派手目なギャル2人

派手目なギャル2人

 

都内の某有名お花見スポットにお花見に行ったときのこと。
その日は前日とは打って変わってやけに気温の低い日だった。
温かい飲み物を求めて、最寄のスタバに客が殺到した。
私も店外に伸びた長蛇の列に加わって並んでいた。

 

ひたすら並んでいた甲斐あって入店までもう少しだ!というときに、突然後ろから肩を叩かれた。
振り向くと、シロガネーゼ風の巻き髪でお化粧をばっちりした女性が立っていた。推定35歳。

 

その女性が「これお願い。一緒に買ってきて!」と紙を差し出した。
その紙を見ると、ぐっちゃぐちゃな字で飲み物のオーダーが書かれていた。
しかも「低脂肪乳で」「ホイップ追加」など注文がうるさい。

 

事情が飲み込めず、「この人誰だろ?」みたいな感じで混乱していたら、「だから!これを買ってこいっていってるの!」と追い討ち。

 

私「え??」
女「だからぁ!子供が小さいから!子供って体が繊細なの!風邪引いたらあなた責任取れるの?」
私「?」

 

女性が指差すほうを見てみると、同じようなテイストの女性が数人とちびっ子たち。
どうやら『ママ友』たちとお花見に来た模様。

 

女「あなたどうせ並んでるんだから一緒でしょって言ってるの!」
私「・・・?」
女「メモ早く受け取りなさいよ。あなた日本語通じるの?日本人じゃないの?」

 

呆気に取られて声が出なかった私だが、ここでようやく一言発することができた。
ただし大いに混乱していたため「どちらさまですか?」という間抜けた一言。
我ながら(ノ∀`) アチャーと思っていたところ、すぐ後ろから若い女の子が爆笑する声が聞こえた(手叩き付き)。

 

振り向くと、私の後ろに並んでいた派手目なギャル2人が、腹を抱えて大爆笑していた(ちなみに二人ともモデルさんのような美人だった。うらやましい・・・)。

 

「ちょ、他人に命令とか、こいつありえねぇー」
「日本語通じるとか、それおめえだし!どんだけだよこいつ」
「てかマジ意味わかんねぇし!どちらさまって感じー」

 

だいたいこんな感じでとにかく大ウケしてた。

 

 

これを聞いていた女性は表情をみるみる般若のように変え、私からギャルたちに対象を変更し、顔を引きつらせながらギャルを睨みつけた。そして吐き捨てるように一言
「下っ品な・・・親の顔が見てみたいわ」

 

『こいつどの面下げて親とか言ってんだよ!』と私もさすがに頭にきて「あなたねえ!」と言いかけるとギャルが私を軽く手で制した。

 

そしてその後の彼女たちがかっこよすぎて痺れた。

 

「確かにうちらチャラいけど、うちの親はウチが寒いとか文句言っても『寒いのはみんな一緒だから我慢しろ』って言うわけ。ズルとかしないの、絶対。親がそんなだからウチはあんたのことありえないっつってんの。」
「うちの親も、ウチが人にもの頼んで頭も下げなかったら、マジ100%ぶん殴るけどね、ウチのことを。顔見たがるのは勝手だけど、あんたも超怒られるよマジで?」

 

女性は顔を真っ赤にして、眼球が飛び出るんじゃないかと思うような壮絶な表情で、メモをくしゃくしゃに丸めてギャルたちに投げつけた。そしてガツガツと去って行った。

 

ギャルたちは女性に向かって「てめぇお姉さん(私のこと)に謝ってけよ!」と怒ってくれた。

 

「私のせいでイヤな思いさせちゃってごめんなさいね」
と彼女たちに謝ると、
「え?お姉さん被害者なのに謝るとか意味わかんないし!」
「てかマジ頭おかしいすよねーあのババァ。気にすることないと思う。」
と逆に口々に励まされてしまった。

 

彼女たちの後ろに並んでいたおばさま方も
「あなたたちやるわねえ!」
「いい親御さんなのねー」
「でももっと女の子らしく喋りなさい。てめえなんて言っちゃダメよ」と話しかけ、彼女たちは照れくさそうに笑っていた。

 

 

ここからは余談。
彼女たちが「小腹減った」「ケーキやばい超うまそう」だけど「新歓とかあるし金ヤバめ」なため
「じゃあ今日は我慢だね」と話しているのを小耳に挟んだので、御馳走させていただくことにした。
自分の順番が回ってきたとき、小声で「あの、後ろのお二人にケーキを…」とオーダーすると
店員さんは一瞬怪訝そうな顔をしていたが、そこに別の店員さんが登場。
彼は一連の騒動の時に外の清掃をしていた人で、レジの店員さんに事情を伝えてくれたらしい。
レジの店員さんは「あーなるほど」という表情に変わり、「かしこまりました」とオーダーを
受けてくれた。
ギャルたちのトレーにケーキが運ばれ、「え、頼んでないですけど?」と戸惑う彼女たちに、
店員さんがニヤリと笑って私を指し、「あちらのお客様からでございます」と伝えた。
彼女たちはこちらが恐縮するほどあたふたして、Aちゃんは「何で?何で?」と繰り返し、
Bちゃんは「払いますっ」と言うが早いかバッグの中を大慌てで漁り始めた。
私「だってさっき助けてもらったんだから、これくらいのお礼はさせてもらわないと」
Aちゃん「お礼とかほんといいですから!」
Bちゃん「うちらそんなつもりでアレしたんじゃないんで!」
私「それはわかってるのよ?でも…」

押し問答になりそうだったところ、さっきのおばさま方が
「あなたたち、社会に出たら年上の人には御馳走してもらうのも礼儀のひとつよ」
「そうよー、ここはいただいちゃいなさいよ!」と援護射撃をしてくれて、
さっきのやりとりを見ていたらしい
店内のお客さんから小さな拍手なんかも起こって、彼女たちはようやく承服してくれた。
「ありがとうございます!」と言われたので、「そんな、こちらこそありがとうございました」
と言って店を出た。
なんかもう本当にいい子たちだった。

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