腕だけの釣り人

 

28年前だったか、真冬の雨の日、高校のときに神戸第○防波堤に投げ釣りに行った時の話。

 

今はどうか知らないけれど、当時はアイナメ・カレイ・キス・アコウなんかが上がるポイント。
また改造サビキでヘチ際を狙うと面白いようにアイナメやガシラが釣れた。
当時を知る人なら車用の羽根ハタキの羽根をサビキのハゲ皮に変えて爆釣してたのを覚えてるはず。
まあ「関西の釣り」で記事になってから一気にスレちゃったんだけどね。

 

早朝から雨。
家を出る直前に渡船屋に片っ端から電話すると雨のため休業だの冬季は全休だの休みばかり。
それでもどうにか一件営業してた。
古いことだから渡船の名前は忘れたけど(現在営業してるかどうかもわからん)、たしか6時30分ころに出船。
釣り客は俺らだけ。
防波堤についてボート降り際に「兄ちゃん、何時くらいまで釣るんや?」と聞いてきた。
「夕方の地合までは釣りたいかな」そう答えると
「そうかよっしゃ、他の客がなかったら12時と17時に来るからな、まあ頑張って」そう行って去っていった。
当時の俺らのホームは神戸和田防波堤。向うは時間時間にキッチリ船出すのにえらいアバウトやな〜と思いつつも俺らは第○防波堤に上陸した。
第○防波堤に上陸すると爆釣とはいかないものの、ポツポツとアイナメ・アコウの良型が釣れる。
友人達も同様に釣れ、時期外れな30cm近いキスも釣れていた。
雨は降り続き、当時の撥水性の弱い防寒着にジワジワと浸透していく。
やがて小雨は昼から雪にかわり、濡れた防寒着がとんでもなく冷たくなり身体の熱を奪っていく。
やがて夕方になりパタパタと釣れたのを最後に竿をたたみ帰る支度をした。
しかし、待てども待てども迎えの船が来ない。

 

夜8時頃にはこのまま凍死するんじゃないかと思うほどだった。
三人身を寄せて耐えてると、他の釣り客が目の前でヘチ釣りしてる。
アレ?他にも釣り客いたんだ??
とキョトンとする俺、すると友人Aが
「え、俺らの他にもいてたの?」とやっぱりキョトンとする。
なんにせよ他に人がいるのは心強いかなっと思ってたら、もう一人の友人Bが
「どこ?」と聞いてきた。
俺「いや、どこって目の前にいるじゃん」
B「え?え?」

 

友人Aも
「おまえふざけんなよ、俺らの目の前で釣ってるだろ!」
B「誰もいないし?」

 

はぁ?と顔を見合わせる俺とA。
もう一度釣り客を見ると・・やっぱいる。
いや、なんかおかしい・・この釣り客の服装は半そでの軽装、どう見ても真冬のかっこうじゃない。

 

友人Bも気がついたようで
「なんかおかしいよ、少し離れようぜ・・」と逃げ腰。
「????」相変わらずの友人B。

 

釣り客に刺激を与えないようにゆっくり立ち上がり場所を移動しようとする俺と友人A。
その時、釣り客がこちらを振り返った。
いや正確には振り返るようなアクションをした。
が、しかし、・・・

 

A「え?」
俺「ひぁ!」
B「???」

 

三者二様の俺らのアクション。

 

A「うわーーーーーーーーー!!!!」
俺「で、出たーーーーーーー!!!!」
B「えっえっえっ???」
ダッシュで走って逃げる俺とA、とりあえず俺らの後を追うB。

 

結局迎えのボートが来たのは22時頃。
その間、俺らは釣り客の霊?から防波堤上をずっと逃げ回ってた。
「兄ちゃんすまんかった、ちょっとエンジンの調子が悪くてなー」
こちらの事情もしらずヘラヘラしてる渡船屋のおっちゃん。
真っ青な顔色のA、おそらく俺も同様だったろう。
Bは・・走り回るのに突き合わされて熱もったせいか元気そうだ。
三人船にのりこみ一息ついた。
Bが「いったい何がどないしてん?」と聞いてきた。

 

A・俺「釣り客が・・」
B「?」
A・俺「釣り客が振り向いたら・・」
B「??」
A・俺「振り向いた瞬間に腕だけ残して消えた・・」
B「マジ?」
A・俺「マジ・・」

 

結局Bには何も見えなかったらしい。
どうやら俺とAには微力ながら「見える」能力があったようだ。

 

当時、神戸和田防波堤でも「釣人の腕だけの幽霊」が噂されていた。
まさか第○防波堤でそれを見ることになるとは・・
陸につきとりあえず渡船屋に行く。
キレイなお姉ちゃんが出迎えてくれて開口一番
「大丈夫だった?ごめんね、あなた達のことすっかり忘れてたの」
と口にした。
「ちょっ・・」とお姉ちゃんを睨む渡船屋のおばちゃん。「あっ・・」と口に手をあてるお姉ちゃん。
マジかい・・最悪すぎる・・
怒りに震えながらストーブにあたっているとお姉ちゃんが熱いコーヒー入れてくれた。
どうも風呂上がり後のようで石鹸の香りが漂い血色が良いせいか妙に色っぽかった。
帰りはお姉ちゃんがお詫びにと車で送ってくれた。
釣り客の霊の話を聞いて見るも
「えー、そんなの聞いた事がないよー。」と笑っていた。
・・・・が、

 

「はぁ・・」
その直後お姉ちゃんはなぜか深い溜息をついた。
このお姉ちゃん、絶対何か知ってる・・そう確信した俺とAだった。

 

あれ以来神戸第○防波堤には行っていない。
さすがに28年もたってるから幽霊も出ないとは思うけどね・・・

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