そして何より、お互いがお互いの後輩を育て上げる競争、つまり切磋琢磨だ。
この状態に現在なっている。

 

偶然なのか、計算なのか、それは知らないが、俺は少しリーダーを見直した。

 

102 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 01:59:32.15 ID:FSS4MXso

 

「じゃーおつかれっしたー」
「おーおつかれー」

 

竹中くん帰宅。これで両新人が帰ったことになる。

 

 

「おい井出」
「はい、なんでしょう」
「お前人事やれよ」
「ちょまww」
「まぁ、人事なんてこの会社に居ないけどな」
「しかしリーダー、竹中くんは良いですよww」
「見てりゃ分かるよ。あいつ使えれば正社員として雇いたいと思ってるから、ちゃんとお前育てろよ」
「任せてくださいよ」

 

 

うーむ、リーダーは井出さん贔屓だから、リーダーの評価では俺は勝ち目無いぞ。
いや、別に給料に反映されるわけでもないし、何か評価が上がるわけでもないが。

 

井出に負けるのは納得いかん。

 

藤田さんに今日の評価を聞きに行く。

 

111 :12 /09(日) 02:02:33.26 ID:jEa6Fzgo

 

リーダー→井出→竹中のライン

 

藤田さん→>>1→木村のライン

 

うまく周りそうだな

 

124 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 02:06:24.10 ID:FSS4MXso

 

「すいません、藤田さん。少しよろしいですか?」
「うん?」
「今日の新人教育なんですけど、私の方法で何か問題ありそうでした?」

 

まずは問題点を聞く。あればそれを改善しなければならない。

 

 

「うーん、全部は見てないから分からないけど、休憩時間はまずかったよね」

 

 

ですよね・・・。やっぱそうですよね。

 

 

「時間は厳守させないと、尾を引いてしまうから、そこんとこは気をつけないとダメだよ」
「はい、すいません」

 

 

時間厳守は社会人の基本でした・・・。

 

 

「他は良いんじゃないかな。木村くんはマ男くんと相性良いみたいだし、成長株だと思うよ」

 

 

なるほど、藤田さんの評価は木村くん寄りという所か。

 

 

「ただ、教え方は井出さんの方が上手いね。
 竹中くんの性格をきちんと掴んでるしやる気の出る教え方だと思うよ」

 

 

 

井出に負けた。

 

153 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 02:15:34.03 ID:FSS4MXso

 

うーむ・・・。俺は後輩を育てる才能が無いのだろうか?
おっと、いかんいかん、まだ初日だ。
それに俺にとって始めての後輩なんだ。こんな弱気でどうする。
まずは木村くんの性格を掴むことから始めよう。
今日の時点でいくつか分かったが、ほんの片鱗にしか過ぎないはずだ。
しかし、あの井出の人の性格を読み取る力は何なのか。異常だぞ。
竹中くんと接したのは最初の挨拶ぐらいだったと言うのに。
あいつ何かスタンド持ってるだろう。

 

 

「マ男くん」

 

 

井出だ。

 

 

「はい」
「木村くんはどう?」
「良い子ですよ。私には勿体無いぐらいの後輩です」
「そうかそうか」

 

 

ニヤニヤする井出。何を考えている。

 

 

「竹中くん、今は使えないけど、すぐに木村くんを追い越すよww」

 

 

野郎、言いやがったな。

 

木村くんの方が優秀だということを見せてやる。

 

 

 

俺と井出の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

166 :12 /09(日) 02:20:54.07 ID:z.aLVYoo

 

物事がいい方向に向かっているwwww

 

170 :12 /09(日) 02:22:19.09 ID:qMyN512o

 

竹中はやる気さえ出させれば、実務に入れたら勝手に伸びそうなタイプだからな。
井出と竹中の組み合わせはこれ以外考えられないくらい良さそうだなwwww

 

178 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 02:27:00.62 ID:FSS4MXso

 

1日、1日を追っていくとキリが無いので、いつものようにポイントとなる日を選んで書いていこうと思う。

 

 

2週間ほど過ぎた頃、ついに二人に仕事が回される事となった。
その間に俺が木村くんに教えたことは、業務知識は元より、欠点と言える部分・・・
時間厳守、どこか抜けていないかの再確認、質問の仕方など、新人には付き物のありがちな失敗部分を入念に教えていた。

 

 

これでありがちな失敗はしないだろう。
木村くんは飲み込みも早く、素直な性格がきいて教える立場としてはありがたい限りだ。

 

各自にスケジュールが配られる。
かなり甘めだが、二人には製造のスケジュールが入っていた。
ここで俺は、俺の時と全然違うじゃねーか、なんだこれ・・・。と密かに怒りに打ち震えた。

 

 

「今回は珍しく余裕あるプロジェクトだから、まぁ焦らずに頑張れや」

 

 

他人事かよ。

 

 

「特に井出とマ男、おまえらは新人抱えての仕事だからな。恥かくなよ」

 

 

わかってますよ。

 

 

「了解しやしたー」
「そんじゃ席に戻るぞ」

 

 

よし、頑張ろう。木村くん。

 

192 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 02:35:38.79 ID:FSS4MXso

 

当然、俺も製造のスケジュールが入っている。
俺も甘めに引かれてはいるが、木村くんを抱えながらなので、実際はトントンと言った所か。

 

 

「マ男さん」
「ん?」
「僕の作業って修正ですよね。設計書を見つつ、ソースの確認していいです?」

 

 

自分から行動する力。これは大事だ。

 

 

「うん、いいよ。分からない所があったら聞いて」
「いえ、自分で考えて見ます」

 

 

う、うーむ。プライド高いのかな。それとも、行動力がありすぎるのか。

 

 

「あぁ、わかった。時々、様子見に行くから、その時に説明とかするよ」
「はい、お願いします」

 

 

落ち着け。方法を選べば、何のことはないのだ。

 

 

一方の井出・竹中。
「井出さん、俺わかんないんで、ソース見てもらっていいすか?」
「分からないのは当たり前だのクラッカーだよ」
「俺ホントわからんっすよー」
「わかった、わかった。ほら、まずこのメソッドが初期処理でしょ」
「はぁ」
「ここにブレークポイントつけて、処理実行してみ」
「はぁ」

 

 

カチャカチャやる竹中。

 

 

「あとは、コメントを頼りにしても良いから、大まかに処理を追ってごらんよ」
「なんだ、楽勝じゃん」
「いやいや、ちゃんと俺に説明しないとダメだよwwww」
「わかってますよww」

 

 

な、なんだあいつら・・・。
俺勝てる気しないぞ。

 

216 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 02:47:26.47 ID:FSS4MXso

 

「あーこれ、先週やった処理じゃん。なるほどな」

 

 

竹中が独り言を喋っている。何かよく分からんが、とりあえず竹中は欠点は直ってない。
俺が察する限り、井出は竹中の長所(どこが長所か知らん)を伸ばしたということか。

 

 

そろそろ木村くんを見に行くか。
「木村くん、どう?」
「あーマ男さん、このReleaseなんですけど、設計書には書いてないんですよ」
「ん? どれどれ」
「うーん、ホントだね。でも、これはReleaseしないと、DBに値が登録されないから」
「します?」
「うん」
「はい、わかりました」
「他に質問ある?」
「いえ、特には」

 

 

俺いらなくね?

 

237 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 02:58:37.55 ID:FSS4MXso

 

こうして、相反する二組はスケジュールを推し進めていく。
俺は基本的に一人でこなしてきたため、自立させようとする意思が強かった。
なので、助けるとは言っていたものの、僅かにヒントを与えるなど、1〜10のうち、1〜3程度までしか手を貸さないのだ。

 

これは俺の考え方なので一概には言えないが、この新人時代に10全て教えてやると、後々で教えてくれ癖がついて抜けなくなる。
そうなってしまうと、一人では何も出来なくなり、常に誰かがついてやらないといけない状態になるのだ。

 

 

 

俺はそれを避けるため、言い訳になりえるが、先を見越してこの方法を取っていた。

 

 

木村くんとも相性の良い方法のはずだ。
彼は自分の力で成功して始めて快感を得るタイプの子だ。
10全て教えてやると、俺がやる意味ないじゃないか、と放棄してしまう可能性がある。
俺は木村くんの性格を、掴み始めていた。

 

 

一方の井出の教育方針は読めないが、あの教え方で良いのか・・・?
確かに竹中の性格からしてみれば、あの教え方しか方法は無いかもしれん。
しかし、あれからどうやって使い物になるよう持って行くのだ。

 

 

 

ていうか、全然バリバリじゃなかったのはどうなんだ。

 

そして製造2日目。ここで大きな差が出てくる。

 

260 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 03:07:33.16 ID:FSS4MXso

 

「マ男さん、とりあえず修正作業終わったので、確認してもらって良いです?」

 

 

む、早いな。明日までスケジュール引いてるのに。
ひとまず見てみる。
うーん・・・。こりゃまずいな。完全に勘違いしている。
既存部分のコピペで十分応用できる所を、何故か自分仕様で新しく作っている。
無駄に行動力がありすぎるな、この子は。
これじゃ設計書と食い違って、使い物にならん。

 

 

「うーん、なるほど・・・」
「どうです? 完璧じゃないです?」

 

 

確かに目視でやる限りは完璧だが、これじゃダメだ。

 

 

「設計書見た?」
「もちろん見ましたよ。だから、ちゃんと動いてるじゃないですか」

 

 

うーん。どう言おう。言葉を選ばないとダメなタイプだ。

 

 

「何ていえば良いのかな。やっぱりこれはお客さんに納品するプログラムだから
 お客さんの要望をまとめた設計書に則って作成しなくちゃいけないんだけど」
「はぁ」
「木村くんは凄いと思うよ。私は入社当時、こんな余裕なかったからね。
 だけど、これはちょっとマズイね」

 

 

説明をする俺。話すのあんま得意じゃないんだ。納得してくれ。

 

 

「というわけだから、既存部分を使って作るようにしてくれないかな」
「・・・わかりました」

 

 

木村くんの使い方を間違えた。

 

 

一方の井出・竹中は・・・

 

266 :12 /09(日) 03:10:16.74 ID:0TiqwGso

 

木村君めっちゃ張り切ってるwwwwww
そして失敗wwww

 

これは凹んだ木村君がまた何かやらかすかなwwww

 

291 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 03:17:22.08 ID:FSS4MXso

 

「井出さーん、これはこうこうで良いんすよねー?」
「ん? あぁそうだよ」

 

 

逐一、報告させる形を取っている。
確かにその方法なら失敗は少ない。
だが、それじゃ成長は望めないだろう。

 

 

「井出さーん、これなんすけどぉ」
「どれどれ。あぁ、それは今までの中でやったことあるなww
 教えてあげないよ! じゃんっ!」
「はぁー?」
「大丈夫、ちゃんと見てみろww ほれ、設計書! ほれ、さっきのソースコードのコピー!」
「めんどくせー・・・って、マジだ」

 

 

う、上手い。さすがにコミュニケーションの井出だ。こりゃ敵わん。
変な意地を張らずに、井出さんの方法をよく観察するんだ。
そのまま流用は無理だが、どこか変えれば木村くんにも使えるはず。

 

 

なるほど。初見では10まで教え、次に同じ質問が来た時、教える要素を減らす。
最終的にはゼロに持っていき、その頃には出来るようになっているというカラクリか。
確かにこれなら効率は悪いが、確実に成長させることができる。

 

まさしく、竹中専用教育プログラムだ。

 

 

これをどうにか木村くんに使えないものか・・・。

 

380 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 15:04:46.14 ID:FSS4MXso

 

井出さんの教育方法を観察した俺。
しかし、あのままでは木村くんには使えない。

 

まず第一に木村くんはあまり質問をして来ない。
なので、俺も一人で出来るなら放置でも大丈夫かも。
という楽観的に構えていた。そして、それが結果となって彼は失敗を招いた。
しかし、第一印象とかなり違って来ているな。勉強期間・・・というか、初日では、ちょくちょく質問に来ていたのに。
うーむ、まだ完全に彼の性格を掴みきれていない。

 

彼は正社員だ。何とか成長させないと、いつまでも負債となってしまうぞ。

 

ただ、基礎的な学習能力はあるはずなのだ。つまり、育て方次第で化けるはず。

 

 

一見、乗りこなしやすそうに見えて実はじゃじゃ馬だったという木村くん。
俺がこの彼を成長させて行くことが、この第五部において最も重要な点になるのだ。

 

そして竹中。

 

 

力は持っているが、使い方が分からない、もしくは間違っている人間と
力も無く(?)使い方も分からない(?)が、積み重ねで伸びていく人間。

 

 

そして、なまじ力を持っているあまり、自信過剰な性格と
面倒くさがりだが、乗せれば諦めない性格。

 

 

果たして、どちらが優秀なのか。

 

 

390 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 15:17:44.17 ID:FSS4MXso

 

今まで部活やバイトの経験も無く、上下関係を知らずに育ってきた俺にとって
目上の人間はともかく、後輩にどのように接すれば良いのか分からなかった。
なので、自分を木村くんの立場に置いて、物事を考えてみた。

 

まず、プライドが高いという点において、気をつけてみる。
自分が第一だという考えが念頭にあるのかもしれない。ならば、この考えをどう覆すかだ。

 

俺自身の性格を見てみる。
・・・褒められた性格ではない。自分が尊敬できない相手は、正直な話、相手にもしたくない。

 

うーむ、木村くんは俺を尊敬していないのかもしれない。確かに、彼は俺の仕事を間近で見た事がない。
訳のわからん男が先輩風吹かせて、俺に指示出してるぞ、という気持ちなのかもしれん。

 

全ては仮定の上での話だが、彼の今までの行動・性格を振り返る限り、有り得る話でもある。

 

あまり気持ちは進まないが・・・藤田さんに相談してみよう。

 

395 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 15:23:26.63 ID:FSS4MXso

 

「すいません、藤田さん」
「うん?」
「木村くんの事なのですが」
「あぁ、どうかした?」
「はい、力はあるみたいなんですが、どうも私のやり方がマズイみたいで」
「うーん、彼は鼻を折られた経験が無いんだと思うよ」

 

 

挫折経験がないという事か。
そういう人間は扱い辛い。
囲の失敗経験を目の当たりにしていると、さらにそれは肥大化する。

 

 

「木村くんが、自分の方が、経験積めばあいつより出来る、と思ってるって可能性は無い?」

 

 

有り得る。

 

 

「有り得ない話ではないです」
「私が思うに、君は過小評価されてるんじゃないかな。
 まずは、君が仕事が出来る、という部分を見せないと」

 

 

教育以前の問題になるな、それは。

 

 

「それに彼はカッコいいからなぁww 今までチヤホヤされてきてるって可能性もあると思うよ」

 

 

なるほどな。確かに俺は厳しく接しすぎていたのかもしれん。

 

 

少し教育方法を変えてみるか。

 

404 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 15:36:28.33 ID:FSS4MXso

 

翌日。

 

 

「おい、マ男」
「はい」
「木村はどうだ。スケジュールに間に合いそうか?」

 

 

分からん。昨日の時点で、修正がどこまで終わっているかにもよる。

 

 

「分かりませんが、間に合わせようとは考えています」
「遅らせるなよ。怠け癖がつくぞ」

 

 

正論だ。遅れても、先輩が取り戻してくれるわ。という意識が芽生えると厄介だ。

 

 

「あと、来週から上原が復帰するから、おまえはもういいよ」

 

 

え!?

 

 

 

「う、上原さんですか?」
「そーだよ。なんだよ」
「い、いえ」

 

 

 

そうか、復帰するのか。
復帰するのはめでたいが、木村くんを彼に渡すのか?

 

 

「もういいよ、というのは」
「うるせーな! お前じゃなくて上原に木村を任せるって言ってんだよ」

 

 

木村くんは一体どうなるのだ。

 

409 :12 /09(日) 15:39:36.93 ID:TJT4j0M0

 

上原と木村の組み合わせか…。

 

もし木村が間男や藤田さんの見解通りの性格なら、酷いことになりそうだ。

 

414 :12 /09(日) 15:42:48.03 ID:tpyc/Sw0

 

なんだかんだ言ってリーダー、上原さんのことすごい信頼してる?

 

417 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 15:45:14.14 ID:FSS4MXso

 

そしてその来週・・・つまり、月曜がやってくる。

 

俺はその間、木村くんの教育係をしていたが、はっきり言って特に何も変化が無い。
上原さんに木村くんの指導が出来るのか。

 

てか、何でリーダーは上原さんを選ぶのだ。

 

 

「お、お、お」

 

 

まさか

 

 

「おは、お、お、おは」

 

 

き、来た。上原復活。

 

 

「おい上原ぁっ!!」

 

 

コイツ、これが言いたくて言いたくてしょうがなかったんだろ、絶対。

 

 

「おい、木村、竹中」
「はい」
「コイツが先輩の上原だ。何か分からなかったら俺じゃなくて、こいつに聞け」
「あ、あ、よ、よ」

 

 

木村くんが奇怪な物を見るような顔をしている。
間違いない、この時点で見下した。

 

 

「上原さん、よろしくお願いします」

 

 

目があざ笑っている。

 

 

「よ、よ、よろ、ろ」

 

 

どうでも良いけど、もう少し上原さんに気を使ってあげても良いだろ・・・。

 

427 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 15:56:18.48 ID:FSS4MXso

 

「マ男さん」

 

 

木村くんだ。

 

 

「ん?」
「僕、リーダーから、今日から上原さんが教育係って聞いたんですが」

 

 

その通りだ。すまん、木村くん。俺ではどうしようも出来ん。

 

 

「あの人って大丈夫なんです?」

 

 

確かに俺も最初はそう思ったが、それを言葉に出しちゃダメだろう。

 

 

「仕事は俺より出来るよ」
「へぇ」

 

 

何か物凄くイヤな予感がするぞ・・・。
どう考えたって上手く行く訳がない。

 

例えるなら、ドMの上司にドSの部下だ。

 

軽い下克上が引き起こされ、部下はふんぞり返る可能性だってある。

 

 

「分かりました。とりあえず、少し話してきますね」

 

いや待て。会話にならない。

 

 

「何の話をするの?」
「あの人、今日から復帰ですよね。今の僕の状況を知ってもらおうと思いまして」

 

 

この自信たっぷりな態度・・・上原さん気をつけてくれ・・・。

 

437 :12 /09(日) 16:05:18.37 ID:MmbB1Qw0

 

そこは「君より仕事の量をこなせる人だよ」とかにしたほうがよかったんじゃね
下手すると上原さんと一緒にマ男も見下された悪寒

 

435 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 16:03:17.67 ID:FSS4MXso

 

「すいません、上原さん」
「あ、あ、は、は、あ」
「今の僕の状況の説明をしに来たんで、聞いてもらえます?」
「あ」
「えっとですね」

 

 

吃音をさえぎる木村くん。
そして説明開始。
上原さんが所々で質問と思われる母音を発するが、それを殺して説明を続行する木村くん。
上原さんは小刻みに顔を震わせている。おそらく頷いているのだろう。
しかし、あの様子じゃたぶん理解できてない。

 

木村くんは木村くんで、なまじ自分に自信有りなのか、この説明で誰でも理解できるとでも思っている節がある。

 

これはいかん。態度が悪すぎる。
目上の人に対しての礼儀がひどい。注意が必要だ。

 

 

「木村くん、ちょっと良いかな」

 

 

む、藤田さんだ。

 

440 :12 /09(日) 16:07:02.67 ID:ApGmAiQ0

 

木村「マ男先輩って上原以下かよwwwwwwwwwwwwww」

 

445 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 16:18:00.74 ID:FSS4MXso

 

「君、まだ入社して3ヶ月も経ってないよね?」
「はい」
「別に先輩だから、って理由で言うわけじゃないけど、君はもう少し目上の人に対しての接し方を学んだ方が良い」
「それって今関係ありますか?」

 

 

おいおいおいおい

 

「今後に関係あるよ。君が将来、取引先に出た時にそんな態度じゃ、この会社が危ない」
「はぁ」
「君はまだこの会社にとって負債なんだから、その自覚を持たないとダメだよ」

 

 

はっきりと言い放った。藤田さん、それじゃダメですよ。

 

 

「どうもすいませんでした」

 

 

偉く印象変わったな、木村くん・・・。

 

 

その日から、木村くんに変化が起きた。と言っても、微妙な変化だが。

 

 

「はぁ・・・」

 

 

 

ため息が非常に多い。
ストレスが溜まってるのか、何か悩み事があるのかは定かではないが
藤田さんに怒られてから何かが変わろうとしていた。

 

454 :12 /09(日) 16:20:52.36 ID:pVZ46e6o

 

木村の未熟さと藤田さんの偉大さが垣間見えたね

 

473 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 16:29:01.59 ID:FSS4MXso

 

「マ男くん、ちょっと良いかな」

 

藤田さんだ。

 

「あ、はい」

 

 

応接室に移動する俺と藤田さん。何の話をするのか。

 

 

「木村くんなんだけど、彼は落として上げる方法が良いと思うよ」
「? どういう事ですか?」
「たぶん彼は今、気張りすぎてるんじゃないかなって思うんだよね。
 学生時代がどんな子だったのかは知らないが自分に自信を持ってるタイプの子みたいだし
 私たちのような状況では誰が仕事できるかってのも分からないと思う」

 

 

確かに。雰囲気で察することはできるが。

 

 

「彼は今落ちてる所だから、君が上手く手を貸してあげなさい。
 今の状況を使って、君の『出来る』という部分を見せる。
 そうすれば、君より仕事の出来る上原さんの事も、見直すんじゃないかな」

 

 

上原さんが直接それをやれば一番手っ取り早いが
それは無理だと見越して、俺を中間に持ってくるということか。

 

 

「木村くんの教育係を、私に戻したいのですが」
「いや、上原さんのままで良いと思う。
 彼は上げるも下げるも無いし、嫌でも自分でやらないといけないって思わせるから
 自立させるには一番の適任者だよ」

 

 

な、なるほど。それで事あるごとにリーダーは上原に聞けなのか。
いや知らんけど。

 

 

そして開発室に戻る俺。

 

「木村くん、大丈夫?」

 

484 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 16:41:21.48 ID:FSS4MXso

 

「大丈夫です」

 

 

む。やはりプライドが高い。

 

 

「厳しいと思ったら、すぐに言わないとダメだよ」
「はい・・・すいません・・・」

 

 

素直な面も覗かせているが、やはりどこかまだ堅い。

 

 

「君が潰れたら、私たちも辛い。早めに相談するのが大切だよ」
「はい、ごめんなさい・・・」
「昼休憩、一緒にご飯食べようか」
「はい・・・」

 

 

よし、ここまではOKだ。
仕事を再開する俺と木村くん。
今は断然に印象が悪いが、最初は素直で良い子だったんだ。
あのリーダーにも、お前良い奴だな、と言わしめた。

 

おそらく、やり方がマズイ。

 

というか、後輩を持ったのが人生初の俺が、一人で頑張りすぎた。
リーダーや、井出さんも含めた先輩たちから、何かしらの意見を貰うべきだったのかもしれん。

 

 

人生初(?)の挫折を味わったかのように見える木村くん。
ここが正念場だ。

 

 

昼休憩がやってきた。

 

489 :12 /09(日) 16:45:49.23 ID:Gcd.Jwwo

 

藤田さんが悪者になって木村をボッコボコ

優しく手を差し伸べるマ男

木村「ついていきます!兄貴!」

木村「兄貴より仕事できる上原さんって実はすごいんじゃね?」

藤田さん「これでよかったんだ」

竹中&井出「ガンダムかっけぇwwwwwwww」

会社が丸くおさまる

 

藤田さんの策見事成功! な感じ?

 

497 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 16:56:42.85 ID:FSS4MXso

 

藤田さんと話をしたうどん屋に入る俺と木村くん。

 

 

「仕事どう?」
「・・・あんまり楽しくないです」

 

 

やっぱりそうか・・・。

 

 

「人間関係は?」

 

 

新卒がやめる理由として挙げる要素の一つだ。
こればかりは本当にどうしようもない。
自分だけの力ではどうにもできないのだ。
やめる理由としても十分に成り立ってしまう。説得は困難だぞ。

 

 

「そうですね・・・。何なんだろう・・・」

 

 

う、うーむ。

 

 

「苦手な人は居る?」
「うーん・・・」

 

 

居るみたいだな、これは・・・。

 

 

「そうですね・・・藤田さんですかね・・・」

 

 

な、なんだってー!?

 

 

「え、そ、そうなんだ。なんで?」
「あの人、何でも出来そうって雰囲気が出てませんか?」

 

 

雰囲気っていうか、何でも出来るんじゃないのか・・・。

 

 

「確かに、うちの開発室じゃ一番出来る人だよ」

 

 

「うーん・・・僕と同じタイプなのかなぁ」

 

 

 

この小僧、大言を吐きおった。

 

517 :12 /09(日) 17:00:52.49 ID:p617bvI0

 

木村おもしれーwwwwwwwwwwww

 

520 :12 /09(日) 17:02:39.46 ID:A7qWInI0

 

藤田さん>>>>超えられない壁>>>>木村

 

534 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 17:06:46.90 ID:FSS4MXso

 

「そ、そうなんだ」

 

 

落ち着け。確かに同じタイプに見えんこともない。 そして、そういう者同士は争う事が多い。

 

三国志にも、孔明と周瑜という二人の天才が居て、最後までお互いが相容れることは無かったではないか。
ちなみに演技しか知らないので、史実は知りません。
とにかく、上手く話を持って行きさえすれば、この子は化けるぞ(たぶん

 

 

 

「他に苦手な人は居るの?」
「居ません」
「そうかぁ・・・。今の教育係は上原さんだけど、あの人はどう?」
「一番やりやすいですよ。何も言ってこないし、結果だけ報告してます」

 

 

それまずくないか?

 

 

「間違った所とかは指摘してくれてるの?」
「はい。成果物をコピーするなりして、お渡ししてるんです。
 んで、間違った所に印をつけてもらったりとか」

 

 

なるほど。確かに上原さん相手なら効率もいいし、賢い方法だ。

 

 

「うーん、藤田さんが苦手ってのも珍しいなぁ」
「そうですか? あぁいう人って案外敵が多いと思いますけど」

 

 

この子、凄いことをサラサラ言うな。この様子じゃ、苦手というか嫌っているに近い。
しかし、実力は認めているところがある。
藤田さんには悪いが、あなたを使わせて貰います。

 

 

 

「でも逆に、藤田さんを目標にしてみれば良いんじゃないかな」

 

551 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 17:17:00.97 ID:FSS4MXso

 

「うーん・・・」

 

嫌いな人間を目標にするには抵抗がある。それは良く分かるが。

 

 

「藤田さんは本当に仕事も出来るし、人間的にも立派な人だよ」

 

 

当然、過去の部分は伏せる。

 

 

「マ男さんはどうなんですか?」

 

 

何を言ってるんだ。俺なんかを目標にしたら人生を棒に振るぞ。

 

 

「私はやめた方が良い。褒められた人生を歩んでないから。
 藤田さんを目標にしたくないの?」
「いや、しても良いんですけど、何かなぁ・・・」

 

 

藤田さんが居なければ、この子はどうなっていただろうか。

 

 

「でも、一番仕事が出来るのってのは木村くんも分かってるよね」
「分かってます。だけど、目標ってのは・・・」

 

 

言い方が悪い。方向性を変える。

 

 

「じゃあライバルってのはどう? 将来的に見たら良い勝負するんじゃないかな」

 

 

ここで上げる。

 

 

「そうですかね」

 

 

ほれ見ろ、食いついた。

 

 

「うん。今は藤田さんをよく観察して」

 

 

吸収、という言葉を飲み込む。

 

 

「盗めるところは盗んだら良いんじゃないかな」
「なるほどね。そうですね」

 

 

よし、後は上原さんの元に戻すだけだ。

 

555 :12 /09(日) 17:18:04.34 ID:0/TIMQk0

 

GJ!
ナイス方向転換

 

575 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 17:27:36.49 ID:FSS4MXso

 

「所で、竹中くんとはどうなの?」
「あの人って、派遣でしたっけ?」
「そうだよ。君より経験あるんじゃないかな」
「それにしては、僕より出来るとは思えないんですけど」

 

 

ダメだ。まだ目上の人間に対しての考え方がなってない。

 

 

「あぁいう人は、やる気さえ出したら化けるよ」
「井出さんもどうなんですか? 社会人で坊主頭って・・・。それに独り言多いですよね?」

 

 

なんだコイツは。ここは叱るべきだ。

 

 

「うーん、木村くん。本音を言えるのは良い事なんだけど、やっぱりここは学校じゃなくて会社だから
 自分より能力が下だと思えても、ちゃんと目上の人だっていう意識は持たないとダメだよ」
「うーん・・・」
「それに、現時点だと君より竹中くんの方がスケジュール進んでるんじゃないかな」
「え、そうなんですか?」

 

 

知らないが。明らかに下だと思ってる人間に追い越されれば、火が付くだろう。

 

 

「そうだよ。だから、無闇に人を見下したらダメだよ」
「・・・はい」

 

 

 

ホントにじゃじゃ馬だな。だが、これで持ち直すことは出来そうだぞ。

 

586 :12 /09(日) 17:32:15.06 ID:egyG9lQ0

 

>>575
就職活動で挫折を味わなかったのかな?
それにしても個性的な人が集まる会社だなwwww

 

590 :12 /09(日) 17:34:29.92 ID:X5XT4u60

 

オレが新卒のとき、先輩に質問したら参考になるというURLをメールで送ってもらった。

 

 

googleのトップページでした。

 

 

ありがとう、先輩

 

592 :12 /09(日) 17:35:35.96 ID:ApGmAiQ0

 

>>590
いい先輩だなぁ・・(;;)

 

593 :12 /09(日) 17:35:44.18 ID:p617bvI0

 

>>590
ある意味間違っていないwwwwww

 

601 :12 /09(日) 17:41:22.85 ID:pbRqhIAo

 

未経験中途で入ってきた新人2ヶ月ほど面倒見て
ちーっとも伸びる気配見せ無くって、
「辞めたら?」の念を込めて叩きまくったら
それはそれはすごい勢いで伸びた奴がいたなぁ
予算厳しいんだから即戦力取ってくれって声をのらりくらり
無視し続けた上司GJだったww
あんときゃ俺もいい勉強させてもらったわ

 

 

603 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 17:42:06.66 ID:FSS4MXso

 

そして会社に戻る俺たち。
とりあえず、木村くんはこれで様子見だ。育つ環境は揃っている。
目標となる人物、競争相手、そしてやる気。
プライドが高いのが難点だが、これも上手く転がせば重要な爆発力に変える事も出来るはずだ。

 

 

「竹中ちゃん、すげーじゃん!」

 

 

井出だ。

 

 

「当たり前じゃないっすか。井出さんと同じにしないでくださいよ」
「バカ野郎wwwwww調子乗るなwwwwww」
「冗談っすよww スケジュール余裕じゃないっすか?」
「余裕だね。俺の仕事もやってよ」
「イヤっすよww」

 

 

う、うーむ。このコンビは失敗を覗かせないな。
本当に井出は凄い。並の人間なら、この態度にキレる可能性だってあるぞ。

 

 

 

「チッ」

 

 

木村くんが二人を睨みつけていた。
落ち着け、今は我慢の時だ。君は大成する。

 

 

今は眠れる獅子なんだよ(たぶん

 

609 :12 /09(日) 17:45:10.04 ID:3WCannUo

 

この後、木村が何か事件起こすことに期待wwwwwwww

 

612 :12 /09(日) 17:46:29.42 ID:UlcC8M.o

 

バカコンビがすごく順調だなwwwwww
本当に類は友を呼ぶと・・・

 

井出・・・育成には向いてるけどそれ+α仕事能力があれば・・・

 

624 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 17:53:13.99 ID:FSS4MXso

 

それからの日々は、まぁなんとも平凡だった。
俺は木村くんの教育係から外されたので、スケジュールが余裕なこともあり
8時には退社できていた。まさにゆとりある時間ゲットだぜ。

 

一方の肝心の木村くんは、上原さんとのデコボココンビで上手くやっていた。
彼自身も言っていたが、介入されるのを嫌うらしい。
介入されない・・・というか、できない上原さんとは、相性も良さそうだ。
後は藤田さんと上手くやってくれれば良いのだが。

 

 

「マ男くん、木村くんはどう?」

 

 

藤田さんだ。

 

 

「一応、話はしておきました。人間関係で問題があったようなので、フォローはしておきましたが」
「そうか。まぁ人間、好き嫌いはあるからね。それでどうなの? 伸びそう?」

 

 

あなたが起爆剤ですからね。伸びないわけがない。

 

 

「伸びますよ。今は新卒だってのもあって、頼りないですけど、元々力はあると思います」
「なるほど。けど、ようやくって所かな。まぁ彼は気難しい性格してそうだから、扱いには気をつけないと」

 

 

 

ここらへんから、木村くんは急成長を遂げていく。

 

651 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 18:05:31.40 ID:FSS4MXso

 

製造が終了し、テスト作業に入った頃だ。

 

「マ男さん、今いいですか」

 

木村くんから声を掛けられた。

 

 

「ん?」
「リーダーから、上原さんはテスト作業から外してるとの事なので、マ男さんから教われと聞いたのですが」

 

 

うーむ。テスト作業については、正直経験が物を言う作業だ。
しかも、やり方も割かしと固定されている。
木村くんのようなタイプの子では、全然面白くないのではないか。

 

 

「うん、わかった。テスト作業って学校では教えてくれるの?」
「いえ、動作確認だけでした」

 

 

こりゃ厄介だ。逐一報告形式を採らんといけん。

 

 

「井出さーん」

 

 

竹中だ。

 

 

「ここで俺様参上」
「ここのハードコピーってこれでいいっすかぁ?」
「おっけー牧場!」
「どーもー」

 

 

逆に竹中は相性がいい。

 

 

「そうだね・・・。うーん。
 とりあえず、テスト仕様書に書いてある事を試して、ハードコピーを取ってみて」
「わかりました」

 

 

仕方が無い。時間を見て俺が自分で確認しに行くか。

 

653 :12 /09(日) 18:09:53.65 ID:olnbx1ko

 

木村をもうすこし挫折させないとまずい

 

657 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 18:16:46.50 ID:FSS4MXso

 

1時間ほど経過して、様子を見に行く。

 

 

「どう?」
「竹中さんの成果物を勝手に見ながらやってるんですけど、こんな感じで良いですかね」

 

 

おぉ、凄い。完璧だ。
動作がハードコピーだけで分かるように整理されている。

 

 

「凄いよ、そんな感じで大丈夫」
「ただ、竹中さんと同じにするのは面白くないので、補足説明入れたりとか
 ダンプDBの値変更されてる部分の背景色を変えたり工夫してるんですけど、問題ないですよね?」

 

 

無いよっていうか、むしろGJだよ。
いや、統一性を持たせるために竹中の作業が増えるけど。

 

 

「その調子でやっていいよ。てか、この頃の私はこんな発想無かったよ」
「早く藤田さんに追いつかないといけませんから。じゃ、僕は続きやりますので」
「うん」

 

 

ここでも藤田さん活躍か。
木村くんは眠れる獅子だったのだ。

 

何か起爆剤があれば、急激に伸びるタイプでプライドが高い分、負けず嫌いの度合いも激しい。

 

 

まずはテスト作業で実力の片鱗を見せた木村くん。
井出&竹中コンビに一度は追い越されたものの、ここから逆転劇が始まる。

 

659 :12 /09(日) 18:18:17.09 ID:A7qfl0M0

 

>>657
プライドがよい方向に働いているな

 

672 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 18:29:07.98 ID:FSS4MXso

 

このプロジェクトは無事に終わった。
続いて、次のプロジェクトに入る。いつもの通り、スケジュールがこれまた厳しい。

 

 

「木村くん、これ出来そう? 厳しいなら言わないとダメだよ」
「大丈夫ですよ」

 

 

本当なのか・・・。

 

 

「でもこれ、私から見ても厳しいと思うよ。難易度もそこそこ高いし」
「この項目見る限り、上のシステムの補助的な部分ですよね。
 スケジュールもマ男さんが先に作ってくれてるみたいだし
 その部分を流用すれば出来ると思います。
 分からない所があったら、ちゃんと聞きますので」

 

何だコイツ、人が変わってないか?

 

 

「竹中ちゃん頑張ろうぜー」
「いやーこれ無理っすよ。製造2日しか無いじゃないっすか。帰れないっすよ」
「大丈夫だって。危なくなったら俺が何とかしてやるから」
「おい、上原ぁ!!」
「あ、は、は、ああ」
「木村と竹中の面倒、ちゃんと見ろよ」

 

 

いや上原さんは無理だ。
デスマフラグがスケジュールの時点で立ってる。

 

 

「リーダー、私が見ますよ。上原さんはスケジュール厳しいみたいですから」

 

 

藤田さんだ。

 

 

 

「あぁ? まぁお前なら別にいいが」
「あ、あ、あ、あり、あ」

 

 

ありがとうございます、だな。すると木村くんが

 

 

「僕は一人で大丈夫です」

 

 

 

 

小僧、また大言を吐きおった。

 

677 :12 /09(日) 18:31:12.81 ID:fFTKl72o

 

小僧てめえwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

 

691 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 18:36:22.86 ID:FSS4MXso

 

「木村くん、そこは礼儀としてありがとうございますって言わないとダメだよ」
「一番出来る藤田さんには教えてもらいたくないんで」
「ハハハww 私も嫌われたなぁ。でも、そのぐらいの意気込みがあれば何だって出来るよ」
「どうも」

 

 

なんだってこんな敵視しているんだ。

 

 

「よーし、それじゃ仕事するぞ」

 

 

こうしてプロジェクトが開始された。
木村くんの作成部分は、俺の作ったものを元に作る内容なため、俺は急いで作り上げる。
しかし、木村くんのアンチ藤田は相当なものだ。藤田さんはスレでも大人気だというのに。

 

何が彼をそうさせるのかは分からないが、ただ単に不平を述べるだけじゃなく
藤田さんを超えて、黙らせてやる、という強い意志が行動に出ている。
というか、実は嫌いなんじゃなくて、本当は凄いのを認めたくないだけなんじゃないのか?
いや知らんけど・・・。

 

一人で大丈夫、とは言ったものの、大丈夫なわけがない。
放置しておいたら、勝手に一人で抱え込むタイプなので、俺が自主的に様子を見に行くことにする。

 

 

「どう?」
「今、半分ぐらい出来た所です。画面遷移の時に、セッションに値を入れようとうんたらかんたら」

 

 

大丈夫だった(たぶん

 

701 :12 /09(日) 18:40:51.22 ID:Ki10q.Mo

 

木村もまあ…職場で目上の人間を相手に、よくそんな態度が取れるもんだ
自分より出来る人間は癪に障るんだろうな
藤田さんは自分すら利用して育てようってつもりなんだろうが、寛大すぎww

 

727 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 18:52:53.57 ID:FSS4MXso

 

しかし、ここで完全に大丈夫だと判断するのは早計だ。
このプロジェクト全体で目を配らないと、また失敗してしまうぞ。
彼は挫折すると、起き上がるのに時間が掛かるタイプに思える。

 

 

「マ男さん」

 

 

む、木村くんだ。

 

 

「ちょっと見てもらっていいです?」

 

 

どれどれ。

 

 

「ここの所なんですけど、このメソッドからこのクラスに飛ぶじゃないですか。んで、この先でうんたらこうたら」

 

 

何だコイツ、すでに処理を理解できているぞ。

 

 

「そうそう。んで、このクラスの・・・ここか。ここでSQL文を組み込んでるでしょ?」
「はい」
「ここで実行して、値をセットしてるんだよ。んで、これでコミットしてる」
「なるほど、分かりました。後は自分でやってみます」

 

 

吸収力が半端無い。
一度聞いたことは、即座に覚える・・・というのは過大評価か。

 

 

「所でマ男さん、藤田さんって帰らないですよね?」

 

 

そりゃ仕事いっぱいあるからな。
ここみたいに、出来る人が少ないと、その人に仕事がいっぱい行くんだ。

 

 

「そりゃね。私の仕事量の倍は受け持ってるんじゃないかな」

 

 

誇張表現してみる。

 

 

「へぇ。僕も作業を早く終わらせるんで、マ男さんの仕事を少し分けてくれませんかね」

 

 

 

 

この小僧、またまた大言を吐きおった。

 

751 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 19:03:10.85 ID:FSS4MXso

 

「いや、それは無理だよ。
 私が上の人に頼むならともかく、下の人間に渡してたら
 スケジュールを割り振ってる意味が無くなるから」
「そうですか」

 

 

木村くんのやる気が暴走し始めている。ここは抑えないとダメだ。
藤田さんが出来すぎるせいで、常に彼は120%状態だぞ。時には息抜きも必要だ。

 

 

「うーん、木村くん大丈夫?」
「何がですか?」
「気張りすぎてない?」
「藤田さんがライバルですから」

 

 

 

いや、それは別にいいんだけどね・・・。
そんな漫画じゃないんだから、1年や2年で追いつけるわけないじゃない・・・。
自分に自信を持ちすぎだよ、君は。

 

 

 

「竹中くんみたいに気楽に構えていいよ」
「僕はあの人は眼中に無いですから」

 

 

 

こ、この小僧!? 

 

 

俺の器が小さすぎて、コイツを制御できん・・・!

 

754 :12 /09(日) 19:04:34.90 ID:tIfDnxM0

 

かき乱すだけかき乱して、とっとと辞めそうなタイプですね。

 

757 :12 /09(日) 19:04:47.60 ID:AsZqC/Qo

 

こういうガキは自身たっぷりで一度落ちるところまで落とされたらなかなか立ち直れなくなるんだよなww

 

791 :12 /09(日) 19:27:52.20 ID:yppnsDco

 

何よりも上原さんが戻ってきてくれたのが個人的に安心した
どこか他へ行くでも、元さやに収まるでも、安否だけはすごい気になってたんだぜ

 

806 :12 /09(日) 19:53:19.69 ID:HZ/QA32o

 

高卒で専門中退(SE系 で1年ぐらいNEETしてた俺が来ました。
マ男ガンガレ。俺はばあちゃんが倒れてから働く気になった、今土木のバイトでお金溜めながら看護士目指してる。

 

後、あんまり人は見下すな、俺は三国志が好きだけどその中でも特に好きな台詞が

 

「士、別れて三日、刮目して相待すべし 」
 呉将軍 呂子明

 

努力してる人は3日あれば変わるのです。更に言うなら
「人は3日あれば変わる」
と思います。これはマ男さんが一番分かってると思います
長文失礼。。。

 

808 :12 /09(日) 20:00:54.73 ID:wELEllU0

 

>>806
俺の友達に29歳で看護学校入ったやついるぜ。
立派な志だと思う。頑張れよ。

 

888 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 21:29:25.23 ID:FSS4MXso

 

これはダメだ。俺のキャパシティをとうに超えている。
藤田さんに相談しよう。平成の孔明なら、俺に何か策を授けてくれるはずだ!

 

 

「すいません、藤田さん」
「うん?」
「木村くんについてなんですけど、頑張りすぎてます」
「うーん」
「あのままだと、大きな壁にぶつかった時に潰れるんじゃないかと思うんですが」
「逆に、今の彼を止める方法は思いついてるの?」

 

 

無いです。なので、あなたを頼りに来ました。

 

 

「私が君の立場なら、逆にどんどん仕事任せるよ」

 

 

えぇ!?

 

 

「本人はやる気があるわけだから、それを不完全燃焼させる方が良くない。
 しかも、今のところは過失が無いわけでしょ?」

 

 

態度と言動が問題だが。

 

 

「えぇ」
「だったら、仕事をどんどん渡して、どこまで消化できるかを見た方が良い。
 もちろん、よく見ておかないとダメだよ。
 かつ、限界まで待つ。すぐに手を貸すと、逆に燃え上がって自爆するだろうからね。
 限界と判断したら、君が手を貸すんだ。そうすれば、彼も自分の限界を知って、色々と工夫をこなすだろうし
 君の株も上がって一石二鳥になる。大切なのは、人の性格を掴む事だよ。
 竹中くんにこの方法を取ってたら、もうこの会社には居ないだろうから」

 

 

う、うーむ。なるほど・・・。確かにその通りかもしれん。
しかし、安易にこれやって、とやってると、すぐに潰れてしまうぞ。

 

 

「仕事の難易度は少しずつ上げてみると良い。やっちゃいけない事は、一気に上げる事と、以前より下げる事。
 理由は言わなくても分かるよね」

 

 

一気に上げれば、無駄にやる気だけが暴走して、結果的にできませんでした→俺ダメな奴だ→死亡
下げれば、俺って過小評価されてるな→こんな所に居たってつまらん→逃亡
あくまでの俺の仮説。

 

 

 

む、難しい。しかし、育て方さえ間違えなければ、ソルジャーどころの騒ぎじゃなくなるぞ、これは。

 

905 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /09(日) 21:53:09.60 ID:FSS4MXso

 

これ以来、俺は藤田さんの言ったことを基礎に、木村くんを教育し始めた。

 

するとどうだ。

 

最初はやはり限界値が低く、すぐに限界と見えたので、それなりには手を貸していたが
並の向上心ではない木村くんだ。

 

次からはやり方を変えてみたり、事前に質問をしてきたりと、自らの限界値を上げていった。
プロジェクト毎に成長・・・とまでは行かないが、竹中と比べると段違いのスピードで伸びていく。

 

入社半年が経つ頃には、質問の回数は1日に1回あるか無いかになり
1年が経つ頃には、一人で仕事をこなせるようになっていた(要観察)
あとはあの生意気な鼻っ柱をどうにか出来れば文句は無いが、仕方あるまい。

 

 

しかし、さすがに藤田さんと言った所か。
まともに接したことなど無いはずなのに、スッパリと教育方針を授けてくれた。
木村くんは俺が藤田さんからアドバイスを受けたことなど知る由も無いだろうな。
君がライバルとしている人は、すでに君を育て上げるプログラムを組んでいたんだよ。

 

まさに手の平の上で踊る人形だ。

 

 

だが、良い調子だ。
しかも木村くんがやってきてから、スケジュールが少しだけ和らいだ。

 

 

こうして木村くんは俺の手から離れ、自立した。あと、竹中も正社員として配属された。
俺も3年目を迎え、そろそろ戦力として認識されだしたか。というか、木村くんに追い抜かれそうで怖い。

 

 

そして、この3年目で、

 

スレタイの意味する限界、

 

藤田さんがリーダーをやらない理由が明かされる事になるのだ・・・。

 

 

 

第五部・最終章『もう俺は限界かもしれない』前編終了

 

 

 

 

続きは来週。

 

950 :12 /09(日) 22:57:38.49 ID:9g/JkGE0

 

相変わらず巧いなwwwwwwwwww

 

気になってしかたないwwwwwwww

 

 

81 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /10(月) 23:27:40.76 ID:KD1LGx.o

 

この平日一週間を使って、第五部での空白の1年間を書こうと思う。
暇潰し程度かつ本編とはほぼ無関係となる部分だから、勘ぐり無しで純粋に楽しんで欲しい所です。
詳しくは雑談スレの方で。

 

本編より話はさかのぼり、木村くんが入社して1年が経った頃の話だ。
竹中も正社員として起用され、木村くんとまでは行かないまでも、そこそこ仕事が出来るようになっていた。
新たな戦力を加えた俺たちは、今日もプロジェクトに取り組む。

 

「以上が今回のプロジェクトの説明だ」

 

こりゃまた上原さんのスケジュールが厳しいな。
藤田さんとほぼ同じ量だが、力の差は大きいぞ。

 

「質問あるやつ居るか」
「は、は、は」

 

上原さんが手を出したり引っ込めたりしている。

 

「ないよーだな」

 

いや、おい。

 

「はい、リーダー」
「おう木村か。なんだ」
「僕は誰と仕事するんですか?」
「あ? お前はもう一人で十分だろ」
「うーん、これってVBですよね? まだ経験浅いんで、誰かつけてもらいたいんですけど」

 

確かにそうだ。
まだ一人でやらせるのは心許ない。俺が付こうか。

 

「お前は誰か希望いるのか」
「上原さんにしてもらいたいです」

 

えぇ!?

 

 

「あ、あ、あ、わ」

 

86 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /10(月) 23:37:10.62 ID:KD1LGx.o

 

「上原さんはもうスケジュール厳しいから無理でしょwwww 俺がついてあげようかwwwwww」
「結構です」

 

即答。井出、目が笑ってない。

 

・・・木村くんのこの性格、どうにかならんものか。

 

 

「上原以外で居ないのか」
「居ないです」

 

お、俺は?

 

 

「今回はダメだ。上原のスケジュールはいっぱいいっぱいだからな。
 代わりに藤田、お前が付いてやれ」

 

なぬ、それは鬼門だぞ。

 

 

「あぁ、はい。ただ、私は良いですが、木村くんがどうなんですかね」
「木村、どうだ」
「絶対に嫌なんですけど」

 

おいおいおいおいおいおい。

 

 

「文句言うな。藤田はお前の数倍は仕事できるぞ。側でやれるだけありがたいと思え」
「そういう問題じゃないと思いますが」

 

なんという度肝。
ここまで楯突いた人間はいまだかつて無い。

 

 

「うるせぇな。我慢しろ。これも社会勉強のうちだ」

 

 

「・・・チッ。・・・はい」

 

 

舌打ちの瞬間、リーダーの顔が

 

鬼の形相になったのは気のせいだろうか。

 

94 :12 /10(月) 23:41:09.19 ID:QdJB7hAo

 

リーダーはマ男のことを嫌い、木村の第一印象はいい感じだったけど
この時点で木村のことも嫌ってそうだな

 

83 :12 /10(月) 23:32:49.11 ID:FCHz4W6o

 

上原さんて今までも藤田さんと同じぐらいの率で割り振られてたきがするんだけど
結局藤田さんとどれくらいの差があるの?

 

藤田さんを100ぐらいとして他のメンバーの仕事できる指数みたいなの教えてくれるとうれしい。

 

>>83
うーん、そうだな。数値で表すの難しいから、不等号でやらせてくれ
藤田<<<<<<<上原<<<リーダー=俺<<木村<井出<<竹中
ぐらいか。でもなんか違う気がするな。

 

107 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /10(月) 23:49:43.89 ID:KD1LGx.o

 

すまん、不等号が逆だったwwwwwwwwwwwwwwww
自分でなんか違うなって、そりゃ違うわwwwwwwww

 

109 :12 /10(月) 23:50:13.82 ID:ydufzL.o

 

藤田さんと上原さんって結構差があるのねww

 

103 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /10(月) 23:47:00.16 ID:KD1LGx.o

 

「おい、マ男」
「・・・はい」
「お前、後で話だ」

 

 

やはり来たか・・・。木村くんのシワ寄せは俺に来るんだよ・・・。
頼むから派手なことをしないでくれ・・・。

 

 

「というわけで、プロジェクト開始だ」

 

 

そして残された俺。

 

「おい、お前、木村にどういう教育してるんだ」
「すいません、私も何度か注意してるのですが」
「注意するだけじゃ意味がねーんだよ、ボケ。直らないと無意味だろーが」

 

全く持ってその通りだ。だけどね、俺もね

 

 

「この俺に楯突くとは良い度胸してるじゃねーか。専卒の分際で」

 

何故それを俺に言う。

 

「おまえ、ちゃんと木村の」

 

 

リーダーが何か考え出した。いや、というより思い出したようだ。

 

 

「そーいや、木村は途中で上原に任せたんだったな」

 

まずい。

 

 

「おい、上原ぁ!!!!!!!!」

 

 

終わった。

 

123 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /10(月) 23:59:26.73 ID:KD1LGx.o

 

リーダー叫んでも、ここは応接室だぞ。

 

「おい、マ男。上原呼んでこい」

 

 

だが断る。

 

 

「いえ、やはり社会人としての常識を教えるのは、先輩として私の」
「お前の話は聞いてない」

 

なんというジャイアニズムだ。

 

「上原呼んでこいって」

 

だがことわ

 

「呼んでこいって」

 

れないので呼んでくる。

 

 

「は、は、は、い、は」
「おい、上原ぁ! お前、木村に何を教えてるんだ!」

 

 

怒鳴り声が凄い。

 

 

「し、し、しご、し」
「私語じゃねぇよ、ボケ!!」
「ち、ちが、ち、し、ご、し」
「お前、いい加減にしろよ!」

 

 

そりゃあんただ。

 

134 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /11(火) 00:10:21.40 ID:ijo/lxco

 

「おい、マ男」

 

 

なんだ。

 

「お前何見てんだ」

 

しまった。

 

 

「見せ物じゃねーんだよ。とっととお前は仕事しろ」
「ですが、木村くんの」
「ですがじゃねぇ! 木村の責任は全部上原だろうが!」

 

それは違う。

 

 

「す、すい、すいま、す」

 

このパターンになるとダメだ。

 

 

「おい、木村も呼んでこい」
「木村くんですか?」
「そうだよ。当事者を呼ぶのは当たり前だろうが」

 

 

・・・まぁ確かに。
というか、そもそもで上原さんと俺を叱るのがお門違いのような気もするが・・・。
とりあえず何はともあれ、木村くんを呼ぶ俺。てか、これじゃまるでパシリだ。

 

「おい、木村、上原にお前何を教わったんだ」
「仕事ですが」

 

 

そういう意味じゃないよ、木村くん・・・。もう少し言葉の裏を読むんだ。
君なら出来る、上原さんを助けるんだ。

 

139 :12 /11(火) 00:19:21.92 ID:Dl9AiuAo

 

木村に腹立つお前らにこのエピソードを楽しく読む方法を伝授してやる

 

木村「〜〜〜〜〜〜〜〜。ふっ(さらさら」

 

って語尾を脳内変換するんだ、イメージとしてはちびまる子のはなわくん
俺はもうこれを実装してからさっきから笑いがとまらんwwwwww
ちなみに上原さんは森本レオで再生すると面白いが、こっちは不謹慎なため即棄却された

 

142 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /11(火) 00:22:40.22 ID:ijo/lxco

 

「仕事だけか?」
「うーん、他にも色々教えて貰いましたけど、何で僕を呼んだんですか?」

 

君は呼ばれた理由が分かってないのか。天然モノだな、こりゃ。

 

「お前の礼儀がなってないからだよ」
「じゃあなんで上原さんが怒られてるんですか?」

 

 

な、なんという度肝。

 

 

「上原はお前の教育係だからだろうが!!」
「す、すす、す」
「じゃあ以後、気をつけます」

 

 

じゃあ、が余計だ。言葉使いに気をつけてくれ。下手すれば火に油を注ぐことになる。
この子の中には、先輩・後輩という概念が無いように思える。人間誰しも平等が大前提に置かれているのか。

 

 

「あぁ? ならお前はもう帰っていいよ」
「それなら上原さんも良いですよね?」
「コイツはダメだよ」
「いえ、仕事について聞きたいんですが」
「藤田に聞けよ」
「その藤田さんが、上原さんに聞いてみてって言ってました」

 

 

え? おかしいな。藤田さんが自分の仕事を投げたというのか?

 

 

「あぁ? 藤田がか? わかったよ」

 

 

またもや孔明の予感がするが・・・。

 

全然書けてないけど、そろそろ寝ようと思う。
続きはまた明日。

 

144 :12 /11(火) 00:24:15.69 ID:V3p3ut20

 

>>142
お、おや、おやす、おおおお

 

167 :12 /11(火) 01:24:19.25 ID:IFhPrR20

 

藤田さんはマジ尊敬できそうな人だな。
ただ、完璧な人間と一緒に仕事したら俺なら窒息する。

 

220 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /11(火) 22:33:11.77 ID:ijo/lxco

 

こうして上原さんはリーダーの呪縛から逃れた。
さすがに藤田さんGJと言いたいところだが、どうもしっくり来ない。
藤田さんのやり方とは少し違う気がする。はて、どこが違うのか。

 

 

木村くんは、藤田さんから上原さんに聞いてみてくれ、と言われた。と言っていた。
ここがおかしい事に気付く。
藤田さんなら、自分で言いに来るはずだ。木村くんを挟むことはしないはず。

 

 

まさか木村くんが仕組んだのか? いや、まさかな。

 

 

俺はこの疑問を抱えつつ、開発室に戻った。
そして仕事開始。

 

 

「マ男さん」

 

しばらく経った頃に、木村くんに声をかけられた。

 

「ん?」
「上原さんって、なんであんなにいじめられてるんですか?」

 

 

さぁ・・・そこんとこは俺も分からん・・・。確かに何でだろうな。

 

 

「仕事もちゃんとやってるし、不平不満も漏らさないし。良い人だと思うんだけどな」

 

 

その理由なら、藤田さんも当てはまると思うが、この子は何故か嫌っている。

 

「ねぇ、木村くん、さっき藤田さんから上原さんにって言ってたけど」
「あぁww もちろん作り話ですよww あぁでもしないと、上原さんかわいそうでしたから」

 

 

この小僧、中々やりよるではないか

 

231 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /11(火) 22:44:26.22 ID:ijo/lxco

 

しかし、ここは褒める所ではない。
先輩の名を勝手に使った、という事になる。
いやでも、あの状況で上原さんを助ける方法はあれが最善だったような気も・・・。

 

いやいや、やはり注意しておくべきだ。
この子は利用できるものは全て利用してしまう所があるように見える。

 

「でも勝手に藤田さんの名前を出したらダメだよ。
 もしかしたら、今度は藤田さんが怒られてしまうかもしれないし」
「じゃあマ男さんは、上原さんを見放すつもりだったんですか?」

 

そうではないが。

 

 

「やり方を考えないとダメだよ」
「分かりました。後で藤田さんに謝っておきます」

 

 

いやいや、そうじゃない。
この子は何でもかんでも極端だな。というか、言ってる意味を理解してない所がある。

 

しかし、木村くんを呼んで応接室に行くまでの間に、あの発言を思いついたと言うのか。
方法は褒められたものではないが、そこそこの切れ者なのかもしれん。
あそこで藤田さん以外の名前を出していたら、余計に荒れていた可能性もある。
何よりも、顔が真顔だった。発言した瞬間は、藤田さんGJ、と思わせる凄みがあった。

 

 

どうでもいいけど、こういう後輩は使い辛い・・・。俺の立場がひどく惨めだぞ。

 

234 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /11(火) 22:53:25.31 ID:ijo/lxco

 

木村くんの機転により、難を逃れた上原さんだったが、毎日がリーダーとのイベントの上原さんだ。
何か知らんが、プリンタがぶっ壊れた時だ。
といっても、ネットワークのエラーか何かのようで、再起動させれば普通に動く類のものだったのだが

 

 

「おい、上原ぁ!!」
「は! は、は」

 

 

あまりの突然の出来事に、キョドりまくる上原さん。俺たちも何事かと視線を集める。
その視線にさらにキョどり、席を立ってユラユラ揺れる上原さん。落ち着け。

 

 

「おまえ、プリンタぶっ壊しただろ!?」
「し、し!」
「動かないんだよ、ボケが!!」

 

すると井出が

 

 

「動かないんだよ、大きな古時計が!」
「おい、井出」
「はい」
「大きなノッポの古時計だろ」
「そうでした」

 

 

もういいよ。

 

 

「今すぐ直せよ!」

 

そんな横暴な。俺は席を立ち、プリンタの方に歩いていこうとすると

 

「再起動させてみれば良いんじゃないの・・・」

 

 

木村くんの独り言が聞こえた。

 

 

「ちょっと良いですかね」

 

 

同時に藤田さんが動いた。

 

240 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /11(火) 23:01:55.63 ID:ijo/lxco

 

「給紙のランプが点滅してるな」

 

 

紙の残りを確認する藤田さん。その後に、電源を入れ直す。

 

 

「リーダー、印刷してもらえます?」
「あ?」

 

 

プリンタが正常に動き、いつものように印刷していく。

 

 

「直ったみたいですね。上原さん、もう大丈夫ですよ」
「あ、あ、あ、り、あ」
「えぇ、こちらこそ。では、仕事に戻りましょう」
「は、は」

 

 

うーむ、あの雰囲気であそこまで出来るものか。

 

 

「上原さん怒鳴られ損じゃないか。再起動ぐらい試してみりゃいいのに」

 

 

聞こえるぞ、木村くん。

 

 

「リーダー」
「なんだ井出」
「木村くんの独り言がパラダイスです」

 

あ、こいつ。

 

 

「独り言は井出さんの専門でしょ」

 

 

木村くんのこの切り返し!?

 

 

「ちょまwwwwww」

 

244 :12 /11(火) 23:03:55.88 ID:4191mYE0

 

上原さんの味方をしたいって気持ちも藤田さんと一緒なんだな。

 

251 :12 /11(火) 23:08:35.29 ID:iunuSjI0

 

木村カコイイ!

 

254 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /11(火) 23:10:21.66 ID:ijo/lxco

 

「そりゃ言えてるなwwwwww おい木村、お前うまいなww」
「ありがとうございますww」

 

 

あのピンチの状況を一気に逆転し、好感を与える木村くん。

 

ホントにコイツ凄いんじゃないのか?

 

 

「ちょ、リーダー、おれおれ」
「お前はもう飽きたよ」
「そんなぁ」

 

 

爆笑する室内。上原さんだけが地味に肩を震わせていた。

 

 

「おい、上原、お前何笑ってんだ」
「あ、い、い」
「誰の許可もらって笑ってのかって言ってんだよ!!」

 

 

また始まった。もうやめてあげてくれ・・・。
すると立ち上がる木村くん。今はそんな空気じゃない、身を潜めるんだ。

 

 

「リーダー、なんで上原さんをいじめるんですか?」

 

 

ええええええええええええええ!?!!?!!?!?

 

 

俺は腰が抜けた。

 

いや、抜けそうになった。マジで。

 

263 :12 /11(火) 23:13:10.86 ID:lWX8OEIo

 

木村かっこいいなww

 

266 :12 /11(火) 23:13:56.92 ID:TAWZhooo

 

生意気だが、リーダーみたいなヤツにはこういう特攻隊員の歯に衣着せぬ発言は溜飲下がるな

 

275 :12 /11(火) 23:21:28.89 ID:i19lG0Eo

 

初めて木村GJと思ってしまった。
たまにはこの空気の読めなさも、いい方に働くんだな

 

でも最初は確か上原さんに引いてたはずなんだが、よく庇う気になったな

 

279 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /11(火) 23:24:05.48 ID:ijo/lxco

 

突然の出来事に、あの藤田さんですら目が点になっていた。
そりゃそうだろう。藤田さんは影で助けていた。こんな表立って助けたことなどないのだ。
俺も当然そのクチだったし、表立って助けることなんてしようと思ってすら無かった。
しかもリーダー相手だぞ。度肝を引っこ抜かれたかのような気分だった。

 

 

「お前自分が何言ったかわかってんのか?」
「いや、ていうか、上原さんってそんな悪いことしてますか?」
「俺の質問に答えろ、下っ端!!」

 

 

怒声が響き渡る。戦慄。戦慄が走りまくる。
若い。こんな事、世間を知らない年齢でなければ出来るはずもない。

 

 

「笑うのに許可が居るって、それこそ笑っちゃうんですけど」

 

 

フン、という言い方+素振りをする木村くん。おぉ、そなたが勇者か。

 

 

「ぶwwwwwwwwwwwwww」

 

井出が吹き出した。
見る見る内に顔が赤くなっていくリーダー。

 

 

「木村くん、君はいい加減にしなさい」

 

 

藤田さんが立ち上がった。
道徳的には木村くんに分があるが、状況を見れば藤田さんの判断が正しい。

 

 

「藤田さんも上原さんがかわいそうだって思わないんですか? 
 会社で笑うこともできないって奴隷じゃないんだから、
 何か言うのが普通だと思うんですけど」

 

 

 

違う、そういう意味で藤田さんは言ったんじゃない。
君の安否を心配してるんだぞ。

 

 

「まぁとりあえず落ち着きたまえ、君たち。竹中くんのパソコンを見てみろよ」

 

 

ただのザクだろ・・・。

 

 

「木村、お前誰に物言ってんのか分かってんのか!」
「リーダー、後で私の方から話をしておきます」
「リーダー、俺のおにぎりせんべいあげます。食べかけだけど」

 

294 :12 /11(火) 23:32:19.03 ID:p/zra..o

 

二十歳くらいなら、そういった素直な心ってのは大事じゃない?
さすがに三十路いってもそのままだと、まずいけど
シャアいわく、これが若さか・・・って言ってたし

 

301 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /11(火) 23:36:57.82 ID:ijo/lxco

 

「おい、藤田。なんでお前が話す必要があるんだ、俺が直々に説教してやる」
「今の木村くんと話をしても、拉致があかないと思います。第三者の立場から、私が話をします」

 

 

うーむ、上手い。そしておにぎりせんべいを食べるリーダー。

 

 

「せんべい美味いっすか、リーダーww」
「これ全部もらっていいか?」
「いいっすよwwww」

 

 

井出&藤田さんのフォローで何とか場は収まったが、木村くんは納得の行かない顔だ。
渦中の上原さんに至っては、うつむいて身体を震わせている。怯えているのか。
しかし、木村くんは一体何を考えているのか。
上原さんを見下していたかのように見えたが、今は守っているように見える。
というか、自分が悪だと思ったものに勇敢に立ち向かいすぎだ。
正義感が強すぎるのか、類まれなる自己中なのか。
どうでもいいけど、木村くんのキャラが強すぎて竹中が全く目立たん。
彼も相当なアレだったが、このメンツの中では影のうす〜いキャラになってしまうのだ・・・。

 

 

そして昼休憩、木村くんは藤田さんと飯を食いに行ってしまった。
俺は普通にコンビニ弁当食べながら仕事。

 

316 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /11(火) 23:49:16.00 ID:ijo/lxco

 

さっきの事が気になって、中々仕事に集中できん。
藤田さんが二人で話すということは、相当なもんだったのだろう。
木村くんも木村くんで、よく了承したもんだ。

 

そんなことを考えていると、二人が帰ってきた。
木村くんは無表情、藤田さんはやれやれ、といった感じだ。
気になるが、俺は無関係なので関わらないことにする。

 

俺の予想では、木村くんは藤田さんを論破するつもりだったのだろう。
完勝、というわけではないが、6:4辺りでやり込めたのではないかと思う。
もちろん屁理屈などを使ってだが。

 

 

しかし、藤田さんと木村くんでは相性が悪いと見える。
藤田さんは大人な分だけ、引き際は心得ているが、逆にそれでは木村くんを調子付かす事になるのではないか。
まだ片鱗しか見せてないが、木村くんも中々の孔明ぶりだ。
いや、孔明は藤田さんなので、周瑜ということにする。

 

切れ者同士、お互いが相容れることはないのか。
藤田さんはどちらでも良さそうで、木村くんが断固拒否という形だが・・・。

 

しかし未だに見えてこない謎がある。

 

 

何故、木村くんは上原さんを庇うのだろうか・・・。

 

321 :12 /11(火) 23:50:59.97 ID:qeAp0jIo

 

木村はワキガフェチなんじゃね?

 

339 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /12(水) 00:09:34.36 ID:dVXeY9wo

 

これ以降も、やはり上原さんは当然のようにいじめられた。
木村くんは藤田さんに何を言われたのかは分からないが、派手な行動を控えるようになっていた。
まぁそれでも、井出や藤田さん、はては俺を使って阻止に出ていたが。
しかし、何故こうも上原防衛に固執するのか。何か理由があるのかもしれない。聞いてみるか。

 

 

「木村くん、なんで上原さんをあんなに庇うの?」
「大した理由じゃないですよ」

 

む。

 

「でも、あんな行動は中々起こせないよ」
「マ男さんも藤田さんも、自分の事ばかり考えすぎなんじゃないですか?」

 

 

まぁそうかもしれないが。

 

 

「正義感だけで動いてるってこと?」
「いや、そういうわけでもないですけど」

 

 

うーむ。言いたくないのかな。それならば、俺も深くは追求すまい。

 

「僕にも色々あるんですよ」

 

 

ここから、木村くんが上原さんを庇う理由を話し始める。

 

今日はここまで! というわけ寝ます。また明日。

 

342 :12 /12(水) 00:11:11.42 ID:Op7A.9co

 

>339
乙!
俺も寝るわ

 

422 :12 /12(水) 13:33:44.80 ID:NTuFMz.0

 

マ男も藤田も、いじめを見て見ぬふりしている小学生と変わらんな。
木村の反応がまっとうに思える。

 

 

461 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /12(水) 22:59:17.25 ID:dVXeY9wo

 

木村くんが上原さんを庇う理由、果たしてそれはどんなものなのか。
藤田さんと同じように、何か過去に起因するものがあるのだろうか。
しかし、それにしてはやり方が少々過激だ。

 

 

「色々あるって?」
「うーん、まぁ確かに道徳的な部分もありますよ。でも、僕はもっと先のことを見据えてるんです」

 

 

先の事? 先の事を考えるなら、リーダーとはあまり反発しない方が良いように思える。
味方にもならないが、敵にもならない。中立的な立場が一番安定しているはずだ。
打算的な考えになってしまうが、あの人とは極力関わらない。これに限るはず。
先の事を考えているとは、とてもじゃないが見えない。

 

「先の事って?」
「まぁマ男さんだから話しますけど」

 

 

しかし木村くんのことだ。これまでも俺の度肝を何度も引っこ抜いてきたのだ。
今回も、何か俺の手の届かない範囲で物事を考えているのかもしれん。

 

478 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /12(水) 23:09:45.73 ID:dVXeY9wo

 

「やっぱり、誰だって出世していくわけじゃないですか」

 

 

一般的には、だが。この会社の話だったら、そんな事は正直わからん・・・。

 

 

「僕だって今はまだ一番下だけど、いずれ藤田さんを追い越して、リーダーになるんですよ」

 

 

この小僧、またもや大言を

 

 

「そうなった時、一番使いやすそうな人って上原さんだと思いませんか?」

 

 

あ、開いた口が塞がらん。
まさかそんな理由で上原さんを助けてたのか?
俺はともかく(眼中になさそうだが)藤田さんを追い越せるとマジで思ってるのか?
しかも、それはリーダーになるという前提の元での話だろう。

 

類まれなる大物なのか、ただのバカなのか?

 

どちらにしろ、またもや俺は度肝を抜かれた。
この子の考えている事は、俺の一歩も二歩も先に進んでいる。

 

 

「逆に誰が一番使いにくいかって言うと、間違いなくリーダーでしょ」

 

 

全く現実味がない・・・とまでは言わないが、君がそれを考えるのはまだ早い。
リーダーという仕事は、君が思っているほど楽じゃないんだぞ・・・。

 

482 :12 /12(水) 23:12:28.11 ID:XhSVrfM0

 

木村…新入りがリーダーを狙うとは、少なくとも5年はいてから戯け!

 

492 :12 /12(水) 23:20:10.55 ID:ESC/l0Qo

 

新人に利用されている上原さん・・・とても可哀想です・・・

 

493 :12 /12(水) 23:20:25.52 ID:jdukbzso

 

木村はきっとこのとき「(なんならマ男さんも使ってあげてもいいですよ)」とか考えてたに違いないw

 

494 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /12(水) 23:20:58.89 ID:dVXeY9wo

 

「だから、今のうちに手を打っておくんですよ。自分の立場が危ういと思った時には、もう遅いww」

 

 

笑えないから。君の話は度が過ぎている。
しかし、この子は本当に印象が変わりすぎだ。
よく聞く話で『初対面では全然喋らなかったのに、仲良くなったら良く喋る人だった』というのがあるが
彼はこんなレベルの話ではない。

 

よくこんな子の教育係が務まったものだ。我ながら感心する。

 

「それに上原さんって優しいですよ。
 どんなに忙しくても、間違った所は丁寧にコメントまでつけてくれますから」

 

 

あの吃音からは想像もできん。

 

 

「でも木村くん、リーダーとは大きな目標を持ったね・・・」

 

目標、という単語で抑えにいってみる。

 

 

「目標じゃないですよ。通過点です」

 

 

こいつ[切腹]だろう。

 

 

「でも、やっぱ大変だと思うよ・・・リーダーは・・・」

 

 

俺も経験した。いや、4割程度だが。それでも俺は必死だった。
今でもそれは変わらないだろう。

 

 

「大変なのは当たり前ですよ。まぁ、とにかく上原さんは味方にしておいて損はなさそうですから」

 

 

この子と話していると、俺が小物に見えてくるな。

 

512 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /12(水) 23:31:40.98 ID:dVXeY9wo

 

こうして明らかにされた上原さん防衛の理由。
木村くんは、上辺からは想像も出来ない野心を秘めていた。しかも、実現すると信じて疑っていないから凄い。色んな意味で。
そういえば最近、藤田さんと木村くんの話をしていなかったな。
機会があれば話をしてみたいが。

 

 

そんなある日の事だ。

 

 

「き、き、き、む、く、き」

 

 

上原さんが、何と自らコンタクトを取ってきた。
相手はなんと木村くんだ。何だ、何が起こった。

 

 

「ちょwwwwwwww何これwwwwwwwwww」

 

 

井出が爆笑する。

 

 

「上原さんじゃないですかww どうしたんですか?」

 

 

ちなみにリーダーは外に出ていて天敵が居ない。

 

 

「明日は天変地異だ! 太陽系が吹き飛ぶ!!」

 

 

黙れ、落ち着け。

 

 

 

「こ、こ、こ、これ、れ、こ」

 

 

木村くんに何かを渡そうとしている。なんだ?

 

521 :12 /12(水) 23:38:27.00 ID:lysa9uA0

 

きっとラブレター

 

527 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /12(水) 23:43:24.26 ID:dVXeY9wo

 

「あ、くれるんですか?」

 

 

爽やかな笑顔で対応する木村くん。
何だ、何を貰った。井出じゃないが、物凄く気になる。

 

「ちょwwwwww木村くんwwwwww何貰ったの!?」

 

 

顔を物凄く近づける井出。たぶん木村くんの頬に鼻息当たってる。

 

 

「なんだこれ」

 

 

俺もついでに覗き込む。
何かの瓶のようだ。しかし、何なのかまでは分からない。

 

 

「ちょwwwwwwww木村くんwwwwwwwwww」

 

 

井出が爆笑しだした。何だ、何なんだ。

 

 

「ソルマック胃腸液wwwwww本人が一番危ないだろってwwwwwwww」

 

 

ていうか、それ二日酔いとかの薬だろう、確か。

 

 

「い、い、い」
「ぶわははwwwwwwwwww胃腸液wwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

笑いすぎだ、落ち着け。

 

 

「ありがとうございます、上原さんww」
「あ、あ、あ

 

 

シュール過ぎて何とも言えんこの光景。

 

530 :12 /12(水) 23:44:56.33 ID:XhSVrfM0

 

上原さんなりに、気を使ってくれているのか?w

 

538 :12 /12(水) 23:47:47.00 ID:OnzQuEs0

 

頑張った結果が胃腸薬wwwwwwww
かわいいな上原さん

 

552 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /12(水) 23:58:55.63 ID:dVXeY9wo

 

何を思ってソルマックを渡したのだ、上原さん。
未だに俺はその理由が分かりません。
木村くんはそんな疑問を抱く雰囲気すら無く、爽やかな笑顔で受け取っていた。
本当に上原さんを抱きこむつもりなのか。
というか、すでに抱き込みは成功しているのではないか。
上原さんは今まで、俺はともかく、藤田さんにもあんな素振りは見せなかった。

 

木村くんが初だと言っていいだろう。

 

しかし何故に胃腸液なのだ。

 

 

「上原さんwwwwwwww栄養ドリンクあげればいいじゃんwwwwww机に散らばってるwwwwwwww」

 

 

とりあえずお前は落ち着け。上原さんの栄養ドリンクは生命線だ。

 

 

「これ、お酒飲む時に使わせて貰いますねww」
「あ、はは、は」

 

 

上原さんが満足そうな表情で自分の席に戻っていく。
木村くんは木村くんで、早速ソルマックを机の隅に放置だ。

 

 

「胃腸液wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

こいつは放置でいい。

 

 

どうも何かがおかしい。
会社の人間関係バランスが、一気に変動しつつあるぞ。

 

560 :12 /13(木) 00:09:51.72 ID:aDG/Rgco

 

上原『自分とリーダーとの軋轢に挟まれて…苦労かけるね。胃潰瘍には気をつけてね』

 

といういい意味での勘違いから来た善意じゃね?<ソルマック

 

565 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /13(木) 00:12:44.11 ID:nzxg6aIo

 

木村くんが来てから、人間関係図がくっきりと区分けされつつある。
今までは派閥のようなものなど無かったのだ。
いや、あったとしてもそれは見えていなかった。

 

 

所が今はどうだ・・・。

 

リーダー党
リーダー・井出(上原)

 

藤田党
藤田・俺

 

木村党
木村・上原

 

 

くっきりと区分けされつつある。
もっとも、今までも区分けはされてはいたが、藤田党もリーダー党の傘下的な扱いだったのだ。
所が、木村くんがやってきて、新たな勢力がやってきた。

 

そうなると、傘下ではなく、中立という事になる。

 

つまりは三大勢力だ。
しかし、良くも悪くもこの会社には、周囲に影響を与える人物が多い。
そしてそのような人物は、トップを目指し、妥協を許さない。木村くんとリーダーの争いは激化する可能性がある。

 

だが、木村くんは会話の運びがリーダー好みなのだ。
怒られる事も多いが、気に入られる事も多い。

 

果たしてどうなるのだ・・・。

 

 

こうして上原さんは、絶対的な味方を一人手に入れることができた。
いや、正確には木村くんが上原さんを手に入れたのか・・・。
野心の底を見せない木村くん。横暴の極みのリーダー。平成の孔明の藤田。
この多大な影響力を持つ3人の中で、果たして誰がトップに君臨するのか・・・。

 

 

 

続きは、本編の第五部・最終章『もう俺は限界かもしれない』後編にて。

 

578 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /13(木) 00:17:51.11 ID:nzxg6aIo

 

いかん、眠い。
金曜まで続かせる予定だったが、意外と早く終わってしまったな。
というか、本編に関係ないとか言ったけど、なんだかんだで繋げてしまったわ。まぁ、別に良いか。
前編で書ききれなかった部分を書いたと思えば。

 

あと竹中くんはリーダー党です。井出さんとセットという意識が強くて忘れてました。ごめんね、竹中くん。
というわけでおやすみ! 続きは週末。

 

615 :12 /13(木) 02:51:49.27 ID:fD4kg0o0

 

社長「どうぞ」
木村「失礼します」
社長「よくがんばったな、木村君」
木村「それで話ってなんでしょうか」
社長「いやーリーダー居るだろ」
木村「えぇ」
社長「変わってみないかね、次のプロジェクトで」

 

社長「藤田くんが一番適任なんだが、彼はその気がないみたいでね。
   それで二番目の実力者の君に頼みたいんだよ」

 

木村「・・・チッ。・・・やらせていただきます。」

 

652 :12 /13(木) 21:26:57.71 ID:XH6Mo9wo

 

社長「どうぞ」
木村「失礼します」
社長「よくがんばったな、木村君」
木村「それで話ってなんでしょうか」
社長「いやーリーダー居るだろ」
木村「えぇ」
社長「変わってみないかね、次のプロジェクトで」

 

社長「藤田くんとマ男くんが一番適任なんだが、二人ともはその気がないみたいでね。
 それで三番目の実力者の君に頼みたいんだよ」

 

木村「・・・チッ。・・・やらせていただきます。」

 

 

 

クライアント「それで今回の仕事なんですが○%#△・・・で1週間でお願いします」
木村「チッ、無理に決まってます。」
会社「あぼ〜ん」

 

656 :12 /13(木) 22:28:34.95 ID:o3eEUss0

 

社長「どうぞ」
木村「失礼します」
社長「よくがんばったな、木村君」
木村「それで話ってなんでしょうか」
社長「いやーリーダー居るだろ」
木村「えぇ」
社長「変わってみないかね、次のプロジェクトで」

 

社長「藤田くんとマ男くんが一番適任なんだが、二人ともはその気がないみたいでね。
 それで三番目の実力者の君に頼みたいんだよ」

 

木村「・・・チッ。・・・やらせていただきます。」

 

 

クライアント「それで今回の仕事なんですが○%#△・・・で1週間でお願いします」
木村「余裕ですよ。任せてください」

 

帰社

 

 

 

木村「おい上原ぁ!!!」

 

657 :12 /13(木) 22:32:18.88 ID:Sz2PrWso

 

>>656 この流れは予想してなかったが、ありそうで困る。

 

716 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /14(金) 22:36:59.81 ID:xtR38uQo

 

第五部・最終章『もう俺は限界かもしれない』後編

 

 

3年目の春。
相変わらず厳しいスケジュールばかりで疲労はたまっていたが、それは俺だけじゃない。
こんな所で弱音など吐いてはいられないのだ。

 

 

「おはヨーグルト!」

 

井出だ。こいつはいつも元気だ。

 

「キムちゃんと竹中ちゃん、もう2年目じゃーんww」
「そうですね」

 

 

両肩に手を置かれ、めんどくさそうに返事する木村くん。

 

「そろそろ仕事にも慣れたぁ?」

 

 

肩を揉む井出。

 

 

「僕じゃなくて、竹中さんに絡んでくださいよww 今仕事してるんで」
「これだから真面目くんはつまんねーんだよな」

 

井出が離れる。それと同時に

 

 

「竹中ちゃん、左舷弾幕薄いぞ!」

 

ゲッツのポーズを繰り出す井出。

 

 

「井出さん、なにやってんの!」

 

はいはい、ガンダムガンダム・・・。

 

 

「マ男さん」

 

木村くんだ。

 

 

「今日、お昼一緒に良いです?」

 

む?

 

730 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /14(金) 22:47:09.26 ID:xtR38uQo

 

木村くんから飯の誘いなんて珍しいな。

 

 

「あぁ、いいよ」

 

 

しかし、何の話をするのだろうか? 
仕事では特に問題無さそうだし、人間関係の事だろうか?
いや、もう最近の彼は藤田さん以外は歯牙にもかけてない様子だが。

 

 

「お、おは、お、おおおお、は」
「あ、上原さん! おはようございます!」

 

 

木村くんが笑顔で挨拶する。
上原さんはそれを見て、軽い足取りになった。

 

 

「おはよう」

 

 

同時にリーダーがやってきた。上原さんがビクリとなる。

 

 

「おい、上原ぁ!!」

 

 

また始まった。

 

 

「おまえ、挨拶ぐらいしろよ、なぁ? なめてんの?」
「リーダー、井出さんが呼んでますよ」

 

 

早速絡むリーダーに、木村くんが仕掛けた。

 

 

「あ? なんだ井出」
「なんだかんだと言われたら、答えてあげるが世の情け! 呼んでないすよ、リーダー」
「なんだよ。あーあ、今日も仕事だよ、めんどくせー」

 

738 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /14(金) 22:58:03.97 ID:xtR38uQo

 

リーダーのぼやきには目もくれず、俺は仕事モードに入っていた。
俺も3年目となり、中堅に差しかかろうとしているのだ。
しかし、すぐ後ろには木村くんがくっ付いている。

 

追い抜かれる、とは限らないが、やはり後輩に抜かれるというのは、先輩からしてみればイヤなものだ。
その昔、俺が廃人となった時、藤田さんは俺を原石と言ってくれた。
今は少しでも光が出てきただろうか。

 

 

「マ男くん、ちょっと良いかな」

 

 

おっと、藤田さんだ。

 

 

「今日、お昼空いてる?」

 

 

う・・・実は木村くんと約束があるのですが・・・。

 

 

「ちょっとお昼は・・・」
「ん? そうか。じゃあ、また次の機会にしようか」
「はい、どうも申し訳ありません」
「気にしないで良いよ」

 

 

そして仕事再開。

 

 

「おい、マ男、藤田」
「はい」

 

 

同時にする返事をする俺と藤田さん。

 

 

「お前らにちょっと話がある。応接室に来い」

 

 

む・・・。何か今日は話が多いな。

 

743 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /14(金) 23:09:37.43 ID:xtR38uQo

 

応接室に移動する俺と藤田さん。

 

「話というのはだな」

 

 

リーダーから個人的に話をするなんて何かの間違いじゃないのか?
何でもかんでも自分勝手に決めるのが当然という人なのに。

 

 

「木村居るだろ、木村」
「えぇ」
「あいつ、おまえらどう思ってんだ」

 

 

質問の意味がよく掴めない。
人間的に、なのか、仕事、という意味なのか。

 

 

「勤務態度はともかく、成長速度は凄まじいとは感じますね。
 事実、マ男くんよりも伸びる速度が上ですから」

 

 

や、やはりそうか。急に焦り出す俺。

 

 

「藤田、お前もそう思うか。実はな、俺もそう思ってんだよ」
「何かされるんです?」
「ちょっと、リーダーの仕事をやらせてみようと思ってんだ」

 

え? なに?

 

 

「それはまた大きく出ましたね」
「いやーあいつ、態度はともかく、素直に言うこと聞くからな。反発する時はしてくるが。
 だから、ここで俺の負担を減らして、あいつに持たせようと思ってんだよ」

 

 

それは危険だぞ。リーダー、あんたは彼の野心を知らないのか。

 

 

「リーダー、木村くんにリーダーの座を奪われるかもって心配はしないんですか?」

 

 

一応、聞いておく。

 

 

「あぁ? お前バカか。俺があんな若造に遅れを取るわけないだろうが」

 

 

バカはあんたじゃないのか・・・。

 

751 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /14(金) 23:17:41.13 ID:xtR38uQo

 

「最近、特に仕事がキツくてな。俺一人じゃめんどくさくてかなわん。
 木村にちと荷物を担がせようと思ってな」

 

 

ダメだこいつ・・・。目先のことしか頭に無いぞ・・・。

 

 

「それだったら、マ男くんに任せれば良いと思いますけどね。すでに前任の経験がありますし」

 

 

リーダーが、はぁ? みたいな顔をしている。

 

 

「コイツはリーダー向いてねぇよ。人の上に立つような人間じゃねぇ」

 

 

中卒だから、という言葉が見え隠れしている。

 

 

「そうですかね。私は、今の開発室の中じゃ一番向いていると思いますが」

 

 

な、何を言ってるんですか。
俺なんかがリーダーに向いてるわけないでしょ・・・。
てか、一番向いてるのはあなたですよ、藤田さん!

 

「あぁ?」
「もちろん、リーダーを除いて、ですよ」

 

 

ナイス自己フォローだ。

 

 

「俺は当たり前だ」
「ですが、木村くんですか。私はあまり賛成はできませんが・・・」

 

 

む、そうなのか。それは少し意外だな。

 

 

「おい、マ男。おまえ、木村の教育係りしてただろ。お前はどうなんだ」

 

 

どうなんだって言っても・・・。

 

 

「私は藤田さんが一番向いてると思いますよ」

 

 

俺の中にはこれしか無いのだ。

 

756 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /14(金) 23:27:20.68 ID:xtR38uQo

 

「あぁ!?」

 

しまった。

 

 

「い、いえ、もちろんリーダーを除いての話ですよ」
「だろうが」

 

 

あ、危ない。
藤田さんが先にこれを使っていなかったら、絶対面倒なことになっていたぞ。

 

 

「うーん、私はリーダーには向いてないよ」

 

 

謙遜しているのか。

 

 

「私は、人に表立って指示するのは得意じゃないからね。
 まぁそれを抜きにしたとしても、私がリーダーになると色々と弊害が出てくると思うよ」
「マ男、お前ちゃんと考えて物言ってんのか? 藤田は一番仕事が出来るだろうが」

 

 

それはもちろん分かっているが。

 

 

「そんな奴が外に出たりなんやかんやしてみろ、そのシワ寄せはどうすんだよ」

 

 

う、うーむ。なるほど、そういう考え方も出来るのか・・・。確かに・・・。
でも、それなら木村くんだって一緒じゃないのか?

 

 

「木村くんには主にどういった仕事をさせるつもりなんです?」
「外出るのは俺がやるから、基本的に管理だ。
 まぁ、最初のうちは外にも連れて行くつもりだが」

 

 

管理だったら、藤田さんの方が良いんじゃないのか・・・。

 

 

「どうですかね・・・。私はまださせない方が良いかと思いますが」
「まぁ見とけよ。俺が手足のように使ってやるからww」

 

 

そして出て行くリーダー。結局、俺たちは何のために呼ばれたのだ。

 

772 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /14(金) 23:38:44.84 ID:xtR38uQo

 

「藤田さん、どうなんですかね・・・。木村くんにやらせると言うのは・・・」
「危ないだろうね。彼の上昇志向は凄いだろう」

 

知っていたのか。

 

 

「えぇ・・・。以前、二人で話をしましたけど、リーダーになるのを目標としてるみたいです」
「取って代わられるかもしれないな」

 

 

その通りだ。そして、そうなると俺たちはそれに適応せざるを得ない。
リーダーと木村くんでは性格が違いすぎる。
彼がリーダーになったら、どうなるかは分からないが、あまり良い結果になるとは思えない。

 

 

「木村くんの最近の調子はどうなの?」
「どうというか、不調を今まで見たことがありません。精神的にも強いと思います」
「凄い子だな。普通、1年目か2年目で挫折の一つや二つは経験するものなんだけど」

 

 

大器。それを思わせる。

 

 

「リーダー、木村くんを使うでしょうね」
「だろうね。まぁあの人は権力ごとに関しては敏感だから、危ないと思ったらすぐに何らかの対策は取りそうだけど」

 

 

だけど、木村くんはそれを上回る潜在能力を秘めている。

 

 

「今日、実は昼に木村くんとご飯食べる約束なんですが」
「うん」
「この件について話をしてみた方が良いですかね」
「誘ったのはどっち?」
「木村くんです」
「なら、先に彼に喋らせてみると良い。
 彼から話があるってことは、出世とかそこらへんの話だと私は思うから」

 

 

了解しました。
そして昼休み。

 

 

787 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /14(金) 23:49:44.98 ID:xtR38uQo

 

「木村くん、話って何?」
「あーそれなんですけど、僕ってもう2年目じゃないですか」

 

 

『もう』なのか。『まだ』が正しいのではないか。

 

 

「さすがにまだ一番下ってのが納得行かなくて。入社の際、社長に面接で
 『うちには入社して二週間でリーダーになった人が居るよ』って聞いてたんですけど」

 

 

そ、それ俺だ・・・。何言ってんですか、社長・・・。

 

 

「僕より出来る人って、藤田さんじゃないですか。あとマ男さん。
 まぁリーダーになったのは藤田さんだと思うんですけど、僕もそろそろなっても良いんじゃないかなって」

 

 

おいおいおいおい。
藤田さんの言う通り、木村くんから喋らせておいて良かった。
こんな事を考えていたのか。
リーダーの行動、木村くんの思考、時期、全てがマッチングしている。

 

これはマジでひょっとするかもしれんぞ。

 

 

「マ男さんはどう思います? てか後押ししてくれますよね」

 

 

う、うーむ。何とも言えん・・・。
後押しっていうか、もう何もしなくてもチャンスがめぐってくるよ・・・。

 

 

「木村くんは、リーダーという仕事にプレッシャーは無いの?」
「プレッシャー? そんなの無いですよww」

 

 

そんなのって。

 

 

「でも大変だと思うよ、ホントに。現リーダーだって、毎日ひぃひぃ言ってるじゃない」
「あの人だからでしょ。僕は違いますよ」

 

 

耳が痛くなってきた。

 

789 :12 /14(金) 23:51:39.64 ID:Pec1xEoo

 

木村うぜえええええええええええええええwwwwwwww

 

802 :12 /15(土) 00:00:28.70 ID:444rWIco

 

とはいえ、あのアホ無能リーダーがプロジェクトリーダーやってるんだから
木村が出来ると思うのも無理はない。

 

804 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 00:00:51.64 ID:K32TwDYo

 

木村くんはやる気だ。そして、それしか見えていない。
今の立場で満足するなど、これっぽちも思っていないだろう。

 

確かに今の立場で収まる器ではないと思うが・・・。

 

しかし、素直に賛成が出来ない。
木村くんは確かに仕事も出来るし、今まで与えた課題は全てこなしてきた。
だが、まだ辛酸をなめていない。挫折を経験していない。

 

これが俺の中で引っかかる。

 

 

「それに、マ男さんも分かってるじゃないですか。
 今まで僕は失敗してないし、これからもしませんよ」

 

 

凄い自信だ。しかし、その自信を裏付ける実力があるのも確かだ。
どうするべきか。リーダーの話をするべきか。

 

すれば、確実にここで一気に調子付くだろう。
仮にしなければどうなるか。
リーダーから直接、話を聞くことになる。そうなると、俺はもう口を挟めない。
ここで話した所で、俺の忠告を聞くとはとても思えないが、木村くんの行動は結果的には変わらないのだ。

 

 

よし、今言う。

 

 

「実はさっき応接室で、リーダーと話をしたんだけど」
「あぁ、藤田さんと三人でのやつです?」
「そう。で、その時にリーダーが木村くんを補佐にしたいって言い出して」

 

「・・・へぇ」

 

 

瞬間、彼は悪魔の笑みを浮かべていた。

 

814 :12 /15(土) 00:05:16.85 ID:KSqzUvE0

 

これは皆が困る展開になりそうな予感

 

819 :12 /15(土) 00:07:13.70 ID:444rWIco

 

マ男は野心なさすぎで木村はありすぎか。足して2で割るとちょうどいいんだがw

 

822 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 00:10:41.71 ID:K32TwDYo

 

・・・まずったか?

 

 

「私と藤田さんは意見を求められたんだけど、まぁどちらとも言えずって事に」

 

 

嘘をついてしまった。というか、つかざるを得なかった。
彼の気迫に圧されてしまったのだ。

 

 

「どちらとも言えずってことは、少なくとも賛成はしてないってことですよね」

 

 

というか、賛成していない。
今の君では、まだまだ心配事が多い。実力だけでは務まらないのだ。

 

 

「まぁ別に良いですけど。力があると妬まれるのは常ですから」

 

 

何を言ってるんだ・・・。

 

 

「そうですか、僕がリーダー補佐ですか。藤田さんは社員のままですよね」

 

 

肩書きで争っているわけじゃないんだよ、木村くん・・・。
早く抑えないと、マジに暴走して大変なことになってしまうぞ。

 

 

「でも木村くん、すぐにリーダーになろうって考えるより、まずは経験を積んで」
「リーダー経験のないマ男さんから何を言われても、僕は何も感じませんよ。
 僕は、僕の考えがありますから。それに、経験ならリーダーから教われば良いじゃないですか」

 

 

コイツ、調子に乗りすぎだ。
人から教わって経験になるなら、今頃人類は大進化を遂げているだろう。
自らが経験しないと分からない部分だって多いんだ。

 

 

「そうか、やっとリーダーか」

 

 

リーダー補佐な。まだ気が早い。

 

 

「いつ話が来ますかね」
「分からないね。昼からじゃないかな」
「そうですか、楽しみだな」

 

 

口元を緩めながら、木村くんは呟いていた。

 

851 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 00:20:34.25 ID:K32TwDYo

 

そして会社に戻る。
俺は落ち着かなかった。あの木村くんの表情はハッとさせるものがあった。
間違いなく大器だ。俺なんて足元にも及ばないだろう。

 

藤田さんとは違う何か・・・凄みとでも言うべきか。それを感じた。

 

藤田さんはどこか優しく、安らげる感じがするが、木村くんは違う。
何が違うかと言われれば答えられないが・・・。
何か猛烈にイヤな予感がする。それは恐怖に近い。

 

 

「ただいま戻りました」

 

 

木村くんの足取りは自信に満ち溢れていた。
イケメンというのが、さらにそれを引き立てている。

 

 

「マ男くん」

 

 

藤田さんだ。

 

 

「話したの?」
「えぇ・・・。正直、少し後悔してます・・・」

 

 

俺の力では何も出来ない。先輩なのに。なんて無力なんだ。

 

 

「彼の度が過ぎたら、私が抑えに回ろう」

 

 

お願いします・・・。
まだまだ藤田さんが俺には必要だ。
木村くんという巨大な器では、俺などチッポケな存在でしかない。

 

 

「おい、木村」
「はい」
「ちょっと来い」
「・・・はい」

 

 

 

 

悪魔の笑み再び・・・

 

869 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 00:28:03.01 ID:K32TwDYo

 

「お前、リーダーに興味あるか?」

 

 

この開発室から、誰かが消える。間違いない。

 

 

「あります」

 

 

目が笑っていない。そして、気力が顔から溢れ出ている。
なんという後輩だ。俺の手の中に居たのが信じられん。

 

 

「俺の仕事を手伝って欲しいんだがな」
「ホントですか。ぜひやらせてください、僕で良ければ、好きなように使ってください」

 

 

普通なら、謙虚で好感の持てるであろうこのセリフも、彼の口から発せられた瞬間に、悪魔の囁きとなってしまう。
リーダーは気付いていないのか。この異様な空気に。あの異様な笑顔に。
お前は自分の立場が非常に危うい所まで来ているんだぞ、気付け。

 

 

 

「おぉ、そうかそうかww よし、次のプロジェクトでお前は俺の補佐しろww」
「はい!」

 

 

終了、詰み。おつかれです。

 

 

この開発室から、一人の人物が消えようとしていた。

 

870 :12 /15(土) 00:28:51.70 ID:ihXhy2.0

 

大波乱の予感だな

 

901 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 00:36:03.48 ID:K32TwDYo

 

こうして、木村くんはリーダー補佐となった。
それが決まってからというもの、木村くんはさらに力を発揮し
スケジュールを1日進みで仕事をこなすようになってしまった。
一体、どこまで伸びるのか。限界は無いのか。

 

恐ろしい後輩を持ってしまった俺だが、それ以上に次のプロジェクトが心配だ・・・。

 

 

そしてついにやってきた。
次のプロジェクト・・・という触れ込みだったが、2つか3つこなした後だ。

 

 

夏真っ盛りも過ぎ去り、残暑が厳しいそんなある日の出来事だ。

 

 

 

「以上が今回のプロジェクトの説明だ」

 

 

今回のプロジェクトは、今までの中でもかなりの規模を誇る内容だった。
いや、正確には規模ではなく、納期の方だ。
説明だけしか聞いてないため、よくは知らないが製造が平均で2日に一つというペースだ・・・。

 

しかもランクA〜Sと来てる。

 

 

この時点ですでにデスマフラグが立ってるぞ・・・。

 

907 :12 /15(土) 00:40:07.88 ID:oIT71Vo0

 

数ヶ月後、木村の机には大量の栄養ドリンクの空瓶が!!

 

909 :12 /15(土) 00:41:08.14 ID:hC4IehAo

 

ソルマックだろww

 

911 :12 /15(土) 00:44:03.36 ID:L.UdhsAO

 

木村がリーダー…上原さんのソルマック…

 

 

 

布石なのか?!

 

916 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 00:48:16.41 ID:K32TwDYo

 

「まぁ見りゃ分かると思うが、はっきり言って今回は厳しい。史上初かもな」

 

 

おいおい・・・。
スケジュールを見てみる。とりあえず自分のだ。
うんたら作成画面(1〜4)、こうたら自動変更(OL/バッチ)・・・
これキツくないか? 
いや、元々キツいけど、どう見たって泊り込みしないとこなせる内容じゃないぞ。

 

 

「今回、上原さんのスケジュールあめぇwwwwwwwwww」

 

 

井出が吹き出した。他人の心配じゃなくて、自分の心配をした方が良い。
お前はマジに死亡フラグが立ってる。

 

 

「あ、あ、あああ」
「俺はもっと引けって言ったんだがな。木村に何か考えがあるそーだ」

 

 

不満そうなリーダーだが、逆に木村くんはそれを押し通したのか。

 

 

「ちなみに、製造は二日単位がほとんどだが、修正や見直しで1週間ぐらい空きを取ってる。
 それも一応考慮に入れておけよ」

 

 

後々に修正が入る可能性が高いということだ。
デスマになる要因を全て含んでいるぞ・・・。なんということだ。

 

 

「何か質問ある奴」
「良いですかね」

 

 

藤田さんだ。

 

934 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 00:56:35.52 ID:K32TwDYo

 

「このスケジュール、無理がありすぎて成功の見込みが
 感じられないのですが、その辺についてはどうなんですか?
 何も考えなしでこの仕事を請けるというのは、少し理解できないんですが」
「出来ると思ったから、仕事を請けたんですよ」

 

 

木村くんが言い返す。藤田さんがキッと見返した。

 

 

「根拠は?」
「僕の判断です」
「答えになっていない。このスケジュールでは無理がありすぎる」
「おい、藤田。請けたもんはしょうがねーだろうが。文句抜かすな」

 

 

そういう意味で言ってるのではない。
木村くんは、今後間違いなくリーダーとなり、立場を確立するはずだ。
そうなった場合、今のようなスケジュールを許してしまうと、みんなが潰れてしまう。
先を見越しての藤田さんの発言なのだ。

 

目先のことだけで判断をしていない。

 

 

「今回はしょうがないでしょう。ですが、今後もこれが続くようなら、辞める人も出てきますよ」

 

 

井出や竹中のことだ。

 

 

 

「だったら、その人はそれまでだったって事ですよ」

 

 

なんだコイツは。まるで話にならないぞ。

 

936 :12 /15(土) 00:57:45.16 ID:oIT71Vo0

 

話にならないな。

 

ただの自己中じゃないか、木村は

 

941 :12 /15(土) 00:58:34.82 ID:4.5A2Kwo

 

出来るひとのなかには、周囲にそれを求めるひともいるからねぇ
最終的には木村は
「ぼくのかんがえたさいきょうちーむ」を造りたいんだろうな

 

943 :12 /15(土) 00:59:00.57 ID:h2gPmjoo

 

木村…能力あるんだが、能力の劣る人間を使うって事ができないな
こいつリーダー無理だろう…

 

949 :12 /15(土) 00:59:45.44 ID:gF/I6ZI0

 

木村君は、自分に不要なものは容赦なく切り捨てたいのですね。
藤田さん頑張れ!!

 

963 :12 /15(土) 01:03:43.86 ID:aWYhTZ6o

 

上司の仕事は
全体の責任を持つことと、部下の教育・管理。
部下の意見を聞けない人間がその3つをこなせる道理はない。
まして目上の人間の意見を。。。。

 

19 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 01:11:19.92 ID:K32TwDYo

 

藤田さんが小さくため息をついた。
話にならない。自分が絶対。それ以外は眼中に無い。木村くんは完全独裁者タイプだ。

 

 

「木村くん、君がこの開発室の戦力をどう分析しているのかは知らないが
 みんながみんな、君と同じように出来ると思ったら大間違いだ。
 人には人それぞれの適正、ペースがある。それに沿って物事を考えないとダメだろう」
「僕だけが契約の話を進めたのではありません、リーダーも一緒です」

 

 

 

ここで責任転嫁か。さすがに俺もイライラしてきた。
リーダーは沈黙している。気圧されているのか、あのリーダーが。

 

 

「今、私が話してるのは君だ。リーダーじゃない。君が答えなさい。
 このスケジュール、私は無理ではない。だが、それでも厳しいよ。
 それなのに、私の後輩であるマ男くんにも同じように引いてるだろう。
 ちゃんとリーダーから戦力分析を聞いたのか?」

 

 

藤田さんが語気を荒げた。場の空気が一瞬にして凍りつく。

 

 

「だったら、今すぐこの契約を捨てろと?」
「そういう意味ではない。この仕事はもうこなすしかないだろう。
 契約を結んでしまった以上、裏切ることは許されない。
 私が言ってるのは今後だ。君の事だ、この先も補佐に回るつもりなんだろう」

 

 

そしてリーダーになる。
藤田さんはこの部分を飲み込んだようだ。
現リーダーが居るのだ。面倒な事になると踏んだのだろう。

 

 

「今のスケジュールを許してしまえば、今後もそれを許すことになる。だからこうやって忠告している」
「このスケジュールをこなせないなら、その人は必要無いですよ。
 出来る人だけを残す。無駄を省く。そうすれば、より良い態勢が作れるじゃないですか」

 

 

何を言っているんだ・・・。

 

こいつはやばい。やば過ぎる。

 

 

 

藤田さん、頼む・・・! もうあなたしか居ない!

 

31 :12 /15(土) 01:14:47.39 ID:X5dOskAO

 

仕事常に満タンに入れててどうにかなるわけねーだろ
一生24時間働けるのか

 

58 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 01:21:39.39 ID:K32TwDYo

 

藤田さんが目を見開いた。怒っている。
だが、感情だけで攻めようとはしていない。理性を保っているようだ。
一方の俺は、正直言ってキレる寸前だ。

 

 

「君は勘違いしている。人は物じゃないんだぞ。
 君は何様のつもりかは知らないが、君は一人の社員だ。
 経験年数も2年と、まだ一番浅い。
 確かに君は実力もあるし、課題は全てこなす所か、早く終わらせている。
 だが、今この場に居る人間は全員、私たちの仲間なんだぞ。
 それを必要無いなどと切り捨てるのが許されると思ってるのか」
「藤田さんの言いたいことが分からないんですが。
 僕は無駄を省くと言ったんですよ。出来ない人が必要なんですか?」

 

 

ふざけるのも大概にしろよ、木村。

 

 

「君の中での認識は、出来る・出来ないの二通りしかないのか? 人には適正がある。
 一人でやる仕事、外に出向く仕事、物を教える仕事
 それぞれを見極めて、使いこなすのが上の人間の役目だろう」
「その前に、不必要なものを取り除く必要があると僕は言ってるんですよ」

 

 

「木村、いい加減にしろよ!」

 

 

俺は叫んでいた。

 

101 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 01:29:33.97 ID:K32TwDYo

 

「マ男くんがキレたぞー! 社長だー! 逃げろー!」

 

 

井出がわめく。俺はオールスルーで木村の顔を睨みつけた。

 

 

「なんですか、マ男さん」
「なんですかじゃないだろう。今のお前がリーダーなんて出来るわけがない」
「あなたに言われたくないですね。三年も勤めてずっと下っ端なんでしょ」

 

 

歯を食いしばる。今までの人生で、ここまで頭に来たことがあるか。
いや、ない。

 

 

「下っ端だから、意見しちゃいけないのか」

 

 

思うように考えていることが言葉に出ない。木村のあの冷静な顔を見ろ。

 

何こいつキレてんの? バカじゃねww

 

 

というのが読み取れる。落ち着け、俺。

 

 

「木村くん、マ男くんはリーダーの経験があるよ」

 

 

藤田さんだ。

 

 

「しかも補佐じゃない。リーダーという肩書きを持ったことがある」

 

 

木村の顔が、歪んでいく。

 

104 :12 /15(土) 01:29:56.33 ID:jMjJiL2o

 

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!

 

112 :12 /15(土) 01:30:48.23 ID:jMjJiL2o

 

やっぱり藤田さんになら抱かれてもいい

 

161 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 01:39:32.15 ID:K32TwDYo

 

「藤田さんじゃなかったんですか」
「私はリーダーの経験などない。これからもするつもりはない」
「マ男さんがリーダー経験者だったんですか」
「はっきり言う。『君なんかより』マ男くんの方がずっとリーダーに向いている」

 

 

俺は興奮しすぎて、何か泣きそうになっていた。
なんでだろうね。

 

 

「君は自分の視点でしか物事を考えられないだろう。
 マ男くんはそうじゃない。きっと過去に辛い経験をしたのだろう。
 挫折も味わってきたに違いない。
 それらが糧となって、人を思いやって、穏便に物事を進ませていく力を持ってる。
 所が君はどうだ?
 こんな無茶なスケジュールを引いて、くだらない自論を展開して。物事を広く見た方が良い」

 

 

俺は唇を震わせて、二人のやり取りを聞いていることしか出来なかった。
木村くんがチラチラと俺を見てくる。

 

 

「でも、僕の方が」
「君の方が確かに持ってる力は上だろう。だが、それだけだ。それだけしかない。
 君はまだ学んでないことが多すぎる。
 このリーダー補佐の立場で、色んなことを学ばないと、まだまだ上には立てないよ」

 

 

木村くんが黙り込んだ。

 

 

藤田さん、あなたは本当に・・・本当に凄い人だ・・・。

 

164 :12 /15(土) 01:40:14.58 ID:qyymAiso

 

すげえええええ

 

かけえええええええwwwwww

 

169 :12 /15(土) 01:40:57.23 ID:4.5A2Kwo

 

とりあえず藤田さんに尻を捧げる権利の予約しときますね

 

170 :12 /15(土) 01:41:04.28 ID:.swh7lQo

 

かっけえええええええええええええwwwwwwwwwwwwwwwwww

 

241 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 01:50:59.10 ID:K32TwDYo

 

「国会のようだ」

 

 

井出が呟いた。しかし空気は変わらない。

 

 

「悲しいけどこれ・・・」

 

 

竹中が呟くが、最後まで言えなかったようだ。まだまだ修行が足りていない。

 

 

「そうですか、マ男さんがリーダー経験者でしたか」

 

 

・・・。

 

 

「二週間で、リーダーでしたか」

 

 

木村くんは、呪文のように繰り返していた。
よほどショックだったのか。やはり、俺は相当見下されていたらしい。

 

 

「語気を荒げてしまってすまないね。今の君には、これぐらい言わないと聞き入れないだろうから」
「・・・」

 

 

木村くんが不快そうな表情を浮かべる。

 

 

「私もまだまだ子供のようだ。感情を抑える事ができなかったよ。
 まぁ、もう今回のスケジュールは仕方がない。みんなで力を合わせてやり遂げようか」
「お、おう。そうだぞ、おまえら。思いやりと穏便さでやってくんだぞ!」
「リーダーが言うと説得力ねぇwwwwww」
「おい井出」
「あ、はい」
「お前ちょっと残れ」
「そんなぁ」

 

 

 

笑いに包まれる室内。
だが、木村くんだけは笑っていなかった。

 

 

303 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 02:00:20.61 ID:K32TwDYo

 

そしてプロジェクトが始まった。
俺と木村くんの仲はすっかり冷え込んでしまい、あれからは一言も喋っていなかった。
しかし、今はそんな事はどうでもいいのだ(よくないが
とにかく今回はスケジュールが厳しい。
はっきり言って、休憩時間など使っていると即響くというような状況なのだ。

 

 

「僕の方ができるんだ」

 

 

時折、木村くんの独り言が聞こえてくる。
ちなみに、スケジュールは木村くんが一番厳しい。実力面での話だが。
しかしそれでも、彼はオンスケだった。
やはり言うだけの実力は備えているのだ。だが、足りないものが多い。
プロジェクトに入る前、俺が危惧していたことが今回、見事に的中した。
早めにでもいいから、藤田さんに相談しておくべきだったか・・・。
そんなこんなで、俺は必死に仕事をこなしていた。

 

 

このプロジェクトはホントにキツくて、人間関係の軋轢に加え
肉体疲労が重なり、結構マジでやばいことになっていた。

 

 

週2〜3は会社に泊まり込みだ。上原さんに至っては

 

 

 

 

「・・・・すぴー」

 

寝ていた。

 

315 :12 /15(土) 02:01:57.77 ID:nRq5z6Eo

 

すぴーって・・・なんかかわいいな、上原さん。

 

346 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 02:07:35.62 ID:K32TwDYo

 

「おい、上原」

 

 

リーダーも疲労の極みなのか、言葉に力が無い。

 

 

「すぅー・・・・すぅー・・・」
「おい」

 

 

リーダーの顔が歪んでいく。

 

 

「上原さん、起きてください」

 

 

木村くんだ。
その瞬間、ハッとしてマウスをカチカチとクリックしまくる。キーボードも打ちまくる。

 

 

遅いですから、上原さん。

 

 

「寝んじゃねーよ、ボケが」

 

 

リーダーはもう相手にもしたくないのだろう。
その気持ちはよくわかる。
はっきり言って、他人に関与したくない。極限状態に達しようとしていた。

 

俺は俺で、連日寝てないせいで、ブラインドタッチが全く出来なくなったり
動悸が起きたりと身体的な障害も現れ始めていた。

 

 

そして木村くんとの軋轢。そろそろ限界だぞ・・・。

 

 

 

そんな時、事件は起きた。

 

372 :12 /15(土) 02:11:35.82 ID:AF0MiT6o

 

職場ってさ・・・仕事変わっても続けられるけど人間変わったら辞める事あるよね
それぐらい人間関係って大事だと思う

 

379 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 02:12:38.38 ID:K32TwDYo

 

俺はもうとにかく睡眠を貪りたかった。
3時間で良い。睡眠を取りたい。
この時、俺は飯も食わず、仕事に没頭していた。
本当に限界だった。過労死を頭に思い浮かべたものだ。

 

 

そんな時だ。
バイブ、携帯が鳴っている。
なんだ・・・このクソ忙しい時に・・・。

 

 

外に出て、電話に出てみた。
なんだこの番号は。登録されてないじゃないか。

 

 

「マ男さんですか?」

 

 

聞き覚えのない声だ。

 

 

「お父様のお名前は、○○でよろしいですか?」
「えぇ・・・」

 

 

 

なんだよ・・・。

 

 

「今、○○病院におりますので、至急来てもらえますか」

 

 

え?

 

386 :12 /15(土) 02:13:12.16 ID:QXT555.o

 

ウアアアアアアアアアアアア

 

391 :12 /15(土) 02:13:20.53 ID:p2CQeyUo

 

なんという鬱展開

 

402 :12 /15(土) 02:14:04.37 ID:ihXhy2.0

 

ちょっとまて・・・
その流れの心の準備が・・・・

 

403 :12 /15(土) 02:14:14.87 ID:hC4IehAo

 

ちょ、まったく予想外

 

428 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 02:19:04.78 ID:K32TwDYo

 

「はぁ?」

 

 

何言ってんのこの人・・・。俺は頭がぼーっとしていたので、幻聴かと思った。

 

 

「今日、救急車で搬送されました。お話すべきことがあるので、来て頂きたいのですが」
「何をおっしゃっているのかわかりません」

 

 

本当にコイツ何言ってんだ。
父ちゃんは1週間前、元気だったぞ。
最近、食欲がないせいか、痩せてたけど。

 

 

「ですから、救急車で搬送され」

 

 

説明を聞く俺。だが、全く理解できてない。しかし、大変だということは分かる。
記憶が前後する。父ちゃんに何かあったのか・・・。救急車・・・。
このキーワードだけは理解できていた。その時、眠気が吹き飛んでいた。

 

 

「○○病院ですか」
「そうです、至急来てください」

 

 

仕事がある。
いや、そんなことどうでもいい。俺にはもう父ちゃんしか居ないんだ。
肉親は父ちゃんだけなんだ。
俺は貧乏だったが、タクシーを拾い、病院へと向かった。

 

436 :12 /15(土) 02:20:49.98 ID:jLxnq3so

 

うおおおおおおおおおおおおお

 

父ちゃん生きててくれ!!!

 

458 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 02:24:08.44 ID:K32TwDYo

 

病室に早足で駆け込む。
父ちゃんが、力無い姿で横たわっていた。
そんなバカな。なんで。

 

 

「マ男さんですか」

 

 

担当医らしき人が話しかけてきた。
俺はネクタイもずれ、髪の毛もボサボサで情けない格好だった。

 

 

「重大な話があります。こちらへ」

 

 

訳がわからん。
なんだよ、重大な話って。コイツバカじゃないのか。

 

 

「単刀直入に申し上げます。お父様は胃がんです」

 

 

終わった。

 

全てが終わった。

 

 

なんだよ、何が起きたんだよ。

 

俺が何をした? 俺そんな悪いことしたか?

 

 

 

本当に、本当に全てが終わった。

 

459 :12 /15(土) 02:24:39.75 ID:jMjJiL2o

 

・・・(´Д⊂

 

467 :12 /15(土) 02:25:42.43 ID:QkNOtVc0

 

。・゚・(ノД`)・゚・。

 

469 :12 /15(土) 02:25:54.17 ID:.7SIfIAO

 

親父さん黙ってたのか…

 

471 :12 /15(土) 02:25:58.49 ID:WkAaMQAO

 

胃ガンか…
きついなぁ…

 

499 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 02:30:36.41 ID:K32TwDYo

 

「今朝、近所の方が回覧を届けに来た際、お父様が腹痛を」

 

 

何言ってんだ? 俺なんでこんなとこ居るんだ? 仕事あるだろう。
凄い厳しいスケジュールなんだぞ。こんな所に居たらダメじゃないか。

 

 

「手術するかどうか、告知するかどうか、親族であるあなたの」

 

 

俺、ここ最近全然、家に帰ってないや。
父ちゃん、寂しがってるだろうな。俺、仕事がんばってるよ。全然辛くないよ。

 

 

「つきましては、ここの紙面にサインが必要で」

 

 

なんでだよ・・・。

 

なんで、俺はこんな辛い目に遭わないといけないんだよ・・・。

 

俺、頑張ってるじゃないか・・・。親孝行させてくれよ・・・。

 

なんでだよ、何で俺から何もかも奪うんだ。

 

 

まだ俺親孝行してないよ。

 

 

 

俺は壊れていた。

 

533 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 02:40:28.65 ID:K32TwDYo

 

医者の話が全て終わった時、俺は一人でぼーっとしていた。
仕事による肉体疲労、人間関係からくるストレス・・・そして、父ちゃんの胃がんで精神崩壊。
俺は、あらゆる意味で終わろうとしていた。
すると、携帯が鳴った。リーダーだろうな。すぐ切ろう。
一人になりたいんだ。

 

 

「マ男くんか?」

 

 

藤田さんだ。

 

 

「何かあったのか?」

 

 

俺はこれを聞いた瞬間、全てが吹っ切れたかのごとく、泣いていた。

 

 

「父ちゃんが・・・父ちゃんが・・・」

 

 

 

ここから先は言葉が出ない。
しばらく経って、藤田さんが話し始めた。

 

 

「・・・分かった。リーダーには、私から話をしておこう。今は、気持ちを落ち着かせなさい」
「はい・・・ありがとうございます・・・」

 

 

電話を切った。

 

539 :12 /15(土) 02:42:35.35 ID:NYvlIi.0

 

この電話がリーダーからだったら、たまったもんじゃなかったろうな…

 

540 :12 /15(土) 02:42:48.96 ID:wv9rjXIo

 

藤田さんどこまでいい人なんだ・・・

 

564 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 02:50:38.62 ID:K32TwDYo

 

結論から言おう。
父ちゃんは手術をして、胃の一部を切除した。
自覚症状が薄いらしく、早期発見が難しいという話だったが、手術は成功した。
俺はこの間、会社に行きながらもお見舞いに来たりしていた。
父ちゃんと会話が出来るようになった頃の話だ。

 

 

「人間、何が起こるかわからんなぁ」
「うん・・・」
「マ男、会社楽しいか?」

 

 

楽しくないなんて言えるわけがない

 

 

「楽しいよ。社会に出て良かった」
「そうか、ワシも嬉しいよ。社会には色んな人間が居るだろう」
「うん、本当にそう思う。その中で、藤田さんって人が居てさ」

 

 

俺は今まで、会社の話はほとんどしなかった。
表面だけを話して、頑張ってるよ、楽しんでるよってことだけを伝えていただけだった。

 

 

「凄い人だなぁ、その藤田さんってのは。
 きっとその人は、人生の中でも一度会えるか会えないかぐらいの人だよ」
「うん、出会いって大事だよね。別れもさ」
「そうだなぁ・・・。お前も母さんが死んでから変わったもんな」

 

 

俺はまだ頑張らないとダメだ。

 

 

こんな所で弱音を吐いちゃダメだ。

 

584 :12 /15(土) 02:58:00.12 ID:4.5A2Kwo

 

>>564
・゜・(ノД`)・゜・

 

586 :12 /15(土) 02:58:31.47 ID:dTUW2e60

 

>>564
全俺が泣いた

 

590 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 03:00:10.87 ID:K32TwDYo

 

「マ男、会社に行かなくていいのか?」
「父ちゃんが心配だよ」
「バカだなぁ、お前は。ワシはな、お前が一人前になってくれさえすれば、それだけで親孝行になるんだよ。
 お前はワシの心配なんかせんでいい。
 出世して、嫁さん貰って、子供作ってくれさえすればワシはそれだけで幸せなんだよ」

 

 

俺は泣きそうだったが、黙って頷いた。
親は偉大だ。偉大すぎる。いつまで経っても、手の届かない所に居る。
どうやったら、自分よりも子供の心配が出来るんだ。本当に尊敬する。

 

 

「仕事、大変だろうけど頑張れよ。辛かったら、やめて良いからな」

 

 

辛い。正直、もう俺は限界に近い。
だけど、まだ頑張らないとダメなんだ。

 

 

「うん」

 

 

病院を出て、会社に向かう俺。
何のために、俺は働いてるんだろう・・・。
父ちゃんをないがしろにしてまで、何で俺は働いてるんだろう・・・。
働いて働いて働いて・・・働き続けて、その先に何がある・・・。
だけど、まだ・・・まだ頑張らないとダメなんだ。
俺はまだ頑張れるんだ。

 

591 :12 /15(土) 03:00:15.26 ID:/YrTZQc0

 

やっぱり親孝行というのはできるときにやらないとしみじみ感じた。

 

俺も社会出たらできるかぎりは親孝行したいものだわ。

 

 

勇にはこれから素敵なことがおこりますように・・・

 

593 :12 /15(土) 03:00:55.95 ID:gDwnOKQo

 

完治とは言えないがとりあえずは治ったのかな、おめ!
藤田さんは正に親父さんの言うとおりだよなあ

 

595 :12 /15(土) 03:01:10.45 ID:.LcO8io0

 

ガチで涙出てきた

 

602 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 03:06:22.73 ID:K32TwDYo

 

会社に到着した俺。
元々厳しいスケジュールに加え、父ちゃんの件による精神的苦痛、お見舞いの件による時間の消費・・・。
いくつもの要因が重なり、俺のスケジュールはひどいことになっていた。
どうしようもない。はっきり言って、誰がどうあがいた所で、一人で消化するのは不可能だった。

 

「おい、マ男」

 

 

リーダーだ。

 

 

「スケジュールがマズイことになってるぞ。何とかできるのか?」

 

 

藤田さんから事情を聞いたのだろう。
いつもより、ずっと言い方が柔らかかった。

 

 

「・・・わかりません」

 

 

俺はスケジュールの事より、これから先をどうするかを考えていた。
すなわち、退職するか続けるかだ。
まだ俺は頑張れる。それはあった。

 

だけど、それ以上に、父ちゃんと一緒に居る時間の方が大事だと思えたのだ。

 

・・・平成の孔明に、藤田さんに相談しよう・・・。

 

610 :12 /15(土) 03:09:50.57 ID:X5dOskAO

 

なんだよリーダー空気読めるんじゃねーか

 

611 :12 /15(土) 03:10:55.47 ID:yP8bZMQ0

 

リーダーがちょっといい奴に見えてきた。

 

615 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 03:12:09.12 ID:K32TwDYo

 

「すいません、藤田さん」
「うん?」
「少しよろしいでしょうか」

 

 

藤田さんのスケジュールも当然厳しい。
今思えば、よくこんな行動が取れたものだ。

 

 

「あぁ、いいよ。応接室にいこうか?」
「はい、お願いします」

 

 

それでも、快く引き受けてくれた藤田さん。

 

 

「このまま働き続けることに、疑問を持ちました・・・」

 

 

事情を説明する俺。
それに真剣に耳を傾け、難しい顔をする藤田さん。

 

 

「難しい問題だね」
「・・・」

 

 

あなたの指示が欲しい。俺は自分で行動する力を失っていた。

 

 

「ごめん、マ男くん・・・。今の私では、今の君には何も言えない・・・」

 

 

・・・え?

 

 

「これは、君自身が考えるべき問題だ。私は君の神じゃない。君の運命は、君が決めなさい」

 

 

そんな。
藤田さんは、始めて俺を突き放した。

 

617 :12 /15(土) 03:13:06.08 ID:kpybi7Io

 

>>615
藤田さんはやっぱり分かってるな
依存はよくない

 

618 :12 /15(土) 03:13:17.86 ID:NYvlIi.0

 

当時の勇にはつらい言葉だけど、藤田さんの言っていることは正論だなぁ〜

 

(※『勇』はマ男を省略した呼び方です)

 

622 :12 /15(土) 03:14:06.43 ID:QQEFE5go

 

うん。そりゃそうだ。
助言が欲しいマ男の気持ちも分かるが、
マ男の人生を左右する問題に安易に口を出さない藤田さんはやはり神。

 

631 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 03:18:03.35 ID:K32TwDYo

 

藤田さんが部屋を出ていく。
待って、待ってくれ。自分で考えることができないから、あなたを頼ったんじゃないか。
それなのに、それなのに何でだ。

 

俺は利己的にしか物事を考えることができなくなっていた。

 

スケジュールから逃げたいという気持ち、俺の責任じゃないという現実逃避。
全てが絡み合い、俺は苦しんでいた。

 

 

「失礼します」

 

 

誰だ。俺は絶句した。

 

 

「マ男さん、大丈夫ですか」

 

 

木村くんだった。なんで君が来るんだ。

 

 

「マ男さん、会社やめるんですか?」

 

 

・・・。

 

 

「僕から逃げるんですね、マ男さん」

 

 

 

ケンカ売りに来ただけか、こいつは・・・。

 

639 :12 /15(土) 03:19:15.77 ID:VzR5IAw0

 

木村空気嫁よ・・・
それとも、木村なりに励ましてるのか?

 

660 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 03:24:04.90 ID:K32TwDYo

 

「僕の実力が怖いんだ」

 

 

好きに言ってくれ。今、俺は君のことなど頭に無い。

 

 

「ずっと前、僕言いましたよね。いずれリーダーになるって、出世するって」

 

 

言ったな。あの時は、君の野心に驚いたよ。

 

 

 

「あの時のマ男さんの顔、今でも覚えてますよ。何言ってんだコイツって顔でしたよね
 僕の周りはみんなそうです。僕の言うことに、いちいち驚く。
 僕は当たり前の事しか言ってないのに」

 

 

そうか。もう俺は君に呆れたよ。

 

 

「だけど、マ男さんは、僕よりも先にリーダーになっていた。実力は僕より下なのに」

 

 

失礼な奴だな。そうかもしれないが、それは言うべき所じゃないだろう。

 

 

「なのに会社やめるんですか? 
 力は無い。だけど、僕より先に出世した経験があるのに。
 そんなの勿体無いですよ」
「・・・そうかな」
「マ男さん、今のスケジュールでしたら大丈夫ですよ。僕が引き取って、今なんとかやってます」

 

 

 

え?

 

666 :12 /15(土) 03:25:24.96 ID:PePHUXI0

 

なななななななにい!!

 

693 :12 /15(土) 03:29:30.78 ID:aYatBFYo

 

木村への評価が一変しすぎてワロタwwwwww

 

696 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 03:30:42.11 ID:K32TwDYo

 

なんだって?
「意味がよくわからない」
「マ男さんの仕事を、僕がやってあげてるんですよ」
「何で木村くんが」
「藤田さんが、この開発室の人間は仲間って言ったじゃないですか。仲間なら、助けるのが普通でしょ」

 

 

何言ってるんだ? よく意味がわからない。木村くんだろう、君は。

 

 

「まぁ、あと上原さんも空いてたので、あの人にもやって貰ってますけどね。
 あ、もちろん藤田さんもですよ。他の人は戦力にならないので、何もしてないですが」

 

 

藤田さん、突き放すだけ突き放しておいて、何をやってるんだ・・・。

 

 

「だから、今回のスケジュールは気にしなくて良いです。
 僕は僕で、ワンランク上の仕事にあり付けましたし。
 あとは、マ男さんが立ち上がるだけです」

 

 

そう言って、応接室を出て行く木村くん。

 

 

なんという大器か。

 

704 :12 /15(土) 03:32:01.39 ID:4.5A2Kwo

 

>>696
きゅっ、キュンキュン来たぞ!!!!!!!!!!

 

だっ、抱かれたいランキングに入ってきたぜ!!

 

709 :12 /15(土) 03:32:19.44 ID:xFY2uD.o

 

木村かっけえええええええええええええええ

 

721 :12 /15(土) 03:34:42.18 ID:4.5A2Kwo

 

木村「かっ、勘違いしないでください!!
    マ男さんの分が終わらないとプロジェクトがうまく行かないから・・・
    それだけなんですからね(///////」

 

 

730 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 03:38:01.76 ID:K32TwDYo

 

俺はこんな所で何やってるんだ。
確かに精神的なダメージは大きい。
だが、今抱えている仕事をこなすまでは辞めることなど許されない。
俺の代わりに、多くの人が体を、精神を、時間をすり減らして動いてくれてるんだ。
当の本人であるこの俺が、何をやってるんだ。
俺は妙に焦り、早速仕事に戻った。

 

 

「おーおかえり、マ男くんww 長いトイレだったなww ケツふいた?ww」

 

 

井出だ。いつもはムカつくけど、今回はありがとう。

 

 

「おい、マ男、無理するなよ。お見舞い行けよ」

 

 

大丈夫です。このプロジェクトだけは絶対に仕上げてみせる。
藤田さんを見る。軽く頷いた。俺はそれを笑顔で返す。

 

 

「マ男さん、早く仕事やってくださいよ。僕だって暇じゃないんですよ」

 

わかってる、ありがとう、木村くん。

 

 

俺は、またもや人との出会いに助けられていた。

 

まだ俺は頑張れる。

 

こんなに素晴らしい人たちに囲まれてるじゃないか。

 

 

このプロジェクトだけは、絶対に何としてもやり遂げてやる。

 

775 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 03:45:27.24 ID:K32TwDYo

 

10月末。

 

「おい、今日が納期だぞ、お前ら」
「やったるwwwwwwww俺やったるwwwwwwww」

 

 

みんなで協力し合い、プロジェクトを進めていく。
父ちゃん、お見舞いに行けなくてごめん。
だけど、俺は自分でやるって決めた事は、最後までやりたいんだ。
いつもいつも挫折して、すぐに諦めるバカ息子だけど、これだけはやりたいんだ。

 

「キムちゃーん、これ無理だよーやってー」

 

 

後輩にたかる井出。

 

 

「めんどくさい人だな。なんでこんなのが出来ないんですか」

 

 

井出を押しのけ、作業を進める木村くん。
すると
キュピーンという音が鳴った。

 

 

「この感じ・・・ニュータイプか!?」
「シャア!」
「竹中さんと井出さん、遊ばないで仕事してください。もう助けませんよ」
「す、すいません」

 

 

そして

 

午前4時42分(確か

 

 

 

プロジェクト完遂!!(まだ続くよ

 

787 :12 /15(土) 03:48:30.72 ID:yP8bZMQ0

 

すげぇいい会社じゃねぇかwwww

 

799 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 03:51:46.37 ID:K32TwDYo

 

やった、ついにやった!

 

史上最強のデスマを打ち倒した!!

 

俺たちは狂喜乱舞のごとく喜んでいた。

 

 

みんながみんな、協力し合い、始めて成功したのだ。

 

それぞれがそれぞれの個性、適正を活かし、全てを完了させたのだ。

 

俺たちは感無量だった。

 

 

「やっぱ出来るじゃないか、僕の言った通りだ」

 

「木村、お前凄い奴だな」

 

「言われなくてもわかってますよ」

 

 

生意気な口を叩いているが、その顔は達成感で満ち溢れていた。

 

みんな、本当に良く頑張った。これ以上無いほどにだ。

 

 

 

だが・・・

 

11月12日(スレを立てる12日前)

 

事件は起きる。

 

824 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 03:56:14.88 ID:K32TwDYo

 

「おい、お前ら緊急会議だ」

 

 

む・・・。今日は月曜だぞ。いつも会議は火曜なのだが・・・。

 

 

「えー・・・」

 

 

リーダーが言葉を詰まらせた。

 

 

「すまんすまん、遅れたよ」

 

 

社長がやってきた。いつもなら社長は会議に同席しない。
何か本当に重大なことが起きたのか。
まさか、倒産か?
あれだけ頑張ったのにか・・・?

 

 

「君達に、話さないといけないことがあるんだ」

 

 

なんだ・・・。せっかく職にあり付けたのに、退職だなんて勘弁だぞ・・・。

 

 

「来月、藤田くんはこの会社を辞めることになった」

 

 

今なんていったこのおっさん

 

826 :12 /15(土) 03:56:34.03 ID:xL.PRo2o

 

うわあああああああああああああああああ

 

837 :12 /15(土) 03:57:22.75 ID:28ziYs2o

 

( ゚д゚ )

 

847 :12 /15(土) 03:58:12.30 ID:p2CQeyUo

 

そうか、藤田さんはもう自分がいなくてもこの部署はやっていけると判断したのか

 

849 :12 /15(土) 03:58:23.15 ID:L.UdhsAO

 

孔明が…消える…だと…?!

 

851 :12 /15(土) 03:58:26.46 ID:aYatBFYo

 

木村「逃げるんですか!藤田さん!」

 

868 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 04:01:50.40 ID:K32TwDYo

 

ハァ?

 

何? 何て言った?

 

 

「伝えるのが遅れてすまない。半年前ほどから、すでに決まっていたのだが」
「ちょっと待ってください!」

 

 

俺は声をあげていた。

 

 

「藤田さんがなんですって!?」
「マ男くん・・・」
「藤田さんが、藤田さんが何だって聞いてるんですよ!」
「・・・辞めるんだよ、マ男くん」

 

 

何を言ってるんだ。何を言ってるんだ。何を言ってる、このおっさん。
本当に何言ってんだ。

 

 

「藤田さん、辞めるんですか!?」

 

 

俺は藤田さんに言った。必死の形相だったと思う。

 

 

「・・・あぁ」

 

 

 

そんなバカな。何を言ってるんだ、この人たちは。

 

理解できない、わからない。

 

何が起きてるんだ。今、この場で何を話してるんだ。

 

俺は気が動転していた。

 

 

 

「藤田さん、僕から逃げるんですか!」

 

876 :12 /15(土) 04:02:44.32 ID:KSqzUvE0

 

またお前か木村wwwwwwwww

 

880 :12 /15(土) 04:03:18.66 ID:4.5A2Kwo

 

上原「藤田さん、僕から逃げるんですか!」

 

906 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 04:08:57.78 ID:K32TwDYo

 

木村くんが叫んだ。

 

「僕が怖いんだ! 今から追い抜かれるから、だから逃げるんですか!」
「・・・」

 

 

何も言わず、じっと木村くんを見つめる藤田さん。
何を言ってるんだ・・・。何だよ・・・何で・・・。

 

 

「木村、落ち着け」

 

 

リーダーがたしなめる。
その手を振り払い、木村くんが身を乗り出した。

 

 

「僕が怖いんだ」
「・・・」

 

 

口を開かない藤田さん。
なんで何も言わないんだ・・・。
何か言ってくれ・・・。
逃げない、最後まで君と張り合うつもりだ、って。
木村くんを最後まで抑えるんだって。

 

 

「じゃあ僕の勝ちだ。やっぱり藤田さんも、僕には勝てないんだ。僕が一番仕事ができるんだ」

 

 

声に力が無い。本心じゃない、誰が聞いても分かる。

 

 

「木村・・・!」

 

 

リーダーが語気を強める。

 

 

「フンッ」

 

「木村ぁ!! 座れぇ!! 社長が話できねぇだろうがっ!!」

 

 

 

戦慄が走る。

 

922 :12 /15(土) 04:11:41.56 ID:OHUzhDM0

 

上原「木村ぁ!! 座れぇ!! 社長が話できねぇだろうがっ!!」

 

 

戦慄が走る。

 

925 :12 /15(土) 04:12:17.71 ID:NVmNXsQo

 

>>922
くっ・・・不覚にも・・・wwwwwwwwwwww

 

928 :12 /15(土) 04:12:26.06 ID:qeyleL60

 

最近リーダーがまともに見えてきた

 

955 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 04:19:40.22 ID:K32TwDYo

 

室内が静まり返り、社長が口を開いた。

 

 

「何故早めに話さなかったのか。これは、藤田くんの希望でね。
 退職することもまだ未決定ではあったんだが今回のプロジェクトを完遂できた時に正式に決定しようと。
 そういう話になってたんだよ」

 

 

聞いてない。そんな事、俺は聞いてない。

 

 

「あとは、藤田くんから・・・」

 

 

藤田さんが静かに頷く。

 

 

「急なお話、本当に申し訳ありません。一身上の都合により、退社せざるを得なくなりました。
 この会社で、私は多くのことを学びました。最後の1ヶ月、短い間ですが」

 

 

藤田さんは、何故か俺の目だけ見ようとしない。なんでだ。何でですか。

 

 

「悔いの無いよう、最後までやり切ろうと思います」

 

 

 

俺は耐え切れずに泣いてしまった。

 

だけど、誰も突っ込まなかった。

 

みんな同じ気持ちなんだろうか。

 

 

俺の中で神で孔明で、人生で最も尊敬できる人で・・・

 

藤田さんが、会社をやめる・・・。

 

 

こんなひどい現実、あっていいのかよ・・・

 

957 :12 /15(土) 04:20:25.09 ID:xL.PRo2o

 

藤田さぁん… 。・゚・(ノД`)・゚・。

 

59 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 04:34:19.10 ID:K32TwDYo

 

『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界もしれない』

 

 

 

スレタイの意味・・・

 

それは、木村くんの下克上でも、父ちゃんの病気でもない。

 

藤田さんが、会社を去る・・・。まさにこれこそが限界だったのだ。

 

 

 

11月23日(スレ立て前日)

 

「マ男くん・・・今日、お昼いいかな・・・」
「・・・はい」

 

 

例の退職宣言以来、開発室内は生気が抜けたかのようになっていた。
俺はそれ所の話ではない。
父ちゃんの病気、藤田さんの退職。俺を支えていたものたちが、一気に消え去ろうとしているのだ。
限界だ。限界が襲ってきている。

 

そして、昼休みがやってきた。

 

 

「すまないね、マ男くん」

 

 

・・・。

 

 

「君にはもっと早く言うべきだったのだが・・・」

 

 

いくらでも、いくらでも言う機会はあったじゃないですか。

 

 

「春を・・・覚えているかい」
「えぇ・・・」
「あの時、君に話そうとは思ってたんだがね・・・」

 

 

木村くんと話をしたあの日だ。リーダー補佐の話をしたあの日。

 

 

「タイミングが掴めなくて、今のような状態になってしまったよ。本当にすまない」

 

 

もう済んだ事です。何をやっても、もう全てが遅いです。

 

 

「・・・君には本当の事を話そう」

 

 

 

本当のこと・・・?

 

72 :12 /15(土) 04:37:05.94 ID:aYatBFYo

 

時間軸が一気に近づいてきたwwwwww

 

82 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 04:41:30.88 ID:K32TwDYo

 

「以前、君が精神的に参った時、私の過去を話したよね」
「えぇ・・・」
「内容は覚えてる?」

 

 

当然だ。彼女が死に、NEETになってしまった藤田さんだったが、彼女の両親からの手紙を機に働きだす。
これは今でも俺の糧となっている。誰が忘れるものか。

 

 

「今回の退職は、それに絡んでいてね」

 

 

なんだと?

 

 

「結論から言うと、ヘッドハンティングだよ。俗に言う引き抜きだ・・・。
 だけどね、私は引き抜きなんかには動じなかった。ただの引き抜きならね」

 

 

ただの・・・何かあるのか・・・

 

 

「派遣社員の中西さんが居ただろう」
「えぇ」
「彼女は、今○○に勤めていてね」

 

 

中西さんが、あの人が手を回したのか?

 

 

 

「もう分かると思うが、あの人の推薦で引き抜きが来たんだよ。
 だけど、私はそんなものじゃ動かない」

 

 

 

一体、一体、何が藤田さんを動かしたっていうんだ。

 

84 :12 /15(土) 04:42:42.10 ID:xL.PRo2o

 

中西…ここでその名前が出るとは…

 

86 :12 /15(土) 04:42:54.98 ID:1CdzyYDO

 

なんという長い伏線

 

90 :12 /15(土) 04:43:19.81 ID:XwG.U7w0

 

すべてがつながる・・・

 

115 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 04:47:06.85 ID:K32TwDYo

 

「じゃあ何が私を動かしたのか」

 

沈黙。

 

「・・・中西さんの勤めている会社が、私の元彼女の勤めていた会社なんだよ」

 

俺は時間が止まった。

 

「運命というのは本当にあるのかもしれない。私は中西さんに過去を話してないし、君も話してないだろう」

 

時間が動かない。なんだこれ・・・。

 

 

「私は居ても立ってもいられなくなった。そして、社長に事情を話し」

 

藤田さん、あなたは本当に神に選ばれた人じゃないのか。

 

「正直に言おう。この退職は、私のわがままだ」

 

155 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 04:58:40.24 ID:K32TwDYo

 

ここから先は、何を話していたか覚えてない。
俺は呆気に取られて、はぁ? みたいな感じだった。

 

 

「すまないね。だけど、私も時期は見計らったつもりだ。
 君は立派に成長し、木村くんという私を超える逸材も入ってきた」

 

 

それは違う。俺はまだあなたが必要だし、木村くんはあなたには及ばない。

 

 

「マ男くん、君は私を尊敬してくれてると思う。3年間、共に過ごした中で私はそれを感じた。
 君の中で、私の存在はどれほど大きいだろうか。それは私にはわからない」

 

 

取り返しのつかないほど大きい、まだ俺には藤田さんが必要だ。

 

 

「だけど、私は思うよ。私の力が100あったとしよう。この100の力は、とても大きい。
 だけど、一つなんだよ。たった一つの100だ。
 それに対して20の力が5つあったら・・・それは、100を超えると思わないか?」

 

 

超えるわけがない。藤田さんという存在は、唯一無二なんだぞ。

 

 

「前回のプロジェクトは、まさにそれを体現化したものだった。
 私は思ったよ。これなら安心して去れると」

 

 

一呼吸置く藤田さん。

 

 

 

「私のあとは、君が継ぐんだ」

 

そんなバカな

 

189 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 05:06:26.90 ID:K32TwDYo

 

「無理ですよ」

 

俺は言っていた。そうだ、無理だ。

 

 

出来るわけがないだろう。俺が、俺ごときがこんな立派な人のあとを継ぐ?
何こんな時にギャグをかましてるんだ。

 

 

「君なら出来るよ。君はもう私を超えている」

 

 

口から出まかせを言うな。
どこをどうひっくり返したら、そうなるんだ。

 

 

「そろそろ、会社に戻ろうか」

 

 

そう言って席を立つ藤田さん。待ってくれ

 

俺が藤田さんの後を継ぐ・・・?

 

何を言ってるんだ・・・。冗談も程ほどにしてくれ・・・。
俺なんかに務まるわけがないだろう・・・。

 

父ちゃんの病気、藤田さんの退職宣言、そして・・・後継者というプレッシャー。

 

限界だ。もう俺は限界だ。

 

 

 

11月24日 21:33:07:44

 

『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』スレッド作成。

 

 

 

 

ここから、全てが始まる。

 

196 :12 /15(土) 05:07:31.64 ID:cDXUMuU0

 

>>189

 

そういう事だったのか…

 

234 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 05:15:41.44 ID:K32TwDYo

 

何のためにスレッドを立てたのか。

 

確かに俺は限界だった。

 

このスレッドを立て、全てを書き終えた時、俺は退職しようと心に決めていた。

 

 

伸びても、伸びなくても、それは変わらない。

 

結果的にスレは物凄い勢いで伸び、パー速に移住するほどになってしまった。

 

 

そして、その中で俺への励まし、心配、叱咤。

 

色々なレスが俺に向けられて書き込まれた。

 

 

ブログのコメントは、続きを書いてくれ、という内容ばかりだった。

 

 

 

俺は今まで、誰からも必要とされない、居なくなっても誰も悲しまない

 

くだらない人間だと思ってたんだ。

 

 

だけど、このスレを立てた事で

 

俺はみんなから励まされて、心配されて、叱咤されて・・・

 

 

たった一人の力は確かに小さいかもしれない。

 

だけど、それが何十、何百となったら?

 

その小さな力が集まって、大きな一つの力となったら?

 

 

俺は奇跡を信じる気になったよ。

 

 

だって、スレッドタイトルが変わるんだもの。

 

 

 

『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』

 

 

『ブラック会社に勤めてるんだが、まだ俺は頑張れるかもしれない』

 

に。

 

237 :12 /15(土) 05:16:21.80 ID:p4qV7GAo

 

なにこのうまい〆方wwwwwwwwwwwww

 

239 :12 /15(土) 05:17:02.31 ID:4.5A2Kwo

 

何度泣かすつもりだ・゜・(ノД`)・゜・

 

263 :12 /15(土) 05:20:35.97 ID:.swh7lQo

 

〆方上手すぎwwwwwwwwww

 

なんか凄い希望を持ててきた。

 

 

ニート脱出頑張ってみるよ。

 

288 :マ男 ◆kmd7lCK4/M12 /15(土) 05:30:18.72 ID:K32TwDYo

 

このスレを見てくれてる人の中には、いろんな人が居るだろう。

 

学生、社会人、NEET、親、子、男性、女性・・・。

 

俺が想像も出来ない数の人が見てくれてると思う。

 

そう思ったら、力が湧いてくると思わないか。

 

 

俺はこのスレを立てたことによって、みんなに救われたよ。

 

本当にありがとう。

 

 

そして先週の金曜、藤田さんと交わしたやり取りを、ここに記そうと思う。

 

 

「マ男くん、君はもう私を超えているよ。

 

 君一人の力では、そうじゃないかもしれない。

 

 だけど、木村くんの信用は今では君が一番だし

 

 井出さんやリーダーも、君の事を影で認めている。

 

 私にしょっちゅう、言ってくるんだからww

 

 上原さんも、竹中くんも、みんな、君を頼りにしてるんだよ」

 

 

 

「私は、社長に言っておいた。

 

 君をリーダーにすれば、私を失う事なんて、石ころを捨てるのと同義だと。

 

 君は私が去っていく日、リーダーに任命されると思う。

 

 君は悩むだろう。苦しむだろう。

 

 だけど、私を信じて受けてみて欲しい。

 

 そのために、私はリーダーになるのを断り

 

 3年間ずっと君を育ててきたのだから」

 

 

俺たちは、藤田さんという一つの大きな力を失った。

 

 

だけど、その代わりに俺たちは

 

結束という何物にも変えがたいものを手に入れたよ。

 

 

藤田さんは、今月末で去る。そして俺はリーダーに任命されるだろう。

 

 

 

もし、このスレを立てていなければ、俺は受けなかったかもしれない。

 

だけど、このスレを立てたからこそ、俺は受けることにした。

 

 

 

藤田さんの言葉の意味を、みんなが教えてくれたのだ。ありがとう。

 

 

 

そして最後に、ありがとう、2ちゃんねる。

 

 

 

 

第五部・最終章『もう俺は限界かもしれない』

 

及び

 

『ブラック会社に勤めてるんだが、まだ俺は頑張れるかもしれない』

 

 

 

 

 

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