あなたの真似

あなたの真似

 

以前、しばらくの間付き合っていた彼氏は食べ方がとても汚かった。
注意しても聞いてもらえず、うんざりしてたけどいいとこもあったので我慢していた。

 

ある日、お店でいつもどおりとんでもない食べ方をしている彼に
「あのね、そうやって食べられると、一緒にいて気分が悪くなっちゃうよ」
と遠慮がちにいうと
「ん〜?神経質だよなあ。いちいちそんなこと気にしながら飯くってらんないよ。大体、そうやって他人がどうやって食べるかチェックしながら飯食ってるなんて、陰険だろ?」
と言われた。

 

その瞬間、やってしまった。
私は片足を椅子の上で立てひざにし、頬杖をついてバッテン箸で皿に乗っていた五目あんかけソバをずずず〜〜〜〜〜っとすすりこんだ。
ぐっちゃぐっちゃと音を立て咀嚼し、続く二口目は皿に顔を近づけて犬食い。
口いっぱいにほおばり、彼に口の中が見えているのを知りつつ世間話をし始めた。

 

あっけにとられる彼の前で全部食べ終わり、食事代2000円を財布から出して机に置きながら

 

「あなたの真似。」

 

とだけ言って店を出た。勿論、それ以来連絡はとってない。

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